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【第2の厄災完結】世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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76/118

化けぎつねと外出許可

第76話です。少し長めですが宜しくお願いします。


 午後三時。

 中央会館の中は、いつもより少しだけ穏やかな空気に包まれていた。

 午前中にいくつか会議を終え、鉄道関係の報告や各区画の状況確認も一段落した時間帯。

 人が多く集まる中央会館でも、この時間だけは少し静かになる。

 そんな中、チャン爺は厨房に立っていた。

 普段通り、背筋を伸ばし、無駄のない動きで作業を進めている。

 だが、今日の作業は食事の準備ではない。

 焼き上がったばかりのクッキーを、丁寧に皿へ並べていた。

 丸いもの。

 星形のもの。

 小さな葉っぱの形をしたもの。

 ほんのり甘い香りが、厨房の中に広がっている。

「……これならば、コン太様にもお気に召していただけるでしょう」

 チャン爺は静かにそう呟いた。

 コン太がこの東京に来てから、しばらく経った。


 最初こそ、異世界――いや、平行世界から来たフォック族という存在に対して、俺たちは慎重になっていた。


 当然だ。

 ゲートの向こうから突然現れた、こちらの世界にはいない種族。

 しかも、翡翠球という別世界の情報を持っている。

 警戒しない方がおかしい。

 だが、真実の口で嘘をついていないことも確認した。

 そして何より、コン太本人があまりにも素直すぎた。

 チャン爺の料理を食べて泣き、美咲や三葉に撫でられて慌て、芹沢に可愛がられて逃げ、浮田にツッコまれて首を傾げる。

 そんな日々の中で、コン太は少しずつ俺たちの生活に馴染んでいた。

 もちろん、まだ外には出せない。

 住民に見られれば、騒ぎになる。

 モンスターと勘違いされる可能性だってある。

 噂が広まれば、SPМにも届くかもしれない。

 だから今のところ、コン太は中央会館内の決められた範囲で過ごしている。

 不自由だろう。

 外を見たいだろう。

 それは、チャン爺も感じていたらしい。

 コン太は普段明るい。

 よく食べるし、よく喋るし、分かりやすく喜ぶ。

 だが時折、窓の外をじっと見ていることがある。

 高層ビル。

 道路を走る車。

 駅へ向かう人々。

 翡翠球にはなかった景色。

 その全てが、コン太にとっては見たこともない異世界の光景なのだろう。

 だからこそ、余計に外へ出たいのだと思う。

 チャン爺はそれを分かっていた。

 分かっているからこそ、せめて室内にいる時間だけでも退屈しないようにと、こうしておやつを用意していたのだ。

 皿にクッキーを並べ、温かいミルクを添える。

 さらに小さなナプキンも整える。

 どこまでも完璧だ。

 そしてチャン爺はトレイを持ち、コン太の部屋へ向かった。


 ◇


 廊下を進む足音は静かだった。

 中央会館の一角。

 外からは見えにくく、それでいて過ごしやすい部屋。

 そこが今のコン太の部屋だ。

 チャン爺は扉の前で一度立ち止まり、軽くノックした。

「コン太様。おやつをお持ちいたしました」

 返事はない。

 いつもなら、すぐに「おやつだコン!?」という元気すぎる声が返ってくる。

 だが、今日は静かだった。

「……コン太様?」

 チャン爺はわずかに眉を動かした。

 そして、扉を開ける。

 その瞬間だった。


 部屋の中にいたのは――コン太ではなかった。


 そこにいたのは、一人の小さな少年だった。

 年齢は、見た目だけなら十歳前後。

 身長はコン太とほとんど変わらない。

 少しくせのある髪。

 大きな目。

 服装は、見慣れない雰囲気だった。

 子供服というより、素朴で古風な服装。

 その少年が、部屋の中央で立っていた。

 頭の上には、一枚の葉っぱが乗っている。

 チャン爺の目が細くなる。

 次の瞬間、彼の動きは変わった。

 トレイを静かに近くの机へ置く。

 音はほとんど立てない。

 そして、部屋全体を一瞬で確認する。

 ベッド。

 机。

 窓。

 カーテンの裏。

 クローゼット。

 床。

 天井。

 侵入の痕跡。

 コン太の気配。

 何かがおかしい。

 コン太の姿がない。

 そして、見知らぬ少年がいる。

 チャン爺は静かに仕込み杖へ手を添えた。

「……あなたは何者ですか」

 声は低い。

 いつもの柔らかな老執事の声ではない。

 戦闘時の声だ。

 少年がビクッと肩を跳ねさせる。

「コン太様を、どこへやりましたか」

 チャン爺は杖から剣を抜いた。

 銀色の刃が、静かに光る。

 決して荒々しくはない。

 だが、その動きには一切の隙がなかった。

 少年は慌てて両手を振った。

「剣はやめてコン!!」

「……」

「オイラがコン太だコン!!」

 その言葉で、チャン爺の動きが一瞬だけ止まった。

 だが、剣を下ろすことはない。

「……コン太様、でございますか」

「そうだコン! コン太はコン太だコン!」

「証拠を」

「証拠!?」


 少年――本人曰くコン太は、慌てたように目を泳がせた。


「えっと、えっと……チャン爺のご飯はすごく美味いコン!」

「それは多くの方がご存じです」

「昨日の晩ご飯は、オイラ三回おかわりしたコン!」

「それも、見ていた者はおります」

「えーっと……三葉に尻尾を触られて、くすぐったくて転がったコン!」

「それも、部屋の外まで声が響いておりました」

「じゃあ、じゃあ……!」

 少年は必死に考える。

 その様子は、かなりコン太っぽい。

 いや、ほぼコン太だ。

 声も、語尾も、慌て方も、全部コン太そのものだった。

 だが、チャン爺は慎重だった。

 当たり前だ。

 ここで油断するような人じゃない。

「オイラ、チャン爺が前に作ってくれた甘い卵焼きが好きだコン!」

「……」

「でも、最初はお菓子だと思って食べたらご飯のおかずだって言われてびっくりしたコン!」

「……確かに」

 チャン爺はわずかに目を細めた。

「それは、コン太様と私しか知らぬ会話でございますな」

「だから言ったコン! オイラがコン太だコン!」

 少年は半泣きになりながら訴える。

 チャン爺は、ようやく剣先を少しだけ下げた。

 ただし、完全には納刀しない。

「事情をお聞かせ願えますか」

「それが、オイラにもよく分からないコン……」

「……」

 チャン爺は数秒、少年を見つめた。

 そして、静かに言った。

「坊ちゃまをお呼びいたします」

「悠真を呼ぶコン?」

「はい」

「怒られるコン……?」

「事情によります」

「怖いコン……」

 そんなやり取りの後、チャン爺は俺に連絡を入れた。


 ◇


 コン太の部屋に知らない少年がいる。

 しかも、本人はコン太を名乗っている。

 その報告を受けた時、俺は思わず頭を押さえた。

「……またかよ」

 口から出たのは、それだった。

 最近、本当に説明しづらいことばかり起きる。

 ゲート。

 翡翠球。

 パラレルワールド。

 フォック族。

 真実の口。

 鉄道復活。

 そして今度は、コン太が人間の少年になったらしい。

 何だそれ。

 もう少しこう、段階というものがあってもいいんじゃないか。

 俺は急いでコン太の部屋へ向かった。

 廊下を歩きながら、嫌な可能性も考える。

 本当にコン太なのか。

 別の何かが侵入した可能性は?

 変身系のモンスターか?

 SPМ絡みか?

