第24話 ちょっと意外です
お待たせしました。最新話です。
また、前話の最後コタロウの召喚前の話をするような流れだったところを変更し、裸の付き合いまっしぐらにしました。深い意味はないです。
風呂での話し合いがあった翌日、俺の部屋にガゼルとフィーシが訪れてきた。
目的はもちろん、昨日の夕方頃、ガゼルと共に作り上げたスクロールを起動させ、フーの遊び場へと転移するためである。
「ほんっとベルゼってなんでもできるよね。器用貧乏でもなく、そつなくこなしているところを見てると女として負けた気分になるわ」
「そりゃどうも」
「いや、貶してるだけだぞ。オカマみたいってさ」
「なんだとアスタロト!」
「わぁー、ベルゼのロリコンに喰われちゃうー」
「だぁれがロリコンじゃぁぁぁぁぁっ!」
うがぁっと吠え、フィーシに威嚇するガゼル。さらにロリコンを連呼されついに血管が切れたのか、フィーシに迫るも、わぁーと棒読みに叫びながら逃げ始めた。捕まえようと手を振り回すガゼルだが、フィーシは体が小さいのこと利用してのらりくらりとかわしていく。おー上手い上手い。
「いい! 加減! 捕まえられ、ろ!」
必死に手を振り回すが一向に捕らえることができない。その時2人の陰から何かが出てこようとするのを探知した。その波長がある魔族と酷似していると分かった瞬間、俺は思った。こいつら終わったな、と。
「あははは! ガゼルとろいのー——ふあ!?」
「なにうおっ!?」
ガゼルとフィーシの陰からそれぞれ一本ずつ杖が飛び出してきた。その先には、二人の顔が。
間一髪で避けることに成功したようだ。だが。
「ぎゃっ」
「いだっ」
追撃として繰り出され振るわれたそれは避けることが出来ず、フィーシは頬、ガゼルは肩に直撃した。
何が起こったのか分からないという彼らを尻目に、2人の陰からが伸び始め、重なった。
そしてそこからヌルッと現れたのは、黒髪の目元限定包帯男のサドリアン・アメミットである。
今日は何かあるのか、俺の歓迎会でも来ていたタキシードを着込んでいる。
サドリアンは2人に正座するよう促し、どうやって確認したのか、2人が言われるまま正座した瞬間。
「あだっ」
「がっ!」
フィーシには頭をポカリと叩き、ガゼルには凹ませる勢いで殴っていた。
「騒がし過ぎます。一旦黙っててください二人とも」
「「はい」」
二人はしょげてしまい、ガゼルにいたっては「ハゲて凹むとか……」と念仏のように呟いている。
しかし、立ち直りが早いのもガゼルの方であった。
「というか、なんでサドリアンお前がここにいるんだ。そんな粧しこんでさ」
確かに。こいつは歓迎会の後、(フィーシへの説教ついでだろうけど)いつでも呼べる鈴を渡しきて以降、会議以外では一度も出くわしたことがないのだ。
「いえ、最近なんの問題もなく過ごしているようですが、念のために様子を見に来たのですよ。そしたら——コタロウ様の御前だというのにお前たちといったら」
「すまんすまん。だが調子にのってはいねーぞ?」
「調子に乗ってるとかではありません。というかそもそも貴方はコタロウ様のご病気が治るまでの期間限定の筈では? 一体どういった理由でコタロウ様にご迷惑をおかけしているのでしょうか。説明して貰えますよね」
「あだだだだだだっっ!」
有無を言わせない雰囲気を漂わせながらガゼルの頭を掴みグリグリと回す。まるでワーォ、ヤクザみたい。その包帯外してメンチ切れば完璧だね。
「あ、あのサドリアンさん」
「……なんですか?」
今ボソボソっとお兄さんではないのですかって聞こえたんだが、気のせいだよな。
「お、お兄ちゃんもお姉ちゃんも僕の用事で来てもらってるだけだから。その「知ってますよ。『デューク』君」——!?」
顔を近づけて、そっと言葉の爆弾が投下された。こいつ、今なんて言った。
俺が、勇者だった頃の名前で呼びやがった……というか、どうして分かりやがったんだ。
顔に答えが出てしまったのか。手を口に当てて驚きを表現するサドリアン。
「あら、勘も侮れないですね」
「勘かよ」
「嘘です。実は全部聞かせて頂きました」
「どうやって」。そう聞く前にサドリアンは胸ポケットから鈴を取り出しチリんと鳴らす。
その瞬間、俺は慌ててポケットを弄り鈴を取り出す。
ガゼルも答えが導き出せたのか。苦い顔でサドリアンを睨みつける。
「……盗聴とか悪趣味なことをするようになったもんだな。『平等なる断罪者』よ」
「ずっと持っていて下さったのですね。嬉しいです」
「……一体俺をどうするつもりだ? ルフォート達へ告げ口するのか? それとも脅迫材料として——」
「『僕』、です」
「は?」
「俺などとは言わず、僕っ子のままでいて下さい」
もう言いたいことは言ったと扉から出て行こうとする。
しかしそこで一旦止まり俺の方へと向き直りポツリと、一言呟く。
「——です」
小さくて普通なら聞こえないだろう。フィーシはなんのことか分からず首を傾げていたが、ガゼルは元から耳がいいのか、なんだ同志かと笑っていた。お前と一緒にするな。
……手に持っていた鈴を一回鳴らす。
——しかし何処からも現れない。拗ねちゃったかな?
