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世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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東京への帰還

第71話です。少し少なめですが、宜しくお願い致します。


 東京の門の前まで戻ると、そこには見覚えのある男が立っていた。

 阿川だ。

 壁にもたれるように立ち、こちらに気づくと軽く片手を上げる。

「みんなお疲れ様」

 いつも通り、気だるそうな声。

 でも、その一言を聞いた瞬間、少しだけ安心した。

「無事で何よりだ」

「あぁ」

 俺はミニバンを止め、窓を開ける。

「色々助かったよ」

「俺は運んだだけだ」

「それが助かったんだよ」

 阿川は軽く肩をすくめる。

 こういう時、あまり大げさに受け取らないところが阿川らしい。

「それで……コン太のことは大丈夫か?」

 俺が聞くと、阿川は少しだけ微妙な顔をした。

「大丈夫かどうかは俺には分からん」

「……何だその言い方」

「ただ、皆とはすぐに打ち解けてたな」

「……そうか」

 俺は思わず苦笑する。

 良かった、でいいのかは分からない。

 そもそも、得体の知れない平行世界の住人を中央会館に連れて帰っている時点で、普通に考えればかなり危ない。

 だが、コン太のあの見た目。

 あの純粋すぎる反応。

 ボロボロの服に薄汚れた帽子。

 あんな姿で「お腹空いたコン」なんて言われたら、そりゃ放っておけない。

(……まあ、あの感じで来られたら誰でも絆されるか)

