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【神崎家編突入中】世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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異界からの来訪者

第69話です。宜しくお願い致します。


 ゲートが、開いた。


 ――だが、その瞬間。


 俺は違和感を覚えた。

(……軽い?)

 いつもなら、空気が重くなる。

 圧迫されるような感覚。

 肌にまとわりつくような“気配”。

 だが、今回のゲートにはそれがなかった。

 ただ、空間が裂けるように歪んでいるだけ。

「……来るぞ」

 俺の声に、全員が構える。

 陸斗が一歩前へ。

 未来が周囲に意識を広げる。

 色谷がいつでも動けるように体勢を落とす。

 アルとソックス、セイコもすでに臨戦態勢だ。

「ヒャッハァ……今回はどんな奴だァ?」

 アルが楽しそうに笑う。

「……油断は禁物です」

 ソックスは冷静に銃を構えたまま、ゲートを睨む。

「オッホッホ……どんな相手でも叩き潰して差し上げますわ!」

 セイコがステッキをくるりと回す。

 その直後だった。


 ――ポトッ。


「……は?」

 思わず声が漏れた。


 ゲートから落ちてきたのは――


 小さなキツネだった。

 いや、キツネ“のような何か”。

 ヨレヨレの服。

 薄汚れた帽子。

 明らかに、ただの動物じゃない。


 だが――


(……小さいな……)

 警戒は解かない。

 全員がそのまま構えたまま動かない。


 キツネは地面に転がったまま、数秒固まっていたが――


 ガバッと起き上がった。


 そして――


「ここはどこだコン!?」

「助かったのかコン!?」

 一人で、喋り始めた。

「……」

 空気が止まる。

 誰も動かない。

 誰も、攻撃しない。

「……モンスターが喋った……?」

 陸斗が小さく呟く。

「……いや、それ以前に……」

 色谷が困惑したように頭をかく。

「可愛くないか?」

「確かにですわね」

 セイコが頷く。

「ぬいぐるみみたいですわ」

「おい、油断するな」

 俺は低く言う。

 そのまま一歩前へ出る。

「お前は何者だ」


 キツネ――いや、そいつはビクッと体を震わせた。


 そして、慌てたように叫ぶ。

「オイラはモンスターじゃないコン!!」

「殺さないでおくれだコン!!」

(……いや反応が素直すぎるだろ)

 思わず内心でツッコむ。

「オイラはフォック族のコン太だコン!!」

 胸を張るように言うが、その姿はどう見てもボロボロだ。

「フォック族の……コン太、か」

 俺は眉をひそめる。

「秘書、フォック族とは何だ」

 すぐに返答が来る。

「この世界のデータベースには存在しません」

「……該当情報なし。解析不能です」

(……この世界のものじゃない?)

 嫌な予感がする。

 俺はコン太を見た。

「コン太と言ったな」

「お前は……別の世界から来たのか?」

 コン太は目を丸くした。

「別の世界……?」

 首をかしげる。

「ここは翡翠球ひすいきゅうじゃないのかコン?」

「……翡翠球?」

 聞いたこともない単語だ。

「詳しく話せ」

 俺は静かに言った。


 ◇


 コン太は一瞬迷ったようだったが、

 すぐにぽつぽつと話し始めた。

「オイラの住んでる世界では、ある日いきなり空に穴が開いたコン……」

「そこから、怖いモンスターがいっぱい出てきたコン……」

 声が、少し震える。

「みんなで逃げてたコン……」

「仲間と一緒に……必死に……」

 一瞬、言葉が止まる。


 そして――


「……でも、後ろから押されたコン」

 静かに、言った。

「モンスターに追いつかれそうになって……」

「オイラを囮にしようとしたコン……」

 空気が変わる。

 誰も口を挟まない。

「そのまま……前に押されて……」

「気付いたら、目の前に穴があって……」

「そこに……落ちたコン……」

 ゲートだ。

 間違いない。

「……そしたらここに来たコン……」

 最後にそう言って、コン太は俯いた。

「……」

 俺は何も言えなかった。

(助けられたわけじゃない……)

(裏切られて……たまたま生き延びただけか……)

 未来が小さく息を呑むのが分かった。

 陸斗も黙っている。

 アルが珍しく静かだった。

「……クソみてぇな話だな」

 ぽつりとアルが呟く。

「仲間売るとか、胸クソ悪ぃぜ」

「……同感です」

 ソックスも短く言う。

「状況が極限だったとしても、許容できる行為ではありません」

 コン太はビクッとしたが、何も言わなかった。

「……つまり」

 俺はゆっくり口を開く。

「俺たちの世界だけじゃない」

「お前の世界でも同じことが起きてるってことか」

 コン太は小さく頷いた。

「……多分そうだコン」

「他の場所でも起きてるって聞いたコン……」

(……マジかよ)

