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世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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54/70

信頼 ― 繋ぐ力

第54話です。宜しくお願い致します。



あれから――俺の中で、ずっと引っかかっているものがあった。

 

 支持率:73%。

 

 たったそれだけの数字。


 なのに、やけに重い。

 

「……73、ねぇ」

 

 屋上の手すりに寄りかかりながら、俺は小さく呟いた。

 

 街は動いている。


 人も増えている。


 表面だけ見れば、順調だ。

 

 でも――

 

(場所によって、違うな)

 

 俺は目を閉じる。

 

「――テリトリー掌握」

 

 意識が広がる。


 視界じゃない、“感覚”で街全体が見える。

 

 そして――気づいた。

 

 同じ街のはずなのに、空気が違う。

 

 中心部。


 マンション周辺。

 

 そこは安定している。


 安心している。

 

 だが――

 

 少し離れたエリア。


 新しく人が増えた場所。

 

 そこは、ざらついていた。

 

(……低い)

 

 数値として見えるわけじゃない。


 でも、分かる。

 

 あそこは、明らかに支持率が低い。

 

「……場所ごとに違うのかよ」

 

 思わず吐き捨てる。

 

 つまりこれは――

 

 全員が同じ方向を向いてるわけじゃない。

 

 分かっていたはずのことが、改めて突きつけられる。

 

「……面倒くせぇな」

 

 だが、目を逸らすわけにはいかない。

 

 俺はそのまま屋上を降りた。

 

 リビングに入ると、すでに何人か集まっていた。

 

「お、悠真」

 

 浮田がソファに座ったまま手を上げる。

 

「ちょうどいいところだな」

 

「……何がだよ」

 

 俺が返すと、未来がこちらを見る。

 

「なんか、街の空気ちょっと変じゃない?」

 

 やっぱりか。

 

「気づいたか」

 

「うん……なんか、ピリピリしてるとこある」

 

 陸斗も頷く。

 

「登録待ちの列でも、小さなトラブルが増えています」

 

「……だろうな」

 

 俺はそのまま中央に立つ。

 

「全員、ちょっと集まってくれ」

 

 声をかけると、メンバーが自然と集まってきた。

 

 陸斗、未来、浮田。


 チャン爺、一葉、二葉、三葉。


 芹沢、色谷。


 そして――

 

「呼びましたか」

 

 ルドルフが静かに現れる。

 

「何かあったのか?」

 

 阿川も腕を組んだまま入ってきた。

 

 これで全員だ。

 

 俺は一度、全員を見渡す。

 

「結論から言う」

 

 一拍置く。

 

「この街、今ギリギリだ」

 

 空気が少しだけ張り詰める。

 

「ギリギリ……ですか?」

 

 陸斗が確認するように聞く。

 

「あぁ」

 

 俺は頷く。

 

「見た目は回ってる。でも、中身は崩れかけてる」

 

 その言葉に、浮田が小さくため息をついた。

 

「やっぱりな」

 

「溜まってるぞ、あれ」

 

「……あぁ」

 

 俺はそのまま続ける。

 

「で、その原因なんだけどな」

 

 少しだけ視線を落とす。

 

「――これだ」

 

 視界にステータスを開く。

 

 そして、それを全員に共有した。

 

 

 ■支持率:73%

 

 

「……支持率?」

 

 未来が首を傾げる。

 

「そんなのあったの?」

 

「さっき出てきた」

 

 俺は短く答える。

 

「これ、多分この街の“信頼度”だ」

 

 チャン爺が静かに補足する。

 

「はい。住民の坊ちゃまに対する信頼――その総合値かと」

 

「……なるほど」

 

 阿川が低く呟く。

 

「つまり、全員が納得してるわけじゃねぇってことか」

 

「その通りだ」

 

 俺は頷く。

 

「しかも、これ――場所で差がある」

 

「場所?」

 

 陸斗が反応する。

 

「あぁ」

 

「中心は高い。でも、外側は低い」

 

 未来が小さく息を呑む。

 

「……それって」

 

「新しく来た人たち、だよね」

 

「正解」

 

