表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第2の厄災完結】世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
97/119

モンスター大戦

第97話です。宜しくお願い致します。


 場面は、地下へ移る。

 落とし穴によって、悠真たちと分断された未来は、ひとり地下の広い空間にいた。

 そこにいたのは、人間ではない。

 紫色の巨大なカエルのようなモンスター。

 ポイズンフロッグ。

 そして、三メートルほどの巨体を持つ雪男のようなモンスター。

 アイスイエティー。

 ポイズンフロッグは約40体。

 アイスイエティーは約20体。

 数だけでも圧倒的だった。

 だが、未来はすぐに全力でぶつかろうとはしなかった。

 まずは敵を知る。

 どんな動きをするのか。

 どんな攻撃をしてくるのか。

 どの距離が危険なのか。

 どこに弱点があるのか。

 それを見極めるために、未来は最初にシャドウウルフを15体召喚していた。

 黒い影のような狼たちが、未来を守るように周囲へ散る。

 その動きは速い。

 低く、静かで、暗い地下の空間ではかなり見えづらい。

 だが、相手もただ鈍いだけのモンスターではなかった。


 ◇


「跳んだ……!」

 ポイズンフロッグの一体が、巨大な身体に似合わない跳躍を見せた。

 大きく後ろ足を縮めたかと思うと、次の瞬間には高く跳ねる。

 シャドウウルフの攻撃を避け、壁に張りつくように着地した。

 さらに別の個体が、長い舌を伸ばす。

 ぬめりを帯びた舌が、鞭のように空気を裂いた。

 シャドウウルフの一体が横へ跳ぶ。

 しかし、舌の先が脚をかすめた。

 そのまま巻き取られそうになる。

「離れて!」

 未来がすぐに指示を出す。

 別のシャドウウルフが飛びかかり、舌へ噛みついた。

 ポイズンフロッグが嫌がるように身体を震わせる。

 その隙に、捕まりかけたシャドウウルフが距離を取った。

 未来は息を呑む。

 ポイズンフロッグは、ただ毒を持つだけではない。

 跳躍力がある。

 意外と速度もある。

 舌による拘束もできる。


 さらに――。


 ポイズンフロッグの口が、大きく開いた。

 毒々しい液体が、勢いよく噴射される。

 シャドウウルフが横へ飛んだ瞬間、床に毒液が降りかかった。

 じゅう、と嫌な音がする。

 床の表面が、わずかに煙を上げた。

「毒液まで……」

 未来は眉をひそめた。

 近づきすぎれば舌で絡め取られる。

 距離を取れば毒液を飛ばされる。

 それでいて、跳躍で位置を変えてくる。

 Cランクとはいえ、40体もいればかなり厄介だった。


 ◇


 だが、本当に危険なのは奥にいるアイスイエティーだった。

 アイスイエティーの一体が、手に持つ大きな氷の斧を振り上げる。

 その斧は、普通の武器ではない。

 氷で作られているのに、岩のような重さを感じさせた。

 岩陰に回り込もうとしていたシャドウウルフへ向かって、アイスイエティーが斧を振り下ろす。

 シャドウウルフは直撃を避けた。

 しかし、斧はそのまま岩を叩き割った。

 砕けた岩が飛び散る。

「岩ごと……!」

 未来は思わず声を漏らした。

 パワーがある。

 それも、ただ巨体なだけではない。

 武器を使ってくる。

 さらに、別のアイスイエティーが手を前に出した。

 その手の周囲に、氷の礫がいくつも生まれる。

 次の瞬間、それらが矢のように飛んだ。

 シャドウウルフたちが散開する。

 何体かは避けきった。

 だが、氷の礫が床や壁に刺さり、破片が飛ぶ。

 その破片だけでも危険だった。

 さらに、アイスイエティーが大きく息を吸う。

 そして、口から吹雪を吐いた。

 白い冷気が、通路の一部を覆う。

 床が一瞬で凍りつく。

 近くにいたシャドウウルフが足を取られ、動きが鈍った。

「接近戦だけじゃない……」

 未来は小さく呟いた。

 氷の斧。

 氷の礫。

 吹雪による凍結。

 アイスイエティーは、パワーだけの敵ではない。

 近距離も中距離もこなす。

 さらに足止めまでできる。

 正面からシャドウウルフだけで押し切るのは危険だった。


 ◇


 未来は、深く息を吸った。

 怖くないわけではない。

 むしろ、怖い。

 地下に一人。

 周囲にはモンスターの群れ。

 上では悠真たちが戦っているかもしれない。

 助けを呼びたい。

 そう思う気持ちも、心の奥にはあった。

 けれど、未来は自分の手を強く握った。

 ここで止まっている場合ではない。

 このモンスターたちを突破しなければ、悠真たちの元へ戻れない。

「……ここからは、出し惜しみなしね」

 未来はシャドウウルフたちへ意識を向けた。

「みんな、一度戻って」