 いや、中央会館内に侵入できる時点でかなりまずい。

 最悪、戦闘になる可能性も考えていた。


 だが、部屋の扉を開けた瞬間――


「うまいコン……」

 少年が、普通にクッキーを食べていた。

 机の前に座り、チャン爺が持ってきたクッキーを両手で持って、ほくほくした顔でかじっている。

 緊急事態感は、ない。

 まるでない。

 チャン爺はその横に立ち、剣は納めているものの、まだ警戒は解いていない様子だった。

「……おい」

 俺は思わず低い声を出す。

 少年がこちらを見る。

 その目が、ぱっと輝いた。

「悠真!」

「……本当にコン太なのか?」

「コン太はコン太だコン!」

 少年は胸を張る。

 妙に説得力があるような、ないような。

「人間の姿でもクッキーは美味いコン」

「そこはどうでもいい」

「大事だコン」

「いや、今はそれどころじゃないだろ」

 俺は椅子を引いて、少年の前に座った。

 じっと見る。

 見た目は完全に人間の子供だ。

 耳も狐耳ではない。

 尻尾もない。

 手も普通の人間の手。

 そして口調はコン太。

 それが逆に不自然だった。

「何があった」


 俺が聞くと、少年――コン太はクッキーを皿に置いて、少しだけ真面目な顔になった。


「えっと……オイラ、窓の外を見てたコン」

「外?」

「そうだコン」

 コン太は窓の方を見る。

 そこからは、東京の一部が見える。

 高層ビル。

 整備された道路。

 走る車。

 遠くには、つい先日復活した線路の一部も見えた。

 コン太にとっては、見たこともない景色だ。

「ここから見える景色は、全部すごいコン」

「翡翠球には、あんな高い建物はないコン」

「車もないコン」

「電車も、道路にいっぱいの人も、全部初めてだコン」

 声が少しだけ小さくなる。

「最初は、見るだけでも楽しかったコン」

「でも……見てたら、だんだん外に行きたくなったコン」

 俺は何も言わずに聞いた。

「自分の足で歩いてみたいコン」

「道路を歩く人たちを近くで見たいコン」

「お店ってところにも行ってみたいコン」

「駅も、電車も、もっと近くで見たいコン」

 そこまで言って、コン太は頭を掻いた。

「でも、オイラはフォック族だから、外に出たら騒ぎになるコン」

「モンスターと間違えられるかもしれないコン」

「悠真たちにも迷惑がかかるコン」

「だから我慢しないといけないって分かってたコン」

 分かっていた。

 その言葉に、少しだけ胸が痛む。

 コン太は能天気に見える。

 よく食べるし、すぐ感動するし、警戒心も薄い。

 だが、何も考えていないわけじゃない。

 ちゃんと自分の立場を理解していた。

 それでも、外に出たいという気持ちは消えなかったのだろう。

「それで、ずっとウズウズしてたコン」

「外に出たいコン……って、強く思ってたコン」 


「そしたら――」


 コン太は頭の上の葉っぱを指さした。

「急に、頭の中に声が聞こえたコン」

「声?」

「そうだコン」

 コン太は少しだけ緊張したように言う。

「“あなたは時空を越えた来訪者の称号により、スキルを付与します”って聞こえたコン」

「……」

 俺は思わず黙った。

 時空を越えた来訪者。

 称号。

 スキルを付与。

 また新しい情報だ。

 コン太は続ける。

「そしたら、目の前にステータス画面が出たコン」

「ステータス……」

「あぁ」

 俺は少し身を乗り出す。

「見せられるか?」

「やってみるコン」

 コン太は小さく頷き、何かを意識するように目を閉じた。

 すると、俺の視界にもステータスのような表示が浮かび上がった。


【ステータス】

名前:コン太

年齢:15

種族:フォック族

称号:時空を越えた来訪者

Lv:1

《化けぎつね Lv1》

・自分が見たことのあるものを登録すれば、頭に葉っぱを乗せることで登録対象に変身できる。

・ただし、変化するのは見た目のみ。身体能力や能力は引き継がれない。

■植物召喚 Lv1

■変身登録 Lv1

■変身時間 Lv1

《植物召喚 Lv1》

・任意の植物を、自分の手元または地面に召喚できる。

・召喚数:10株

《変身登録 Lv1》

・自分が見たことのある物や生き物を登録し、変身できる。

・変身登録数:7

・変身可能な大きさ:現在の身長±0

《変身時間 Lv1》

・変身時間:3時間

・クールタイム:24時間


「……マジか」

 思わず声が漏れた。

 ステータスがある。

 スキルがある。

 だが、種族は超人族ではない。

 フォック族のままだ。

「超人族じゃないんだな……」

「コン?」

「いや、こっちの話だ」

 俺はステータスを見ながら考える。

 コン太は人間ではない。

 だから、地球の人間が変化した超人族とは違う。

 それでも、スキルを得た。 


 称号――時空を越えた来訪者。


 それによって、スキルを付与された。

(超人族として覚醒する以外にも、スキルを得る方法があるってことか……?)

