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【第2の厄災完結】世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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92/119

超人族絶対至上主義

第92話です。宜しくお願い致します。


 罠だった。

 その事実を理解した瞬間、会議室の空気が一気に重くなった。

 目の前には桜井晴彦。

 その左右には、凛堂、柿原、門脇、影山駿、影山潤、世良。

 さらに、その背後には大勢のSPМ隊員たち。

 俺たちは完全に囲まれていた。

 未来は別の場所に落とされたまま。

 こちらにいるのは、俺、陸斗、チャン爺、阿川、色谷、犬飼。

 人数だけで見れば、圧倒的に不利。

 しかも相手はただの隊員ではない。

 SPМの隊長、副隊長クラスが揃っている。

 真正面からぶつかれば、ただでは済まない。

 それでも、俺は目の前の男から視線を外さなかった。

 桜井晴彦。

 穏やかな笑みを浮かべている。

 怒っているわけでもない。

 焦っているわけでもない。

 勝ち誇っているようにも見えるが、それすら露骨ではなかった。

 まるで、予定通りに来客を迎えただけ。

 そんな顔だった。


 ◇


「悠真君」

 桜井が口を開いた。

 声は柔らかい。

 耳に入るだけなら、むしろ丁寧で落ち着いた声だ。

 だが、その声を聞いた瞬間、背筋の奥が冷える。

「単刀直入に言おう」

 桜井は俺を見ていた。

 真っ直ぐに。

 だが、その視線には熱がない。

「君は本当に素晴らしいスキルを持っている」

「……」

 俺は答えなかった。

 口を開かない。

 頷きもしない。

 否定もしない。

 ただ、桜井を見据える。

 桜井のスキルは不明だ。

 犬飼も知らない。

 使ったところを誰も見たことがない。

 普段何の任務をしているのかすら分からない。

 それなのに、SPМの特殊隊隊長という立場にいる。

 その異常さに、誰も疑問を持たなかった。

 そういう男だ。

 迂闊に返事をするわけにはいかない。

 返事が条件かもしれない。

 問いかけに答えること。

 目を合わせること。

 名前を呼ばれること。

 一定時間会話を成立させること。

 否定でも肯定でも、とにかく反応すること。

 どれが条件でもおかしくない。

 だから、今は黙る。

 怒りを飲み込んで、黙る。

 桜井は俺の沈黙を気にした様子もなく、ゆっくりと言葉を続けた。


「だからこそ、私と一緒にこの関東を――」


 そこで、わずかに間を置く。

「いや、東京を私たちで作り直さないか?」

 東京。

 その言葉に、胸の奥がわずかに反応する。

 俺たちが必死に守り、作ってきた場所。

 崩壊した世界の中で、少しずつ日常を取り戻そうとしている場所。

 そこを、桜井は「作り直す」と言った。

 俺と共に。

 いや、俺のスキルを使って。


 ◇


「私はずっと思っていたんだ」

 桜井は穏やかに語る。

 まるで、昔から抱えていた夢を話すように。

「理不尽な社会格差」

「有能な者が上に立つことなく、いつだって下で泥水をすするだけ」

 その声には、ほんの少しだけ熱が混じった。

「努力しない者が守られ、才能ある者が使い潰される」

「正しい能力を持つ者が、くだらない制度や感情論で押し潰される」

「私は、そんな世界がずっと嫌いだった」

 SPМ隊員たちは動かない。

 隊長たちも動かない。

 ただ、桜井の声だけが会議室に響く。

「そんな時、願ってもないことが起こった」

 桜井の口元が、少しだけ歪んだ。

「ゲートが開き、クソみたいな世界は崩壊した」

 その言葉に、俺の中で何かが軋んだ。

 世界が崩壊した。

 人が死んだ。

 家族を失った者がいる。

 住む場所を失った者がいる。

 美咲のような子供が泣き、陸斗のような子供が妹を守るために必死になった。

