表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/70

秩序 ― 街を守る者たち

第55話です。宜しくお願いします。

――支持率、82%。


 表示された数字を見つめながら、俺はゆっくりと息を吐いた。


 上がっている。


 確かに、前よりは良くなっている。


 街も広がった。


 生活も回っている。


 笑っている住民も増えた。


 でも――


「……まだ、終わってねぇな」


 小さく呟いて、俺は目を閉じた。


「――テリトリー掌握」


 意識が拡張される。


 頭の中に、500平方キロの街が広がった。


 人の位置。


 動き。


 流れ。


 ざわめき。


 その全てが、点と線みたいに見えてくる。


 そして、その中で――


(……やっぱりあるな)


 一部のエリアだけ、空気がざらついていた。


 人の動きが乱れている。


 集まり方が不自然だ。


 それに、支持率の感覚も微妙に低い。


 全体が82%でも、場所によって差がある。


「……ここか」


 俺は目を開いて、その場を後にした。


 問題のエリアに向かったのは、俺、陸斗、未来、浮田の四人だった。


 歩いているだけで分かる。


 雰囲気が違う。


 中心部の、少しずつ“日常”が戻り始めている空気とは違う。


 ここには、まだ苛立ちと不信感が残っている。


「……嫌な感じですね」


 陸斗が小さく言う。


「あぁ」


 俺は短く返した。


 その時だった。


「だから順番守れって言ってんだろ!!」


 怒鳴り声。


 俺たちは同時にそちらを向く。


 数人の男が、配給所の近くで揉めていた。


 スタッフが困った顔をしている。


「うるせぇな、別にいいだろ!」


「みんな並んでるんだぞ!」


「知るかよ!」


 典型的な小競り合い。


 だが、こういうのが積み重なると、街は簡単に崩れる。


「……行くぞ」


 俺が前に出る。


「おい」


 低く声をかけると、男たちが振り向いた。


「……市長かよ」


 明らかに面倒そうな顔。


 だが、それ以上に目立ったのは“軽さ”だった。


 この街に対しても。


 ルールに対しても。


「何やってる」


「別に大したことじゃねぇよ」


「いや、大したことだな」


 即答する。


「ルール守れねぇなら、ここにはいられない」


 そう言うと、男の一人が鼻で笑った。


「はっ……何様だよ」


「市長だ」


 短く返す。


 一瞬、周囲が静まった。


 男は舌打ちして視線を逸らす。


 だが、この場を収めたところで意味がない。


 また起きる。


 もっと別の場所でも。


「……悠真」


 浮田が低く言う。


「分かってる」


 俺も短く返した。


 必要なのは、その場しのぎじゃない。


 仕組みだ。


 守るための仕組み。


 俺はゆっくりと息を吐いた。


「……警察、作るか」


「警察?」


 未来が聞き返す。


「あぁ」


 俺は頷いた。


「ルールを作るだけじゃ足りねぇ。守らせる側が必要だ」


 陸斗もすぐに理解したようだった。


「治安維持機構、ですね」


「そういうことだ」 


 浮田は肩をすくめる。


「やっとそこまで来たか」


 俺は苦笑した。


「遅ぇくらいだよな」


 マンションへ戻ると、すぐに住民を集めた。


 エントランスは、あっという間に人で埋まる。


「話がある」


 その一言で、ざわめきが止まる。


「この街に、警察を作る」


 一瞬、どよめきが広がった。


「警察……?」


「取り締まるってことか?」


「あぁ」


 俺ははっきり答えた。


「この街は広くなった。人も増えた。だからもう、“善意だけ”じゃ回らねぇ」


 全員を見渡す。


「警察官を募集する」


 少しだけ間を置く。 


「ただし、超人族限定だ」


 ざわつきが少し大きくなる。


 だが、そのまま続けた。


「理由は簡単だ。何か起きた時に、止める力が必要だからだ」


「条件は二つ」


 指を二本立てる。


「この街のルールを守ること」


「そして、裏切らないこと」


「力があるだけじゃダメだ」


「守る意思があるやつだけ来い」


 静寂。


 そのあと――一人、また一人と前に出た。


 最終的に、志願者は43人。


 そこから、ルドルフの審査が始まる。


「スキル――“真実の口”」


 あの巨大な口が現れる。


 毎回見ても、慣れない不気味さがある。


「この街のルールを守りますか?」


「はい」


「裏切りませんか?」


「はい」


 一人ずつ、確認していく。


 途中で数人が弾かれた。


 やはり、全員が全員“守る側”に向いているわけじゃない。


 最終的に残ったのは――40人。


(十分だな)


