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世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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63/167

産声 ― 動き出す街と忍び寄る崩壊

第63話です。少し長めですが宜しくお願い致します。


 第一次産業が動き始めてから、街の空気はまた少し変わった。

 銀行ができた時もそうだった。

 ポイントではなく円が流通し始めた時も、人々の顔つきは変わった。


 でも――今回の変化は、それとはまた違う。


 もっと根本的なもの。

 もっと、生活の奥に触れるもの。

 土を耕す人がいる。

 海へ出る人がいる。

 木を見上げ、森を育てようとする人がいる。

 家畜の世話をする人がいる。

 その姿を見ていると、改めて思う。

(……人間って、生きるために働いてるんじゃなくて、働くことで生きてるんだな)

 俺は、そんなことを考えながら、畑の端に立っていた。

 目の前では、農家だった住民たちが真剣な顔で土を見ている。

 若い住民に鍬の使い方を教えている老人。

 苗の間隔を測っている女性。

 水路の流れを確認している男。

 まだ収穫なんて先の話だ。

 米も野菜も、今日植えたからといって明日食えるわけじゃない。

 俺なら作れる。

 商品生成を使えば、米も野菜も肉も魚も、必要な分だけ一瞬で出せる。


 だが――それを続けるだけじゃ駄目だ。


 それはもう、分かっていた。


 ◇


「悠真さん!」

 畑の向こうから声がした。

 振り返ると、若い男が泥だらけの手を振っている。

 確か、元々は事務職だった住民だ。

 第一次産業の会議後、自分も農業をやってみたいと言って参加した一人だった。

「どうした?」

「これ、ちゃんと植えられてますかね?」

 少し不安そうに聞いてくる。

 俺に聞かれても困る。

 正直、俺は農業に関しては素人だ。

 だが、隣にいた農家の男がすぐに覗き込んだ。

「あー、悪くねぇな。ただ、ちょっと浅い」

「浅いですか?」

「この苗はもう少し深くていい。ほら、こうだ」

 そう言って、男が実演する。

 若い住民は真剣な顔で頷いた。

「なるほど……!」

「最初から完璧にやれるやつなんかいねぇよ」

 農家の男は笑う。

「土触って覚えりゃいい」

 その言葉に、若い住民は嬉しそうに笑った。

「はい!」

 その光景を見て、俺は少しだけ口元を緩める。

 教える人がいて、覚える人がいる。

 それだけで、もう“次”が生まれている。

 俺が一人で全部作るより、ずっと意味がある。

「……いいな」

 思わず呟く。

 すると、隣にいた浮田が横目で俺を見た。

「最近、そればっか言ってんな」

「そうか?」

「あぁ」

 浮田は腕を組みながら畑を見渡す。

「でもまぁ、分かるけどな」

「お前もそう思うか?」

「思うよ」

 浮田は短く答えた。

「前は、お前が全部どうにかする街だった。でも今は違う」

「……あぁ」

「住民が、自分たちで動き始めてる」

 その言葉に、俺は小さく頷いた。

 まさに、それだった。

 街が動いている。

 俺のスキルで動かしているんじゃない。

 俺の命令で動いているんでもない。

 人が、自分の意思で動いている。

 この変化は大きい。

 多分、今までで一番大きい。


 ◇


「それで」

 浮田が続ける。

「次はどうするんだ?」

「第二次産業だな」

「やっぱりな」

 浮田は小さく笑った。

「農業、漁業、林業、畜産。そこが動き出したら、次は加工と製造だ」

「あぁ」

 俺は頷く。

「採っただけじゃ終わらない。作っただけでも終わらない」

 米を精米する。

 野菜を保存食にする。

 魚を加工する。

 木材を建材や家具にする。

 肉を保存できる形にする。

 布を服にする。

 道具を作る。

 工具を作る。

 機械を整備する。

 そこまでやって、ようやく生活は回る。

「銀行、第一次産業、次は第二次産業……か」