 それとも、コン太が特別なのか。

 時空を越えてきた存在だからか。

 この世界のシステムが、コン太にも干渉したのか。

 分からない。

 だが、事実としてコン太はスキルを得た。

 そして、そのスキル名は《化けぎつね》。

 あまりにもコン太らしい。

「外に出たいと強く願ったら、変身できるスキルが付与された……」

 俺は呟く。

「そんな馬鹿な話……」

 そこまで言って、俺は口を止めた。

 いや。

 待て。

 これまでのことを思い返す。

 俺は最初、モンスターから逃れたいと思った。

 日常を返してほしいと、強く願った。

 だから、日常生活スキルが付与された。

 陸斗は、妹を守りたいという想いがあった。

 その結果、スキル《手遊び》が発現した。

 未来は、動植物への想いや危機的状況の中でスキル《動植物愛護》を得た。

 浮田は、俺たちを助けようとしていた。

 医者として、治療したいという強い想いを持っていた。

 だから手術室のスキルが発現した。

 ルドルフは、仲間に裏切られて死にかけた。

 二度と裏切られたくない。

 その想いが、真実の口になった。

 そしてコン太は、外に出たいと願った。

 フォック族の姿では出られない。

 だから、化けぎつね。

 葉っぱを頭に乗せて、人や物に化けるスキル。

(……偶然か?)

 いや、偶然にしては合いすぎている。

 俺たちのスキルは、その人間が強く求めたものに応える形で発現している。

 もちろん、必ずそうとは限らない。

 条件も分からない。

 強く願えば誰でも覚醒するのか。

 命の危機が必要なのか。

 精神的な限界が関係するのか。

 あるいは、世界そのものが何かを見て選んでいるのか。

 現時点では、何も確定できない。


 だが――


(スキル覚醒の条件は、“想い”にかなり関係している可能性がある)

