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世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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53/70

支配 、 静かな決定

第53話です。宜しくお願い致します。

SPМ本部――会議室。


 分厚い扉の向こうには、重苦しい静寂が広がっていた。


 長机を囲むように並ぶ椅子。


その席には既に、各部隊の隊長たちが集まっている。


 誰もが強者。


 誰もが、この組織の中核を担う存在だ。


 だが――


 その空気は、どこか張り詰めていた。


「……遅ぇな」


 足を組み、苛立たしげに呟いたのは強襲隊隊長 凛堂明日香だった。


 腕を組み、机に肘をつくその姿は、明らかに“待つ側の人間”のそれではない。


 命令する側。


 支配する側。


 そんな雰囲気を纏っている。


「まぁまぁ、そう急くなって」


 軽く肩をすくめながら答えたのは戦術隊隊長 門脇誠司だ。


 椅子に深く腰掛け、どこか気の抜けたような態度。


 だがその目だけは、周囲をしっかりと見ている。


「全員揃ってからじゃないと始まらんだろ?」


「そんなもん、揃ってるやつで始めりゃいいだろ」


 凛堂は吐き捨てるように言った。


 その言葉に、向かい側に座る男が静かに口を開く。


「規律は守るべきだ」


 影撃隊隊長 影山駿。


 無表情のまま、淡々と告げる。


「会議は全員参加が前提である以上、例外は認められない」


「……相変わらず堅ぇな」


 凛堂が鼻で笑う。


 だが、影山は一切反応しない。


ただ、そこに“あるべき姿”で存在しているだけだった。


「はぁ……もう、空気が重すぎてシワ増えそう」


 ため息混じりにそう言ったのは支援隊隊長 世良芽衣だった。


 手鏡を取り出し、自分の顔を確認しながら、軽く頬に触れる。


「こういう会議って、本当に美容に悪いのよねぇ」


「隊長、会議中です」


 隣に立つ支援隊副隊長 安藤桃香が、呆れたように言う。


「分かってるわよぉ。でも事実でしょ?」


 世良は軽く笑いながら、鏡をしまった。


 その仕草一つとっても、場違いなほど軽い。


 だが、その場にいる誰もが、それを咎めることはなかった。


 それぞれが、それぞれの価値観でここにいる。


 それがSPМという組織だった。


 その時――


 扉が静かに開いた。


「す、すみません……遅れてしまって……」


 少しだけ息を切らしながら入ってきた男。


 特殊隊隊長 桜井晴彦だった。


 背は高くもなく、体格も特別優れているわけではない。


 どこにでもいそうな、弱々しい男。


 それが第一印象だった。


「……遅ぇ」


 凛堂が一瞥する。


「申し訳ありません……」


 桜井は小さく頭を下げる。


 そのまま、空いている席に静かに座った。


 それ以上、誰も何も言わない。


 まるで、最初からそこにいたかのように。


「……全員揃ったな」


 門脇が軽く姿勢を正す。


「じゃあ始めるか」


 場の空気が、少しだけ引き締まった。


「今回の議題は三つだ」


 門脇が指を立てる。


「一つ、フトゥーロという存在」


「二つ、ゲートとモンスターの件」


「三つ――黒瀬悠真」


 その名前が出た瞬間、数人の視線がわずかに動いた。


「……アイツか」


 凛堂が小さく呟く。


 その声には、明確な“興味”が含まれていた。


「知っているのか?」


 影山が問う。


「あぁ」


 凛堂はニヤリと笑う。


「一度やり合った」


 その一言で、空気がわずかに変わる。


「結果は?」


「負けてねぇよ」


 即答だった。


 だが――


「……勝ってもいねぇがな」


 続けた言葉は、どこか楽しそうだった。


「少なくとも、そこらの雑魚とは違う」


 その評価は、かなり高い。


「私も同意見だ」


 門脇が続く。


「戦力もそうだが、それ以上に――」


 一瞬、言葉を区切る。


「“統率力”がある」


 その言葉に、影山がわずかに眉を動かした。


「統率力?」


「あぁ」


 門脇は頷く。


「街を作ってる」


「……何?」


 世良が興味を示した。


「街って、あの状況で?」


「成立させてる」


 門脇は淡々と言う。


「人を集めて、機能させてる」


「ルールもあるし、秩序もある」


「……面白いわねぇ」


 世良が口元に手を当てる。


「それ、ちょっと欲しいかも♡」


「外部勢力は排除対象だ」


 影山が即座に言う。


「例外は認められない」


「でもぉ、有能なら取り込むのもありじゃない?」


「規律に反する」


 淡々とした応酬。


 意見は、綺麗に分かれていた。


