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世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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55/167

秩序 ― 街を守る者たち

第55話です。宜しくお願いします。



 ――支持率、82%。


 表示された数字を見つめながら、俺はゆっくりと息を吐いた。

 上がっている。

 確かに、前よりは良くなっている。

 街も広がった。

 生活も回っている。

 笑っている住民も増えた。


 でも――


「……まだ、終わってねぇな」

 小さく呟いて、俺は目を閉じた。


「――テリトリー掌握」


 意識が拡張される。

 頭の中に、500平方キロの街が広がった。

 人の位置。

 動き。

 流れ。

 ざわめき。

 その全てが、点と線みたいに見えてくる。


 そして、その中で――


(……やっぱりあるな)

 一部のエリアだけ、空気がざらついていた。

 人の動きが乱れている。

 集まり方が不自然だ。

 それに、支持率の感覚も微妙に低い。

 全体が82%でも、場所によって差がある。

「……ここか」

 俺は目を開いて、その場を後にした。


 ◇


 問題のエリアに向かったのは、俺、陸斗、未来、浮田の四人だった。

 歩いているだけで分かる。

 雰囲気が違う。

 中心部の、少しずつ“日常”が戻り始めている空気とは違う。

 ここには、まだ苛立ちと不信感が残っている。

「……嫌な感じですね」

 陸斗が小さく言う。

「あぁ」

 俺は短く返した。

 その時だった。

「だから順番守れって言ってんだろ!!」

 怒鳴り声。

 俺たちは同時にそちらを向く。

 数人の男が、配給所の近くで揉めていた。

 スタッフが困った顔をしている。

「うるせぇな、別にいいだろ!」

「みんな並んでるんだぞ!」

「知るかよ!」

 典型的な小競り合い。

 だが、こういうのが積み重なると、街は簡単に崩れる。

「……行くぞ」

 俺が前に出る。

「おい」

 低く声をかけると、男たちが振り向いた。

「……市長かよ」

 明らかに面倒そうな顔。

 だが、それ以上に目立ったのは“軽さ”だった。

 この街に対しても。

 ルールに対しても。

「何やってる」

「別に大したことじゃねぇよ」

「いや、大したことだな」

 即答する。

「ルール守れねぇなら、ここにはいられない」

 そう言うと、男の一人が鼻で笑った。

「はっ……何様だよ」

「市長だ」

 短く返す。

 一瞬、周囲が静まった。

 男は舌打ちして視線を逸らす。

 だが、この場を収めたところで意味がない。

 また起きる。

 もっと別の場所でも。

「……悠真」

 浮田が低く言う。

「分かってる」

 俺も短く返した。

 必要なのは、その場しのぎじゃない。

 仕組みだ。

 守るための仕組み。

 俺はゆっくりと息を吐いた。

「……警察、作るか」


 ◇


「警察?」

 未来が聞き返す。

「あぁ」

 俺は頷いた。

「ルールを作るだけじゃ足りねぇ。守らせる側が必要だ」

 陸斗もすぐに理解したようだった。

「治安維持機構、ですね」

「そういうことだ」

 浮田は肩をすくめる。

「やっとそこまで来たか」

 俺は苦笑した。

「遅ぇくらいだよな」

 マンションへ戻ると、すぐに住民を集めた。

 エントランスは、あっという間に人で埋まる。

「話がある」

 その一言で、ざわめきが止まる。

「この街に、警察を作る」

 一瞬、どよめきが広がった。

「警察……?」

「取り締まるってことか?」

「あぁ」

 俺ははっきり答えた。

「この街は広くなった。人も増えた。だからもう、“善意だけ”じゃ回らねぇ」

 全員を見渡す。

「警察官を募集する」

 少しだけ間を置く。

「ただし、超人族限定だ」

 ざわつきが少し大きくなる。

 だが、そのまま続けた。

「理由は簡単だ。何か起きた時に、止める力が必要だからだ」

「条件は二つ」

 指を二本立てる。

「この街のルールを守ること」

「そして、裏切らないこと」

「力があるだけじゃダメだ」

「守る意思があるやつだけ来い」

 静寂。

 そのあと一人、また一人と前に出た。

 最終的に、志願者は43人。

 そこから、ルドルフの審査が始まる。


 ◇


「スキル――“真実の口”」


 あの巨大な口が現れる。

 毎回見ても、慣れない不気味さがある。

「この街のルールを守りますか?」

「はい」

「裏切りませんか?」

「はい」

 一人ずつ、確認していく。

 途中で数人が弾かれた。

 やはり、全員が全員“守る側”に向いているわけじゃない。


 最終的に残ったのは――40人。


(十分だな)

