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助けてください、魔王様!  作者: けとし
第1章
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第28話 二人の出会い

更新遅れてもうしわけありません。


ただ、一つだけ言わせてもらいます。





ど う し て こ う な っ た 。

「よっし、できた」

 完成させた料理を見て一人頷く。

 最近買い物に行ってなかったせいで魔造倉庫にはろくなものが入っていなかったことに気づいたときは焦ったが、昔から魔族に対して差別しない国として知られていたプリツァーレ国からの輸入品である肉の腸詰めがあって助かった。おかけで、即席だがその国で愛されているホットドッグというものを何個か作ることが出来た。


 だがこれだけじゃあいつに怒られるなと思い、野菜と果物を魔法で液状になるまで砕き牛の乳と混ぜ合わせてジュースにした。

 それぞれをお盆に乗せてフィーシの待つリビングに向かった。両手は塞がっているから風魔法である『不可視の手腕(インビジブル・ハンド)』で開けてみると、ロッキングチェアを揺らしながら、スヤスヤと寝るフィーシの姿があった。


 日の光があたり、まだ俺からすれば幼く——実際何十歳も歳が離れたフィーシの顔が照らされていた。


「おい、フィーシ」

 テーブルに料理を置いて、彼女に近づき頬をペシペシ叩くが、全然起きない。


 アルビノのような白い肌、細い体。俺の胸まで身長がないくせに、よく頑張ろうとする子。


 あ、細い眉毛がピクピクした。何の夢を見てるんだか、よだれが出ていたのでハンカチで拭いてやる。


 あの日から伸ばし始めた、今では腰まである長い髪を優しく撫でる。

 さらさらとしたその触り心地は、まるで人形を触っているみたいだ。いや、愉快な人形(ユニークドール)とは絶対に一緒にはしないが。倒したと思ったら突然口から本体を出して攻撃するようなヤツと俺の……。


 一瞬。フィーシの悲鳴が聞こえたような気がした。だが彼女は起きている様子もない。


「——あ」

 今度は、フィーシの閉じられた瞼から押し出されるように、涙が溢れ出してきた。それをそっと拭いてやる。

 近くに俺がいるのがわかっているのか、ハンカチを持っている右手の袖口を摘んできた。


 それを見て、悪夢にうなされていたフィーシを思い出してしまった。




「……あの時とは、もう違う」








 初めて彼女と出会ったのは、大体15年前ぐらいか。


「この子をもらってください」

「は?」

「では」

 朝から土砂降りの雨で嫌なことが起こるかもなと思っていた時に、部屋をノックする音が聞こえ、扉を開けるとアンギッシュ家の長男であるシュハーツ・アンギッシュは扉が開くと同時に、まるで御中元でも送るかのように妹であるフィーシを置いていったのだ。


 唐突過ぎて何が何だか分からず、気がついたら、シュハーツはいなくなっていた。


 当時の彼女は、前髪を眉の上で切り揃え、横と後ろは首筋のあたりで切り揃えられていた。

 白い質素なワンピースを着たフィーシは、俺の腰まで身長がなくさながら人形のようだった。


「っ!?」

 その目とあった瞬間、気づいたら殺気を全開にしてしまっていた。無意識でやってしまったことに一瞬後悔するが、フィーシの顔には変化は見られなかった。 ぼーっと生気のない目でジッと見つめていた。


 どうしてそんなことを、と聞かれれば「気味が悪かった」としか言いようがない。心ここに在らずといった感じの目の奥に、何かあるように感じたのだ。



 初めて、女性——しかも子供相手に恐怖を感じた気がした。





「ガゼル。洗濯終わった」

「おう。ありがとな」

「ガゼル、ここの掃除したけど、よかった?」

「すまんな、助かる」

 10日間様子を見ていたが、彼女は料理以外の家事は全部こなすことができた。俺が言う前に終わっていたことだってある。


 ただ、その様子をみて、結婚のみさせるがために育て……いや、調教・・されたかのようなに思えた。


「私と、産んでください」

 俺が寝ようと寝転んだ時だ。突然自分の使用しているベットではなく、俺のベットに来たかと思うと、スルリと着ていた肌着を脱ごうとする。


 結婚させることのみということは、そういうことも行えるように恥じらいも消されているということだ。


「ダメだ。お前はまだ幼い」

「なら、大きくなればいいのですね? あなた好みの」


 魔族は、90歳を迎えた頃から結婚ができるとされている。なのにこの子はまだその最低基準にたってしてないのに、「子供を」と言ってきた。

 常識は教えてもらえなかったわけじゃないと思うが……。


「違う。まだ世界は広いんだ、俺よりもいい人がいるだろうが」

「……私は、貴方としたいのです」


 嘘ということはすぐに分かった。彼女の目にはしっかりと色々な感情が混ざっていたのだ。

 人形と思ってしまったが、彼女にもまだ感情は残っていたようだ。


 そこに勝機ありとみた俺はおもむろに抱きしめた。


「大丈夫。もう道化を演じなくていいんだよ」

「道化……?」

 コテンと、首を傾げてる彼女の頭をくしゃくしゃと撫で回す。彼女の頬が緩んだのがなんとなくわかった。


「怖かっただろ……もう、あの家には帰らなくていい」

「私はアンギッシュ家のために生まれました」

「どうして?」

「それは、あなただからです」

「正確には、魔王候補だから、だろ?」

「そうです」

 無表情のまま、あった時のようにジッと見てくるフィーシ。


「残念だが……魔王になる気は、ない」

「っ!?」

 正直に話してやると、フィーシの体が強張ったのを感じた。

 アンギッシュ家は、俺とルフォートが最も魔王に近い存在だと知っているからこそ、今日みたいに夜這いをかけて子供を産ませようとしたのだろう。 未来の女王——その一族として名を広めるために。


