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世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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58/167

厄災の日 ― 揺れる東京(後半)

第58話です。宜しくお願い致します。


 揺れは、さらに強くなった。

 ゴゴゴゴゴゴ……!!

 地面そのものがうねるように動く。

 ビルが左右に揺れ、ガラスが激しく震える。

 道路に細かい亀裂が走る。

 遠くで誰かの悲鳴が聞こえた。


 だが――


 崩れない。

 倒れない。

(……耐えてる……!)

 俺は歯を食いしばりながら、全体を見渡す。

 テリトリー掌握で、東京全域の状態が流れ込んでくる。

 損傷箇所はある。

 外壁のひび。

 小規模な崩落。

 看板の落下。


 だが――


 致命的な崩壊は起きていない。

「……いける……!」

 俺は即座に動く。

「テリトリー修復!」

 意識を集中させる。

 ひび割れた外壁を戻す。

 歪んだ柱を補強する。

 崩れかけた天井を巻き戻す。

 割れたガラスを再構築。

 道路の亀裂を塞ぐ。

 次々と、修復していく。


 しかも――


(速い……!)

 0.05秒。

 ほぼ瞬間。

 頭の中で「ここ」と思った瞬間には、もう修復が終わっている。

 昔とは比べ物にならない。

「まだだ……!」

 揺れは続く。

 完全に止まる気配はない。


 ◇


 その中で――


「悠真さん!!」

 陸斗の声が響く。

 俺は視線を向ける。

 マンション前の広場。

 避難していた住民の一部が、揺れに耐えきれず倒れかけている。


 その上――


 近くの外壁が、崩れそうになっていた。

「まずい……!」

 だが、その瞬間。


「――展開」


 陸斗が手をかざす。

 透明な壁のようなものが展開される。

 ドンッ!!!

 崩れかけた外壁が、その壁にぶつかる。

 衝撃は通らない。

 住民は無事。

「……っ、セーフ……!」

 陸斗が息を吐く。

 未来も動いていた。

「位置、全部見えてる!」

 目を閉じたまま、周囲の状況を把握している。

「西側で一人転倒!南は問題なし、北は警察が対応中!」

「了解!」

 浮田はすでに動いていた。

「動けるやつは手伝え!」

 倒れた人の元へ駆け寄り、その場で治療を開始する。

 手術空間。

 傷の治療をしている。

「大丈夫だ、落ち着け」

 声は低く、落ち着いている。

 それだけで、周囲の人間も安心していく。


 ◇


 チャン爺は――


「こちらへ」

 静かに、しかし確実に人を導いていた。

 揺れの中でも一切ブレない動き。

 崩れかけた場所に入り、逃げ遅れた人を抱えて外へ出す。


 その隣には――


 もう一人のチャン爺。

 分身だ。

 同じ動き。

 同じ精度。

 完全に二人分の戦力として機能している。

 一葉、二葉、三葉も動いていた。

「こちらです!」

「慌てないでください!」

「ゆっくりでいいですー!」

 三人それぞれが声をかけ、住民を誘導する。


 そして――


「オーホッホ! 落ち着きなさいませ!」

 セイコだ。

 相変わらずのテンション。

 だが、やっていることは的確だった。

「そこのあなた! 柱の近くは危険ですわ! こちらへ!」

 ステッキを掲げながら、住民を安全な場所へ誘導していく。

 見た目は完全に魔法使い。

 今にも何か出しそうな雰囲気。


 だが――


 何も出ない。

 本当に、何も出ない。

 ただ振り回してるだけだ。

(……いや、まぁいいんだけどさ)

