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助けてください、魔王様!  作者: けとし
第1章
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第12話 南東の塔

遅くなって申し訳ありません。


色々詰め込もうとして失敗し、謎のフリーズで大半が消滅——泣いていいですか?



ということで長くしようとするのを諦め、シンプルに行きました。

 それから数日経ったある日の午後、俺は城と隣接し、そして守るような形で円状に建てられている十六ある塔の一つ、南東の塔へと向かっていた。


 約束通り、バーレン・アノマリアに会いに行くためだ。


 彼女はあの時、場所を教えずに行ってしまったのでガゼル達に聞いておいたのだった。ついでにこの辺りのことも。


 ここ、ファンムーゲンは、魔族の王であったルシフェルが討ち取られたと知った人間、山族、海族、空族の四種族はここぞとばかり責められ、一部地域を占領されてしまった。


 まず最初はファンムーゲンの東の領地を、次に南、北、そして西を。


 次々と領をとられていった魔族は、侵食結界と呼ばれる、それに触れたものをあらゆる状態異常に陥らせるという結界を作動。それ以降は侵略をしようとするものも大分減ったそうだが、懲りずにやっちゃうバカどもが来たのは実に35回。

 流石にうんざりしてきた彼らは、人間が勇者を召喚してるように魔王を召喚することはできないのか。そう唱えたものから始まり研究され、そして——俺が来た。ということだそうだ。


 うんざりしただけでなく、彼らは焦っていた。侵食結界がいつ効力を無くすのかわからなかったのだ。仕方ないだろう。



 侵食結界を作動させている16の塔には、それまでこの国を築いてきた英傑——歴代魔王に連なる家系の者たちが住んでおり、そのうちの一つとして、アノマリア家が存在する。


 ルシフェルを失ってからは妻バーレンが支えていき、今現在、長男のルフォートが引き継ぎ、次男のラッジがその補佐としての教育を受けている。他に妻が3人と娘が8人、息子が2人いるとのことだ。魔族では一夫多妻が普通だ。


 と、どうやら目的の部屋に着いたようだ。目の前ある扉には赤い百合の紋章がある。うん、間違いない。

 階段を下っていくこと10分。少し足が痛いな。光の回復系魔法は治りが早いが怪しまれること間違いなしなので、ここは水の回復系魔法と木の回復系魔法を同時発動しておこうか。


「『樹の精霊の治癒ドライアド・ヒーリング』、『水乙女の抱擁アクアメイド・セレピア


 二重魔法ツヴァイではなく、二つの魔法を同時に発動して使う、俺だけのチート能力の一つである。


 ネタばらしすると、俺の中にある聖剣ファトムことフローに、詠唱が完了し発動するだけとなった魔法を渡し、俺はもう一つの魔法を詠唱。そして発動すればあら不思議、二つの魔法が別々で、同時に発動できてしまうのだ。

 ま、これはフローが俺の中にいるからこそできるだけなんだよね。


 さて、体が楽になったことだし入るか。

 そう思い、ノブに出かけた時だった。


「——様! どうか貴方様が魔王として、この国を支えてください、お願いします!」

 しわがれた男が誰かに懇願する声が、扉を挟んで聞こえてくる。


 誰に対して言ってるんだ? 気になった俺は耳に生活魔法の倍加ライズを使い強化して扉に聞き耳をたてる。




「そのセリフ、何度目だと思っている」

「8回目にございます」

「……なぁ、じいよ。お主は私がそんな事が——この国を支える柱となれる。そう思っているのか?」


「左様でございます。貴方様は第48魔王継承者、ルシフェル・アノマリア様のご子息。これまで王となられた方々は、最低でも二代は引き継いでおられます。それが当たり前となり、暗黙の了解であるゆえに、貴方様は王を引き継がなければいけない“義務”があるのです」

「暗黙の了解の意味を履き違えるほどにボケたか爺。それは義務でもなんでもない。そしてあの方——コタロウ様のように、魔力を豊富に持つものを召喚するよう指示したのは私だ。爺もあの場にいただろ」

「はい、ですが——」

「それに、継承するとしてどうやるつもりなんだ。魔王としての称号はすでにコタロウ様が継承なされた。……答えによっては、私は大切な人たちを手にかけなければいけなくなる」


