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世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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58/74

厄災の日 ― 揺れる東京(後半)

第58話です。宜しくお願い致します。

揺れは、さらに強くなった。


 ゴゴゴゴゴゴ……!!


 地面そのものがうねるように動く。


 ビルが左右に揺れ、ガラスが激しく震える。


 道路に細かい亀裂が走る。


 遠くで誰かの悲鳴が聞こえた。


 だが――


 崩れない。


 倒れない。


(……耐えてる……!)


 俺は歯を食いしばりながら、全体を見渡す。


 テリトリー掌握で、東京全域の状態が流れ込んでくる。


 損傷箇所はある。


 外壁のひび。


 小規模な崩落。


 看板の落下。


 だが――


 致命的な崩壊は起きていない。


「……いける……!」


 俺は即座に動く。


「テリトリー修復!」


 意識を集中させる。


 ひび割れた外壁を戻す。


 歪んだ柱を補強する。


 崩れかけた天井を巻き戻す。


 割れたガラスを再構築。


 道路の亀裂を塞ぐ。


 次々と、修復していく。


 しかも――


(速い……!)


 0.05秒。


 ほぼ瞬間。


 頭の中で「ここ」と思った瞬間には、もう修復が終わっている。


 昔とは比べ物にならない。


「まだだ……!」


 揺れは続く。


 完全に止まる気配はない。


 その中で――


「悠真さん!!」


 陸斗の声が響く。


 俺は視線を向ける。


 マンション前の広場。


 避難していた住民の一部が、揺れに耐えきれず倒れかけている。


 その上――


 近くの外壁が、崩れそうになっていた。


「まずい……!」


 だが、その瞬間。


「――展開」


 陸斗が手をかざす。


 透明な壁のようなものが展開される。


 ドンッ!!!


 崩れかけた外壁が、その壁にぶつかる。


 衝撃は通らない。


 住民は無事。


「……っ、セーフ……!」


 陸斗が息を吐く。


 未来も動いていた。


「位置、全部見えてる!」


 目を閉じたまま、周囲の状況を把握している。


「西側で一人転倒!南は問題なし、北は警察が対応中!」


「了解!」


 浮田はすでに動いていた。


「動けるやつは手伝え!」


 倒れた人の元へ駆け寄り、その場で治療を開始する。


 手術空間。


 傷の治療をしている。


「大丈夫だ、落ち着け」


 声は低く、落ち着いている。


 それだけで、周囲の人間も安心していく。


 チャン爺は――


「こちらへ」


 静かに、しかし確実に人を導いていた。


 揺れの中でも一切ブレない動き。


 崩れかけた場所に入り、逃げ遅れた人を抱えて外へ出す。


 その隣には――


 もう一人のチャン爺。


 分身だ。


 同じ動き。


 同じ精度。


 完全に二人分の戦力として機能している。


 一葉、二葉、三葉も動いていた。


「こちらです!」


「慌てないでください!」


「ゆっくりでいいですー!」


 三人それぞれが声をかけ、住民を誘導する。


 そして――


「オーホッホ! 落ち着きなさいませ!」


 セイコだ。


 相変わらずのテンション。


 だが、やっていることは的確だった。


「そこのあなた! 柱の近くは危険ですわ! こちらへ!」


 ステッキを掲げながら、住民を安全な場所へ誘導していく。


 見た目は完全に魔法使い。


 今にも何か出しそうな雰囲気。


 だが――


 何も出ない。


 本当に、何も出ない。


 ただ振り回してるだけだ。


(……いや、まぁいいんだけどさ)