 美咲や三葉あたりなんて、絶対に一瞬で懐くだろう。

 いや、逆にコン太が懐かれているかもしれない。

「とりあえず、中央会館まで頼めるか?」

「あぁ」

 阿川は頷く。

「ミニバンごとでいいんだな?」

「頼む」

「了解」

 阿川が手をかざす。

「配管工」

 空間が歪む。

 門の前の広い場所に、巨大な配管が現れた。

 何度見ても、これだけは慣れない。

 無機質な金属の質感。

 現実の空間に無理やり穴を開けたような違和感。

 だが、その便利さは圧倒的だ。

「車ごと通れるの、やっぱり反則だよな……」

 色谷が後ろから呟く。

「本当ですよね」

 陸斗も頷く。

「でも、助かります」

「ありがたく思え」

 阿川が少しだけ得意げに言う。

 俺は小さく笑いながらミニバンをゆっくり進めた。

 配管の中へ入る。

 一瞬、車内の音が妙にこもる。

 金属の内側を通るような感覚。


 そして――次の瞬間には、景色が変わっていた。


 中央会館の敷地内。

 相変わらず、便利すぎる。

「……到着」

 阿川が淡々と言う。

「早すぎるな」

「だから言ったろ。俺は戦えない代わりに、移動は任せろって」

「あぁ。頼りにしてる」

 そう言うと、阿川は少しだけ目を逸らした。

「……そういうのはいい」

 照れているのかもしれない。

 分かりづらいが。


 ◇


 ミニバンを降り、俺たちは中央会館の中へ向かった。

 外はもう少し暗くなり始めている。

 今日一日で何度戦ったのか、何を知ったのか。

 頭も体も疲れている。

 それでも、会館の明かりを見ると、少しだけ胸が軽くなった。

 帰ってきた。

 そう思える場所がある。

 それは、思っていた以上に大きい。

 自動ドアを抜け、中へ入る。

 その瞬間だった。

「おかえりー!」

 明るい声が飛んできた。

 美咲だった。

 その横には、浮田、チャン爺、一葉、二葉、三葉、ルドルフ、芹沢。


 そして――


「ふわふわ……」

「もふもふですー!」

「やだぁ♡ 何この子、可愛すぎるんだけどぉ♡」

 完全に囲まれているコン太がいた。

「く、くすぐったいコン!」

 コン太は、座布団の上にちょこんと座っている。

 ヨレヨレだった服は、少しだけ綺麗にされていた。

 帽子も埃を払われたのか、最初に見た時よりはまともに見える。

 そして、その小さな体を、美咲と三葉と芹沢がうっとりした顔で眺めていた。

「コン太ちゃん、しっぽふわふわ!」

「耳も可愛いですー!」

「もうだめ、持って帰りたい♡」

「芹沢、それはやめてやれ」

 浮田が呆れたように言う。

 芹沢は口を尖らせる。

「え〜、でもこんなに可愛いんだよぉ♡」

「本人の意思を尊重しろ」

「はぁい♡」

 何だこの空間。

 さっきまで外でレッドワイバーンと戦っていたのが嘘みたいだ。

 ルドルフは、コン太の前にしゃがみ込むようにして興味深そうに見ていた。

「その語尾は、種族全体に共通する文化的特徴なのでしょうか」

「ごび?」

 コン太が首を傾げる。

「語尾です。“コン”という発話のことです」

「コンはコンだコン」

「なるほど……非常に興味深いですね」

「どこに興味持ってるんだよ」

 浮田がすかさず突っ込む。

 チャン爺は穏やかに立っていた。

「コン太様、おかわりはいかがですかな?」

「欲しいコン!」

 即答だった。

「チャン爺の料理、美味しすぎるコン!」

「それは何よりでございます」

 一葉が静かに新しい皿を用意し、二葉が飲み物を運んでいる。

 三葉はコン太の横でにこにこしていた。

「いっぱい食べるですー!」

「食べるコン!」

「仲良いな、お前ら……」

 思わず呟く。

 その声に、コン太がこちらを見た。

 そして、目を輝かせる。

「あっ!悠真だコン!」

 次の瞬間、コン太は座布団から飛び出した。

 小さな体で、一直線に俺の方へ走ってくる。

「チャン爺の作る料理、美味すぎだコン!」

「それにみんな優しくしてくれるだコン!」

 声が、どんどん震えていく。

「こんな見ず知らずの者に良くしてくれるだなんて……」


 そして――


「本当にありがとうだコーン!」

 泣きながら、俺の胸に飛び込んできた。

「うおっ」

 反射的に受け止める。

 軽い。

 小さい。

 でも、確かに生きている温かさがあった。

 コン太は俺の服をぎゅっと掴みながら、ぼろぼろ涙をこぼしている。

「お前、本当に警戒って言葉を知らない生き物だな……」

 そう言いつつも、俺はそっとコン太の頭を撫でた。

 帽子越しに、小さな頭が少し揺れる。

「でも……みんな、俺の自慢の仲間たちだからな」

 自然と、そんな言葉が出た。

 美咲。

 陸斗。

 未来。

 浮田。

 チャン爺。

 一葉、二葉、三葉。

 ルドルフ。

 阿川。

 色谷。

 芹沢。

 アル。

 ソックス。

 セイコ。

 そして、この街の住民たち。

 俺一人じゃ、ここまで来られなかった。

 俺のスキルだけで作った街じゃない。

 みんなで、ここまで来たんだ。

 コン太は、ぐしぐしと涙を拭いながら顔を上げる。

「いい場所だコン……」

「そう言ってもらえるなら、悪くないな」

 俺は少しだけ笑った。

 その瞬間。

「お前がそんな顔するの、なかなかないよな」

 浮田がニヤニヤしながら言ってきた。

「写真撮っとけば良かった」

「うるさいな……」

「いや、今のは結構レアだったぞ」

「黙れ医者」

「医者に対してひどくない?」

 軽いやり取りに、周囲から小さな笑いが起きる。

 重かった空気が、少しだけほどけていく。


 でも――完全に緩めるわけにはいかない。


 今日起きたことは、笑って終わらせられるものじゃないからだ。


 ◇


 俺はコン太をそっと下ろした。

 コン太はまだ鼻をすすりながらも、三葉が差し出したハンカチで顔を拭いている。

「とりあえず」

 俺は全員を見渡した。

「今、だいたい全員揃ってるな」

 浮田が表情を少し引き締める。

 ルドルフも立ち上がる。

 陸斗と未来、色谷も俺の後ろに立った。

 阿川は壁にもたれながら腕を組んでいる。

 芹沢も、さっきまでの甘い顔から少しだけ真面目な顔になった。

 美咲はコン太の横に座り、少し不安そうに俺を見る。

「今後のことと、コン太のことについて少し話し合いたい」

 俺は静かに言った。

 場の空気が変わる。

 帰ってきた安心感。

 コン太を迎えた温かさ。

 その全部の上に、今日知ってしまった重い現実が乗る。

 SPМの違和感。

 平行世界。

 ゲートの本質。

 外の世界の危険。

 話さなければならないことは、山ほどあった。

 俺は深く息を吸う。


「まずは、今日何があったのか――順番に話す」


 誰も、冗談を言わなかった。

 コン太も、小さく頷いた。

 こうして俺たちは、新しい問題に向き合うための会議を始めることになった。

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