 その言葉と共に僅かにピリピリと感じる威圧。流石、ルシフェルの長男である。扉越しでも感じるって相当だけどさ、コントロールが甘いのか、だだ漏れだ。しかし、爺とやらはそんな威圧を真正面から受けても、体の魔力の流れを乱すことなく、平然としている。


 話からして爺と呼ばれる男は、過去歴代魔王に仕える忠臣だったのだろう。そして、人間が嫌いな排斥派。そんな感じに聞こえたのは気のせいだろうか? まぁ、用心は越したことない。杞憂に終われば問題なしだ。


「……ルフォート様、お客様が来られましたが、どうしますか?」


 扉の前から女性の声がした。


 ……そういえば、魔力探知による位置情報の取得をし忘れていた。そのせいで、いやルフォートからすればナイスなタイミングだろうか。というか、最初から気づいていたなこの声の主。


「ふむ、通しなさい」

「ルフォート様、話はまだ途中にございます!」

「いや、もう終わっている。それも30分前にな」


 うっわぁ、辛いなぁそれ。8回も同じ話をされていたのだから、さぞかしうんざりしていることだろう。


「ノックしてください、コタロウ様」


 そんな声が耳元に聞こえてきた。『思いよ届け(ェンクファシーシンク)』か。


 ノックを三回。そして数秒ちょっと間が空いた後、ノブが回され、ゆっくりと開いた。


 その部屋は、とても魔王の家族が済むような場所ではなく、言うなれば現代の日本人が独り立ちした際に選ぶような、簡素な場所だった。部屋の壁に使われているのは——以下省略。


 省略してはいけないところといえば、玄関だと思って場所がすでにリビングだったということかな。後玄関も含めて前後左右に扉があること。それと俺を出迎えてくれたメイドが金髪の妖猫だということ。


 そのメイドとルフォート、それともう一人。


「おま……貴方様は!」


 今「お前」っていいかけたよねクソジジイ。


「ようこそ、よく来られましたね、コタロウ様」

 外交向けの作り笑顔を浮かべ、俺を抱き上げるルフォート。


「うん! バーレンさんに来てって言われたから」

 えへへ〜と子供らしい答え方をする。


「コタロウ様、バーレンさんではなく、バーレン様でございます」

 額に青い血管を浮き上がらせながらも、平静を装う爺と呼ばれてた男は、古い木で出来た杖を両手で持って体を支えている、腰の曲がった老人のことだった。


 カッパのように、しかし皿ではなく肌が露出した頭をしており、その周りだけは白髪ではあるがふさふさとしていた。顔もしわくちゃで、すぐに死んでしまいそうな雰囲気を醸し出した姿をしておるが、その体の奥に秘めている魔力の量は通常の魔族がもつそれよりも多い。


 また、彼の目は死んでいない。その目つきは鋭く、ヤンキーがメンチを切ってるようだ。その赤い瞳は、自分はまだ現役で動くことが出来ると思っている、いや、実際に出来るのだろう。