 浮田が苦笑する。

「お前、いよいよ国作ってんな」

「自分でもそう思うよ」

 俺も苦笑する。

 でも、もう否定はしない。

 俺は国を統一すると決めた。

 なら、やることは山ほどある。

 その一つ一つを、順番に形にしていくしかない。

「秘書」

 俺は頭の中で呼びかける。

『はい、悠真様』

「第二次産業に必要な施設を整理してくれ」

『承知いたしました』

 すぐに、頭の中に情報が流れ込んでくる。

 食品加工場。

 冷凍倉庫。

 精米施設。

 製粉施設。

 木材加工所。

 製材所。

 家具工房。

 縫製工場。

 工具製造所。

 簡易機械整備工場。

 建材加工施設。

 倉庫。

 物流拠点。

 必要な施設は、思ったより多い。

(……多いな)

『第二次産業を本格稼働させるためには、段階的な整備を推奨いたします』

「だろうな」

 一気に全部やると、管理が追いつかない。

 それに、第一次産業の時と同じ流れを繰り返しても、読んでる側……いや、考えてるこっちまでしんどくなる。

 ここは、仕組みを作るところだけ見せればいい。

 実際の細かい運営は、住民たちがやる。

 俺は、その土台を作る。

「まずは食品加工と木材加工だな」

『妥当な判断です。第一次産業との接続が最も早い分野です』

「それと、道具と簡単な機械の整備」

『農業、漁業、林業の効率化にも繋がります』

「よし」

 俺は畑の向こうを見る。

 遠くには、すでに整備した道路が伸びている。

 物流に使える道だ。

 阿川の配管工もあるが、それだけに頼るわけにはいかない。

 車も、人も、物も、普通に移動できる必要がある。

「やるか」

 俺はそう言って、歩き出した。


 ◇


 第二次産業の整備は、第一次産業の時ほど大きな会議にはしなかった。


 同じように全員を集めて、一から意見を聞いて、

土地を作って――という流れをやれば、確かに丁寧ではある。


 だが、今回はそれよりも速度を重視した。

 もちろん、必要な人材には声をかけた。

 元工場勤務。

 整備士。

 職人。

 食品加工業者。

 縫製関係者。

 大工。

 元機械メーカー勤務。

 そういった人たちを役所のデータから探し、テリトリー周知で声をかけた。

『第二次産業を始める。食品加工、木材加工、道具製造、縫製、機械整備。経験者は力を貸してほしい』

 それだけで、かなりの人数が集まった。

 その反応は、第一次産業の時と似ていた。

 いや、ある意味ではもっと早かった。

「やっと工場が動かせるのか!」

「設備があるなら、俺たちでやれる!」

「保存食を作れれば、かなり安定しますよ」

「木材加工なら任せてください」

「服の修繕だけじゃなく、新しく作れるなら助かります」

 声が次々と上がる。

 やる気がある。

 それだけじゃない。

 彼らには、“できること”があった。

 元の世界で培った知識と経験。

 それが、この世界でも生きる。

 むしろ、この世界だからこそ必要になる。

「建物と設備は用意する」

 俺は集まった人たちに言った。

「でも、動かすのはお前たちだ」

 全員の視線が俺に集まる。

「俺は工場のプロじゃない。加工の専門家でもない。機械の細かいことも分からない」

 だからこそ、言う。

「任せる」

 その言葉で、空気が少し変わった。

 命令されたから動くんじゃない。

 任されたから動く。

 その違いは、大きい。

「任せてください」

 ひとりの中年男性が前に出た。

 元食品加工工場の責任者だという。

「保存食、冷凍食品、乾燥加工。できることから始めます」

 別の男が続く。

「木材加工なら、最初は建材と簡易家具からですね。職人が揃えば、もっと精度を上げられます」

 若い女性が手を挙げる。

「縫製工場も必要です。今は服が足りていても、いずれ傷みます。子供は成長しますし」

 その言葉に、俺は思わず頷いた。

 そうだ。

 子供は成長する。

 服も靴も、今あるものを使い続けるだけじゃ足りない。

 そういうところまで考えなければならない。

(……本当に、やることが多いな)

