第16話 会議
うー、18時に投稿したかったのに、できなかったでござる。
部屋全体がシンと静まり返り、代わりとしてピリピリとした緊張感が場を支配していた。
そんな中、一人の男かわ席から立ち上がり、周りを一瞥すると、口を開く。
「それではこれより第325回、英傑会議を始めたいと思います。司会進行は私、ヴァリー・アブトモングが務めさせていただきます」
赤い髪が僅かに揺らしながら会釈し、座る二本角の男。ルシフェルの秘書らしいけど、ここ最近全く会ってなかった気がするんだが。
「中身は皆さんもご存知のと思いますが、二日前、聖剣が何者かによって奪われたことと、イーリリン王国からの宣戦布告が記された文が、今日の昼頃に赤い紐を付けて送られてきた速伝種によって発覚いたしました。」
ここにいる人たちほぼ全員が信じられないといったざわつきだす。取り乱していないのは、ガゼルとルシフェル、それにバーレンとヴァリーの四人だけである。
え、俺? “知ってる訳ない”でしょ? 国の情勢には一向に教えてくれてないんだからさ。
「静粛にお願いします。まず最初に、聖剣についてですが。誰か情報を持っている方はいますでしょうか」
静かになった部屋にヴァリーの声が響き渡る。もちろんのこと、誰一人手を挙げるものがいなかった。
まず、聖剣を見たことのあるものは少ないと思う。ガゼルにも話した『ジャック』という戦争形式では、予め民を避難させておくのが普通であるからだ。二つの国と、その間のフィールドが戦場として使われるのだから。
ため息を一つが一つ聞こえた。その声の主は周りの人たちを睨むように見ると手を挙げた。
「どうぞ、オンイッチさん」
オークであるオンイッチは、オールバックにした赤い髪を撫でながら立ち上がる。
「私も聖剣を見たことはないですが、どの様な代物なのかは知っているので断言致します。我々は無実の罪を突き付けられたのだと」
「そりゃ聖剣と言うぐらいだから、俺たち魔族には扱うことなんて無理だってことぐらい知ってるさ」
「うむ。その通り。そしてもう一つ、聖剣には意思があり、剣自らが主を選ぶことで、扱う事が出来るのだ」
「まて。剣に意思があるだと!? そんな話聞いたこともないぞ」
「それは私もそうだったさ。『魔剣』に会うまではな」
「魔剣? 魔法剣ではないのか?」
「いや。それは間違いなく聖剣と対なす存在、魔剣だっま。
奴は普段、人の姿をしており。目の前に弱き者がいれば、力を与える。二年前もそうだった……」
「二年前……というと、当時お前が率いていた重特攻隊が全滅したという」
「そうだ。一体の龍によって俺以外が生きて帰ることが出来なかった、忌々しい空族との戦争、【空襲】だ。
あの方と出会った俺は、オークという種族でありながら龍に勝つことができた」
といっても辛うじてだけどな、と苦笑した後、席に座った。
魔剣ねー。俺も一度会った事があるがそんな親切なやつじゃなかったぞ? いや魔族限定なのかも。
「詰まる所なにか? あの国あった聖剣も同じように人型になって放浪してると。なんと傍迷惑な!」
俺のせいでフローに罵声を浴びさせてしまっている。そう考えると俺の心に鋭利な刃物の如く傷をつけていく。
“パパ、だいじょうぶ?”
あぁ、大丈夫だ——心中でフローに返事をする。
「それに、イーリリン王国には我らの侵食結界と相反する光却結界が貼られています。あの結界は高高度に結界のない空間が存在しますが、そこまでいく技術も魔力もない我々が侵入することなんて不可能です」
なるほどと頷くもの達がちらほら。知らなかったんかい。
「聖剣については以上でよろしかったでしょうか。……では次に、戦争を回避出来ず、さらに形式が『チェス』だった場合の対処法について、何か提案はございますか?」
その言葉を皮切りに目を瞑るもの。横の人と共に真面目に考える者。アホらしいと呟きながら酒を用意させる者……って今してるの会議だよな。何をやってるんだ?
