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世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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59/167

夏休み ― 取り戻した日常

第59話です。宜しくお願い致します。


 あれから、数日が経った。

 東京を襲った地震。


 あの一日は、正直言って――かなりしんどかった。


 いや、あの日だけじゃない。

 その前の3ヶ月。

 準備、拡張、対策、住民の管理、支持率の維持。

 やることは尽きなかった。

 気が張り詰めたまま、ずっと走り続けていた。


 その反動か――


「……疲れたな」

 ぽつりと、自然に言葉が漏れた。

 自分でも驚くくらい、素直な本音だった。

 屋上から街を見下ろす。

 人が動いている。

 笑い声も聞こえる。

 警察も巡回しているし、トラブルも落ち着いている。


 ――守れた。


 そう言っていい状態だ。

 でも、それと同時に。

(……ずっと張ってたもんが、一気に来たな)

 肩の力が抜けた瞬間、どっと疲労が押し寄せてきた。


 ◇


 その時だった。

「悠真」

 後ろから声がした。

 振り返ると、未来がいた。

「こんなとこで何してんの?」

「いや、ちょっとな」

 軽く答える。

 未来は俺の顔を見て、少しだけ目を細めた。

「……疲れてるでしょ」

「まぁな」

 否定はしなかった。

 できる状態でもない。

 すると未来は、ふっと笑った。

「だよね」

 一歩近づいてくる。

「みんなも、同じだよ」

「……」

「だからさ」

 少しだけ間を置いて、言った。

「休もうよ」

 その言葉は、思った以上にすっと胸に入ってきた。

 休む。

 そんな当たり前のことを、ずっと考えていなかった気がする。

「……そうだな」

 小さく頷く。

「たまにはいいか」

「でしょ?」

 未来が笑う。

「せっかくだし、みんなでどっか行こうよ」

「どっかって……」

「海とか」

 その一言で、少しだけ空気が軽くなった気がした。

「海、か」

 この状況で海。

 普通なら考えない選択だ。


 でも――


(……悪くねぇな)

 今の俺たちには、むしろ必要かもしれない。

「よし」

 俺は小さく息を吐いた。

「みんな呼ぶか」


 ◇


 数分後。

 エントランスには、いつものメンバーが集まっていた。

「で?今日はどうしたんだ?」

 浮田が腕を組みながら聞いてくる。

「休みだ」

 俺は短く言った。

「……は?」

「今日は何もしない」

 その一言で、ざわつく。

「え、マジですか!?」

 陸斗が目を見開く。

「休み!?」

「やったー!!」

 美咲はすでに飛び跳ねていた。

「海行くぞ」


 俺が続けると――


「うみーーー!!!!!」

 完全にスイッチが入った。

 美咲がその場でぴょんぴょん跳ねている。

「まぁ!海ですの!?」

 セイコもなぜかテンションが上がっていた。

「庶民のレジャーですが、まぁ見てあげてもよくってよ!」

「いや絶対楽しむだろお前」

 阿川が即ツッコむ。

「日本の海……興味がありますね」

 ルドルフも穏やかに言う。

「日光浴にはちょうどいいな」

 楢沢が腕を鳴らす。

「紫外線には気をつけろよー」

 浮田は医者らしいことを言いながらも、どこか楽しそうだった。

「……では、準備を整えましょう」

 一葉が静かにまとめに入る。

「水分、タオル、着替えなど必要かと」

「了解」

 俺は頷いた。

「移動は阿川頼む」

「おう、任せろ」

 阿川が軽く手を上げる。


「スキル――“配管工”」


 空間が歪む。

 巨大な配管が現れる。

「はいはい、順番なー」

「押さないでくださいよ!」

「美咲待てって!」

 わちゃわちゃとしながら、全員が中へ入っていく。

 俺も最後に一歩踏み込む。


 視界が歪み――


 次の瞬間。


 ◇


「……」

 潮の香り。

 波の音。

 目の前に広がる、青い海。

「……うみだーーー!!!」

 美咲が全力で走り出した。

「待て美咲!転ぶぞ!」

 パパが慌てて追いかける。

「ふふっ」

 ママはそれを見て優しく笑っていた。

 俺は少しだけ立ち止まる。

 海を見つめる。

(……久しぶりだな、こういうの)