 今は戦闘じゃない。


 避難誘導が役目だ。


 そしてそれを、しっかり果たしている。


 アルは瓦礫を吹き飛ばし、


「邪魔だァ!!」


 危険物を先に排除。


 ソックスは冷静に状況を見て、


「右側、落下の可能性あり」


 即座に指示を出す。


 警察も機能している。


 楢沢の怒号が響く。


「走るな!順番に動け!」


 白沢が優しく声をかける。


「大丈夫よ、ちゃんと守られてるわ」


 山田が規律を維持する。


「指示通りに動け!」


 川原は変わらず穏やかだ。


「はいはい、大丈夫ですよ〜」


 全員が、動いている。


 誰も止まっていない。


 それぞれの役割を果たしている。


 そして――


 揺れが、少しずつ弱まっていく。


 ゴゴゴ……。


 ズズ……。


 やがて。


 静寂が戻った。


「……終わった、のか?」


 誰かが呟く。


 俺はすぐにテリトリー掌握で確認する。


 東京全域。


 被害状況。


 人的被害。


 建物。


 道路。 


 全て。


「……」


 数秒。


 いや、体感ではもっと長かった。


 そして――


「……死者、なし」


 俺は小さく呟いた。


 その言葉に、周囲が静まり返る。


「重傷者も……いない」   


 軽傷はある。


 転倒、打撲。


 だが、命に関わるものはない。


「建物の大規模倒壊も……なし」


 誰かが、息を呑む。


「……マジかよ……」


 浮田が呟く。 


 俺は、ゆっくりと息を吐いた。


 力が抜ける。


 膝が少しだけ揺れる。


「……守れた……」


 その言葉が、自然と出た。


 次の瞬間。


 あちこちから声が上がる。


「助かった……」


「本当に……無事……?」


「生きてる……!」


 泣き崩れる人。


 抱き合う親子。


 座り込む老人。


 子供が笑い出す。


 その光景を見て――


 胸の奥が、じわっと熱くなる。


(……よかった……)


 心の底から、そう思った。


 だが同時に、頭の中に浮かぶ。


(……本当に来た)