 俺はそのまま言う。

 

「知らねぇ奴に、いきなり“ここで暮らせ”って言われてるようなもんだからな」

 

「そりゃ、信用できないやつもいる」

 

 沈黙。

 

 誰も否定しない。

 

 それが現実だからだ。

 

「でもさ!」

 

 未来が一歩前に出る。

 

「ちゃんと助けてるし、守ってるじゃん!」

 

「それでもダメなのかよ……」

 

 その言葉に、浮田が苦笑する。

 

「未来」

 

「ん?」

 

「“正しい”と“納得できる”は別だ」

 

 未来が言葉に詰まる。

 

「……あ」

 

「頭で分かっても、心が追いつかねぇことなんていくらでもある」

 

 静かな言葉だった。

 

 だが、重かった。

 

 俺はそのまま続ける。

 

「で、問題はここからだ」

 

 全員の視線が集まる。

 

「この支持率――下がるとヤバい」

 

「……どういう意味ですか」

 

 陸斗が真剣な顔で聞く。

 

「チャン爺」

 

「はい」

 

「説明頼む」

 

 チャン爺は一歩前に出る。

 

「支持率とは“信頼”であると同時に――」

 

 一拍。

 

「“従う意思”でもございます」

 

 一瞬、空気が固まった。

 

「従う……?」

 

 色谷が眉をひそめる。

 

「はい」

 

「つまり、支持率が低下すれば――」

 

 チャン爺は静かに言い切った。

 

「この街の統制そのものが崩れる可能性がございます」

 

 沈黙。

 

 重い。

 

 想像以上に重い。

 

「……マジかよ」

 

 浮田が低く呟く。

 

「暴動とか、そういうレベルじゃ済まねぇな」

 

「はい」

 

 チャン爺は頷く。

 

「最悪の場合、テリトリー機能そのものにも影響が出る可能性がございます」

 

「……」

 

 言葉が出ない。

 

 つまりこれは――

 

(ただの数字じゃねぇ)

 

 街の“生存ライン”だ。

 

 俺はゆっくりと息を吐いた。

 

「……分かった」

 

 そして、顔を上げる。

 

「やることは一つだな」

 

 全員を見る。

 

「支持率、上げる」

 

 シンプルな結論。

 

 だが――

 

 簡単じゃない。

 

「どうやって?」

 

 芹沢が首を傾げる。

 

「簡単よ♡ 私が全員虜に――」

 

「却下」

 

 未来が即答する。

 

「えー!?」

 

 軽く空気が緩む。

 

 だが、すぐに戻る。

 

「……力で押さえつけるのは違う」

 

 俺ははっきり言った。

 

「それやったら終わりだ」

 

 チャン爺が静かに頷く。

 

「賢明な判断にございます」

 

「じゃあどうするの?」

 

 未来が真っ直ぐ聞いてくる。

 

 俺は少しだけ考え――

 

 そして、決めた。

 

「……全員に話す」

 

 その一言で、空気が変わった。

 

「全員って……」

 

 陸斗が呟く。

 

「この街の、全員だ」

 

 その時だった。

 

 ふと、視界に引っかかるものがあった。

 

(……これ)

 

 ステータスの中。

 

 見慣れない項目。

 

 

 ■テリトリー周知

 

 

「……これか」

 

 俺は小さく呟いた。

 

 チャン爺が頷く。

 

「はい。坊ちゃまの意思を、テリトリー内の全住民へ伝える力にございます」

 

「……つまり」

 

「全員に、直接話せるってことか」

 

「その通りでございます」

 

 静かな確信。

 

 俺はゆっくりと息を吐いた。

 

「……やるか」

 

 そう呟いた瞬間だった。

 

「ちょっと待て」

 

 浮田が口を挟む。

 

「ん?」

 

「お前一人でやる気か?」

 

 その言葉で、少しだけ思考が止まる。

 

 そして――

 

「……いや」

 

 首を振る。

 

「違うな」

 

 全員を見る。

 

「これ、一人でやるもんじゃねぇ」

 

 その一言で、空気が変わった。

 

「全員でやる」

 