 背筋が冷たくなる。

「お前の世界には、人間はいるのか?」

 俺が聞くと、

 コン太は少し顔を上げた。

「いるコン!」

「人族っていうコン!」

「色んなものを作ってくれてるコン!」

「オイラたちもお世話になってるコン!」

「……」

 俺は息を吐いた。

(人間が、他の世界にもいる……?)

 頭の整理が追いつかない。

「秘書、どう思う」

 すぐに答えが返ってくる。


「コン太様の証言が事実であると仮定した場合――」


「これは他の惑星ではなく、“別の世界線”と考えるのが妥当です」

「……世界線?」

「いわゆるパラレルワールドです」

「同時に存在する、別の可能性の世界」

「ゲートは、それらを繋ぐ“接続点”である可能性が高いです」

「……」

 頭が痛くなる。

「映画とかでよくあるやつか……」

「そうです」

「異なる世界が、今回の現象によって繋がり始めていると推測されます」

(冗談じゃねぇな……)

 世界の規模が、一気に変わった。

 俺たちの問題じゃない。


 もっと大きな――


「……」

 俺はコン太を見た。

 ボロボロの服。

 疲れ切った目。

 震えている体。

(……どうする)

 SPМに見せるか?

 情報としては価値がある。

 むしろ、絶対に共有すべきレベルだ。


 だが――


(……危険だな)

 利用される可能性が高い。

 下手したら、解剖だの実験だのになりかねない。


 それに――


(今はまだ、情報を渡すタイミングじゃない)

 俺は決めた。


 ◇


「……コン太」

「お前、腹減ってるだろ」

 コン太の耳がピクッと動く。

「……減ってるコン」

 正直すぎる。

 思わず苦笑する。

「飯、食わせてやる」

「……本当かコン!?」

 目が一気に輝いた。

(お前ほんと素直だな……)

「ただし、まだお前を信用したわけじゃない」

「ちゃんと話は聞く」

「いいな?」

「分かったコン!!」

 即答だった。

(……警戒心どこ行った)

 俺は頭を軽く押さえた。

「阿川」

「何だ」

「こいつを中央会館に連れていけ」

「事情も説明してやってくれ」

「チャン爺に飯を用意させて、休ませろ」

 阿川は一瞬だけコン太を見た。

「……いいのか?」

 低く聞いてくる。

「……いい」

 俺ははっきり言った。

「今はそれでいい」

 少しだけ強く言い切る。

 阿川はそれ以上何も言わなかった。

「……分かった」

 手をかざす。

「配管工」

 空間が歪む。

 巨大な配管が現れる。

 コン太が目を輝かせた。

「すごいコン!!」

「いいから、行くぞ」

 阿川が軽く押す。

「うわっ、行くコン!?」

 そのままコン太と共に、配管の中へ消えていった。

 静寂が戻る。

 誰も、すぐには動かなかった。

「……何だ今の」

 色谷がぽつりと呟く。

「現実味がなさすぎるな」

 陸斗も小さく頷く。

「異世界……パラレルワールド……」

「情報としては、とても重要ですが……」

「処理が追いつきません」

「……だな」

 俺も同意する。


 未来は――何も言わなかった。


 ただ、少しだけ俯いていた。

(……)