 でも、不思議と嫌じゃなかった。

 むしろ、こういう面倒な問題が出てくるほど、この街が本当に動いている感じがする。

「分かった」

 俺は全員を見渡す。

「まずは、必要最低限の施設を作る」

 そして、手をかざした。

「自動配置」


 ◇


 次の瞬間、離れた工業区画の土地が動き始めた。

 テリトリー掌握で全体を見ながら、施設を配置していく。

 農業地帯から近い場所に食品加工場。

 漁港近くに冷凍・加工施設。

 林業エリアの近くに木材加工所。

 住宅地から少し離れた場所に工具製造と機械整備工場。

 住民が通いやすい場所に縫製工場。

 さらに、それぞれを繋ぐ物流倉庫と道路。

 建物が組み上がっていく。

 壁ができ、屋根が乗り、内部設備が整う。

 ラインが敷かれ、作業台が並び、冷凍庫が形を作り、木材を加工する機械が据えられる。

 もちろん、すべて完璧に動かせるわけじゃない。

 俺が作ったのは“箱”と“基本設備”だ。

 そこから先は、人間の仕事。

「……すごいな」

 誰かが呟いた。

 だが、俺は首を横に振る。

「すごいのはここからだ」

「え?」

「これを動かすのは、お前たちだからな」

 そう言うと、集まった人たちの表情が変わった。

 驚きから、責任感へ。


 そして――高揚へ。


「……やりましょう」

 食品加工の男が言った。

「ええ。まずは保存食からです」

「魚の加工も急ぎたいな」

「木材は建材優先でいきましょう」

「縫製は作業着からですね。農業や工場向けの服も必要です」

 次々に声が上がる。

 会議というより、もう現場だった。

 自分たちで段取りを組み始めている。

 俺が口を挟む必要は、ほとんどない。


 ◇


 数日後。

 街には、新しい音が増えていた。

 機械の動く音。

 木を切る音。

 針が布を走る音。

 人が指示を出す声。

 それらが、街のあちこちから聞こえてくる。

 俺はその音を聞きながら、工業区画を歩いていた。

 食品加工場では、農家たちが持ち込んだ野菜が選別されていた。

「傷んでる部分はこっち!」

「こっちは乾燥加工に回せる!」

「保存用の瓶、足りてるか?」

 人が忙しそうに動いている。

 その顔には疲れもある。

 だが、同時に充実感もあった。

 漁港近くの加工施設では、漁師たちが持ち込んだ魚を手際よく処理している。

「これ、干物にできるな」

「こっちは冷凍だ」

「この量なら市場に回せるぞ」

 市場。

 その言葉が出たことに、俺は少し驚いた。

 もう、作るだけじゃない。

 売ることを考え始めている。

 木材加工所では、丸太が板材へと加工されていた。

 職人たちが木目を確認しながら話し合っている。

「この材なら家具向きだな」

「こっちは建材だ」

「若いの、手元見とけ。無駄に削るなよ」

「はい!」

 若者が真剣に頷く。

 縫製工場では、作業着が作られていた。

 農作業用。

 工場作業用。

 警察用の予備制服まであるらしい。

「サイズ違いも作らないとね」

「子供服も必要です」

「成長するから、少し余裕持たせた方がいい」

 生活そのものを支える会話だった。

 そして、工具製造所。

 そこでは、農具や簡単な修理道具が作られていた。

「まずは鍬、鎌、ハンマー、釘、ネジ」

「機械部品も簡単なものからだな」

「壊れたら終わりじゃなくて、直せるようにしないと」

 その言葉に、俺は思わず足を止めた。

 壊れたら、直す。

 当たり前のことだ。

 でも、今までの俺は壊れたものを“スキルで修復する”ことばかり考えていた。

 それじゃ駄目だ。

 人が直せる。

 人が作れる。

 その状態にしなきゃいけない。

「……本当に、動き始めたな」

 ぽつりと呟く。

 隣にいた浮田が頷いた。

「あぁ」

 そして、少しだけ笑う。

「もう、お前が全部出してる街じゃなくなってきたな」

「……そうだな」

 その言葉が、妙に嬉しかった。

 これが見たかった。

 俺が何でも用意する街じゃない。

 人が作る街。

 人が回す街。

「やっと、少しだけ肩の荷が下りた気がするよ」

「まだ早いだろ」

 浮田がすぐに言う。

「これからもっと面倒になるぞ」

「分かってる」

 俺は苦笑する。

「でも、悪い面倒じゃない」

「それはそうだな」

 浮田は工場の方を見る。

「人が生きてるって感じがする」

「あぁ」

 俺は頷く。

 街は、確かに変わった。

 守られる街から。

 生み出す街へ。


 そして――


 自分たちで動く街へ。


 ◇


 その時だった。

 ふと、頭の中に引っかかるものがあった。

 SPМ。

 地震を乗り越えた後、フトゥーロが告げた二つ目の厄災。

 内部崩壊。

 それが起こる場所。

(……SPМか)