 今は戦闘じゃない。

 避難誘導が役目だ。

 そしてそれを、しっかり果たしている。


 ◇


 アルは瓦礫を吹き飛ばし、

「邪魔だァ!!」

 危険物を先に排除。

 ソックスは冷静に状況を見て、

「右側、落下の可能性あり」

 即座に指示を出す。

 警察も機能している。

 楢沢の怒号が響く。

「走るな!順番に動け!」

 白沢が優しく声をかける。

「大丈夫よ、ちゃんと守られてるわ」

 山田が規律を維持する。

「指示通りに動け!」

 川原は変わらず穏やかだ。

「はいはい、大丈夫ですよ〜」

 全員が、動いている。

 誰も止まっていない。

 それぞれの役割を果たしている。


 そして――


 揺れが、少しずつ弱まっていく。

 ゴゴゴ……。

 ズズ……。

 やがて。

 静寂が戻った。


 ◇


「……終わった、のか?」

 誰かが呟く。

 俺はすぐにテリトリー掌握で確認する。

 東京全域。

 被害状況。

 人的被害。

 建物。

 道路。

 全て。

「……」

 数秒。

 いや、体感ではもっと長かった。


 そして――


「……死者、なし」

 俺は小さく呟いた。

 その言葉に、周囲が静まり返る。

「重傷者も……いない」

 軽傷はある。

 転倒、打撲。

 だが、命に関わるものはない。

「建物の大規模倒壊も……なし」

 誰かが、息を呑む。

「……マジかよ……」

 浮田が呟く。

 俺は、ゆっくりと息を吐いた。

 力が抜ける。

 膝が少しだけ揺れる。

「……守れた……」

 その言葉が、自然と出た。

 次の瞬間。

 あちこちから声が上がる。

「助かった……」

「本当に……無事……?」

「生きてる……!」

 泣き崩れる人。

 抱き合う親子。

 座り込む老人。

 子供が笑い出す。


 その光景を見て――


 胸の奥が、じわっと熱くなる。

(……よかった……)

 心の底から、そう思った。

 だが同時に、頭の中に浮かぶ。

(……本当に来た)