「拗ねてなどいませんよ」
「どわぁぁぁ!?」
後ろからぼそりと囁かれ、さらには耳に息を吹きかけられ驚きのあまり跳んでしまった。全然魔力も何も感知しなかったぞ!? なんなんだコイツは。
「おおおお驚かすなよ」
「して、どういったご用件で?」
「あ、あぁ。出来るなら、ここで留守番を頼みたいんだが。出来るか?」
「……です」
「へ?」
「お兄ちゃん、お留守番して欲しいなと上目遣いで頼んでくださいましたら。お答えできると思います」
「なっ……」
こいつ、こんなキャラだっけ。最近俺の想像と食い違う人が多いんだが。クーラムバインとかほろ酔いしたラッジとか。
「う……お、お兄ちゃん。僕達お出かけするからお留守番してほしいな」
……死にたい衝動に駆られるのは何故だ。これまで幾度も武器にしてきたのに。今日はめちゃくちゃ恥ずかしい。
っておいそこ。何悶えてやがるんだ。特にフィーシ、お前鼻血垂れてるぞ。
「えぇ。私は滞在することは出来ませんが、代わりとしてはなんですが」
パチリと指を鳴らすと。サドリアンの影が大きくなりだした。
同時にその影は濃くなっていき、何かが這い出てくる。
「これは……!」
「はい、私の相棒でケリュウスのナービィとヴァリーです。二人とも挨拶を」
競技よく腰を曲げて挨拶をする紫髪の女性と黒狼。
「この二人には声帯というものがありませんが、代わりに礼儀正しく、マナーも習熟させておりまさので、何処に連れていっても大丈夫でございます」
「そっか。ありがとう、サドリアン」
「もったいなきお言葉」
低く頭を垂れるサドリアン。その姿にナービィはまぁ、と驚きを表し、ヴァリーは間抜けな面で主人であるサドリアンと俺を行き来している。
「それでは二人とも。聞いていた通りですので、コタロウ様が帰ってくるまでの間よろしくお願いします」
腰を折り曲げ最敬礼するナービィとお座りするヴァリー。
サドリアンは俺たちに挨拶をすると、部屋から退出した。
………除け者は寂しいです、か。今度、何処か行きつけの喫茶店などに連れていってもらおうかな。
「さて、気を取り直して。行こうか二人とも」
スクロールに手を当てたガゼルが言う。
「はーい」
「それじゃあ、ナービィさん、ヴァリーさん。ここを任せました」
親指をぐっと立ててはにかむナービィと、体を擦り付けるヴァリー。
「起動するぞ。——『起動!』」
ガゼル発動の引き金を引く。同時に彼の体からものすごい勢いで魔力が吸いあげらていく。それに呼応して描かれた魔法陣が空色に輝く。
床に魔法陣が展開され、俺とガゼル、フィーシはその光に包まれた。
その光に眩んだ目をゆっくりと慣らすように開けると、俺が見たのは、白いドーム状の壁だった。
「なんだここ」
魔王退治のみに専念させられ、あまり世界を渡れなかった俺でも、見たことも聞いたことも無い空間が、そこには広がっていた。
次回は既に書き始めていますので、早めに投稿できると思います。