 戦いも、拠点作りも、全部忘れて。

 ただ景色を見ている時間。

 それだけで、少しだけ気が楽になった。

「悠真」

 未来が隣に来る。

「いいでしょ」

「あぁ」

 素直に頷く。

「いいな」

 その言葉に、未来は満足そうに笑った。 


 ◇


「よっしゃああああ!!」

 その声と同時に、水しぶきが上がる。

 アルが全力で海に飛び込んでいた。

「うるせぇな……」

 ソックスが呆れながらも後を追う。

「おお……いい波だ」

「おいおい、暴れすぎだろ」

 色谷が肩を回しながら言う。

「せっかくの海なんだからよ、もうちょい“遊び”ってもんを覚えろって」

「え〜?♡」

 その横で、芹沢がニヤニヤしながら口を開く。

「私はこういうのも“遊び”だと思うけどなぁ♡」

「いや違うだろ絶対」

 色谷が即ツッコむ。

「これただの戦闘だろ」

「でもぉ♡」

 芹沢がアルたちを見る。

「めっちゃ楽しそうじゃん♡」

「ヒャッハァァ!!」

「……まぁ、否定はできねぇな」

 色谷が苦笑する。


 そのまま、ニヤッと笑って――


「なら、こっちも派手にいくか」

「“ボウリング場”」

 地面に光が走る。

「ちょっと待ってぇ♡」

 芹沢が手を叩く。

「それ絶対面白いやつじゃん♡」

「止めろって!」

 ズドォォォン!!

 海に突っ込むボール。

「きゃはははは♡最高♡」

「お前絶対止める気なかっただろ」


 ◇


 チャン爺はなぜか普通に泳ぎ始めていた。

「……あの年であれはすごいですね」

 陸斗が素直に感心している。

「負けてらんねぇな!」

 楢沢も飛び込む。

 水が大きく跳ねる。

「ちょっと!かけないでよ!」

 未来が水をかけられて反撃する。

「おい巻き込むな!」

 俺も普通に被弾した。

「……お前ら」

 言いながらも、少し笑ってしまう。

 気づけば、足が海に入っていた。

 冷たい水。

 でも、それが妙に心地いい。

(……いいな)