 俺はそう思いながら、その40人の顔を見た。


 ここからさらに、選ぶ必要がある。


 東西南北、それぞれを任せる“顔”が必要だ。


「……面接する」


 俺がそう言うと、全員の空気が少し変わった。 


「これから、順番に話を聞く」


 単純な強さじゃない。


 必要なのは、人の上に立てるかどうかだ。


 面接は、会議室で行った。


 まず最初に入ってきたのは、筋肉質な男だった。


 背筋が伸びていて、目に迷いがない。


「名前は?」


「楢沢翔平です」


「理由は」


「守りたいからです」


 即答だった。


「元々、柔道をやってました。勝つためじゃなく、守るために使いたい」


 その言葉に嘘はない。


「熱いな」


 俺が少し笑うと、楢沢は真っ直ぐ頷いた。


「正義感だけでは足りないのも分かっています。でも、だからこそ必要だと思っています」


(悪くねぇ)


 次に入ってきたのは、女だった。


 落ち着いた雰囲気。


 どこか優雅で、しかし芯がある。


「白沢華恋です」


「志望理由は?」


「街が荒れるのは、美しくないからです」


 一瞬、意味が分からなかった。


 だが、白沢は真剣だった。


「争いのない空間を作りたいんです。花に囲まれて、穏やかに暮らせる場所を」


 独特だ。


 でも、その価値観は一貫している。


(こういうタイプも必要か)


 三人目。


 年配の男が入ってきた。


 背が高く、圧がある。


「山田権蔵だ」


 言葉も、態度も硬い。


「理由は」


「秩序なき街はいずれ壊れる」


 それだけだった。


 だが、それだけで十分だった。


「お前、俺のことどう思ってる」


 試しに聞いてみる。


 すると山田は一切迷わず答えた。


「若い。だが、筋は通している」


「だから従う価値があると判断した」


(……嫌いじゃねぇな)


 最後に入ってきたのは、穏やかな雰囲気のおっさんだった。


 頭の上に、猫がいた。


「……猫?」


「チョコです」


 男は優しく猫を撫でる。


「川原具視と申します」


「理由は?」


「争いが嫌いなんです」


 柔らかい声だった。


「怖い思いしてる人を見ると、放っておけなくて」


 この男は、空気を和らげるタイプだ。


 戦うだけじゃなく、落ち着かせる側。


(南にはこういうのが必要だな)


 四人の面接を終えて、俺は決めた。


 東部――楢沢翔平。


 西部――白沢華恋。


 北部――山田権蔵。


 南部――川原具視。


 会議室から出て、40人の前に立つ。


「決めた」


 全員の視線が集まる。


「東西南北、それぞれの警視長を任命する」


 一人ずつ、名前を呼ぶ。


 名前を呼ばれた四人が前に出る。


「お前らが、この街の治安を背負え」


 四人の目が変わる。


 責任の重さを理解した目だ。


「了解です!」


 楢沢が真っ直ぐに返す。


「任せてちょうだい」


 白沢が静かに微笑む。


「承知した」


 山田が短く言う。


「ほどほどに頑張ります」


 川原が苦笑する。


 そして俺は、40人全員に向かって言った。


「今日から、お前らがこの街の警察だ」


 その瞬間。


 ただの志願者だった40人が、“守る側”に変わった気がした。


「――動くぞ」

 

 俺の一言で、空気が引き締まった。

 

 警視長4人と、その配下の警察官たち。

 

 計40人。

 

 さっきまでただの志願者だった連中が、今は“守る側”として立っている。

 

(……ここからが本番だな)

 

「まずは問題のエリアだ」

 

 俺は地図をイメージで共有する。

 

 テリトリー掌握で把握していた“ざらついている場所”。

 

「東西南北、それぞれ担当を分ける」

 

「楢沢は東」

 

「白沢は西」

 

「山田は北」

 

「川原は南」

 

「各自、部下を連れて動け」

 

「了解!」

 

 楢沢の声が一番大きく響いた。

 

 その瞬間――

 

 40人の警察が、一斉に散っていく。

 

(……一気に変わるぞ)

 

 俺は、その様子を見ながら静かに息を吐いた。

 

 

 ――東エリア。

 

 

「おい、順番守れって言ってんだろ!」

 

 また、揉めていた。

 

 さっきと同じような光景。

 

「うるせぇな!」

 

「早い者勝ちだろ!」

 

 

 だが――

 

 

「そこまでだ」

 

 低く、真っ直ぐな声が割り込んだ。

 

 楢沢翔平。

 

 ゆっくりと前に出る。

 

「……誰だよお前」

 

「警察だ」

 

 その一言で、空気が変わる。

 