「爺。この子は“魔王”なんだ。名前の呼び方は自由だろう」

「関係ありません!」

「スチュワ・ハイツ!!」

「っっ!」


 風の魔法『疾駆ソニック』を使い、爺——スチュワ・ハイツの後ろに回ると、袖から一振りの短剣が現れ、首筋にピトッと突きつけられた。


 いや、血が僅かにだが滲み出てきた。


「……今度は注意でも忠告でもない、警告だ。魔王様の前で魔族としての恥を晒すというのなら、ここで斬る」



 ———暫しの沈黙が、場を支配した。



「分かりました。その警告、受け取りましょう」

 沈黙を破ったのは、スチュワ・ハイツだった。

 彼は右手で短剣をどかし、俺の方と向かい、横切っていく。チラッと見たときの彼の顔もこちらを向いており、とても忌々しいといった感じだった。


「……最後に一つ、ご忠告がございます」

「早く行け」

 扉の前で立ち止まるハイツの背中に剣を当てるルフォート。その顔は大切な者を手にかけてしまった俺には分かる、悲しい顔だった。


「貴方様でなければ、民も納得してくれませんよ、魔王様・・・


 そう言い残し、彼はアノマリア家の部屋から出て行った。







「見苦しいところを見せちゃったね、ごめん」

「ううん、だいじょうぶ!」

 そういいながら俺はお決まりのスマイルを浮かべながらルフォートに抱きついた。彼も俺の頭を手を当て撫でてくる。ぬ、手慣れてやがる。ものすごく気持ちいいぞ。


「ありがとう、コタロウ君」

 お、やっと様付けやめたな。というか周りを気にして中々言えなかったのだろうな。それなら仕方ない。代わりにすりすりしてやるよ。



「あ、来てたのねコタロウちゃん」

 声と共に右の扉が開いた。その扉の奥は暗く見えない。そんな場所から灰色の髪をした女性、バーレンが出てきて俺に手を振ってきた。


「あ、バーレンさん。おじゃましてまーす」

「……」

 何故か不機嫌な顔をになルフォート。


「あらあら、ルフォートよかったねぇ。可愛い弟ができて」

「全くだよ。さんじゅ………3年前はよく懐いていた兄弟たちが反抗期に入って、俺の心の癒しが——」

 どうやらただの子供好きのようだ。納得した。


 そのあと俺はリビングにある椅子に座り、二人の話に子供としての相槌やらなんやらをしてやり過ごしながらお茶菓子を楽しんでいた時、アノマリア家へと近づく魔力を感じた。それも2つ。


「お、ラッジとアイが帰ってきたようだな」


 ラッジは分かる。食堂で会ってるし。ただ、エリーというのは……8人いるルシフェルの娘の1人だろうか、それともバーレンを除いた三人の妻か。


 ドアが勢いよく開き、その二人が入ってくる。


「ただいま……げっ」

 1人は金髪のアシンメトリーな髪型をしたラッジは、俺を視界に入れた途端ものすごく嫌そうに顔を顰めた。そんなに子供は嫌いか。中身54歳のおっさんだけどもダメか。ダメなのか。


「あら、ボウヤは……」

 ………げっ。

 今度は俺が嫌そうな顔をする番だった。もちろん心の中でしてる……はず。


「えぇ。この子が昨日言ってた子よ」

「まぁ、可愛らしい子ねぇ」

 そういいながら駆け寄ってくる小さな大人(・・・・・)。彼女のことを知らない人なら、幼い子だと思ってしまうだろう。


 しかし、青い髪は重力に身をまかせるように垂らされ肩まで伸びており、前髪はピン留めのようなもので後ろにとめられている。幼すぎる顔には、おっとりとした目つきでこちらを見る青い瞳。服装は食堂で会った子供達のような、可愛らしい水玉模様のワンピース。そんな技術いつのまにできていたんだ。


「おかえり、アイモネさん」

 いいながら幼女……じゃなくて彼女、アイモネの頭を撫でるルフォート。


「んんー、撫でるなぁ!」

 一瞬気持ち良さそうな顔をし、ハッとなってルフォートを叩こうとするアイモネだが、撫でていた手で抑え付けられブンブン振り回すだけだ。


 ……。


「もう、今日は魔王様がおられるのですから」

 クスクスと笑うバーレン。


「は? コイツが魔王!? あだっ」

「魔王様よ、ちゃんと様付けしな」

 俺を指差しながら叫ぶラッジの頭を平手で叩くルフォート。


「へぇ〜、この子が、ねぇ」

 そういいながら俺の目を見ようとする、アイモネ。思わず目をそらしてしまった。


「あら、嫌われた?」

「ふぇ!? うぅー。そんなぁ」

 いいながらメソメソと泣いているように見えるが、俺は知っている。こいつのは嘘泣きだと。


「あーはいはい。大丈夫よアイモネ。ほら」

 嘘泣きをしながらハンカチを受け取り、涙を拭く……真似をしながら、こちらの様子を伺っている。


「えっと、私はアイモネ・アノマリア。アイちゃんって、呼んでね」

 演技が終わったアイモネは、俺に対して 笑顔で自己紹介をする。



 アイモネ・アノマリア? 嘘をつけ。お前の正体は——聖女だろ?

さて。中途半端なところから分かるようにこのまま続きます。そしておそらくその時にタグを回収することになると思います。


では、また次回お楽しみに

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