 シャドウウルフ15体が、光となって《動植物図鑑》へ戻っていく。

 さらに、上側との連絡や索敵のために出していたヤモリのうち、一体も戻した。

 同時に扱える数は35体。

 これから出すのは、今の未来が動かせる最大戦力だった。

「出てきて」

 未来の周囲に、複数の光が生まれる。

 まず現れたのは、ヴァンパイアバット。

 黒い翼を広げ、鋭い牙を覗かせるCランクモンスター。

 数は20体。

 次に現れたのは、ジャイアントオーガ。

 巨大な筋肉質の身体を持つBランクモンスター。

 数は10体。

 そして最後に、レッドワイバーン。

 赤い鱗を持つ翼竜型のBランクモンスター。

 数は5体。

 合計35体。

 未来が同時に召喚し、操作できる最大数だった。

「これで、私が同時に召喚できる最大数の35体……」

 ヴァンパイアバットが天井近くへ舞い上がる。

 ジャイアントオーガが未来の前へ並ぶ。

 レッドワイバーンが翼を広げ、低く唸る。

 未来はそれぞれの動きを確認した。

 《動植物愛護》の強化によって、召喚されたモンスターたちの身体能力は大きく引き上げられている。

 その力をどう使うか。

 それは、未来の指示にかかっていた。


 ◇


「まずはヴァンパイアバット」

 未来がポイズンフロッグの群れを指差す。

「ポイズンフロッグに酸の雨よ!」

 ヴァンパイアバット20体が、一斉に空中へ広がった。

 天井近くを旋回し、ポイズンフロッグたちの真上を取る。

 ポイズンフロッグたちは、すぐに反応した。

 何体かが跳び上がり、ヴァンパイアバットへ近づこうとする。

 だが、未来のヴァンパイアバットたちは速かった。

 身体能力が強化されている。

 同じCランク同士でも、動きの鋭さが違う。

 空中でひらりと避け、すぐに隊列を整える。

 そして、酸の雨が降った。

 広範囲に、無数の酸の滴が落ちていく。

 ポイズンフロッグたちは一斉に跳ねた。

 逃げようとする。

 壁へ跳ぶ。

 床を滑るように移動する。

 だが、範囲が広い。

 酸の雨は、逃げる先まで降り注いだ。

 紫色の皮膚に酸が当たる。

 じゅう、と音が鳴る。

 ポイズンフロッグの身体の一部が溶け、苦しそうに鳴いた。

 それでも、ポイズンフロッグも黙ってはいない。

 口を大きく開き、上空のヴァンパイアバットへ毒液を噴射する。

 何本もの毒液が、槍のように空へ伸びた。

 しかし、ヴァンパイアバットたちは翼を翻し、華麗に避ける。

 毒液の軌道を読み、互いにぶつからないように散開する。

 未来はその動きを見ながら、さらに細かく指示を出した。

「左の群れ、少し高度を上げて」

「右側はそのまま回り込んで」

「毒液を吐いた直後を狙って噛みついて!」

 ヴァンパイアバットの一部が急降下する。

 毒液を吐いた直後のポイズンフロッグへ、鋭い牙を突き立てた。

 ポイズンフロッグが暴れる。

 だが、ヴァンパイアバットはすぐに離脱する。

 そして、別のヴァンパイアバットが再び酸の雨を降らせる。

 攻撃。

 離脱。

 酸の雨。

 噛みつき。

 その繰り返しで、ポイズンフロッグたちは次々に体力を削られていった。

 ヴァンパイアバット自身は、自分たちの酸で傷つかない。

 酸への耐性があるからだ。

 だからこそ、酸の雨の中でも平然と飛び込み、噛みつくことができる。

 ポイズンフロッグにとっては、逃げ場のない空中からの猛攻だった。

 最後の一体が、毒液を吐こうとした瞬間。

 ヴァンパイアバットが三体同時に飛びかかる。

 牙が突き立ち、酸の雨が追い打ちをかける。

 ポイズンフロッグの巨体が、床に沈んだ。

 40体いたポイズンフロッグは、全滅した。

「よし、ナイスよ!」

 未来は思わず声を上げた。

「良い子ね! ヴァンパイアバットちゃん達〜!」

 ヴァンパイアバットたちが、嬉しそうに未来の周囲を飛ぶ。

 その姿だけ見れば、まるで褒められたペットのようだった。


 ◇


 だが、戦いは終わっていない。

 隣では、ジャイアントオーガとアイスイエティーが激突していた。

 アイスイエティーが、氷の斧を振り下ろす。

 それをジャイアントオーガが拳で受けた。

 氷の斧が砕ける。

 硬質な音を立てて、氷片が床へ散った。

 強化されたジャイアントオーガの拳は、武器を砕くほどの威力を持っていた。

 そのまま踏み込み、アイスイエティーの胴体へ拳を叩き込む。

 一発。

 二発。

 三発。

 重い打撃が、アイスイエティーの巨体を揺らす。

 だが、アイスイエティーも倒れない。

 別の個体が、口から吹雪を吐いた。

 白い冷気が、ジャイアントオーガたちの足元を覆う。

 床が凍る。

 ジャイアントオーガの足が氷に取られ、動きが止まった。

 そこへ、アイスイエティーが新たな氷の斧を作り出す。

 右手に斧。

 左手には氷の礫。

