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【第2の厄災完結】世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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95/120

火縄銃と火炎瓶

第95話です。宜しくお願い致します。


 セイコと凛堂の戦いが、会議室の中央でさらに熱を帯びていく。

 砕けた天井から差し込む日の光。

 その下で、凛堂はまるで獣のように笑っていた。

 世良の《美魔女》による強化。

 そして、再び浴び始めた日光。

 ただでさえ厄介だった凛堂の圧が、さらに増している。

 セイコは二本のステッキを構えたまま、まったく怯んでいない。

 だが、あの凛堂を相手に、どれだけ押し返せるかは分からない。

 俺はその戦いから目を離したくなかった。

 だが、会議室で動いているのは、凛堂とセイコだけではない。


 ◇


 別方向では、アルとソックスが強襲隊の隊員たちを相手にしていた。

「ヒャッハァァァ!! ほらほら、足元注意でありますよぉ!!」

 アルが機関銃を乱射する。

 乱射。

 そう言いたくなるくらい派手な撃ち方だ。

 だが、実際には無茶苦茶ではない。

 隊員の足元。

 武器を構えようとする腕の近く。

 前に出るために踏み込んだ足。

 殺さないように。

 それでも動きを止めるように。

 派手な銃声とは裏腹に、狙いはかなり細かい。

 一方、ソックスは相変わらず静かだった。

 机の陰に身を隠しながら、必要な時だけ銃口を出す。

 一発。

 隊員の武器を撃ち落とす。

 また一発。

 別の隊員の足元を撃ち抜き、前進を止める。

 無駄弾がない。

 アルが場を荒らし、ソックスが確実に潰す。

 その連携によって、強襲隊の一般隊員たちはなかなか前へ進めずにいた。

「くそっ!」

「何なんだ、あいつら!」

「近づけねぇ!」

 隊員たちが苛立ちの声を上げる。

 当然だ。

 前に出ればアルに足元を撃たれる。

 武器を構えればソックスに撃ち落とされる。

 しかも、倒れた者から順番に阿川の配管で中央会館へ送られていく。

 戦場から味方が消えていく。

 敵にとっては、かなり嫌な状況のはずだ。


 ◇


 だが、その状況を見て、強襲隊の後方にいた男が動いた。

 柿原紅蓮。

 強襲隊副隊長。

 以前、スケルトンキング戦で共闘した男。

 火縄銃と火炎瓶。

 そして《聖火》というスキルを使う、火の扱いに長けた超人族。

 柿原は、隊員たちの情けない姿を見て、苛立ったように肩を回した。

「やっぱり、お前達じゃあいつらには勝てないよなぁ!!」

 その声は大きく、会議室に響いた。

「俺がやってやるぜ!」

 柿原が前に出る。

 それを見たアルが、ぱっと顔を輝かせた。

「オオー! 何か強そうな人来たーー!」

 緊張感がない。

 本当にない。

 ソックスは銃を構えたまま、冷静に答える。

「前、共闘したことがある強襲隊の柿原紅蓮副隊長だ」

「そうだっけ……?」

 アルが首を傾げる。

 俺は思わず額を押さえたくなった。

 確かに、あの時は凛堂や門脇の印象も強かった。

 だが、柿原も一緒に戦っていた。

 それを忘れているのは、さすがに相手に失礼だ。

 案の定、柿原の顔が引きつった。

「舐めてやがるな……」

 柿原が火縄銃を構える。

 その目に、明確な怒りが宿った。

「じゃあ、今度は忘れることができないようにしてやるよ!」

 俺は息を呑む。

 来る。

 柿原のスキルは、普通の火ではない。

 火を付けた道具や武器に、無限に火を灯し続ける。

 火縄銃。

 火炎瓶。

 単純だが、戦場ではかなり厄介な能力だ。

 特に、閉鎖された会議室では危険度が跳ね上がる。


 ◇


「スキル、聖火!」

 柿原の火縄銃に、火が灯る。

 普通の火縄銃なら、撃つまでに時間がかかる。

 連射などできない。

 だが、柿原の持つそれは違った。

 火花が弾ける。

 次の瞬間、火縄銃から弾丸が放たれた。

 しかも、一発ではない。

 連続で。

「うおっ!? 火縄銃ってそんな連射できるものなの!?」

 アルが慌てて机の陰へ飛び込む。

 ソックスもすぐに別の遮蔽物へ身を隠した。

「普通はできない。あれはスキルだ」

「ですよねー! 俺も火縄銃ってもっとこう、じっくり撃つ武器だと思ってた!」

 アルが叫ぶ。

 銃弾が机の角を削った。

 木片が飛び散る。

 柿原は笑いながら火縄銃を構え直す。

「隠れてばっかじゃ勝てねぇぞ!」

「いやいや、撃たれたら痛いので隠れるのは大事であります!」

 アルは軽口を叩くが、表情はいつもより少し真剣だった。

 柿原の弾は速い。

 そして、普通の射撃とは違う。

 弾そのものだけでなく、火の勢いが乗っている。

 当たれば、ただの傷では済まない。

 ソックスが机の陰から一瞬だけ顔を出し、撃つ。

 一発。

 柿原の手元を狙った射撃。

 だが、柿原は身体を捻って避けた。

「おっと」

「……速いな」

 ソックスが小さく呟く。

 柿原は火縄銃を片手で構えたまま、もう片方の手で何かを取り出した。

 火炎瓶。

 瓶の先には、すでに火がついている。

「隠れるなら、上から燃やせばいいだけだろ!」

 柿原が火炎瓶を投げた。

 放物線を描き、アルとソックスが隠れている机の上へ落ちてくる。

「うわっ、何か来た!」

「撃ち落とすぞ」

「了解であります!」

 アルとソックスが同時に銃口を向ける。

 空中の火炎瓶へ射撃。

 弾丸が瓶に当たる。

 パァンッ!!