 涼香は呪いに苦しみ、翔太と恭太は姉を助けるために間違ったことまでした。

 コン太は別の世界から流れ着き、裏切られた傷を抱えていた。

 多くの人が傷ついた。

 多くの人が死んだ。

 その出来事を、桜井は「願ってもないこと」と言った。

 怒りで喉が熱くなる。

 だが、俺はまだ答えない。

 桜井は続けた。

「そして、選ばれし超人族と旧人類」

「世界は分けられた」

「力を持つ者と、持たざる者」

「支配する者と、支配される者」

 桜井は両手を軽く広げる。

「優秀な者が道具を扱う世の中を作ることができるチャンスだと、私は思った」

 犬飼が隣で歯を食いしばる音が聞こえた。

 おそらく、今すぐ飛びかかりたいのだろう。

 でも、犬飼は動かない。

 必死に耐えている。

 俺も同じだった。

 桜井の言葉は、聞いているだけで気分が悪くなる。

 旧人類。

 道具。

 支配。

 こいつは本気でそう思っている。

 人間を、人間として見ていない。


 ◇


「君のスキルは、超人族絶対至上主義の世の中に変えるためには必要なスキルだよ」

 桜井の視線が、さらに俺へ向いた。

「テリトリーを作り、環境を整え、物資を生み、住民を管理し、警備を置き、都市を動かす」

「君の力があれば、東京は完成する」

「いや、東京だけじゃない」

「関東全域を、新しい秩序で満たすことができる」

 桜井は微笑んだ。

「私と共に行こう」

「……」

 俺は何も答えなかった。

 会議室の中が、静まり返る。

 桜井の言葉が終わっても、俺は口を開かない。

 怒りはある。

 吐き捨てたい言葉もある。

 ふざけるな、と言いたい。

 東京をお前の支配の道具にするな、と言いたい。

 だが、それを口に出すことが危険かもしれない。

 桜井のスキル条件が分からない以上、感情で反応してはいけない。

 俺はただ、桜井を睨み続けた。

 桜井はしばらく俺を見ていた。

 そして、少しだけ肩をすくめる。

「私のスキルを警戒して、何も答えないのかな?」

 その一言に、場の空気がさらに張り詰めた。

 こいつは分かっている。

 俺が何を警戒しているのか。

 そして、それを口に出す余裕がある。

 つまり、警戒されること自体も想定内。

 あるいは、警戒させることすら利用している。

「それなら安心していい」

 桜井は穏やかな声で言った。

「そんな簡単に発動しない……」

 少し間を置く。

「まぁ、言っても信じてもらえないかな……」

 当たり前だ。

 信じるわけがない。

 そもそも、その言葉自体が誘導かもしれない。

 簡単に発動しない。

 それが本当なら、条件は複雑なのかもしれない。

 逆に嘘なら、今この瞬間にも何かが進んでいる可能性がある。

 何を信じるべきか分からない。

 だから、桜井と会話を成立させるべきではない。

 俺は視線だけで、陸斗たちへ意識を向ける。

 全員、緊張していた。

 陸斗は俺のすぐ近くで、いつでもバリアを出せるように手を構えている。

 チャン爺は静かに仕込み杖を握っている。

 阿川は背後と周囲の位置を確認していた。

 色谷は足元に意識を向け、いつでも《ボウリング場》を発動できる状態。

 犬飼は、桜井を睨みつけている。

 怒りを堪えている顔だった。 


 ◇


 桜井が小さく息を吐いた。

「残念だ」

 まったく残念そうではない声で、そう言う。

「では、力尽くで君をこちらにつかせるとしようか」

 桜井はゆっくりと周囲を見渡した。

 隊長たち。

 副隊長たち。

 SPМ隊員たち。

 その全員へ向けて、優しく問いかける。

「君たち」

「私のために戦ってくれるかな?」

 瞬間。

 会議室の空気が変わった。

「はい、桜井総督府様」

 声が重なった。

 隊員たちが一斉に返事をする。

 凛堂も。

 柿原も。

 門脇も。

 影山たちも。

 世良も。

 全員が、当然のように桜井へ従う。

 犬飼の顔が歪んだ。

 特に、門脇の声を聞いた瞬間、犬飼の拳が震えたのが分かった。

 俺も胸の奥が冷たくなる。

 門脇。