 フトゥーロの言葉。


 あいつの予言。


 全部、本当だった。


 つまり――


 残りの厄災も。


 嘘じゃない。


 安心と同時に、冷たい感覚が背中を撫でる。


「……悠真様」


 秘書の声が響く。


「支持率が上昇しています」 


 視界に数字が浮かぶ。




■支持率:96%




「……」


 俺はそれを見て、苦笑した。


「そりゃ……そうなるか」


 守れたんだ。


 それだけのことをした。


 でも――


「これで終わりじゃない」


 小さく呟く。


その時だった。


 パチ、パチ、パチ。


 拍手の音が、背後から響いた。


「……っ」


 この音。


 覚えがある。


 嫌な予感がする。


「……この展開、前にもあったな」


 俺はゆっくりと振り返った。


 そこにいたのは――


 空中に浮かぶ、あの男。


 道化師のような格好。


 不気味な笑み。


 フトゥーロ。


「素晴らしい」


 拍手を続けながら、静かに言う。


「本当に素晴らしいよ」


 俺は睨む。


「……お前」


 フトゥーロは拍手を止め、ゆっくりと俺たちを見渡した。


 その目は、いつものように軽く笑っているようにも見える。


 だが――どこか、以前よりも真剣だった。 


「東京を、守り切った」


「死者なし。重傷者なし。大規模倒壊もなし」


「これは本来の未来では、決して起こり得なかった結果だ」


 俺は拳を握る。


「……やっぱり、お前の言っていた地震は本当だったんだな」


「ああ」


 フトゥーロは静かに頷いた。


「これで少しは、私の言葉にも重みが出ただろう?」 


「だからって、信用したわけじゃない」


「うん。それでいい」


 フトゥーロは、どこか満足そうに笑った。


「君は簡単に信用しない。その慎重さも、きっと必要になる」 


 その言い方が、また引っかかる。


 まるで、これから先に必要になることを知っているみたいに。


「……で」


 俺は低く言う。


「お前は褒めに来ただけじゃないんだろ」


 フトゥーロの口元が、わずかに上がった。


「察しがいいね」


 やっぱりか。 


 俺は息を吐く。


「前に言っていたな」


「残りの厄災は、1つ目を防いだ後に教えるって」


「ああ、言った」


 フトゥーロはゆっくりと宙に浮いたまま、視線を遠くへ向ける。


「では、約束通り伝えよう」


 空気が変わった。


 さっきまで地震を乗り切った安堵があったはずなのに。


 その一言で、場の温度が一気に下がった。


「2つ目の厄災」


 フトゥーロは静かに告げる。


「それは――内部崩壊だ」


 俺は眉をひそめる。


「内部崩壊……」


 その言葉は、以前も聞いた。


 だが、あの時は詳しい内容までは話されなかった。


「俺たちの街で、ってことか?」


 そう聞くと、フトゥーロは首を横に振った。


「違う」


 短い否定。


「君たちの街ではない」


「なら、どこだ」


 フトゥーロは、少しだけ間を置いた。 


 そして――


「SPМだ」


 その名前が出た瞬間、俺の表情が変わったのが自分でも分かった。


「SPМ……?」 


「ああ」


 フトゥーロは頷く。


「この国を救う救世主であろうとしている組織」


「だが、その内側は――すでに歪み始めている」


 凛堂。


 門脇。 


 柿原。


 犬飼。


 共闘したあいつらの顔が、頭に浮かぶ。


「……どういうことだ」


 俺が聞くと、フトゥーロはゆっくりと続けた。


「SPМは、いずれ内側から割れる」


「命令、思想、支配、恐怖」


「それらが絡み合い、やがて大きな崩壊を引き起こす」


「そして、その崩壊は――日本全体を巻き込む」


 俺は奥歯を噛んだ。


「待て」


「SPМの内部問題が、どうして日本全体を巻き込むんだ」


 フトゥーロは俺を見る。


「彼らには力がある」


「武力も、組織も、情報も、人材も」


「そして何より――多くの人々が、彼らを“救い”だと信じている」


 その言葉に、俺は何も返せなかった。 


 確かに、SPМは大きい。


 あいつらが壊れたら、その影響は間違いなく広がる。 


「崩壊した組織ほど危険なものはない」


 フトゥーロは続ける。


「外からの敵より、内側から腐った味方の方が、時に多くを壊す」


「……」


 俺は拳を握った。


 地震を防いだばかりだ。


 安堵していいはずだった。


 だが、次の厄災はもう目の前にある。


「……いつ起こる」


 俺が聞くと、フトゥーロは少しだけ目を細めた。


「今すぐではない」


「だが、遠くもない」


「今回の地震を越えたことで、未来は大きく変わった」


「だから正確な時期は、以前より揺らいでいる」


「未来が変わった……?」


「ああ」


 フトゥーロは頷く。


「君たちが東京を守った。それだけで、本来の未来とは別の流れに入っている」


「だが、厄災そのものの種は消えていない」


 その言葉が、妙に重かった。


 未来は変わった。


 でも、危機は消えていない。


「じゃあ、俺たちは何をすればいい」


 俺は問う。


 フトゥーロは、少しだけ笑った。 


 今度は馬鹿にするような笑みではない。


 どこか試すような、だが期待も混ざった笑みだった。


「見極めることだ」


「SPМの中で、誰が本当に人を救おうとしているのか」


「そして、誰が組織を壊そうとしているのか」


「……」 


「次の厄災は、力だけでは防げない」


 フトゥーロの声が、静かに響く。


「人を見る目が必要になる」


 俺は黙ってその言葉を聞いていた。 


 戦うだけじゃない。


 街を作るだけでもない。


 今度は、組織と人間を見る必要がある。


「……また面倒なことを言いやがる」


「面倒な未来だからね」 


 フトゥーロはそう言って、小さく肩をすくめた。  

 

「だが、君たちは1つ目を防いだ」


「だから私は、次を伝えに来た」


 その言葉には、前回よりも少しだけ“信頼”のようなものがあった。


 俺がこいつを信じるかどうかは別として。


 少なくとも、こいつは本当に“未来を変えようとしている”。


 そんな気がした。


「……分かった」


 俺は短く言う。


「SPМについては、警戒しておく」 


「それでいい」


 フトゥーロは頷いた。


「今は休むといい」


「君たちは、今日ひとつの未来を変えたのだから」


そう言って、フトゥーロは少しだけ空へ浮かび上がる。 


 しかし、消える直前――


 こちらを振り返った。


「黒瀬悠真」


「何だ」


「よくやった」


 その一言は、意外なほど素直だった。


 俺は何も返せなかった。


 次の瞬間。


 フトゥーロの姿は、空気に溶けるように消えた。


 今度こそ、気配も何も残さずに。


 静寂が戻る。


 だが、もうさっきまでの静けさとは違う。


 地震は乗り越えた。


 だが――


 次の厄災の名前を、俺たちは知ってしまった。


「……SPМ、か」


 小さく呟く。


 空を見上げる。


 東京は守れた。


 だが、日本はまだ守れていない。


 俺は拳を握った。


「……休ませてくれねぇな、本当に」


 それでも。


 やるしかない。


 守ると決めたなら。


 次の厄災も――向き合うしかない。




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― 新着の感想 ―
んー東京都は守ったけどその周りの県は全く気にしてないんだねー災厄っていうほどの地震でしょ?東京都の周り全滅じゃん、EPMも東京都内にあるのかな?都心部って言ってたしでも主人公の念話みたいなの聞こえない…
第三の厄災は「黒瀬悠真」殺害ってところかな?
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