 火炎瓶が空中で割れ、炎が飛び散った。

 床や机の一部に火が移る。

 すぐに大きく燃え広がるわけではない。

 だが、油断すれば危ない。

 火が広がりすぎれば会議室全体が危険になる。

 柿原はそれも狙っているのかもしれない。

 火を使えば、こちらの動ける範囲が狭まる。

 逃げ道も塞げる。

 視界も悪くなる。

 単純な攻撃役ではない。

 戦場を作るタイプの敵だ。

 ソックスが、火の広がりを見て舌打ちした。

「アル、火炎瓶を先に落とす」

「アイアイサー!」


 ◇


 再び柿原が火炎瓶を投げる。

 今度は二本。

 アルとソックスがそれぞれ撃ち落とす。

 空中で炎が弾ける。

 その瞬間だった。

 柿原が笑った。

「そっちに意識向けすぎだ」

 柿原の火縄銃が、アルへ向けられていた。

 アルも気づいた。

 だが、一瞬遅い。

「アル!」

 ソックスが叫ぶ。

 銃声。

 火を纏った弾丸が、アルの足を掠めるように撃ち抜いた。

「ぐっ……!」

 アルの身体が崩れる。

 膝をつく。

 完全に直撃ではない。

 それでも足に傷が入った。

 血が滲む。

 アルはすぐに銃を構え直そうとしたが、足に力が入りきっていない。

 柿原は火縄銃を肩に担いで笑った。

「へぇ、今のを完全に食らわねぇのか」

「けど、足には当たったよなぁ?」

 その瞬間、ソックスが動いた。

 隠れていた場所から飛び出し、アルの腕を掴む。

「下がるぞ」

「え、いや、まだ撃てる!」

「動きが鈍ってる。ここにいたら次で抜かれる」

「それは困る!」

 ソックスはアルを半ば抱えるようにして、別の机の陰へ移動した。

 柿原の弾が、さっきまでアルがいた場所を撃ち抜く。

 床に火花が散った。

 危なかった。

 ソックスの判断が一瞬でも遅れていれば、次は足では済まなかったかもしれない。

 俺は思わず拳を握る。

「アル!」

 声をかけたくなる。

 だが、今の俺が不用意に動けば、桜井の思うつぼになる。

 それに、アルとソックスはまだ戦える。

 信じるしかない。


 ◇


 机の陰で、ソックスがアルの足を見る。

「アル、大丈夫か?」

「これくらい、なんてことない……!」

 アルはそう言って笑おうとした。

 だが、いつものような勢いは少し薄い。

 足の傷は浅くない。

 動ける。

 だが、機動力は落ちる。

 柿原はそれを分かっている。

 真正面から倒しにきたのではない。

 まず動きを奪いにきた。

 射撃戦で足を潰されるのは、かなり厄介だ。

 ソックスはアルを見て、小さく息を吐く。

「無理はするな」

「むしろ、俺は無理してからが本番みたいなところ!」

「その考え方をまず直せ」

「えー」

 こんな時でも二人のやり取りはいつも通りだった。

 だが、ソックスの目は笑っていない。

 柿原の火縄銃。

 火炎瓶。

 そして、こちらの意識を散らした上で狙撃する判断力。

 強い。

 アルとソックスの凸凹コンビでも、油断すれば一気に崩される。

 俺は戦況を確認する。

 セイコは凛堂と対峙している。

 凛堂は世良の支援と日光でさらに強化されている。

 アルは足を負傷。

 ソックスはそのフォローに回っている。

 色谷とチャン爺は、まだ一般隊員を抑えている。

 阿川は倒れた隊員たちを配管で中央会館へ送り続けている。

 陸斗は全体を守れる位置にいる。

 だが、相手の隊長格はまだ全員が本格的に動いたわけではない。

 門脇。

 影山駿。

 影山潤。

 まだ、厄介な相手が残っている。

 そして桜井は、相変わらず動いていない。

 ただ、見ている。

 それが一番不気味だった。


 ◇


 柿原が、隠れているアルとソックスの方へゆっくり歩き出す。

 火縄銃を肩に担ぎ、余裕の笑みを浮かべている。

「あれを避けたのはやるな……」

 柿原の声が響く。

「ただ、足には当たっただろ?」

 火縄銃の銃口が、再びアルたちのいる遮蔽物へ向けられる。

「さぁ、どうやって反撃しにくるかな?」

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