第18話 え、まだなの?
タイトルはおそらく皆さんの思ってるだろう心情を題材にしました。まだダンジョンにはつきません。
ダンジョン。それは冒険者たちのロマンが詰まった異空間迷宮である。
突然空間の異常によって生まれるそれは、実は誕生前にその前兆がみられることがある。
それが妖精や精霊を閉じ込めた鉱石、琥珀である。これの有無によって事前にダンジョン対策ができたりするのだが、あんまり知られていない。
そもそも、ダンジョンが出来る確率は一年が370日あるこの世界でいえば、74分の1。約2ヶ月に一度世界のどこかで誕生するというものだ。
さらにはダンジョンも生命体のように弱肉強食のようで、強力なダンジョンの近くで生まれたダンジョンは、作られたその空間ごと、強いダンジョンに取り込まれてしまうらしい。
生まれたばかりのダンジョンを見つけた場合、余裕があるなら潰しに入るか、近隣の町にあるギルドに報告して攻略してもらうのがセオリーである。
さて、そんなダンジョンが出現することを知った鉱夫であるルシアンとバンカスの二人は、スティーンに相談し、今にいたる。
相談した結果、どうやら天族と魔族の冒険者ギルドである、天魔ギルドへと要請し、ルフォートみずからも動く、ということに決まった。
ガゼルはルフォートが同行することに反対していたが、頑なに拒まれ断念してしまう。もう少しかんばれよ。
こうしてダンジョンについての対策は決まり、バンカスとルシアンはこの事を(一部秘密にして)仲間に伝えに行ってもらった。
そして翌日、城の前に、白の鎧と黒の鎧が列をなして鎮座していた。
彼らが混色騎士団か。予想外に統一されてやがるよ。一応だけど、天族と魔族って犬猿の仲として知られているのに。アイモネ? 例外中の例外だろ。俺のいなくなったこの数十年間、彼女の身に何があったのかは知らない。一度俺が不甲斐いばかりに体を預けるばかりか、重ね合ってしまったこともあったが。
こほん。
さて、どうやらルフォートによる演説が始まったようだな。聞く気もないため聞く気はない俺は窓を閉めた。
「……本当に行くのか、コタロウ」
「もちろんさ、ガゼル。留守番はまた任せた。フィーシにも話し合わせ頼んでおいてくれ」
「あぁ。それとそろそろさ——っておい!?」
ガゼルが何が話していたが聞く気なぞ微塵もないので、無視して俺はまた魔法を使って、飛んだ」
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「出発!」
ルフォートの短い掛け声と共に、大地を震わせる振動と金属のこすれ合う音が街を支配した。彼らは急に城から出てきたモノクロな兵士たちに町の人たちは動きを止めてしまう。しかしそれは畏怖してのではなく、年老いたもの達からは神様の如く、若いもの達からは尊敬の念で。子供達には憧れとして。
騎士団の通っていくその場所に暮らす彼らの目には恐怖は無く、むしろこの光景を一生忘れないぞと言わんばかりに脳の海馬へと、焼き付けていった。
彼らは知っている。10年前。森族による『リッパー』形式にの戦争により魔族が哀れにも敗れていくその姿。空に聳える大陸で暮らしてた天族の中の一部の者たちが、立ち上がった。
彼らは大昔決められた戦争のルールなど、知ったことではなかった。それよりもさらに前。彼らは自分達の先祖と彼らは魔族の先祖が協力して、この世界に安定をもたらせたという事実を優先し、下の大陸へと堕ちていった。そんな堕ちた天子達は、防戦一方だった魔族達と手を取り合い、そして彼らの間で交わした戦争期間を、どうにかやり過ごすことに成功した。
堕ちてしまった天族は、二度と空の大陸へと戻ることはできない。そしてそれは正しく現実でも彼らを蝕んだ。
少し前まで見えていた、自分たちの故郷が、見えなくなっていたのだ。