 俺は、少しだけ空を見上げた。

 凛堂。

 門脇。

 柿原。

 犬飼。

 あいつらの顔が浮かぶ。

 地震の後、一度くらい来るかと思っていた。

 だが、来ない。

 連絡もない。

 こちらから行くには情報が足りない。


 だが――何も起きていないと思うには、あまりにも静かすぎる。


「……悠真?」

 浮田がこちらを見る。

「いや」

 俺は首を振る。

「何でもない」

 今は、この街が動き出したことを見届ける時だ。

 そう思った。

 だが、胸の奥に残った違和感は消えなかった。


 そして――


 その違和感は、決して気のせいではなかった。


 ◇


 SPМ本部――会議室。


 重たい静寂が、部屋全体を支配していた。

 長机を囲むように並ぶ椅子。

 そこに座るのは、この組織の中核を担う者たち。

 強襲隊隊長、凛堂明日香。

 戦術隊隊長、門脇誠司。

 影撃隊隊長、影山駿。

 支援隊隊長、世良芽衣。


 そして――特殊隊隊長、桜井晴彦。


 誰もが強者。

 誰もが、この世界で生き残るための“力”を持っている。


 だが――


 その空気は、以前よりもさらに張り詰めていた。

「……で?」

 最初に口を開いたのは、凛堂だった。

 椅子に深く腰掛け、足を組んだまま、苛立たしげに言う。

「今回の議題は何だ」

 門脇が軽く息を吐き、指を立てる。

「一つだ」

 短く言い切る。

「黒瀬悠真」

 その名前が出た瞬間、数人の視線がわずかに動いた。

「……やっぱり来たか」

 凛堂がニヤリと笑う。

 その笑みには、明確な“興味”があった。

「報告が上がってる」

 門脇は淡々と続ける。

「東京は地震をほぼ無傷で乗り切った」

「死者なし。重傷者なし。大規模倒壊なし」

 その言葉に、世良が目を細める。

「……へぇ」

「それ、本当に“人間”がやったの?」

「やった」

 門脇は迷いなく答える。

「黒瀬悠真のスキルだ」

 影山が静かに口を開く。

「……異常だな」

 短い言葉。

 だが、その評価は的確だった。

「さらに」

 門脇は続ける。

「銀行を設立。通貨流通を開始」

「第一次産業、第二次産業も稼働」

「……は?」

 凛堂が思わず声を漏らす。

「何だそれ」

「そのままの意味だ」

 門脇は肩をすくめる。

「街じゃない。もう都市だ」

「……ははっ」

 凛堂が笑う。

 楽しそうに。

「やべぇな、あいつ」

「面白すぎるだろ」

 世良が口元に手を当てる。

「私、ちょっと見てみたいかも♡」

「外部勢力は排除対象だ」

 影山が即座に言う。

 感情のない声。

「管理下に置くべき存在である」

「はいはい、堅いわねぇ」

 世良が軽く笑う。

「でもぉ、有能なら取り込むって選択肢もあるでしょ?」

「規律に反する」

「うるさいわねぇ」

 軽いやり取り。

 だが、意見は割れていた。


 ◇


 その時だった。

「……あの」

 小さな声が、場に落ちた。

 全員の視線が、自然と一箇所へ集まる。

 桜井だった。

 相変わらず頼りない表情。

 弱々しい声。


 だが――


 誰も、その発言を無視しない。

「……どうした」

 凛堂が低く言う。

「い、いえ……その……」

 桜井は一瞬視線を落とす。

 そして、ゆっくりと顔を上げた。

「黒瀬悠真は……危険です」

 その一言で、空気がわずかに変わった。

「危険、ねぇ」

 凛堂が腕を組む。

「何がだ?」

「統率力です」

 桜井は静かに答える。

「個人の戦闘能力ではなく……“人を動かす力”」