 俺はそう思いながら、その40人の顔を見た。

 ここからさらに、選ぶ必要がある。

 東西南北、それぞれを任せる“顔”が必要だ。

「……面接する」

 俺がそう言うと、全員の空気が少し変わった。

「これから、順番に話を聞く」

 単純な強さじゃない。

 必要なのは、人の上に立てるかどうかだ。


 ◇


 面接は、会議室で行った。

 まず最初に入ってきたのは、筋肉質な男だった。

 背筋が伸びていて、目に迷いがない。

「名前は?」

「楢沢翔平です」

「理由は」

「守りたいからです」

 即答だった。

「元々、柔道をやってました。勝つためじゃなく、守るために使いたい」

 その言葉に嘘はない。

「熱いな」

 俺が少し笑うと、楢沢は真っ直ぐ頷いた。

「正義感だけでは足りないのも分かっています。でも、だからこそ必要だと思っています」

(悪くねぇ)

 次に入ってきたのは、女だった。

 落ち着いた雰囲気。

 どこか優雅で、しかし芯がある。

「白沢華恋です」

「志望理由は?」

「街が荒れるのは、美しくないからです」

 一瞬、意味が分からなかった。

 だが、白沢は真剣だった。

「争いのない空間を作りたいんです。花に囲まれて、穏やかに暮らせる場所を」

 独特だ。

 でも、その価値観は一貫している。

(こういうタイプも必要か)


 ◇


 三人目。

 年配の男が入ってきた。

 背が高く、圧がある。

「山田権蔵だ」

 言葉も、態度も硬い。

「理由は」

「秩序なき街はいずれ壊れる」

 それだけだった。

 だが、それだけで十分だった。

「お前、俺のことどう思ってる」

 試しに聞いてみる。

 すると山田は一切迷わず答えた。

「若い。だが、筋は通している」

「だから従う価値があると判断した」

(……嫌いじゃねぇな)

 最後に入ってきたのは、穏やかな雰囲気のおっさんだった。

 頭の上に、猫がいた。

「……猫?」

「チョコです」

 男は優しく猫を撫でる。

「川原具視と申します」

「理由は?」

「争いが嫌いなんです」

 柔らかい声だった。

「怖い思いしてる人を見ると、放っておけなくて」

 この男は、空気を和らげるタイプだ。

 戦うだけじゃなく、落ち着かせる側。

(南にはこういうのが必要だな)

 四人の面接を終えて、俺は決めた。


 東部――楢沢翔平。


 西部――白沢華恋。


 北部――山田権蔵。


 南部――川原具視。


 ◇


 会議室から出て、40人の前に立つ。

「決めた」

 全員の視線が集まる。

「東西南北、それぞれの警視長を任命する」

 一人ずつ、名前を呼ぶ。

 名前を呼ばれた四人が前に出る。

「お前らが、この街の治安を背負え」

 四人の目が変わる。

 責任の重さを理解した目だ。

「了解です!」

 楢沢が真っ直ぐに返す。

「任せてちょうだい」

 白沢が静かに微笑む。

「承知した」

 山田が短く言う。

「ほどほどに頑張ります」

 川原が苦笑する。

 そして俺は、40人全員に向かって言った。

「今日から、お前らがこの街の警察だ」

 その瞬間。

 ただの志願者だった40人が、“守る側”に変わった気がした。


「――動くぞ」


 俺の一言で、空気が引き締まった。

 警視長4人と、その配下の警察官たち。

 計40人。

 さっきまでただの志願者だった連中が、今は“守る側”として立っている。

(……ここからが本番だな)


 ◇


「まずは問題のエリアだ」

 俺は地図をイメージで共有する。

 テリトリー掌握で把握していた“ざらついている場所”。

「東西南北、それぞれ担当を分ける」

「楢沢は東」

「白沢は西」

「山田は北」

「川原は南」

「各自、部下を連れて動け」

「了解!」

 楢沢の声が一番大きく響いた。


 その瞬間――


 40人の警察が、一斉に散っていく。

(……一気に変わるぞ)

