第3話 異世界のお約束、ステータス画面
「では、確認しましょう」
リナがそう言った。
「何を?」
「あなたの能力です」
来た。
俺は思った。
異世界転生といえば。
これだ。
「ステータス……とか?」
リナが目を丸くする。
「よく知っていますね」
「いや……まあ……」
知っている。
むしろ知りすぎている。
アニメや小説で散々見てきた。
異世界に来た主人公が、
ステータス。
レベル。
スキル。
称号。
そんな画面を見る。
「じゃあ、やってみます」
俺は少し緊張しながら言った。
「ステータス」
何も起こらない。
「……」
もう一度。
「ステータス!」
何も起こらない。
「…………」
リナが困った顔をする。
「何をしているんですか?」
「いや、ステータス画面が出るんじゃないの?」
「あなたが言っているような、自分で呼び出すステータス画面はありません」
「ないの?」
「ありません」
俺は黙った。
「……アニメと違うじゃん」
リナは意味が分からないらしい。
仕方なく、彼女が俺の額に手を当てる。
「少し、じっとしていてください」
「何をするんだ?」
「あなたの状態を確認します」
すると。
淡い光が広がった。
「……!」
空中に文字が浮かび上がった。
俺は目を疑った。
そこには、見覚えのある形式が並んでいた。
名前:未登録
年齢:16
種族:人族
職業:修復者
レベル:1
体力:42
魔力:31
筋力:18
知力:27
技能:
《観察》
《修復》
《異常感知》
「……」
俺は黙って画面を見た。
「これ……」
「あなたの状態を、私が読み取って表示したものです」
「つまり……ステータス画面じゃない?」
「はい」
「リナが調べた結果を、こういう形で見せてるってことか」
「そういうことです」
「……なるほど」
俺はもう一度、表示された文字を見る。
「修復者?」
「はい」
「勇者じゃないの?」
「違います」
「魔王は?」
「違います」
「賢者とか?」
「違います」
「……普通の冒険者?」
「違います」
俺は頭を抱えた。
「修復者って何だよ……」
リナは答えなかった。
いや。
答えられないように見えた。
「あなた自身が、これから知ることになります」
そう言って、彼女は世界樹を見た。
俺もそちらを見る。
巨大な樹。
だが、よく見ると。
おかしい。
枝の一部が黒ずんでいる。
葉が枯れている。
「……あれ?」
俺は目を細めた。
「あそこ、変じゃないですか?」
リナの表情が変わった。
「……見えるのですか?」
「見える?」
「あの距離から?」
俺は答えられなかった。
ただ、黒い部分が妙に気になった。
工場で機械を見ていた時と同じだった。
正常なものの中にある、ほんの小さな違和感。
「……壊れてる」
俺が呟くと。
リナは黙った。




