35 / 卯月アヤノ
保育園の頃、わたくしにお友達はできなかった。
理由は自分でも気づいていた。
この思ったことを全部言ってしまう、それでいてすべてにおいて態度が上からというこの性格のせいだろう。
そのかわりお友達はできないくせに、とりまきは増えた。きっとわたくしが、卯月家の長女だからなんだろうと思った。内心ではわたくしのことが大嫌いなはずなのに、頑張って傍にいてどうにかと必死で媚びをうる姿に、保育園児ながらにとてつもない嫌悪感と言うものを感じた。こんなことは、これから先いくらでも起こるだろうというのに。
兄にはいつも友達ができないのだと相談していた。その度に兄は「きっと、いつかアヤノのことを理解してくれる良い子が現れるよ。そのためにはアヤノも頑張らなくちゃ」といって励ましてくれた。まずはこの刺々しい性格や物言いをどうにかしたい。
6歳になって、鬼城生学院に入学した。
寮制、ということだったので同じ部屋の子と仲良くなるチャンスだ!とも思った反面で嫌われてしまったらどうしようという思いが渦巻くばかり。
期待よりも不安の方が大きく上回っていた。
紙が配られて自分と同じ部屋の子の名前をしっかりとみる。芦屋カナタ芦屋カナタ芦屋カナタ……心の中で復唱した。
目指せお友達!ということで入学する生徒の顔写真と名前をしっかりと覚えてきたわたくしに死角はないですわ……!そう意気込んで芦屋カナタさんを探す。
きょろきょろと辺りを見回すと長めの黒髪を無造作に伸ばしている女の子が視界に入る。その子は私の記憶の中の芦屋カナタさんと一致した。
「芦屋さんですこと?」
どぎまぎとしながらわかりきっていたことを聞く。
「わたくし卯月アヤノと申しますわ。同室というからには精々私に迷惑をかけないでちょうだいね!!」
ち、違う……!
こんなことを言いたかったわけではない……!!!
と、以上が長い前置き。
わたくし達の初の会話は私の一方的なものだったし、部屋に入ってからの会話も必死すぎていたせいで今一覚えていないのだけれど確か家族について話していたのだと思う。一方的にぐだぐだとわたくしだけが話しているのに、嫌悪感を見せずかといって媚びる様子もない彼女に好感が持てていたのは覚えているし「一緒にいかないの?」と聞いてくれたときにはもう喜ぶどころではなかった。そこから名前呼びという夢の世界まで発展したので兄の言ったことは嘘ではなかったのだ!と兄宛の手紙にその気持ちを十枚ぐらいでつづった。
ご丁寧に返答も十枚で返ってきた。
その時からわたくし達は一緒に行動することが多くなった。
カナタさんは全然私のことを頼ってくれることがないし、不安になるときもたくさんある。
けれど私はそんなカナタさんが、大好きなのだ。
まあカナタさんの周りにはいろんな虫がうろついているので、個人の独断と偏見で容赦なく排除させてもらいますけれど。カナタさんが全然頼ってくれなかった時のことを他の生徒に聞きましたけれど黄牙キース、貴方だけは許しませんことよ。