 はっきりと言い切る。

 

「……どういう意味ですか」

 

 陸斗が聞く。

 

 俺は答えた。

 

「この街を支えてるのは、俺だけじゃねぇ」

 

 一人一人を見る。

 

「だから――」

 

「全員で、信頼取りに行く」

 

 その言葉に、未来が少しだけ笑った。

 

「……うん」

 

「それ、いいと思う」

 

 陸斗も静かに頷く。

 

「合理的です」

 

 浮田は肩をすくめる。

 

「結局それが一番現実的だな」

 

 チャン爺が一礼する。

 

「承知いたしました、坊ちゃま」

 

 その瞬間――

 

 全員の意識が、一つに揃った。

 

 戦闘じゃない。

 

 だが――

 

 これは確実に、“戦い”だった。

 

動き出したのは、すぐだった。

 

 “戦う”時と同じだ。

 

 作戦を決めて、役割を分けて、各自が動く。

 

 ただ違うのは――

 

 相手がモンスターじゃなく、人間だってこと。

 

「……じゃあ、行くぞ」

 

 俺の一言で、全員が頷いた。

 

■ 陸斗

 

「順番に説明していきます」

 

 陸斗は、役所の前に立っていた。

 

 列を作っている住民たちに向き合う。

 

「現在、救助には優先順位があります」

 

 落ち着いた声。

 

 感情を抑えた、でもしっかり届く話し方。

 

「危険度、負傷の有無、年齢――それらを基準に判断しています」

 

 ざわついていた空気が、少し静まる。

 

「不公平に見えるかもしれません」

 

「ですが、これは“助けるための順番”です」

 

 一瞬、間を置く。

 

「全員を見捨てないための、方法です」

 

 その言葉に――

 

「……そうか」

 

 小さく頷く者が出る。

 

「……なるほどな」

 

 納得する声も混ざる。

 

 

(……流石だな)

 

 感情に流されない。

 

 でも、ちゃんと“納得させる”。

 

 あいつにしかできないやり方だ。

 

■ 未来

 

「大丈夫だよ」

 

 未来は、子供たちの前にしゃがみ込んでいた。

 

 不安そうにしている親子。

 

「ここ、ちゃんと安全だから」

 

 優しく笑う。

 

 無理に明るくしない。

 

 でも、安心させる。

 

「ね、ほら」

 

 軽く手を伸ばす。

 

 子供が、少しだけその手を握る。

 

「……ほんとに?」

 

「うん」

 

 即答だった。

 

「私もここで暮らしてる」

 

 その一言が、効いた。

 

 同じ“住民”としての言葉。

 

 守る側じゃない、同じ立場。

 

 

(あいつは……強いな)

 

 戦闘じゃなくても、ちゃんと戦えてる。

 

■ 浮田

 

「動くな、すぐ終わる」

 

 浮田は、簡易ベッドの横に立っていた。

 

 怪我人の腕を固定しながら、淡々と処置を進める。

 

「ちょっと痛いぞ」

 

「っ……!」

 

 だが――

 

 その手つきは正確だ。

 

 迷いがない。

 

 

「……終わりだ」

 

 包帯を巻き終え、軽く肩を叩く。

 

「無理すんなよ」

 

 短い言葉。

 

 でも、その重みは違う。

 

「……ありがとう」

 

 患者が、ぽつりと呟く。

 

(あいつは、“生きれる”って思わせるタイプだな)

 

■ 色谷

 

「よっしゃああ!!もう一本!!」

 

 スポーツジム。

 

 色谷の声が響く。

 

「いいぞ!ナイス!」

 

 周囲の人間も、自然と笑っていた。

 

 汗を流す。

 

 体を動かす。

 

 ただそれだけで――

 

 空気が変わる。

 

 

「……なんか、久しぶりだな」

 

 誰かが呟く。

 

「普通に体動かすの」

 

 

 日常。

 

 それを作る力。

 

 これもまた、支えだ。

 

■ 芹沢

 

「大丈夫よ♡」

 

 芹沢は、数人の女性たちと話していた。

 

