第8話 村へ行く。俺のスローライフは始まる……はずだった
翌朝。
俺は世界樹から少し離れた村へ向かうことになった。
「まずは、この世界の生活を覚えてください」
リナが言う。
「魔法とか?」
「はい」
「種族とか?」
「はい」
「国とか?」
「はい」
「魔王とか?」
リナは黙った。
「……いるんですね?」
「はい」
「やっぱりか」
俺は空を見上げた。
異世界。
魔法。
魔王。
世界樹。
ここまで来ると笑うしかない。
村に着く。
木造の家。
畑。
小さな市場。
見たことのない動物。
耳の長い人。
獣のような耳を持つ人。
いろいろな種族がいる。
「……本当に異世界だ」
俺は思わず呟いた。
村人たちは俺を見る。
「新しい子?」
「旅人か?」
「若いな」
俺は少し困った。
実年齢は52歳。
外見は16歳。
どう説明すればいい。
その時。
「おじさん」
小さな子供が声をかけてきた。
「……俺?」
「うん」
俺は苦笑した。
「まあ……そうだな」
16歳の顔で「おじさん」と呼ばれる。
何とも複雑だった。
そして。
村の外れにある小さな家を貸してもらった。
「ここで暮らせます」
俺は家を見る。
小さい。
でも。
悪くない。
畑がある。
静かだ。
自然がある。
「……これだ」
俺は思った。
「これがスローライフってやつか」
しかし。
その日の夕方。
村の鐘が鳴った。
ドォン――。
村人たちが一斉に走り出す。
「魔物だ!」
「西門に来たぞ!」
俺は固まった。
「……スローライフは?」
誰も答えてくれなかった。