 それは、かなり大きな気づきだった。

 俺はステータスを見ながら、もう一度考える。

「それにしても、便利だな」

「便利コン?」

「あぁ」

 見たことのあるものを登録して、頭に葉っぱを乗せれば変身できる。

 見た目だけとはいえ、かなり使える。

 人間にも化けられる。

 動物にも、物にも化けられる。

 変身登録数は七。

 変身時間は三時間。

 クールタイムは二十四時間。

 制限はある。

 だが、外へ出るための手段としては十分だ。

 しかも、植物召喚。

「どんな植物も召喚できるって、普通にすごくないか?」

「葉っぱを出すためかと思ったコン」

「それもあるだろうけど、使い方次第ではかなり応用できるぞ」

「そうなのかコン?」

「あぁ」

 今はレベル一で十株まで。

 それでも、植物の種類によってはかなり使える。

 薬草。

 食用植物。

 つる植物。

 目隠し用の草木。

 将来的には戦闘や支援にも使えるかもしれない。

 化けぎつねという可愛い名前に反して、意外と幅が広い。


 ◇


「それで」

 俺は、改めて少年姿のコン太を見る。

「その見た目は一体誰なんだ?」

「一度見たことがあるものしか変身できないんだろ?」

 コン太は、少しだけ表情を変えた。

 懐かしそうな、でも少し寂しそうな顔。

「これはヨウスケだコン」

「ヨウスケ?」

「向こうの世界で、よく遊んでいた人族の友達だコン」

 コン太は自分の手を見る。

 少年の手。

 でも、中身はコン太。

「ヨウスケは、オイラによく木の実をくれたコン」

「フォック族を怖がらない、優しい人族だったコン」

「一緒に川で遊んだり、森でかくれんぼしたりしたコン」

 その声には、さっきまでの明るさとは少し違うものがあった。

「そのヨウスケは……」

 俺が言いかけると、コン太は小さく首を横に振った。

「分からないコン」

「ゲートが開いてから、会えてないコン」

「……そうか」

「でも、ヨウスケならきっと逃げてるコン」

 コン太は少しだけ無理に笑った。

「足、速いコン」

 俺はそれ以上聞かなかった。

 今ここで深く踏み込むべきじゃない。

「それで、なぜヨウスケに変身したんだ?」

「オイラと同じくらいの身長だったからだコン」

 コン太は説明する。

「変身できる大きさは、今のオイラの身長と同じくらいだけらしいコン」

「ここで条件に合いそうなのは美咲くらいだったコン」

「でも、美咲に変身したら混乱するコン」

「だから、ここにいないヨウスケにしたコン!」

「……コン太の割には考えたんだな」

「コン太の割にはとは余計だコン!」

 コン太がぷくっと頬を膨らませる。

 姿が少年なので、その表情は普通の子供みたいに見える。

 だが語尾がコンなので、やっぱりコン太だ。

「でも、判断としては悪くない」

「そうだろうコン!」

「ただ、その語尾はどうにかならないのか」

「語尾?」

「人間の子供が語尾にコンって言ってたら目立つだろ」

「……!」

 コン太が衝撃を受けた顔をした。

「た、確かにだコン……!」

「ほら、もう言ってる」

「難しいコン……!」

「まあ、外に出るなら気をつけろ」

 その言葉に、コン太の目が一気に輝いた。

「悠真!」

「何だ」

「これで外に遊びに行ってもいいコン?」

 来た。

 当然そうなるとは思っていた。

 俺は腕を組み、少し考える。

 リスクはある。

 変身時間は三時間。

 クールタイムは二十四時間。

 見た目は人間でも、中身はコン太だ。

 語尾でバレる可能性もある。

 何かの拍子に変身が切れれば、大騒ぎになる。


 それでも――


 ずっと閉じ込めておくのも違う。

 外に出たい。

 その想いから発現したスキルなら、使わせてやりたい。