 氷の礫が、動けないジャイアントオーガへ向かって放たれた。

 礫はジャイアントオーガの硬い皮膚に当たり、砕け散る。

 大きな傷にはならない。

 だが、足元を凍らされたままでは危険だった。

「今よ! レッドワイバーン!」

 未来が叫ぶ。

「氷を溶かすのよ!」

 レッドワイバーンたちが、翼を広げて前へ出る。

 赤い喉が膨らみ、炎が生まれる。

 ただし、狙いはアイスイエティーではない。

 ジャイアントオーガの足元。

 凍りついた床。

 レッドワイバーンたちは、ジャイアントオーガ本体に当てないように、絶妙な角度で炎を吐いた。

 氷が溶ける。

 白い蒸気が上がる。

 足を取られていたジャイアントオーガたちが、再び動き出した。

 未来はすぐに次の指示を出す。

「オーガたちは前へ!」

「ワイバーンは吹雪を吐く個体を牽制!」

「バットたちは上から視界を乱して!」

 35体のモンスターが、未来の声に応じて動く。

 ヴァンパイアバットが上空からアイスイエティーの顔周りを飛び回る。

 レッドワイバーンが炎で吹雪の軌道を乱す。

 ジャイアントオーガが正面から突っ込む。

 アイスイエティーが氷の斧を振るう。

 だが、ジャイアントオーガはそれを拳で砕き、さらに懐へ入る。

 拳の連打。

 巨体と巨体のぶつかり合い。

 地下空間に、重い打撃音が響き続ける。

 一体のアイスイエティーが倒れる。

 また一体。

 さらに一体。

 吹雪で足を止めようとしても、レッドワイバーンが氷を溶かす。

 氷の礫を飛ばしても、ジャイアントオーガの硬い皮膚が弾く。

 距離を取ろうとしても、ヴァンパイアバットが視界を乱す。

 未来の指示は、徐々に正確になっていった。

 最初は怖かった。

 35体を同時に動かす感覚に、頭が追いつかない瞬間もあった。

 だが、モンスターたちは未来の指示を待ってくれている。

 未来の声に応えてくれている。

 だから、未来も応えなければならない。

「もう少し……!」

 最後のアイスイエティーが、大きく吠えた。

 氷の斧を両手に持ち、ジャイアントオーガへ振り下ろそうとする。

「ワイバーン!」

 未来の指示で、レッドワイバーンが横から炎を吐く。

 氷の斧の一部が溶け、形が崩れる。

 その隙に、ジャイアントオーガが踏み込んだ。

 拳が、アイスイエティーの胴体を打ち抜く。

 巨体が大きく後ろへ倒れた。

 床が揺れる。

 それが、最後だった。

 アイスイエティー20体も、すべて倒された。


 ◇


「はぁ……」

 未来は息を吐いた。

 安心した瞬間、足から力が抜けた。

 そのまま、ぺたんと床に座り込む。

「流石に怖かったし、疲れたわね……」

 声が少し震えていた。

 無理もない。

 一人で、Cランク40体とBランク20体を相手にしたのだ。

 召喚したモンスターたちが強かったとはいえ、指揮していたのは未来自身だった。

「35体を指揮することは初めてだったからなぁ……」

 未来は苦笑する。

 その周囲に、モンスターたちが集まってきた。

 ヴァンパイアバットが心配そうに低く飛ぶ。

 ジャイアントオーガが膝をつくように身体を低くする。

 レッドワイバーンが、未来の近くで翼を畳む。

 怖い見た目のモンスターたち。

 だが、未来を見る目はどこか優しかった。

 未来はそれを見て、少しだけ笑った。

「ごめんね、私は大丈夫よ」

 そして、一体一体を見るように続ける。

「ありがとうね! みんな!」

 モンスターたちは、頷くような仕草を見せた。

 未来はゆっくり立ち上がる。

 まだ終わっていない。

 上では、きっと悠真たちが戦っている。

 桜井。

 SPМの隊長たち。

 操られた人たち。

 未来がここで休んでいる間にも、戦況は動いているはずだった。

「それに、まだ戦いは終わってないわ……」

 未来は、モンスターたちへ向けて言った。

「恐らく、もう上では戦場状態だから、みんなもう少し力を貸してね!」

 モンスターたちは、再び頷くような仕草をする。

 未来は一度、彼らを《動植物図鑑》へ戻した。

 この先には、巨大なモンスターたちでは通れない細い道がある。

 あの道を進むには、未来自身が歩くしかない。

 地下の広い空間は静かになった。

 先ほどまでの戦闘音が嘘のように消えている。

 だが、未来の胸の中には、まだ緊張が残っていた。

「さぁ、早くここから出て加勢に行かなくちゃ……」

 未来は細い道の方へ歩き出す。

 まだ、上で何が起きているのか分からない。

 けれど、悠真たちが戦っていることだけは分かる。

 だったら、私も止まっていられない。

「悠真、大丈夫だよね……?」

 そう呟きながら、未来はモンスターたちでは通れなかった細い道へ足を踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