 門脇が小さく頷く。

「……同意見だ」

「だからこそ」

 桜井は続ける。

「管理下に置くべきです」

 自然な流れだった。

 誰も違和感を持たない。


 むしろ――


 それが“正しい判断”のように思えてしまう。

「……まぁ、そうなるか」

 凛堂があっさり言う。

「強ぇやつは、使うか潰すかだ」

「合理的だな」

 門脇も頷く。

 影山も短く言う。

「問題ない」

 世良は軽く笑う。

「面白そうだし、賛成♡」

 決定は、あまりにもあっさりだった。


 だが――


 桜井は、さらに一歩踏み込む。

「まずは接触を」

 静かな声。

「協力要請という形で」

「……あぁ」

 門脇が頷く。

「それなら自然だな」

「そして」

 桜井は続ける。


「必要であれば――連行」


 その言葉に、凛堂が笑う。

「いいねぇ」

「で?」

「最終的には?」

 桜井は、ほんの一瞬だけ間を置いた。


 そして――


「不要であれば、排除」

 静かに言い切った。

 誰も、反対しない。

「……妥当だな」

 門脇。

「同意する」

 影山。

「はいはい、それでいいわよ〜」

 世良。

「決まりだな」

 凛堂。

 誰も疑問を持たない。

 誰も違和感を抱かない。

 それが“最適解”だと、全員が理解していた。

「では」

 桜井が静かに締める。

「門脇隊に任せましょう」

「……了解だ」

 門脇が立ち上がる。

「黒瀬たちと接触してくる」

「俺も行く」

 凛堂が言う。


 だが――


「強襲隊は別任務だ」

 影山が遮る。

「……チッ」

 舌打ち。

 だが、引く。

「じゃあ好きにやれ」

 門脇は軽く肩を回す。

「久しぶりに、あいつらに会えるな」

 犬飼の顔が脳裏に浮かんでいた。

 あの街。

 あの連中。


 だが――


 今回は、ただの共闘ではない。

 明確な“任務”だ。

「……監視は行う」

 影山が静かに言う。

「当然だ」

 門脇はあっさり頷いた。

 会議は、それで終わった。

 椅子が引かれ、各隊長が立ち上がる。

 それぞれが、次の行動へと移る。

 凛堂は不満げに肩を鳴らしながら出て行き、

 影山は無言で部下に指示を出し、

 世良は鏡を見ながら髪を整え、

 門脇は軽くあくびをしながら歩き出す。


 ◇


 そして――


 静寂が戻る。

 会議室に残ったのは、一人。

 桜井晴彦だけだった。

 扉が閉まる。

 音もなく。

 完全な静寂。


 その中で――


 桜井の表情が、変わる。

 弱々しさが消える。


 代わりに浮かぶのは――


 冷たい、無機質な視線。

「……順調だ」

 ぽつりと呟く。

 声には一切の揺らぎがない。

「黒瀬悠真」

 名前を口にする。

「予想以上だ」

 ほんの僅か、口元が歪む。

「だが」

 一歩、歩く。

 静かに。

「国は二つもいらない」

 その言葉には、確かな意思があった。


「どちらかが――消える」


 窓の外を見る。

 遠くに広がる東京。

 あの街は、確かに動き始めている。

 人が生きる街。


 だが――


「さて」

 桜井は小さく笑う。

「どこまで抗えるかな」

 その視線の先には、

 まだ誰も知らない“崩壊”があった。


 そして――


 SPМは静かに、

 東京へと刃を向け始めていた。

読んで頂きありがとうございます!!


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