 この時間。

 この空気。

 戦いのない、ただの日常。


 それを――


 俺は、ちゃんと楽しめていた。


 ◇


 海に入ってから、どれくらい時間が経っただろうか。

 最初はそれぞれバラバラに遊んでいたが、気づけば自然といくつかのグループに分かれていた。

「おとうさーん!見て見て!」

 美咲が浮き輪に乗ったまま手を振っている。

「おお、いいぞ美咲!」

 父親がその横でしっかりサポートしている。

「転ばないようにね〜!」

 母親も少し離れた場所から声をかける。

 その光景を見て、陸斗は少しだけ照れくさそうに頭をかいた。

「……楽しそうですね、あいつ」

「お前もだろ」

 俺が言うと、陸斗は少しだけ笑った。

「まぁ……そうですね」

 その表情は、いつもの“背負ってる顔”じゃなかった。

 ただの、普通の中学生の顔だった。

「……」

 少し離れた場所では、浮田が砂浜に寝転がっていた。

「おい」

「……なんだ」

「完全に休みに来てるな」

「休みだろ今日は」

 目も開けずに返してくる。

「医者的には日光浴は適度にな」

「それ言いながら寝てるじゃねぇか」

「……今日は例外だ」

 適当すぎる。

 でも、そのゆるさが今はちょうどよかった。


 ◇


「悠真ー!」

 未来の声。

 振り返ると、水をすくってこっちに投げてきた。

「おい!」

 直撃。

「ははっ!」

 未来が笑う。

「やりやがったな」

 俺も水をすくって投げ返す。

「ちょっと!」

 完全に水の掛け合いが始まる。

「……お前ら子供かよ」

 浮田が呆れた声を出すが、起き上がる気配はない。

 そのまま俺と未来は、しばらくどうでもいい水の掛け合いを続けた。

 ただそれだけなのに、やけに楽しかった。


 一方その頃――


「オーホッホ!わたくしは濡れませんわよ!」

 セイコが腕を組んでいた。

 完全に海に入る気ゼロ。


 だが――


「うおりゃ!」

 アルが思い切り水をかける。

「きゃあああああ!!」

 一瞬で崩れた。

「な、何をしますの!?この無礼者!!」

「はははは!!」

 アルは大爆笑。

「……入ればいいだろ」

 ソックスが冷静に言う。

「くっ……仕方ありませんわね……!」

 セイコは覚悟を決めたように海へ足を入れる。

「……冷たっ」

 その反応は普通だった。


 ◇


「……落ち着くな」

 川原がぽつりと呟く。

 頭の上には、いつものように猫のチョコ。

「コタツ出そうかな……」

「出すな」

 山田が即止める。

「ここは海だ。規律を守れ」

「海に規律あるんですか?」

 阿川がツッコむ。

「ある。俺の中ではある」

 頑固すぎる。


 その頃、少し離れた場所では――


「……」

 白沢が静かに海を見つめていた。

「この海……綺麗……」

 ぽつりと呟く。

「ここに花を……」

「やめとけ、塩で死ぬぞ」

 芹沢が現実を突きつける。

「……そうね」

 納得はしているが、少し残念そうだった。


 そんな中、チャン爺とメイドたちは――


「三葉、そちらは深いのでお気をつけください」

「はーい!」

 三葉は元気よく返事しながら、バシャバシャと水を蹴る。

 二葉は周囲をしっかり見ている。

 一葉は落ち着いた動きで泳いでいた。


 その横で、チャン爺が――


 めちゃくちゃ速く泳いでいた。

「……あの人、何なんだろうな」

 思わず呟く。


 ◇


 そして、ひとしきり遊んだ後――


「そろそろやるか」

 俺が声をかける。

 砂浜の中央。

 用意されたスイカ。

「スイカ割りだ!!」

「やったーーー!!」

 美咲が飛び跳ねる。

「スイカかぁ♡」

 芹沢がじっと見つめる。

「これぇ、私の“ラブレター”使ったらどうなるんだろ♡」

「やめろ」

 俺が即止める。

「スイカに愛されても困る」

「え〜?♡」

 くすっと笑う。

「“私があなたを愛してるわ”って書いたらさぁ♡」

「スイカが強化されるのかな?♡」

「意味分かんねぇ強化すんな」

 色谷が横で笑う。

「それ割れなくなるやつだろ」

「それはそれで面白そうじゃない?♡」

「却下だ」

 順番に挑戦が始まる。


 最初は――三葉。


「いきますですー!」

 勢いよく走る。


 そして――


 全然違う方向へ。

 ドンッ!!

「そっちじゃねぇ!!」

 全員からツッコミ。

 次はアル。

「任せろォォ!!」

 フルスイング。


 だが――


 ズドォォン!!

 地面を叩いた。

「おい!!」

「力強すぎだろ!!」

 山田。

「集中……」

 慎重に歩く。


 そして――


 ズレる。

 普通にズレる。

「……む」

 納得いってない顔。

 セイコ。

「わたくしにお任せを!」

 優雅に構える。


 そして――


 スカッ。

「……」

「……」

「……もう一回いいですかしら」

「ダメだ」

 場は完全に盛り上がっていた。

 笑いが止まらない。


 そして―― 


「次、美咲!」

「うん!」

 美咲が棒を握る。

 目隠し。

「いくよー!」

 ゆっくり歩く。

 周りが静かになる。

「もうちょい右!」

「そのままー!」

「ストップ!」


 そして――


 ブンッ!!


 ――パカッ。


 一瞬、音が止まる。


 次の瞬間――


「割れた!!」

「やったーーー!!!」

 美咲が飛び跳ねる。

 スイカは綺麗に真っ二つだった。

「すごいじゃねぇか」

「えへへ!」

 満面の笑み。


 その顔を見て――


 全員が自然と笑っていた。


 ◇


 その後。

 砂浜に座りながら、スイカを食べる。

「甘っ」

「美味しいですね」

「夏って感じだな」

 夕日が沈んでいく。

 海がオレンジに染まる。

 静かな時間。

 さっきまでの騒がしさが、嘘みたいに落ち着いていた。

(……いいな)

 心の中で、自然とそう思った。


 守るっていうのは――


 こういう時間を守ることなんだろう。

 戦う理由。

 その答えが、少しだけ見えた気がした。

 帰り道。

 配管を通る前、ふと空を見上げる。

 静かな夜空。


 でも――


(……次は、SPМか)

 地震は終わった。

 でも、厄災はまだ終わっていない。

 俺は小さく息を吐いた。

「……まぁ、いいか」

 今日は、考えない。

 そう決めた。

「行くぞ」

「はーい!」

 全員が、配管の中へ入っていく。

 笑い声が響く。


 その光景を見ながら――


 俺は最後に一歩踏み出した。


 こうして俺たちは――


 ほんの少しだけ、日常を取り戻した。


 だがそれは同時に――


 次の戦いへ向けた、束の間の休息でもあった。

こうやってみると本当にキャラ増えましたね……。

皆さんも誰だっけ?ってなってる人居ますかね。


読んで頂きありがとうございます!!


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