第14話 魔王軍は、世界樹を守っていた
信じられなかった。
魔王軍。
俺が知っている物語なら。
世界を滅ぼす側。
人間を襲う側。
勇者と戦う側。
だが。
目の前の兵士は違った。
「なぜ魔王軍が、世界樹を調べている?」
俺が聞く。
兵士はしばらく黙った。
「我々も理由をすべて知っているわけではない」
「だが、魔王様は命じられた」
「世界樹を守れ、と」
俺はリナを見る。
リナも驚いていた。
「魔王が……?」
兵士は頷く。
「世界樹が死ねば、魔王領も滅びる」
その言葉に。
俺は少し引っかかった。
「魔王領だけじゃないだろ」
「……そうだ」
「この世界全部が危ないんじゃないのか?」
兵士は答えなかった。
その沈黙が、何よりも雄弁だった。
俺は考える。
人間。
魔王。
世界樹。
黒い根。
全部がバラバラに見える。
でも。
黒い根だけは。
人間も。
魔物も。
魔王軍も。
関係なく侵食している。
だったら。
「魔王が世界樹を枯らしてるって話……」
俺は呟く。
「誰が言い始めたんだ?」
誰も答えない。
魔王軍の兵士も。
村人も。
リナも。
誰も。
俺は嫌な予感がした。
これは工場で感じたものと同じだ。
誰もが「そういうものだ」と思っている。
でも。
原因を調べた人間がいない。
その夜。
俺は世界樹の前に立っていた。
手を触れる。
修復能力が反応する。
しかし。
いつもと違う。
深い。
あまりにも深い。
世界樹の内部。
そのさらに奥。
何かがある。
「……これは」
俺は目を閉じた。
そして。
一瞬だけ。
知らない景色が見えた。
巨大な装置。
白い光。
そして。
一人の少女。
「……誰だ?」
少女がこちらを振り返る。
その顔を。
俺は知らない。
でも。
胸の奥で。
何かが引っかかった。
次の瞬間。
映像が消える。
「……ミサキ?」
なぜ、その名前が出たのか。
俺自身にも分からなかった。