住まう場所を失い、家族にも会うことができなくなった彼らに魔族達はこう提案した。
我らと共に、歩んでいかないかと。
こうして彼らの混色騎士団は誕生した。
10年の間、彼らは鍛錬し続けた。そのおかけで二年前の【空襲】では、間に合わなかった部隊もいたが、巧みなコンビネーションによる翻弄術を使い、天族の繊細な魔法のコントロール捌きと、魔族の豪快な高火力魔法により。初の勝利をおさめることができた。
そんな彼らが、我らが英雄軍がまた何処かへとその力を、弱き者を助け出すために動きだしたのだ。
その道の途中からは応援する声が増えていき、まるでパレードの如く、先にある門の両端からズラリと並んでいく民たち。騎士団が門を出た後も、その後ろ姿に向かって手を振る者もいた。
そんな彼らに見送られた騎士団の者たちはというと。
「あ゛〜。やってらんねぇよ。こんな堂々と街のど真ん中を通っていくこたぁなかったろ」
「まぁまあ、これも政府たちによるイメージアップでもあると同時に、これまで行われてした数々の戦争によって不安がっている我らが守るべきもの達を安心させるためだし」
「ちーがいますよ、副団長。彼、照れてるんですよ」
「おいペーラム!」
「昨日も会議中、そわそわしてたし」
「そうなのか?」
「……覚えてろよペーラム」
街のもの達からはもう見えなくなったところで、思い思いに仲のいいもの達の元へと集まって駄弁りだしていた。
彼、ログアステンと副団長エリカと、その妹にあたるペーラムの三人も、昔から家の近かったもの同士。幼なじみであった。
元々は貴族であるエリカの家族の元へと、侍女としてきた母について来たのが初めての出会いだった。
昔のエリカは、英才教育によって子供らしい感情が抜けかけていた。『かけていた』というのは、僅かな好奇心が危険を察知し、回避することの出来たという両親の経験状、今後彼女を助けてくれるだろうという、考えによるものだった。
好奇心以外はジジババというより、奴隷に近い状態にもなっていた彼女にとって、ログアステンという存在はまさに転機そのものであった。
彼の接していくうちに、心を取り戻し幼いながらの心にあるむず痒いものに悶え、しかし不思議と心地いいそれに、エリカは好奇心を抱いた。しかしそれを自身の母聞いた翌日、ログアステンが、自分の前から消えた。その事実にまた心の扉が閉まりかけ、そして——。
「——カ、エリカ!!」
「っ!?」
昔のことを思い出していた彼女は、兜越しとはいえまだ心の底から思っている者に急接近され内心ドギマギしていた。
「何ぼーっとしてんだ。団長が、呼んでるぜ?」
「え!? す、すぐ行きます!!」
慌て走り出すエリカ。しかし、途中わずかに顔を出していた石に躓き顔からダイブしてしまう。そして小物が逃げるかのように急いで立ち上がり、向かっていった。
「ったく。昔っから変わんねーなほんと」
「あはは。……変わらずにいられるのは貴方のおかげなんだけどね」
「なんか言ったか?」
「ううん、なんでもないよ」
呆れたような顔のログアステン。ペーラムは姉の思いを知ってるために、彼の鈍感さに彼女も呆れかえっていた。
「しっかし、なんで途中で止まったんだ? 何か異常でも……?」
「そういうの、お姉ちゃん得意だもんねぇ」
「だな。俺が酒を飲んできた時も、臭かったんかしらねーけどビンタされたよ」
「………バーカ」
「あ゛ぁ!?」
気づくのはいつになるやら。
呼ばれたと聞き、エリカは先頭を歩いてた団長の元へと走っていった。途中から団が前へと進んでいない事に、何かあったのだろうと足を早める。
「及びでしょうか団長殿。何か問題……で…も?」
辿り着いた先で彼女が目にしたのは。
兜を脱いで銀髪の髪を掻く団長、クーラムバインと。
「見つかっちゃった……えへへ」
