第20話 やっと入りました。
投稿第二回目。深夜に投稿されたものがありますので、先にそちらをお読みください。
「ヴァイス隊! 後方の避雷爆散蛙が近づく前に対処せよ」
「シュバルツ隊はこのまま前方のハーピィスライムと対峙! 左右の通路の警戒はグラオ隊がして下さい」
洞窟の中を、クーラムバインとエリカ。二人の怒声が、響いていった。
その声とともに、天族と魔族、二つの相反する種族から構成された『混色騎士団』は割り当てられた仕事をこなしていく。今度はのどかで、楽しげな雰囲気などない。
ここは、ドントス鉱山に造られてしまったダンジョンの内部。地下二階の十字に別れた通路の中央に彼らは立っていた。
周囲に展開されたそれぞれの隊は、指示されたことを全うするために、得物を取り出す。
ヴァイス隊が構える先にいるのは、意志を持ったゲル生物。スライムの異種混合種であるハーピィスライムを光魔法を纏った魔法剣で切り裂いていく。半透明な桃色のそれは、二つ分けられると同時に切断面から溶けていくように消滅していった。
シュバルツ隊の数名が手を前方に突き出し詠唱。それに反応した大気中の魔は突き出された彼らの手の中に集まっていく。
完成したその魔法は、一つの黒い団栗のような形をした礫……いや、弾丸だった。
彼らは暗闇を注視しながら、手を動かす。それに合わせて弾丸も動く。
そして、動きが止まったと同時に彼らは作り出した魔法をその闇の支配する空間へと放った。
少し経ってから、何か転がってくる音が聞こえた。
それは、黒と赤の毒々しい色をした、尾のついた蛙だった。
その数は、7匹。大きさはバスケットボールほどだろうか。それらはコロコロと転がっていき、途中で止まる、
よく見れば、何かに貫通させられた跡がくっきりと見える。通常ならそこから可燃性の液体がなが出してくるのだが、一滴も出てこない。
1人が近づき、死んだと思われる内の一匹を手に掴み、確認。そして問題がないと分かると、合図を送り、それらを中央で待機している残りの同隊の者たちに渡して解体させていった。
『万能弾』と呼ばれるこの魔法。闇と土の二重魔法で、そのままでも高威力の攻撃魔法として扱われるのだが、中に空洞を作りその中にさらにもう一つの魔法を組み込み三重魔法にすることで、オプション効果が発動する。
今回使われた魔法は、水と風の二重魔法、氷。つまり三重魔法ではなく、四重魔法になったその弾をまともに受けたその蛙たちは、中にあるご自慢の可燃性の液体を発火させることもなく、外からの衝撃と中からじわじわとくる氷によって死に絶えたようだ。
「スライムは放置しておいても良いだろう、避雷爆散蛙の方はどうなっているのですか」
迫ってきたモンスターの処理を終えた彼らに、クーラムバインは声をかける。
「はい、グラオ班に保冷型魔法具の中に入れてもらい管理を任せております」
「そうですか。そのまま警戒を続けてください」
その言葉にはいと答えたその兵士は、先ほど自分のいたところまで戻ると、そばにいる仲間と会話を始めた。
「なぁ、結構ここキツくないか? 亡くなった奴はいないけどさ、それでも一気に減るとさ」
「あぁ、確かにな。今日は団長来ているけど、前に出てきてくれてないし」
いつもの彼なら率先して……いや、一人で殲滅していただろう。無駄な体力を失わせないようにするためにだ。
ダンジョンが造られてから、およそ2日は経ってるだろうと考えるクーラムバインの頭の中には、過去の黒歴史——天族の空飛ぶ大陸の中にある国の一つ、ヌウゲートに発生したダンジョンに出来たばかりだから楽勝といいながら挑み敗れたという忘れ難い記憶。
そしてそのダンジョン攻略へと向かった彼の父親が滑る中隊、ざっと300人もの兵が向かい、討伐後帰ってきたのは、三分の一もいなかった。
その日から悔しそうに泣きながら自棄酒を行うようになってしまった父のその姿を見るたびに胸を痛めたクーラムバインは、仲間を1人も失わずに送り返すため、日々鍛錬を行い、そして、龍を相手にタイマンをはれるほどにまで強くなった。
「まぁ、あんな奴がいたらな」
話していた兵が、ちらりとクーラムバインのいるところを見る。仲間を守るために力を付けたはずの彼が前に出ない理由、その元凶は、すぐそばにいた。
「ねぇねぇクー。あのポヨンポヨンしたのなにー?」
「はい、あれはですね——」
正確にはエリカに抱っこされているが。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
グッドアフタヌーン、コタロウです。今俺たちはダンジョンにいます。え、双鰻? 美味しくいただきました。