 あの人が、こんな声で桜井に従っている。

 以前、東京の復興を見て涙を流した男が。

 今は桜井の命令に迷いなく従っている。

 許せない。

 だが、ここで感情に任せて動けば、桜井の思うつぼだ。

「みんな、構えろよ!」

 俺はようやく声を出した。

 ただし、桜井へではなく仲間へ向けて。

「桜井はああ言っているが、絶対に桜井の問いかけには答えるな!」

 陸斗が頷く。

「分かりました、悠真さん」

 チャン爺も静かに頭を下げる。

「承知いたしました」

 阿川が短く答える。

「了解だ」

 色谷も表情を引き締める。

「あぁ」

 犬飼は何も言わず、桜井を睨んだまま頷いた。


 ◇


 その時、凛堂が一歩前へ出た。

 強襲隊隊長、凛堂明日香。

 以前、スケルトンキングとの戦いで共闘した女。

 拳を鳴らし、獰猛に笑う。

「悠真!」

 その呼び方は、以前と変わらない。

「あの時の戦いの続きをしようじゃねぇか……」

「……操られてても、お前の性格は変わらないんだな……」

 思わず呟いた。

 凛堂の口調。

 態度。

 戦いを楽しむような笑み。

 そこには、以前と同じ凛堂らしさがある。

 人が完全に別人になったわけではない。

 それに気づいた瞬間、頭の中で一つの推測が浮かぶ。

 桜井のスキルは、人格そのものを塗り替える力ではないのかもしれない。

 あくまで、命じられたことに従わせる。

 命令に逆らえなくする。

 あるいは、桜井への忠誠心だけを上書きする。

 だから、凛堂の性格は残っている。

 門脇の人格も、どこかに残っている可能性がある。

 なら、助ける余地はある。

 だが、同時に厄介でもある。

 人格が残っているなら、戦い方も本人のまま。

 凛堂は凛堂のまま強い。

 柿原は柿原のまま火を使う。

 門脇は門脇のまま戦術を使う。

 操られているから弱くなる、なんて都合のいい話ではない。

(まだ、条件は分からない)

 俺は奥歯を噛む。

(慎重に動くしかない) 


 ◇


 俺は片手を前に出した。

 ここで出し惜しみはしない。

 相手はSPМの隊長格と、大勢の隊員。

 こちらの人数は少ない。

 なら、使える手札は最初から使う。

「派遣」

 俺のスキルが発動する。

 空間が揺れた。

 光が三つ、生まれる。

 その中から、見慣れた三人が姿を現した。

 一人目は、銃を担いだ男。

 妙にテンションが高く、登場した瞬間に片手を上げた。


「呼ばれて飛び出て――アルであります!!」


 二人目は、無表情に近い顔で周囲を見回す男。

 落ち着いた声で、小さく呟く。

「……はい、呼ばれました」

 三人目は、縦ロールを揺らしながらステッキを持つ女。

 胸を張り、堂々と微笑む。

「わたくしの出番ですのね!」

 アル。

 ソックス。

 セイコ。

 クセの強すぎる三人。

 だが、今はこれ以上なく頼もしい。

 俺は三人へ短く告げる。

「相手を殺すなよ……」

 アルが勢いよく敬礼した。

「アイアイサー!」

 ソックスは静かに頷く。

「はい……」

 セイコは優雅にステッキを掲げた。

「お任せあれ!」

 返事だけ聞けば、不安と安心が半々だった。

 特にアルとセイコは、殺さない加減が本当にできるのか少し不安になる。

 だが、今は信じるしかない。

 会議室の奥で、SPМ強襲隊の隊員たちが動き出した。

 武器を構え、俺たちへ向かって一斉に走り出す。

 その動きは速い。

 統制も取れている。

 だが、その先頭へアルが躍り出た。

「ヒャッハァァァ!!」

 叫び声と共に、機関銃を構える。

 そして、会議室に銃声が響いた。

世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件が100万PV突破致しました!!

皆様のお陰でこの作品を書くモチベーションが保たれています。改めて感謝申し上げます。

そして、これからもこの作品を宜しくお願い致します!

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