 もちろん、条件付きで。

「仕方ないな」

 コン太がぱっと顔を上げる。

「許可する」

「やったーだコン!!」

 少年の姿で飛び上がる。

 頭の葉っぱがぴょこんと揺れた。

「嬉しすぎるコン!!」

「ただし、条件がある」

「条件?」

「あぁ」

 俺は指を立てる。

「一つ。絶対に一人では行かせない」

「分かったコン!」

「二つ。変身が切れる前に必ず戻る」

「三時間だコンね!」

「そうだ」

「三つ。大きな騒ぎになるようなことはしない」

「しないコン!」

「四つ。語尾には気をつける」

「が、頑張るコン!」

「もうアウトだな」

「む、難しいんだコン!」

 俺はため息をついた。

 まあ、そこは同行者がいれば何とかなるだろう。

「チャン爺」

「はい、坊ちゃま」

「何かあった時のために、付いていってくれ」

 チャン爺は静かに一礼した。

「かしこまりました」

「コン太様の安全は、私が責任を持ってお守りいたします」

「頼む」

 チャン爺がいれば、護衛としては十分すぎる。

 礼儀や言葉遣いの面でも、ある程度フォローしてくれるだろう。

 だが、もう一人くらい欲しい。

 俺は少し考えてから言った。

「後は……浮田にも一緒に行ってもらうか」

「浮田も行くコン?」

「あぁ。何かあった時の医療対応もできるし、冷静に見てくれる」

「浮田はツッコミが鋭いコン」

「それも必要かもしれないな」

 コン太が嬉しそうに笑う。

「外、楽しみだコン!」

「浮かれすぎるなよ」

「分かってるコン!」

 絶対に分かっていない顔だった。

 まあ、初めての外出だ。

 浮かれるなという方が無理かもしれない。

 俺は立ち上がる。

「じゃあ、浮田を呼んでくる」

「悠真!」

「ん?」

 振り返ると、コン太は少しだけ真面目な顔をしていた。

「ありがとうだコン」

 その言葉は、いつものように軽いものではなかった。

 心からの言葉だった。

「……あぁ」

 俺は少しだけ笑う。

「せっかくスキルが生えたんだ。ちゃんと楽しんでこい」

「はいだコン!」

「だから語尾」

「……はい!」

「お、言えたな」

「やればできるコン!」

「戻ってるぞ」

 コン太は頭を抱えた。

「難しいコン!」

 その姿を見て、チャン爺が珍しくほんの少しだけ微笑んだ。


 ◇


 俺は部屋を出る。

 廊下を歩きながら、改めて考える。

 コン太が得たスキル。

 外に出たいという願い。

 そして、これまでの仲間たちの覚醒。

 スキルは、ただランダムに与えられるものではないのかもしれない。

 その人が、その瞬間に強く求めたもの。

 どうしても叶えたい願い。

 生きるために必要だったもの。

 それに応える形で、スキルは生まれる。

(もしそうなら……)

 俺は足を止めずに、静かに考える。

 この世界の仕組みが、少しだけ見えた気がした。

 もちろん、まだ分からない。

 確定なんてできない。

 だが、今後誰かが新たにスキルを得る時、その想いを見れば何か分かるかもしれない。

 そして、コン太のように人間以外の存在でも、条件次第でスキルを得る可能性がある。

 これは、かなり大きな発見だ。


 だが今は――


「浮田、いるか」

 俺は浮田のいる部屋の扉を開けながら声をかけた。

 まずは、コン太の初めての外出だ。

 大発見も、世界の謎も、SPМの不穏もある。

 それでも、今だけは。

 外に出たくて仕方なかった小さなフォック族に、少しだけ東京を見せてやる時間があってもいい。

 そう思った。

久し振りにステータス画面出しましたね。

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