第10話 魔王は、本当に敵なのか
翌朝。
村は昨日の騒ぎで落ち着かなかった。
俺は村長の家に呼ばれた。
「昨日のことを聞きたい」
俺は椅子に座る。
「何を?」
「お前は、あの魔物を救った」
「たまたまです」
「違う」
村長は首を振る。
「そんなことができる人間は、この村にはいない」
俺は黙った。
そこへ、村の外から一人の兵士が駆け込んできた。
「村長!」
「どうした?」
「魔王軍の姿を確認しました」
村長の顔が険しくなる。
「魔王軍……」
俺は聞いた。
「魔王って、やっぱりこの世界を滅ぼそうとしてるんですか?」
「当然だ」
即答だった。
「魔王は世界樹を枯らし、この世界を支配しようとしている」
俺は世界樹を思い出す。
黒い根。
侵食。
魔物。
世界樹の異常。
確かに全部つながっているように見える。
でも。
昨日、俺が見た黒い根は。
魔物そのものではなかった。
魔物はむしろ、その根に侵されていた。
「……本当に?」
「何?」
「魔王が、世界樹を枯らしているんですか?」
村長は怪訝そうな顔をした。
「当たり前だ」
「誰が確認したんです?」
沈黙。
「……古くから伝わっている」
「つまり、誰も見たことはない?」
誰も答えない。
俺は窓の外を見る。
遠くに世界樹が見える。
そして。
その根元には、また黒い影が見えた。
「……おかしい」
俺は呟いた。
工場で覚えた。
小さな異常を見逃さない。
正常に見えるものほど。
その中にある違和感を探す。
俺はまだ、この世界のことを何も知らない。
魔法も。
国家も。
種族も。
魔王も。
世界樹も。
何一つ分からない。
それでも。
一つだけ分かることがある。
「誰かが……何かを間違えてる」
俺は立ち上がった。
勇者になるつもりはない。
魔王を倒すつもりもない。
英雄になる気もない。
ただ。
壊れているものがあるなら。
俺はそれを見つけたい。
そして。
直せるものなら――
直したい。
それが。
この世界で俺が初めて見つけた、自分の役割だった。