 気になったが、今は何も聞かなかった。

「……とりあえず」

 俺は周囲を見る。

「一旦、戻るぞ」


 ――その時だった。


 遠くから、人影が近づいてくるのが見えた。

「……来たか」


 ◇


 近づいてきたのは、門脇たちだった。

 先頭に門脇。

 その少し後ろに犬飼。

 そして、戦術隊の隊員たちが続いている。

 装備には土埃がつき、何人かは軽い傷を負っているように見えた。

 それでも足取りはしっかりしている。

 さすがSPМ。

 ただ、見た限りではかなり消耗していた。

「もう討伐したのか?」

 門脇は周囲を見渡しながら言った。

 レッドワイバーンの残骸は、黒い粒子となって崩れかけている。

 ゲートもすでに閉じている。

「あぁ」

 俺は短く答える。

「初めて見るモンスターだったが、いい経験になった」

「レッドワイバーンか」

 門脇は小さく息を吐く。

「Bランクの中でも厄介な方だ。よく短時間で片付けたな」

「相性が良かっただけだ」

 そう答えると、犬飼が苦笑した。

「いやいや、相性で片付けるレベルじゃないっすよ」

「俺らだともっと時間かかるっす」

 色谷が軽く肩を回しながら笑う。

「まあ、こっちはこっちで結構派手だったけどな」

 アルが銃を肩に担ぎ、ニヤリと笑った。

「ヒャッハァ!燃えるトカゲごとき、俺らの敵じゃねぇってなァ!」

「……油断は禁物です」

 ソックスが静かに言う。

「ですが、戦闘データとしては有益でした」

 セイコはステッキをくるくる回しながら、胸を張る。

「オッホッホ!わたくしの華麗なる一撃も冴え渡りましたわ!」

 犬飼が、セイコを見て一瞬固まった。

「……えっと、あの人は……?」

「あぁ、新しい警備隊みたいなもんだ」

 俺がそう説明すると、犬飼は納得したような、していないような顔をした。

「……警備隊、濃くないっすか?」

「俺もそう思う」

 即答すると、門脇が少しだけ笑った。

 ほんの一瞬だけ、空気が緩む。

 だが、俺の頭の中にはまだコン太の件が残っていた。

 パラレルワールド。

 翡翠球。

 フォック族。

 そして、ゲート。

 門脇に話すべきか。


 いや――今は駄目だ。 


 俺は、そう判断していた。


 ◇


「それで」

 門脇が話を切り替える。

「もう遅い。今夜はSPМの本部に泊まっていかないか?」

「本部?」

「あぁ」

 門脇は頷く。

「君たちには協力してもらったし、こちらとしても礼をしたい」

「それに、凛堂や他のメンバーにも会ってほしい」

 その名前に、少しだけ懐かしさを覚えた。

 凛堂明日香。

 荒々しくて、強さを追い求める女。

 スケルトンキング戦の時、あいつの強さは本当に頼りになった。

「凛堂なんて、今日の任務も君たちに会いたがっていた」

 門脇は少しだけ苦笑する。

「連れて行くと面倒だから別任務に回されたがな」

「それは……何となく想像できるな」

 俺も苦笑した。

 あいつなら、会った瞬間に「一戦やろうぜ」とか言いかねない。


 だが――


 今は、それどころじゃない。

「そのことなんだが……」

 俺は少しだけ言葉を選ぶ。

「悪い。用事ができた」

 門脇がわずかに眉を動かす。

「用事?」

「あぁ」

 俺は頷く。

「本部にお邪魔するのは、またの機会にしておく」

「凛堂にもよろしく伝えておいてくれ」

 門脇は、じっと俺を見る。

 その視線は鋭い。

 いつもの軽さはない。

 何かを探るような目だった。

「……そうか」

 短く答える。

「なら、仕方ないな」

 犬飼も少しだけ残念そうに言う。

「まあ、急用ならしょうがないっすね」

「あぁ、悪いな」

「いえいえ」

 門脇は少しだけ間を置いてから言った。

「道中、気をつけて帰ってくれ」

「あぁ」

「今日の協力、助かった」

「こっちも、外の状況が見れてよかった」

 俺はそう答えた。

 これは本心だ。

 東京の外がどうなっているのか。

 茨城周辺のモンスター。

 地方による違い。

 全部、今後必要な情報だった。

「また必要があれば連絡してくれ」

「分かった」

 門脇が頷く。

 そのまま俺たちは、互いに軽く挨拶をして別れることになった。

 阿川はいない。

 配管工で戻ることはできない。

 だから、今回はミニバンで帰る。

 俺たちは車へ向かった。

 乗り込む直前、俺は一度だけ振り返る。

 門脇は、こちらを見ていた。

 遠目でも分かる。

 何かを考えている顔だった。

(……やっぱり、何か引っかかってるか)