ヴァリーも、ガゼルも、ルフォートも。
戦争形式はどの種族でも平等になるように考えられている。いや、『られていた』だな。
その理由は、魔法兵にある。
普通、『魔法』兵とあったら火魔法で焼きつくしたり、雷で痺れさせたりなど。戦場で活躍すること間違いないと思えるポジションにあると思えるだろう。が、しかし魔法兵の火力が強すぎるということで、形式を考えた昔のお偉いさんは、ルールを変えた。
魔法兵が使えるのは、身体系か回復系、それと空を飛ぶなどの補助系魔法限定とする、と。
この結果、面白みがない、魔法の存在しなかった昔と変わりが無くなったとのこと。それでいて人間にとって不利でしか無くなったと思われた。しかし、一人の人間が、ある事に気付いたのだ。体に魔術印を描けばいいのではないかと。
魔術というのは、魔方陣のように描いて発動するものなのだが、この世界の理にことなったものであるのに対し魔術は理に反する何かの力によって発動するものである。
例えば氷。これは水と風の二重魔法によって、その場所の空気を冷やしながら集め氷にしてしまうのが魔法。これは昼の砂漠だと発動するのに時間がかかるのに対し、魔術は紙に描かれた氷の術式によって発動するようになっている。例え昼の砂漠のようなであってもだ。
魔法兵以外は魔法を使ってはいけない。なら『魔術』は? 他の国もそう思ったことだろう。しかし武器ならまだしも人の体に書くということ事態が異例であるため、体に害のある素材を使わず、尚且つ高性能なインクを作るのは困難を極めたそうだ。
そして、人間の中で手先が器用な人たち。通称ドワーフ達によってついに特製インクが完成。さらに鎧に印を掘り、その溝にインクをつけることに魔術が発動することができるというこもあり、体に火耐性を、鎧には火の衣という、火達磨になりながらもダメージを受けずという、火の化身部隊が誕生した。
そして、この時彼らはこう思ったのだろう。『チェス』なら魔族に勝てると。
ここからはガゼルに聞いた話だが、光と闇以外の化身部隊も作られ、少しずつ、魔族は押されていき、現在の状態に陥っているそうだ。
属性の化身部隊ねぇ。火以外は試すのが困難だとか言ってたのにやってしまったのか。一体、どれだけの犠牲を払ったのか。
魔術系の武器は脆く、オリハルコンを使わなければ無理だし。そもそもオリハルコンはレア中のレアメタルだ。後、固すぎて加工できる職人も殆どいない。
俺が知ってるだけでも2、3人しかいないばかりか、あれから何十年も経っているのだ。全員ぽっくり逝ってしまってるだろうな。後継者探しも難儀してたから。
………。
実際のところ、魔術武器で勝つ方法はなくもない。魔族の戦い方からすれば、考えてもないだろう方法が。
「(ガゼル、話した通り頼む)」
「(了解)」
スッ、とガゼルが挙手をする。その瞬間、周りがざわめきたった。
「珍しいですね、ガゼルさん。良い案があるのですか?」
「あぁ、一応な。参考にしてくれたら良いのだが、別に一々手彫りしなくてもいいんじゃないのか?」
「「「「は?」」」」
ここに来るまでに俺がガゼルに提案した内容は、型を使った魔術武器の作成である。
俺が転生して驚いたことは沢山ある。戦争のない国や科学という技術もそうだが、型を使った部品の製作である。
型さえ何個か出来上がって仕舞えば、後は魔法で少し早めに作ることもできるし、何より完成までの時間が短縮できる。
「ふむ、確かにそれは名案だが、使い捨ての弓矢にした理由が分からん」
「魔術武器は脆い。そうだったよな?」
「それがどうし……! そうか、壊れて仕舞えばなんの魔術かも分かることはなく。こちらの手札がバレないようにすることができる」
おー、ヴァリーさん頭の回転早い。それに比べてスチュワや古参派の人たちはポカンとアホな顔してガゼルをみている。
「しかし、そんなこと良く思いついたな」
「いや、コタロウ様のお陰だよ」
そういいながら俺の頭を撫でてくる。く、くすぐったい。
「コタロウ様が図書館から本を借りてこられてな。一緒に読んでいたら『ニッポンみたいに型を使えば簡単なのになー』とおっしゃられた瞬間、ピンとね」
「なるほど……やはりコタロウ様を召喚して間違いはなかった。そうですな? スチュワ殿」
「ぐっ……そうだな」
どうやら、ルフォートたちもスチュワの狙いが分かっていたようだ。悔しそうにこちらを睨んでくるけど怖くねーぞ、爺さん。
「しかし、だとすれば問題はその型を誰が作るのかだが……」
誰かがそう呟く。最悪、俺が勇者時代の知り合い達に頼んでいけば——と、そんな必要も無さそうだな。
「それなら、俺の知り合いに魔族の味方をしてくれるドワーフがいるぜ。型に関してはこのバンカスに任せてくれ」
「材料はこのスティーンにお任せください」
「私は魔術印に良いものがあるか調べておくわ」
鼻の下まで前髪を伸ばした男が手を上げながら告げたのを皮切りに、俺は私はと手を上げ始めた。相当悩んでいたと見える。溜まりに溜まった膿が取れるとなるなら、惜しまないつもりなのだろう。
「嬉しいのは分かりますがお静かに。今日の会議はこれで終わりますが、何かご質問はありますでしょうか。……いないみたいですね。それでは第325回英傑会議を終わります」
皆我先にと部屋から出て行く。
さぁて、これから忙しくなるぞ。
さて、次回は材料集め回ということで、鉱山にいきます(たぶん)
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