「ルールを守れ」

 

 男が舌打ちする。

 

「はっ、何が警察だ――」

 

 その瞬間。

 

「……スキル、“柔道着”」

 

 空気が震えた。

 

 次の瞬間――

 

 “出現する”。

 

 黒い柔道着。

 

 まるで生きているかのように、宙に浮かび――

 

 一瞬で男に巻き付いた。

 

「なっ――!?」

 

 抵抗する暇もない。

 

 柔道着が体を覆い、帯が自動で締まる。

 

 ギチッ――

 

 骨が軋む音。

 

「ぐっ……!」

 

 完全拘束。

 

「動くな」

 

 楢沢が静かに言う。

 

「これ以上暴れるなら、締め落とす」

 

 圧。

 

 だが、無駄な威圧じゃない。

 

 “守るための力”。

 

「……っ、分かった!」

 

 男が叫ぶ。

 

「最初からそうしろ」

 

 楢沢はそう言って、拘束を維持したまま周囲を見た。

 

「他は?」

 

 誰も動かない。

 

 完全に、空気が変わっていた。

 


 ――西エリア。

 


 こちらも同じ。

 

 小さな揉め事。

 

「やめなさい」

 

 静かな声。

 

 白沢華恋だった。

 

「争いは、美しくないわ」

 

「……は?」

 

 男たちが戸惑う。

 

 その瞬間。

 

「――スキル、“スズラン”」

 

 ふわり、と空気が変わる。

 

 頭上に現れる。

 

 巨大な、白い花。

 

 スズラン。

 

 そこから――

 

 細かい粉が、ゆっくりと降り始めた。

 

「な、なんだこれ……」

 

 男が吸い込む。

 

 次の瞬間。

 

「……っ」

 

 膝が崩れる。

 

「力が……」

 

 立てない。

 

 逃げられない。


 だが、苦しんではいない。

 

「安心して」

 

 白沢が微笑む。

 

「これは軽い毒よ」

 

「ただ、抵抗できなくなるだけ」

 

 その美しさと、危険さ。

 

 完全に支配していた。


 

 ――北エリア。

 


「規律を乱すな」

 

 低い声。

 

 山田権蔵。

 

「……誰だよジジイ」

 

 挑発。

 

 だが――

 

「……スキル、“地球儀”」

 

 次の瞬間。

 

 “空間が歪む”。

 

「――っ!?」

 

 男の体が、突然回転する。

 

 地面に立っているはずなのに。

 

 ぐるり、と。

 

 強制的に回される。

 

「な、なんだこれ!?」

 

 バランスが取れない。

 

 立てない。

 

 視界がぐちゃぐちゃになる。

 

「制御できる」

 

 山田が淡々と言う。

 

「止めるか?」

 

「やめろ!!」

 

 即答だった。


 

 ――南エリア。

 

 

「まぁまぁ、落ち着きましょう」

 

 のんびりした声。

 

 川原具視。

 

「うるせぇな!」

 

 だが、次の瞬間。

 

「――スキル、“コタツ”」

 

 ボン、と音がした。

 

 巨大なコタツが出現。

 

「は?」

 

 そのまま――

 

 男が吸い込まれる。

 

「なっ!?」

 

 中に入った瞬間。

 

「……あれ?」

 

 顔が変わる。

 

「なんか……いいな……」

 

 完全に脱力。

 

 戦意消失。

 

「争いは疲れますからねぇ」

 

 川原が頭の猫を撫でながら言う。

 

「こういうのが一番ですよ」

 

 

 ――数時間後。

 

 

 街の空気は、明らかに変わっていた。

 

 揉め事が減る。

 

 声が落ち着く。

 

 視線が柔らかくなる。

 

 そして――

 

 俺は、ステータスを開いた。

 

 


■支持率:82% → 93%

 


 

「……一気に来たな」

 

 思わず呟く。

 

 だが、納得だった。

 

(“安心”が増えたからだ)

 

 守られているだけじゃない。

 

 “守られている実感”。

 

 それが、支持率に直結している。


「……これが、“街”か」

 

 ぽつりと呟いた。

 

 助けるだけじゃ足りない。

 

 強さだけでも足りない。

 

 人の心。

 

 不満。

 

 恐怖。

 

 それを支える“仕組み”。

 

「……まだ足りねぇな」

 

 空を見上げる。

 

 500平方キロ。

 

 まだ途中だ。

 

 

 そして――

 

 

 その先には。

 

 東京全土。


「……行くぞ」

 

 小さく呟いた。

 

 この街を――

 

 守るために。


 もっと先へ。


 


個性豊かな警察官達が出てきましたね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