第27話 あの後
いつもより短くなってしまった……
次回は明日になります。何時に投稿かは決まっておりません。
コタロウと聖剣ファトム。二人の戦闘が終わって縛らく休憩したあと、コタロウが余っている魔力を使ってスクロールの陣を起動させ、コタロウの部屋に戻ってきました。
ナービィさんが何かを持っています。
「ナービィ、それは?」
コタロウに聞かれニコリと笑った青い瞳の彼女は持っていた二つの封筒を渡してきました。
竜の鱗のが封蝋に描かれていることから、ルフォート様からのものですね。
コタロウは入っていた紙を取り出し、手紙を広げて読み始めました。それによると、イーリリン王国からの返事が返ってきたとのことです。
私には何もない……つまり今回も蚊帳の外ですか。いえ、慣れました。
「(お前も来るようにって書いてあるぞ。行くか?)」
そう思っていたのですが、同じように手紙を読んでいたガゼルが『思いよ届け』でその事を伝えくれたときは思わず嬉しさのあまり小さくガッツポーズをしちゃいましたが、誰も見てなかったよね? ヴァリーには見られたけど黙っててくれるよね。念のため頭を撫でながらさっきのは忘れるよう言っておきました。
「そんじゃ、また夜にな」
「起こしに行くから今のうちに寝とけよ」
「あぁ、すまんな」
私はガゼルと一緒に部屋から退出した後、彼の腕に密着してやると、狼狽え始めました。可愛い。
「こら、アスタロト。ここではダメと言っただろ」
「えー。だって私コドモだもん。大丈夫でしょ」
「十分大人の仲間入りしているだろ。バーカ」
「あ、今バカって言った!」
「誰のせいでコタロウは一度死にかけたんだ?」
「う゛」
苦笑して乱暴に頭を撫でてないでください。そして痛いとこをつかないで欲しいものです。
「部屋に戻ったら、さっきの感想聞かせてもらうからな」
「……うん」
自分の部屋に戻って体を清めると、パジャマに使っているネグリジェを着てガゼルの元に向かいました。
「ばーたれっ」
「あだっ」
部屋に入る前に頭を叩かれたのは意味がわからなかったです。
「いつ見てもシンプルなお部屋だよねぇ」
「その方が楽だからな」
「なんか面白味がなーい」
「子供を拉致しろと?」
「口をヒクヒクさせながら睨んでこないでよ。顔面凶器ん!?」
今度はちょっと強めに殴られちゃいました。
痛む頭を抑えながら彼の部屋をもう一度見ます。相変わらず質素過ぎです。
机とベットと本棚は最初にもらった時のもの。あと彼がここに持ってきたものとすれば柔らかそうな床に置くタイプのカラフルなイスが4つ、それとキッチンのある部屋へと続く扉と寝室の扉があるだけです。
「どうだったあの二人の戦いをみて」
「うん、はっきり言って異常過ぎ。聖剣は改めて強さというか脅威を知ることができたからいいとして、コタロウは規格外すぎでしょ。特に魔力を纏うとかさ」
それ以外にも彼のちょっとしか見れなかったけど、魔法をうまく利用して敵の虚をつくのは中々でした。自身に風をぶち当てることで避けるとか、怖くてできるわけがありません。
「だよな。魔力は普通、身体の内側にある場合のみ消滅はしない。逆に外側に出してしまうと、少しずつ空気に混ざり合ってしまう。だがあれは違う。表と裏」
「あれって確か魔力を鎧のようにするんだよね。柔らかくすることも硬くすることも可能な」
確か……見えない鎧だっけ。聖人たちが体の弱さを補うために開発したっていう。
「デメリットとして、あれは消費が激しいそうだ。知り合いが戦った相手が攻撃を喰らう瞬間に発動したと言っていたんだが、それは致命傷を防ぐときのみで3回も使ったときには魔力が枯渇して気絶したそうだ。あいつみたいに常時発動なんてありえない。それともう一つ」
「コタロウのオリジナル魔法?」
あれには驚きました。まさか使い道がないとされた水と土の二重魔法をあのように使うなんて。
「いや、その後に繰り出されたあの魔法のことだ。『思考魔法』と呼ばれるものなんだが……」
全然違った。
思考魔法……聞いたこともない魔法です。それほどまでに難しく、高クラスの魔法なのでしょうか。
「あれには、俺たちの使う魔法のように固まった概念ないんだよ」
固まった……概念? えっと、ちょっとよくわからないな。
「これを見てみろ。氷結の球」
ガゼルは手のひらを上に向けると無詠唱で氷の球が作り出され、そのまま手の上で浮遊しています。
「なぁ、アスタロト」
「ん?」
「これの形を変えることが出来るか?」
何を言っているのでしょうか。普通魔法というのは詠唱という合言葉でどういったものが生み出されるのかが決まり……っ!