 フトゥーロの言葉。

 あいつの予言。

 全部、本当だった。


 つまり――


 残りの厄災も。

 嘘じゃない。

 安心と同時に、冷たい感覚が背中を撫でる。

「……悠真様」

 秘書の声が響く。

「支持率が上昇しています」

 視界に数字が浮かぶ。


■支持率:96%


「……」

 俺はそれを見て、苦笑した。

「そりゃ……そうなるか」

 守れたんだ。

 それだけのことをした。


 でも――


「これで終わりじゃない」

 小さく呟く。


 ◇


 その時だった。

 パチ、パチ、パチ。

 拍手の音が、背後から響いた。

「……っ」

 この音。

 覚えがある。

 嫌な予感がする。

「……この展開、前にもあったな」

 俺はゆっくりと振り返った。


 そこにいたのは――


 空中に浮かぶ、あの男。

 道化師のような格好。

 不気味な笑み。

 フトゥーロ。

「素晴らしい」

 拍手を続けながら、静かに言う。

「本当に素晴らしいよ」

 俺は睨む。

「……お前」

 フトゥーロは拍手を止め、ゆっくりと俺たちを見渡した。

 その目は、いつものように軽く笑っているようにも見える。


 だが――どこか、以前よりも真剣だった。


「東京を、守り切った」

「死者なし。重傷者なし。大規模倒壊もなし」

「これは本来の未来では、決して起こり得なかった結果だ」

 俺は拳を握る。

「……やっぱり、お前の言っていた地震は本当だったんだな」

「ああ」

 フトゥーロは静かに頷いた。

「これで少しは、私の言葉にも重みが出ただろう?」

「だからって、信用したわけじゃない」

「うん。それでいい」

 フトゥーロは、どこか満足そうに笑った。

「君は簡単に信用しない。その慎重さも、きっと必要になる」

 その言い方が、また引っかかる。

 まるで、これから先に必要になることを知っているみたいに。

「……で」

 俺は低く言う。

「お前は褒めに来ただけじゃないんだろ」

 フトゥーロの口元が、わずかに上がった。

「察しがいいね」

 やっぱりか。

 俺は息を吐く。

「前に言っていたな」

「残りの厄災は、1つ目を防いだ後に教えるって」

「ああ、言った」

 フトゥーロはゆっくりと宙に浮いたまま、視線を遠くへ向ける。

「では、約束通り伝えよう」

 空気が変わった。

 さっきまで地震を乗り切った安堵があったはずなのに。

 その一言で、場の温度が一気に下がった。


 ◇


「2つ目の厄災」

 フトゥーロは静かに告げる。


「それは――内部崩壊だ」


 俺は眉をひそめる。

「内部崩壊……」

 その言葉は、以前も聞いた。

 だが、あの時は詳しい内容までは話されなかった。

「俺たちの街で、ってことか?」

 そう聞くと、フトゥーロは首を横に振った。

「違う」

 短い否定。

「君たちの街ではない」

「なら、どこだ」

 フトゥーロは、少しだけ間を置いた。


 そして――


「SPМだ」

 その名前が出た瞬間、俺の表情が変わったのが自分でも分かった。

「SPМ……?」

「ああ」

 フトゥーロは頷く。

「この国を救う救世主であろうとしている組織」


「だが、その内側は――すでに歪み始めている」


 凛堂。

 門脇。

 柿原。

 犬飼。

 共闘したあいつらの顔が、頭に浮かぶ。

「……どういうことだ」

 俺が聞くと、フトゥーロはゆっくりと続けた。

「SPМは、いずれ内側から割れる」

「命令、思想、支配、恐怖」

「それらが絡み合い、やがて大きな崩壊を引き起こす」


「そして、その崩壊は――日本全体を巻き込む」


 俺は奥歯を噛んだ。

「待て」

「SPМの内部問題が、どうして日本全体を巻き込むんだ」

 フトゥーロは俺を見る。

「彼らには力がある」

「武力も、組織も、情報も、人材も」


「そして何より――多くの人々が、彼らを“救い”だと信じている」


 その言葉に、俺は何も返せなかった。

 確かに、SPМは大きい。

 あいつらが壊れたら、その影響は間違いなく広がる。

「崩壊した組織ほど危険なものはない」

 フトゥーロは続ける。

「外からの敵より、内側から腐った味方の方が、時に多くを壊す」

「……」

 俺は拳を握った。

 地震を防いだばかりだ。

 安堵していいはずだった。

 だが、次の厄災はもう目の前にある。


 ◇


「……いつ起こる」

 俺が聞くと、フトゥーロは少しだけ目を細めた。

「今すぐではない」

「だが、遠くもない」

「今回の地震を越えたことで、未来は大きく変わった」

「だから正確な時期は、以前より揺らいでいる」

「未来が変わった……?」

「ああ」

 フトゥーロは頷く。

「君たちが東京を守った。それだけで、本来の未来とは別の流れに入っている」

「だが、厄災そのものの種は消えていない」

 その言葉が、妙に重かった。

 未来は変わった。

 でも、危機は消えていない。

「じゃあ、俺たちは何をすればいい」

 俺は問う。

 フトゥーロは、少しだけ笑った。

 今度は馬鹿にするような笑みではない。

 どこか試すような、だが期待も混ざった笑みだった。

「見極めることだ」

「SPМの中で、誰が本当に人を救おうとしているのか」

「そして、誰が組織を壊そうとしているのか」

「……」

「次の厄災は、力だけでは防げない」

 フトゥーロの声が、静かに響く。

「人を見る目が必要になる」

 俺は黙ってその言葉を聞いていた。

 戦うだけじゃない。

 街を作るだけでもない。

 今度は、組織と人間を見る必要がある。

「……また面倒なことを言いやがる」

「面倒な未来だからね」

 フトゥーロはそう言って、小さく肩をすくめた。

「だが、君たちは1つ目を防いだ」

「だから私は、次を伝えに来た」

 その言葉には、前回よりも少しだけ“信頼”のようなものがあった。

 俺がこいつを信じるかどうかは別として。

 少なくとも、こいつは本当に“未来を変えようとしている”。

 そんな気がした。

「……分かった」

 俺は短く言う。

「SPМについては、警戒しておく」

「それでいい」

 フトゥーロは頷いた。

「今は休むといい」

「君たちは、今日ひとつの未来を変えたのだから」

 そう言って、フトゥーロは少しだけ空へ浮かび上がる。


 しかし、消える直前――


 こちらを振り返った。

「黒瀬悠真」

「何だ」

「よくやった」

 その一言は、意外なほど素直だった。

 俺は何も返せなかった。

 次の瞬間。

 フトゥーロの姿は、空気に溶けるように消えた。

 今度こそ、気配も何も残さずに。


 ◇


 静寂が戻る。

 だが、もうさっきまでの静けさとは違う。

 地震は乗り越えた。


 だが――


 次の厄災の名前を、俺たちは知ってしまった。

「……SPМ、か」

 小さく呟く。

 空を見上げる。

 東京は守れた。

 だが、日本はまだ守れていない。

 俺は拳を握った。

「……休ませてくれねぇな、本当に」

 それでも。

 やるしかない。

 守ると決めたなら。


 次の厄災も――向き合うしかない。

読んで頂きありがとうございます!!


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― 新着の感想 ―
SPMの幹部に真実の口使えば良いやん
んー東京都は守ったけどその周りの県は全く気にしてないんだねー災厄っていうほどの地震でしょ?東京都の周り全滅じゃん、EPMも東京都内にあるのかな?都心部って言ってたしでも主人公の念話みたいなの聞こえない…
第三の厄災は「黒瀬悠真」殺害ってところかな?
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