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猫のカフカ  作者: キャベツはどうした
浮かぶチョコレート
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第1節

 雪がわずかに残る川沿いの道は閑散としていた。



 私は冷たい風をもろともせずに、自分で決めた順序に沿ってテリトリーを歩いて行く。


 

 騒がしい声が聞こえてきたのは出発して数分のことだった。



「やめなさい! 私らはまだ生きなくちゃいけないんだ!」



 一体何事かと、私は慌てて目を凝らした。

 すると、川岸に二匹のハムスターがいるのを発見した。

 彼らが言い争いの犯人だった。



 ただ、私はあのハムスター達の風采に見覚えがあった。

 このまま知らないふりをして通り過ぎようかと思った。



「あ! カフカ君!」



 しかし呼び止められてしまっては、無視をするわけにもいかない。

 彼らはエドラン夫妻だった。



 ここら辺の地域の中でも有名で、捨てられたハムスターの保護を行っている。

 安全な隠れ家となる住まいをいくつも所有しており、身寄りのない仲間たちに提供しているのだ。




 二匹の背中には草を折り曲げてつくってある鞄があった。

 エドランさんとキャロライン夫人の上品な服には不釣り合いだったが、彼らの仕事には必要不可欠だった。

 私が知る限りでは、全ての隠れ家の場所が記載されている地図が入っている。

 エドラン夫妻を見かけるときは、大抵この鞄を背負っているのだ。



 そんな彼らは私が歩みを寄せているにも関わらず、口論を続けていた。



「甘いものなんてまた今度探せばいいだろう!」

「今嗅ぎたいのよ!」

「どうしたんですか?」



 私は息を吐きだしながらいった。



「見てちょうだい」



 待ってましたと言わんばかりに、夫人が指を差した。

 そこには、川面から突き出ている木の枝があった。

 数枚の葉っぱがついていて、霜が降りている。

 そして私はそんな枝に引っかかった、一枚のチョコレートを見つけた。



 板チョコだった。

 枝にもたれかかり、半分は川に浸かっている。



「家内があれを取るといって聞かないんだ。うるさくてたまらない。七面鳥だよまったく」

「キャルロットさん、チョコレートは体に毒ですよ」

「違うわ、見当違いよ。あたしはアロマとしてあのチョコを手に入れたいの。生きるには癒しが必要だわ」

「まぁ確かに」

「ダメだダメだ! 危険すぎる!」



 エドランさんは執拗に反対したが、夫人は耳を貸すこともなく、草むらの中から木の枝の棒を引っ張り出してきた。



「な、何をする気だ!」

「話し合っていても仕方がないわ! あたしは行動するのよ!」



 そういってえらく長いその棒を、竿を振り回す要領でチョコレートのある枝にひっかけた。


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