「最初はみんな不安になるもの」

 

 笑顔で、自然に距離を詰める。

 

「でもね、ここって意外と快適なのよ?」

 

「……ほんとに?」

 

「ええ、だって私がいるもの♡」

 

 少しズレてる。

 

 でも――

 

「……ふふっ」

 

 笑いが起きる。

 

 

(あいつ、なんだかんだで空気軽くするよな)

 

■ メイド三姉妹

 

「こちらになります」

 

 一葉が、落ち着いた声で案内する。

 

「順番にご案内いたします」

 

 二葉が的確に動線を整理する。

 

「こっちも空いてますよー!」

 

 三葉が元気に手を振る。

 

 流れが整う。

 

 無駄が減る。

 

 そして――

 

 人が、落ち着く。

 

■ チャン爺

 

 そして、その全てを――

 

 見ている存在がいる。

 

(……整ってきておりますね)

 

 誰にも気づかれず。

 

 問題の芽を摘み。

 

 動線を補正し。

 

 人の流れを整える。

 

 戦場で言えば、指揮官。

 

 だがそれを、完全に裏でやっている。

 

 そして――

 

 俺は、それを見ていた。

 

(……これか)

 

 一人じゃない。

 

 支えてるのは、俺じゃない。

 

 全員だ。

 

 ゆっくりと息を吸う。

 

 そして――

 

 意識を集中させる。

 

「――テリトリー周知」

 

 発動した瞬間。

 

 世界が、一瞬静まった気がした。

 

 見えない。

 

 でも――確実に“届く”。

 

(……聞こえてるか)

 

 街の全員に向けて、言葉を紡ぐ。

 

「俺は――この街を支配するつもりはない」

 

 静かに、はっきりと。

 

「ここは、“守る場所”だ」

 

 押し付けない。

 

 強制しない。

 

「選ぶのは、お前たちだ」

 

 一拍。

 

「ここに残るか、離れるか」

 

 そして――

 

「でも、残るなら」

 

 言い切る。

 

「全力で守る」

 

 それだけだった。

 

 長くもない。

 

 飾りもない。

 

 でも――

 

 十分だった。

 

 数秒の沈黙。

 

 そして――

 

 街が、動いた。

 

 ざわめき。

 

 小さな声。

 

「……今の、聞こえたか?」

 

「頭の中に……」

 

「……本気、なのか?」

 

 疑う声もある。

 

 だが――

 

「……なら、もう少し信じてみるか」

 

 そんな声も、確かにあった。

 

 俺は、ゆっくりとステータスを開く。

 

 ■支持率:73% → 79%

 

「……上がったな」

 

 浮田が小さく呟く。

 

「だな」

 

 俺は短く答える。

 

 だが――

 

(全部じゃない)

 

 分かる。

 

 まだ、低い場所がある。

 

 まだ、不安は消えていない。

 

 でも――

 

「……これでいい」

 

 一歩だ。

 

 完璧じゃなくていい。

 

 前に進めばいい。

 

「……これ、戦いと同じだな」

 

 ぽつりと呟く。

 

「一人じゃ、勝てねぇ」

 

 そう言うと、未来が笑った。

 

「でしょ?」

 

 陸斗も頷く。

 

「当然です」

 

 浮田は肩をすくめる。

 

「今更だな」

 

 チャン爺は静かに一礼した。

 

「坊ちゃまが理解されているなら、問題ございません」

 

 その時だった。

 

 遠くのエリア。

 

 低支持率の場所。

 

 そこに――

 

 微かな“違和感”を感じた。

 

(……なんだ?)

 

 ざらつくような空気。

 

 不自然な、不安の広がり方。

 

(……ただの不満じゃねぇな)

 

 俺は空を見上げた。

 

「……面倒なこと、起きそうだな」

 

 小さく呟く。

 

 支持率は、上がった。

 

 だが――

 

 問題は、まだ終わっていなかった。

 

 むしろ――

 

 これからが本番だった。




少し最近モチベーション下がり気味だったのですが、

感想を書いてくれた方がいてモチベーションが、復活しました。ありがとうございます。

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