ガゼルが何を言いたいのかわかり、顔を上げる。
「もしかして」
「そうだ。思考魔法は頭の中でどういった形状にするかを決めて発動し、さらに放たれた魔法の形状を任意に変えることができるという、習得できれば強大な力を手にすることができる。だが、頭が柔らかくイメージ力があり、魔力が豊富になければ、そんなことできないだがな」
とんでもない代物でした。まさかそんな魔法があるなんて……ですが安心しました。もしこんな魔法が誰にでも使えたら——いや、むしろ使えた方が良かったのかもしれないですね。
「コタロウが魔王で、良かったのかな」
「あ?」
「……ううん」
そこまでの力を持っている存在。確かにガゼルが、例え前世が憎き勇者だとはいえ気にかける理由が分かった。
彼は、今のこの国に必要な存在だと思う。
それに、とガゼルは話を続ける。
「ルシフェル様の力もあるというらしいが、今のところそれを使っている様子はないな。『記憶を受け継いだ』としか言ってなかったから、多分まだ見れていないんだと思う」
「ルフシェル様のって、“憤怒”のこと?」
「いや。ルシフェル様は歴代魔王の中で、二つの大罪を背負うことを許されたお人だ。その力となれば則ち……」
私もガゼルが言いたいことはわかる。だけどもしそうなら——。
「無理よ。コタロウに耐えれるはずがないよ」
前世の記憶を持ってしまったのです。そこへさらに記憶が合わさったら……。
「だから、記憶が開かれていないんじゃないか?」
「……」
コタロウを認め、力と記憶を与えたならいいのです。ですが、それは同時にそれを手に入れなければいけない事が起こることを意味しています。
「この話はこれで終わりにして、まだまだ時間があるし、昼食にするか」
「じゃあどこかで」
「いや、俺が作る。お前も久しぶりに食いたいだろ?」
「っ! やったぁ!!」
あまりの嬉しさにガッツポーズをとった私は、ガゼルに温かい目で見られていることに気づき、顔が熱くなってしまいました。
「あーその、なんだ。お前はここでゆっくりしてな。軽いもの作ってくるから」
そう言いながら軽食を作る言って台所のある部屋へと行ってしまいました。
昔から魔族は男が料理をすることになっています。ただ、アノマリア家のバーレンさんのように最近では女性が料理をするようになりました。
私も挑戦したのです。したのですが、あれは料理なんてものではありません。ダークマターでした。なんで料理してたのに召喚魔法陣が開くんですか。おかしすぎでしょ!?
召喚されたあの子猫、どうしているのかな。なんか、ほんとごめんなさい。
昔の黒歴史を思い出したら頭が痛くなったのりました。日が入るよう設計された場所へと移動します。
「ふぅ、暖かい」
製法は忘れられてしまいましたが、オリハルコンを特殊加工して作ったというこの天窓は最高ですね。真上から降り注ぐ日の光が心地いいです。この城を設計した先祖の方々に感謝しなければいけませんね。
手入れをしなくても表面がツルツル過ぎて汚れがつくことはないですし。
それに、このロッキングチェアの揺れが眠気を誘ってくる。
まだ、時間あるから寝てもいいよね。
おやすみなさい。
気づくと、シャンデリアがあり、沢山の高そうな絵や皿が棚に飾られていた。そして、私の前にはパスタやスープ、おそらくシュルティングスターという飛べない鳥を焼いた肉などが沢山の料理のある長机が存在した。どうやらここは夢の中のようだ。
「夢ならどれだけ食べてもいいよねっ!」
フォークとナイフを持った私は、逃げることはない料理を、時間が迫っているかのように急いで食べ始めた。
「んふぅ、美味しいぃ〜!」
とても美味しく、しかもいくら食べてもお腹が満腹になることはなかった。
夢だもんね、仕方ない。そう思っていたんだが、ふと先ほどみたこの部屋の物を見てみる。
「……どっかで見たような?」
私の後ろで扉の開く音が……?
なんで扉ってわかるんだろ。
コツ、コツ、と誰かが入ってくる。
——こないで。
不意にそんな言葉が頭に浮かびました。
嫌だ、こないで。
生ゴミが腐ったような臭いが、鼻に入ってくる。
扉から入ってきたモノが近づいてくる。
「お連れいたしました、旦那様」
その声に反応して、私の首は勝手に動きだす。
ゆっくり、ゆっくりと。
胸の鼓動が激しくなる。
みちゃダメ、ダメなんだとわかっていても、意思を無視して、後ろを向いた。
そこにいたのは、一人の男と——首輪をつけられ犬のように四つん這いで歩かされる私だった。
ちなみに、もしログアステンが二人の戦闘を見たとしても、目で追いくことが出来ないどころか、戦闘の始まる前に高濃度の魔力にあたって気絶してしまいます。
一応強さの比較として
一般魔族<アスタロト<ルフォート=クーラムバイン<ガゼル<サドリアン<オンイッチ<コタロウ<聖剣ファトム
となります。
オンイッチは一応魔剣に認められた人ということで、オークにあるまじき力を秘めています。本編で出て来る可能性はゼロに近いですが(^◇^;)