 クズ過ぎる。


「俺もルフォートの奴も、魔王になろうとは思っていないんだよ」

 なんせ、その頃には新しい魔王は異世界から召喚することになっていたからな。古参派の老いぼれどもがなんと言おうが、知ったこっちゃない。召喚の儀式が整うまでサドリアンに監視を任せていたからな。お陰で順調に進んでいる。

 フィーシは俯き暫く考えていたのだろうか、そのまま俺を引き離そうとしてくるが、逆に俺は抱きしめた。


「じゃあ、離して」

「やーだね」

「はなして」

「やなこった」

「私は、魔王としか寝ない!」

 いきなりグーで殴ってきたが、その拳には俺を傷つけるほどの力はなかった。


 どんな常識を植え付けたんだアンギッシュ家(あのヤロウども)。適当な自己中心的な奴らよりもタチが悪いぞ。


「お前は離さない。あいつらの元には行かせない」

 ぽんっと、頭に手を置く。


「それに、お前はもう俺の家族だ」

「ちがうっ」

 殴るのをやめた彼女は、今度は首を絞めてきた。しかし、やはり力不足で殺すことなんて絶対にできない。


「あいつらはお前を“捨てたんだぞ?」

「そんなわけない! 私は誇り高きアンギッシュ家のフィーシ。魔王と共にあるために生まれてきたのよっ。それなのに見捨てるはずが……」

「気づいているか? 今さっきまで俺たちを見ていた奴がいるんだぞ」

「っ!?」

 慌てて振り向くが、彼女にはそんなもの目に入らないだろうな。魔力を上手く扱える奴が小さなトカゲに変身していたんだ、わかるはずがない。もしフィーシに魔力眼があったとしても、見つけることは出来ないだろう。


「たぶん、俺たちのやり取りを盗み聞きして


「お前はあの家とは無関係になった。孤児と一緒だ。ただ、家事をこなすことはできるだけの、な」

 もちろん嘘だ。だがここでなんとかしないと、彼女は同じことを繰り返すことになるだろう。なら、フィーシがこれ以上苦しむ前に、俺がなんとかしないと。俺がフィーシに優しさを教えないと。



 それから彼女は暗い顔をし続けていたが、ゆっくりとだが、基本的な喜怒哀楽はできるようになっていき、喋り方も、顔の表情も豊かになっていた。



 一度アンギッシュ家から返せという手紙が来たがそれを渡してきたその家の執事の前で燃やし、刺客が来た時などは返り討ちにしてやった。お前たちが魔王候補とか言っている俺がその程度対処できないと思っていたのだろうか、おめでたい奴らだ。今はもう来なくなっているがまたいつか来るかもしれない。用心に越したことはない。



  「ん……」

 なんて昔のことを思い出していたら、フィーシが吐息を漏らした。だが、その目からは涙が止まらず流れており、俺はなんとなく彼女の夢がわかった。


 そっと頭を撫でてやると、ゆっくりと目が開いた。




「あれ、がじぇる?」

「……」

 幼稚い言葉遣いになっているが、気にしない。

 まだ寝足りないのか、トロンとした瞳で俺を見つめてきた。


 ……。



 彼女が来ているネグリジェのせいだ。きっとそうだ。なんでこの服で来たんだよ昼間からさ。スケスケなんだが。下はまだ良しとして、その……なんだ、上がだめだ。さっきはスルーできたのに今は意識してしまう。

 さっきからトロンとした顔で見てきたのが、まずかった。


 あああ抑えろ俺。フィーシと俺は歳という壁があるんだ。この城には実力のあるやつらしかいない。もし俺がフィーシとそうなったとして、もし死んだら? コタロウに守らせるとしてもなんかな。


「がじぇるー」

 体を起こしたフィーシは突然、俺には抱きついてきた。


「えへへ〜しゅきぃ」



 抱きつくということはつまり……当たっているわけで。

 あー娘の成長がよくわかるわーはっはっはっは。







「がじぇるは、しゅき?」


 無言だったのがまずかったのか、ウルウルとした目で、それも上目遣いでとか……。



「フィーシ、おい起きろフィーシ!」

「ふにゃっ……あれ、ベルゼ?」

 慌ててほほを叩いてやると、目が覚めたようだ。どうやら寝ぼけていただけのようだ。ぼーっとした顔ではなくなり、目にはちゃんと知性が戻ってきた気がした。


「あー、その。おはよう」

「う、うんおはよ」

 挨拶を交わしたが、今の俺は顔が赤くなっている自信がある。自分から挨拶しておいてなんだが、目を逸らしてしまった。


 その行動に何を思ったのか、クスクスと笑ったことおもったら、そっと俺の耳元に口を近づけ、こう言ってきた。


「ガゼルの好きなように、して?」




 我慢の限界だった。

次回はもう少し先になります。戦闘形式を未だに迷っていまして。



もし知りたい人がいましたら第15話様々な戦闘形式をご覧ください。

もしよろしければこの形式で戦わせてくださいという意見もお願いいたします。

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