 その時だった。


「……えっと」


 小さな声が、場に落ちた。


 桜井だった。


 全員の視線が、自然とそちらに向く。


 ほんの一瞬。


 ほんのわずかな沈黙。


 だが――


 誰もそれを“違和感”とは感じなかった。


「……えっと」


 桜井の声は、小さく、控えめだった。


 それなのに――


 場の視線は、自然と彼に集まっていた。


 誰かが促したわけでもない。


 命令されたわけでもない。


 ただ、“そうするのが当然”であるかのように。


「……どうした」


 凛堂が腕を組んだまま言う。


 苛立ちはある。


 だが、遮ることはしなかった。


 それもまた、自然な流れだった。


「い、いえ……その……」


 桜井は一瞬、言葉を選ぶように視線を落とす。


 弱々しい。


 頼りない。


 そんな印象のまま――


 ゆっくりと顔を上げた。


「地震の件は……」


 一拍。


 ほんの僅かな間。


「黒瀬悠真に、任せれば良いのではないでしょうか」


 その言葉は、静かだった。


 押し付けるような力もない。


 提案の形をしている。


 だが――


「……なるほどな」


 最初に頷いたのは門脇だった。


 軽く顎に手を当てる。


「確かに、あの規模の統治をやれてるなら……」


「任せるのが一番合理的か」


「……あぁ」


 凛堂も、特に疑問を挟まず頷く。


「勝手にやらせときゃいい」


「どうせ、やる気なんだろ」


 その言葉に、影山も短く答えた。


「合理性は認める」


「問題はない」


 世良も肩をすくめる。


「まぁ、他人に任せて綺麗にしてくれるなら楽でいいわよねぇ」


 結論は――あっさりとまとまった。


 誰も反論しない。


 誰も疑問を持たない。


 それが“自然”だった。


 桜井は、その様子を静かに見ていた。


 そして――


「では……その後ですが」


 再び口を開く。


 今度は、少しだけ迷いがない。


「彼を、こちらに連行しましょう」


 静かな提案。


 だが――


「……連行?」


 門脇が軽く繰り返す。


「そうです」


 桜井は頷く。


「この状況下で、あれほどの統率力と影響力を持つ存在は……」


「管理下に置くべきです」


 理屈は通っている。


 極めて合理的だ。


「……まぁ、放っておく理由もねぇか」


 凛堂が口角を上げる。


「強ぇなら尚更な」


「……妥当な判断だ」


 影山も肯定する。


 世良は軽く笑った。


「面白そうだし、賛成♡」


 誰も、違和感を持たない。


 その流れに、疑問を挟まない。


 それが“正しい判断”だと、自然に思えてしまう。


 そして――


 桜井は、さらに一歩踏み込んだ。


「そして……」


 ほんの僅か、間を置く。


「必要が無くなれば――排除する」


 静かだった。


 あまりにも自然に。


 あまりにも当然のように。


 その言葉が、場に落ちた。


「……あぁ」


 凛堂が、短く頷く。


「どうせなら、使えるだけ使ってからだな」


「同意する」


 影山が即答する。


 門脇も、特に表情を変えずに言った。


「了解だ」


 世良は軽く手を振る。


「はいはい、それでいいわよ〜」


 決定は、あまりにもあっさりだった。


 誰も迷わない。


 誰も止めない。


 それが“最適解”だと、疑いもなく理解している。


「では――」


 桜井が、静かに締める。


「その方針で進めましょう」


 その一言で、全てが決まった。


 会議は、そのまま終了した。


 椅子が引かれ、各隊長が立ち上がる。


 それぞれが、次の行動へ移るために部屋を後にしていく。


 凛堂は肩を鳴らしながら歩き出し、


 影山は無言で部下に指示を出し、


 世良は鏡を見ながら軽く髪を整え、


 門脇は軽くあくびをしながら出口へ向かう。


 誰一人として、“違和感”を抱くことなく。


 やがて、会議室には静寂が戻った。


 残っているのは――一人。


 桜井晴彦だけだった。


 扉が閉まる。


 完全な静寂。


 その中で――


 桜井の表情が、わずかに変わった。


 弱々しさは消え、


 代わりに浮かぶのは――


 冷たい、無機質な視線。


「……順調だ」


 ぽつりと呟く。


 その声には、先ほどまでの頼りなさは一切ない。


 静かで、確信に満ちていた。


「さて……」


 ゆっくりと立ち上がる。


 椅子が音もなく戻る。


「どこまで踊ってくれるかな」


 誰に向けたわけでもない言葉。


 だが――


 その目は、確かに“何か”を見据えていた。






SPМの隊長達やっと全員出てきましたね。

何かと不穏ですが……。

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