第6節
「いやぁ助かったよ虎太郎」
私は何度も虎太郎の頭を叩いた。
振り返れば、コイたちは今だ水面をヒレで打ち、蠢いていた。
筏はバラバラにされている。
「さ、騒がしいと思ったらあんなことになってるんだから、びっくりしちゃったよもう」
至極高い声で虎太郎はいった。
案の定、ポカンと口を開けたラービーがお礼も忘れて立ち尽くしている。
「おいこら、私たちの神だぞ」
「い、いやだって、さっきまでは何ていうか、もっと強面というか、か、貫録というものが……あって……その」
動揺を抑えきれないラービーを横目に、私は説明した。
「虎太郎はな、水に入ったときと陸に上がったときとで、性格が変わるんだ」
「は?」
ラービーが静止する。
「だから水に入ったときはさっきみたいな豪気な奴になって、水からあがれば、途端に気弱な奴になるんだ」
「へ、へぇ……」
まだ受け止められない様子だった。
彼は上の空で虎太郎を見つめている。
「恥ずかしいな。あんまり見ないでよ」
ますます彼は混乱してしまい、目が回りそうになっていた。
ワニガメの虎太郎は元々ペットだった。
だが、飼い主が飼育の限界を感じて、この宝陽川に放ったらしい。
当初は小さかったのだが、無事にすくすくと育っていき、今では誰もが目を見張るほどの巨体の持ち主となっている。
その体躯は、水中で発揮する豪放な性格にはぴったりなのだが、陸での性格と声のギャップが、たくましい顎と相成って、とてもつもない違和感を残してくれる。
私も正直戸惑っていた。
数分して、ラービーも落ち着きを取り戻していた。
お礼の挨拶もそこそこにというところで、彼はさっそく虎太郎に訊いた。
「食料が簡単に手に入る場所を知っているかい」
「うーん。君なら大抵のものを、いとも簡単に調達できると思うんだけど」
「それはそうなんだが、時間がかかる。僕は人間にも追われているから、早く海に出ないと」
私は一通りラービーがここにいる経緯と、己の不運さを虎太郎に説明した。
「な、中々のフットワークだね、ラービー君。すごいよ。カフカは何だろ、お疲れ様?」
「もういいよそれで慰めありがとう」
私は続けていった。
「でも、君を巻き込む形になってすまない。騎士団に反抗したのだから、ここから追い出されるかもしれないし」
虎太郎はファーム5を拠点としている。
今回の件で移動を余儀なくされるかもしれなかった。
「心配ないさ、川を辿ればきっといいところがある」
「ほんとに申し訳ない。すぐにでもエドランさんたちに相談してみるよ。ワニガメにちょうどいい住居があればいいけれど……」
私は、虎太郎と歩きはじめた。
だが、後ろからラービーがのこのこやってきて、私たちの前に立った。