 俺は、その様子を見ながら静かに息を吐いた。


 ◇


 ――東エリア。


「おい、順番守れって言ってんだろ!」

 また、揉めていた。

 さっきと同じような光景。

「うるせぇな!」

「早い者勝ちだろ!」


 だが――


「そこまでだ」

 低く、真っ直ぐな声が割り込んだ。

 楢沢翔平。

 ゆっくりと前に出る。

「……誰だよお前」

「警察だ」

 その一言で、空気が変わる。

「ルールを守れ」

 男が舌打ちする。


「はっ、何が警察だ――」


 その瞬間。

「……スキル、“柔道着”」

 空気が震えた。


 次の瞬間――


 “出現する”。

 黒い柔道着。


 まるで生きているかのように、宙に浮かび――


 一瞬で男に巻き付いた。


「なっ――!?」


 抵抗する暇もない。

 柔道着が体を覆い、帯が自動で締まる。


 ギチッ――


 骨が軋む音。

「ぐっ……!」

 完全拘束。

「動くな」

 楢沢が静かに言う。

「これ以上暴れるなら、締め落とす」

 圧。

 だが、無駄な威圧じゃない。

 “守るための力”。

「……っ、分かった!」

 男が叫ぶ。

「最初からそうしろ」

 楢沢はそう言って、拘束を維持したまま周囲を見た。

「他は?」

 誰も動かない。

 完全に、空気が変わっていた。


 ◇


 ――西エリア。


 こちらも同じ。

 小さな揉め事。

「やめなさい」

 静かな声。

 白沢華恋だった。

「争いは、美しくないわ」

「……は?」

 男たちが戸惑う。

 その瞬間。


「――スキル、“スズラン”」


 ふわり、と空気が変わる。

 頭上に現れる。

 巨大な、白い花。

 スズラン。


 そこから――


 細かい粉が、ゆっくりと降り始めた。

「な、なんだこれ……」

 男が吸い込む。

 次の瞬間。

「……っ」

 膝が崩れる。

「力が……」

 立てない。

 逃げられない。

 だが、苦しんではいない。

「安心して」

 白沢が微笑む。

「これは軽い毒よ」

「ただ、抵抗できなくなるだけ」

 その美しさと、危険さ。

 完全に支配していた。


 ◇


 ――北エリア。


「規律を乱すな」

 低い声。

 山田権蔵。

「……誰だよジジイ」

 挑発。


 だが――


「……スキル、“地球儀”」

 次の瞬間。

 “空間が歪む”。


「――っ!?」


 男の体が、突然回転する。

 地面に立っているはずなのに。

 ぐるり、と。

 強制的に回される。

「な、なんだこれ!?」

 バランスが取れない。

 立てない。

 視界がぐちゃぐちゃになる。

「制御できる」

 山田が淡々と言う。

「止めるか?」

「やめろ!!」

 即答だった。


 ◇


 ――南エリア。


「まぁまぁ、落ち着きましょう」

 のんびりした声。

 川原具視。

「うるせぇな!」

 だが、次の瞬間。


「――スキル、“コタツ”」


 ボン、と音がした。

 巨大なコタツが出現。

「は?」


 そのまま――


 男が吸い込まれる。

「なっ!?」

 中に入った瞬間。

「……あれ?」

 顔が変わる。

「なんか……いいな……」

 完全に脱力。

 戦意消失。

「争いは疲れますからねぇ」

 川原が頭の猫を撫でながら言う。

「こういうのが一番ですよ」


 ◇


 ――数時間後。


 街の空気は、明らかに変わっていた。

 揉め事が減る。

 声が落ち着く。

 視線が柔らかくなる。


 そして――


 俺は、ステータスを開いた。


■支持率:82% → 93%


「……一気に来たな」

 思わず呟く。

 だが、納得だった。

(“安心”が増えたからだ)

 守られているだけじゃない。

 “守られている実感”。

 それが、支持率に直結している。

「……これが、“街”か」

 ぽつりと呟いた。

 助けるだけじゃ足りない。

 強さだけでも足りない。

 人の心。

 不満。

 恐怖。

 それを支える“仕組み”。

「……まだ足りねぇな」

 空を見上げる。

 500平方キロ。

 まだ途中だ。 


 そして――


 その先には。

 東京全土。

「……行くぞ」

 小さく呟いた。


 この街を――


 守るために。

 もっと先へ。

個性豊かな警察官達が出てきましたね。



読んで頂きありがとうございます!!

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― 新着の感想 ―
ペナルティーに出入禁止的なものがあればいいのにね。 以前と同じ生活空間へ戻るだけだけど、ライフラインが揃った環境を一度味わってしまうとお外は地獄でしょうに。
真夏にこたつは拷問だと思います。
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