ファンムーゲンのダンジョンって初めてだけどさ、最初500人もいるのかなー。なんて思ってたら、一階から高難易度モンスターがわんさかわんさか。既に100人は怪我で戦線離脱してしまったよ。あ、またモンスター。
あ、ちなみにさっきクーとエリカが『班』ではなく『隊』といってたよね。あれ? って思った人いると思う。
この世界の騎士団の中には、『戦闘に特化した人たち』と『護衛や生活に特化した人たち』、その二つに分かれている。割合で言えば8:2といった感じで。
昨日の夕方一緒にここへ向かったのは『班』の人たちと、少数の『隊』の人たち。
ダンジョンが遠かったり重要人物の護衛などをする場合、まず最初に『班』の中から更に八割。『隊』の中から二割ほどを連れて、目的の場所へと向かう。その道中、夜になると共に仮拠点を作り、朝になると保存の効く食料と、魔物避けの類を置いて出発。それを繰り返していく。数日遅れて、残りの騎士団が出発し、その前に出発していた騎士団の残していった仮拠点を転々と移っていき、目的の場所へと運んでいく。というのが、この世界でのスタイルである。
面倒ではあるが、この方法をとることによって生存率が年々増えているのだそうだ。死亡率がら消えないのは道中虫による感染症や盗賊に隙を見せてしまいやられたりというのがあるからのようだ。
モンスターと騎士団の戦闘を見物しながら、俺は何をしているのかというと。
「結構軽いね、コタロウ。そして頭でグリグリしないでください、痛いです」
「えーなんのこと?」
現在、エリカのない胸に後頭部を押し付けてます。こらこら、眉間にしわを寄せないの。可愛い顔が台無しだよ。嘸かし心の中ではクソガキを連呼してることだろう。
「エリカ副団長。呼び捨てはいけませんよ」
そんな俺たちに声かけてきたのは、ルフォートだ。
「ご本人様から許可をいただいておりますけど」
「そうだとしても、です」
「まあまあ、いいじゃないですか。それともエリカ副団長のお胸の中に顔を埋めたいとっ!?」
そんな揶揄いの言葉をかけるクーの顔の横をルフォートの風魔法でレンジを伸ばした魔法短剣の刃がギリギリのところを通り過ぎていく。髪の毛が数本、銀色の残像が消えると共にハラリと落ちていった。
「次、訳のわからないこと言えば恩を仇で返すことになるぞ」
「これは失礼しました」
心のこもってないトーンで謝罪の言葉を言うクー。
平和です。実に十字路の真ん中は平和でございます。周りの兵士からなんか殺気を感じてますが、平和です。
「さて、そろそろ昼時なのですが、一向に進めませんねぇ」
「……仕方ないさ。さっきのハーピィスライムも避雷爆散蛙も、成長の進んだダンジョンなら中間より下あたりの階層に出没するやつらだ。無理もない。しかし、そろそろ不味いな」
「と、いいますと?」
「……聞こえないのか? この足音」
その言葉で俺は倍加を耳にかけて聴力はあげると、周辺の音に集中。すると、確かに斜め右前方から、大物の足音が確認出来た。これは……骨が折れそうな奴が来たな。
「報告! 右の通路から、大型モンスター……スカーレットゴーレムを確認! こちらに走ってきますっ」
え? 今なんて。
「スカーレットゴーレムというと、確かロッツ帝国にあるダンジョン。【エニグマ】の最深部を守る奴の一人ですよね、なんでそんなのが」
「知らないわよ! そんなことよりどうするの?確かスカーレットゴーレムの体を構成してるのってヒヒイロカネでしょ?」
ヒヒイロカネとは、たしかオリハルコンの次に硬い、魔法版ダイヤモンドみたいなものだったはず。そんな鉱石で作られた体を武器にダンジョンに挑む者の前に立ちはだかる。それがスカーレットゴーレム。深紅の巨神兵としておそれられている。
「あぁ。討伐には何日も掛かる。仮に討伐したとしても疲労でダンジョンコアまでたどり着けないのは愚か、1日経てば体を自動的に修復してしまう」
「最悪、だな。私たちもでるか」
「そうですね。……いえ、どうやら行く必要はないですよ。コタロウ」
「なにー?」
「昨日教えたアレ、試してみます?」
「んー。うん!」
「は? クーラムバイン団長。貴方は魔王様に何を……ってコタロウ様!?」
俺はエリカに下ろしてもらうと同時に、走り出す。正確には、怪しまれないように脚力を使わず風魔法で無理矢理超低空飛行をしている。
後ろからルフォートの呼ぶ声がして来たが、クーに任せておこうか。
さぁて、聖剣を使わずに、どこまで行けるか、試してみるか。
おそらく今日はこれで終わりだと思います。四話投稿有言実行ならずです。
余裕を持って描きたいでござる。
今更ですが、第3話の魔法回や第6話の聖剣辺り、拡張するかもしれません。割り込み投稿のことです。
さて次回はまともな戦闘描写……になると願っている!