先代魔王の息子である、ルフォートがモノクルを二つもつけた黒髪の少年をさも親猫が子猫を運ぶが如く掴んでいた光景だった。
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どうも皆さん。ルフォートに内緒で森に来ていたコタロウです。
早速ですが、そのルフォートさんに見つかっちゃいました。てへ。
「何をしておられるのですか、魔王様」
呆れ半分といった顔をするルフォートと、子供が隠れてたことにやれやれと思ってたらまさかの魔王たどいう事態に追いつけていない純白の鎧を来た天族の男。こちらへと向かってきた魔族の女性に至っては、この状況が飲み込めていないようである。
「僕も、ダンジョンに行きたい」
「ダメです。貴方様はダンジョンの怖さを知らない。力がまだ制御できていないのに危険な場所へは連れていけません。そもそもどうやってここまで」
「飛んできた」
「はぁ!? 飛ぶって……まさか風魔法の『飛行』を」
「うん!」
「何を考えておられるのですか!?」
いい反応するねぇ。めちゃくちゃ面白い顔になってるぞ。青通り越して白くなってる……いや元々白かったな、失敬。
「お願いお兄ちゃん! 僕もダンジョン行かせてっ」
「ダーメーだ。まだ行かせられない」
「なんで! ちゃんと魔法使えるよ?」
「まだダメだ。魔法が使えるだけではな」
「ヤダヤダ! いーきーたーいー」
っと、ここでようやく回想前のところまで、戻ってくるのだ。長い? それ言われてもなぁ。これでも短くしたほうだよ? かれこれ10分「行きたい」「ダメ」の応酬だったし。というかルフォートよ、素が出てるぞ素が。
「……いいんじゃないでしょうかルフォート様。飛行ができるほどとなると。」
と、ここで女魔族が助け舟をくれるようだ。どうやら男天族にどういった人物なのかを聞いたようだ。
「ならん。この方はこの先未来でファンムーゲンを治めて頂かなければいけないお方なのだ。もしここで命を落とししまえば、どう責任を取るつもりなのだ? エリカ副団長」
「そ、それは」
まあ、そこが問題になるよな。
王を死なせて自分達だけ生きているとなれば、責任を負われ最悪、一族皆殺しになりかねないことだってある。イーリリンではそうだった。
「責任に関しては大丈夫ですよルフォート殿」
「クーラ団長!?」
銀髪を風でなびかせながらあっさりと答えてしまう団長さん。
「私の目は『未来予知』という魔眼にございます」
「知っている。意識して発動すれば数秒先の未来を見ることができ、自身の命に危機が迫ることがあると、無意識に発動して何時間先でもその未来を見せてくれるという」
「えぇ。それによりますと、どうやらダンジョンのボスに私は殺されかけるようなのですが、その子が来た途端その可能性の未来が視えなくなりました」
「!? ということは、まさか魔王様がダンジョン攻略の鍵とでもいうのか」
「はい、その通りでございます」
ふむ、この天族の団長さん。中々に熟練度も高いようなのだが、それでも殺されるって一体何があるのやら。というか、多分みんなを気絶させて一人で勝手にやっちゃうパターンだよなこれ。
「……分かった。その代わり、もし命に関わるようなことがあれば……」
言葉を一旦区切ると、ルフォートの体から殺気と高濃度の魔力があふれだしてきた。
「承知した。この混色騎士団団長クーラムバイン・ハニエルが、命をかけてお守りいたす」
「お、同じく混色騎士団副団長エリカ・プルザラスも、我らが王をお守りいたします」
二人して臣下の如く跪き意思表明をした。
さて、ルフォートよ。主はどうするつもりなのやら。
書き直すこと4回。昨日のうちに投稿できなかったことが心残りです。
たぶん、無理してでもいいから今日投稿すると思います。というかやってやんよ!
……灰になりそう。