 俺は心の中で呟く。

 だが、それは仕方ない。

 コン太の存在は、今は見せられない。

 SPМの内部崩壊の件もある。

 今、あの組織を完全に信用するには、材料が少なすぎる。

「悠真さん」

 陸斗が車内から声をかける。

「行きましょう」

「あぁ」

 俺は運転席に乗り込んだ。

 エンジンをかける。

 ミニバンはゆっくりと動き出す。

 窓の外に、門脇たちの姿が小さくなっていく。


 ◇


 色谷が後部座席で大きく息を吐いた。

「……いや、今日情報量多すぎないか?」

「それは俺も思ってる」

 俺はハンドルを握りながら答える。

 隣の陸斗も小さく頷く。

「モンスター討伐だけのはずでしたよね」

「そうだったんだけどな」

 未来は、窓の外を見たまま静かにしている。

 セイコたちはすでに派遣を解除してある。

 アルとソックスも同じだ。

 車内には、いつものメンバーだけが残っていた。

「……あのコン太って子」

 未来がぽつりと呟いた。

「どうするの?」

「まずは話を聞く」

 俺は答える。

「信用できるかはまだ分からない」

「でも、放っておく選択肢はない」

 陸斗が静かに言う。

「SPМには、まだ話さないんですね」

「あぁ」

 迷いはない。

「今はまだ早い」

「……そうですね」

 陸斗は納得したように頷いた。

 色谷が頭をかく。

「異世界とかパラレルワールドとか……急に話がデカすぎるな」

「本当にな」

 俺は苦笑する。

 国を作るとか、日本を元に戻すとか。

 それだけでも十分デカい話だった。

 なのに、今度は別世界。

 パラレルワールド。

 冗談じゃない。 


 だが――


(冗談じゃ済まないんだよな)

 実際、コン太は現れた。

 目の前で喋った。

 別世界の話をした。

 現実だ。

 俺たちはまた一つ、知らなかったものを知ってしまった。

「……まずは帰って、コン太から話を聞く」

 俺は静かに言う。

「それから考える」

 誰も反対しなかった。

 ミニバンは、東京へ向かって走り続ける。

 外の世界は、相変わらず荒れていた。

 崩れた建物。

 放置された車。

 人の気配のない街。

 その景色の向こうに、俺たちの東京がある。

 守られた場所。

 生きている街。


 そして今、その中に――


 この世界ではない場所から来た存在がいる。

(……また、厄介なことになりそうだな)

 俺は小さく息を吐いた。


 ◇


 一方、その頃。

 門脇たちは、SPМ本部へ戻るための車両に乗り込んでいた。

 運転席には戦術隊の隊員。

 後部座席には門脇と犬飼が座っている。

 車内には、任務後特有の疲労感が漂っていた。

 だが、門脇は黙ったまま窓の外を見ていた。

 犬飼が、ちらりとその横顔を見る。

「……隊長」

「何だ」

「黒瀬たち、なんか急いでましたね」

「……あぁ」

 門脇は短く答える。

 しばらく沈黙。

 そして、門脇がぽつりと言った。

「阿川がいなかったな」

 犬飼は一瞬、目を瞬かせた。

「……あ」

 言われて初めて気づいた、という顔だった。

「確かに……気づかなかったっす」

「Bランク戦も観察しておくべきだったな」

 門脇の声は低い。

 責めているわけではない。

 ただ、事実を整理している声だった。

「急に帰ったことと、何か関係がありそうだ」

 犬飼は少しだけ表情を引き締めた。

「……何か見つけたってことっすか?」

「可能性はある」

「でも、黒瀬が隠す理由って……」

「それも含めて、気になる」

 門脇は窓の外を見たまま言う。

「黒瀬は、嘘をつくのが得意なタイプではない」

「だが、隠す時は隠す」

「しかも、今回は明らかに早かった」

 犬飼は少し考えるように腕を組んだ。

「……本部に来るのを断ったのも、それが理由っすかね」

「だろうな」

 門脇は静かに頷く。

「凛堂に会いたくないから断った、というわけではない」

「確かに、あの人に会ったら面倒ではあるっすけど」

 犬飼が苦笑する。

 門脇もほんの少しだけ口元を緩めたが、すぐに表情を戻した。

「……何があった?」

 それは誰に向けたものでもない呟きだった。

 車は静かに進んでいく。

 窓の外には、荒れた景色が流れていた。

 門脇はその景色を見ながら、もう一度だけ呟く。

「黒瀬悠真……」

「君は、何を隠した?」

 その問いに答える者は、まだいなかった。

コン太みたいな喋る動物って現実にいたら本当に可愛いのかという疑問がありますが、コン太の場合は見た目キツネまんまなのでキツネが可愛いのであれば可愛いのかもしれませんね。

何を話しているのやら。


読んで頂きありがとうございます!!


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「人族っていうコン!」って人間がいるか聞かれた時の返答としておかしくない? 普通は人間と呼ぶけど狐種族の内輪では「人族」って呼んでるとかそういう意味ならギリわからなくもないけどそれにしてもちょっとおか…
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