表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
52/167

揺らぎ ― 守るということ

第52話です。宜しくお願い致します。


 あれから、数日が経った。


 俺たちは――動き続けていた。


 避難民の救助。

 モンスターの討伐。

 街の拡張。

 やることは山ほどある。


 でも、その分――


(……確実に広がってるな)

 俺は高い建物の屋上から、周囲を見下ろしていた。

 ここは、もう“拠点”なんて規模じゃない。

 街だ。


 いや――それ以上かもしれない。


 市長のスキルで拡張された、500平方キロのテリトリー。

 その範囲に、俺たちの手が入っている。

 建物は整備され、道は綺麗に整えられ、住民は役割を持って動いている。

 遠くでは、子供の声も聞こえる。

 笑っている。

 この世界になってから、何度も失われたはずの音だ。

「……順調、か」

 小さく呟く。


 でも――


 その言葉に、自分で違和感を覚えた。

(……本当にそうか?)

 胸の奥に、引っかかるものがある。

 言葉にできない、何か。

 俺はそのまま屋上を降りた。


 ◇


 街の中を歩く。

 人が多い。

 とにかく、多い。

 役所の前には、今日も列ができていた。

「次の方どうぞー!」

「登録はこちらでー!」

 スタッフが必死に回している。

 だが、それでも追いついていない。

 人、人、人。

 助けを求める人。

 安心したい人。

 居場所を求める人。

 全員が、ここに集まってきている。

(……想定以上だな)

 分かっていたことではある。

 でも、実際に目の前にすると重みが違う。

「……悠真」

 後ろから声がした。

 振り返ると、浮田がいた。

「おう」

「どうだ?」

「どうって?」

 俺が聞き返すと、浮田は苦笑した。

「いや、この状況だよ」

 周囲を顎で示す。

「人、増えすぎだろ」

「……まぁな」

 否定はしない。

 できるはずもない。

「回ってはいるけどよ」

 浮田は少しだけ声を落とす。

「余裕はないな」

 その言葉に、俺は黙った。

 まさにその通りだったからだ。 


 ◇


 少し歩いた先で、声が上がった。

「ちょっと待ってくれよ!」

 男の声。

 思わずそちらを見る。

「なんで俺が後回しなんだよ!」


「順番に対応していますので――」


「そんなの関係ねぇだろ!」

 スタッフに詰め寄る男。

 周囲がざわつく。


 だが――


「……やめろよ」

 別の住民が間に入った。

「ここはみんな同じだろ」

「っ……」

 男は一瞬言葉を詰まらせる。


 そして――


「……悪い」

 小さくそう言って、下がった。

 空気が少し緩む。

(……崩れてはいない) 


 でも――


(……ギリギリだな)

 そう感じた。

「さっきの見たか?」

 浮田が小さく言う。

「あぁ」

「表面上は収まる。でもな」

 浮田はため息をつく。

「溜まってるぞ、あれ」

「……分かってる」

 短く返す。

 ああいうのは、一度じゃ終わらない。

 むしろ、これから増える。


 ◇


 さらに歩く。

 今度は別の場所。

「なんであいつらばっかり……」

 小さな声が耳に入った。

 思わず足を止める。


「危険な場所行くのは俺たちで、あいつらは後ろで――」


「やめとけって……聞こえるぞ」

 すぐに会話は止まった。

 だが、十分だった。

(……格差、か)

 超人族。

 戦えるやつ。

 そうじゃないやつ。

 役割分担。

 それは必要なことだ。


 でも――


(納得できるかどうかは別だよな)

 理解はできる。

 受け入れられるかは別。

 それが、人間だ。

「……悠真様」

 静かな声。

 チャン爺だった。

 いつの間にか後ろに立っている。

「どうした」

「少々、気になることが」

 チャン爺は周囲を一瞥する。

「空気が、変わってきております」

「……やっぱり分かるか」

「はい」

 即答だった。


「秩序は保たれております。しかし――」


 一拍置く。

「心は、揺らいでおります」

 その言葉は、妙に重かった。

 俺は、ゆっくりと息を吐いた。

(……これが、現実か)

 助けるだけじゃ、足りない。

 守るだけでも、足りない。

 人が増えれば、問題も増える。

 それは当たり前のことだ。


 でも――


「……どうする」

 小さく呟く。

 答えは、まだ出ない。


 ◇


 その時だった。


 ――ピコン。


 視界に、見慣れた画面が浮かび上がる。

 ステータス表示。


 だが――


(……なんだこれ)

 見慣れない項目が増えていた。


 ――ピコン。


 視界に浮かんだウィンドウ。

 俺は無意識にそれを開いた。

(……なんだこれ)

 見慣れたステータス。


 だが、その中に――明らかに“今まで無かった項目”が追加されていた。


■職業選択 Lv11

・市長 Lv2

【新規追加】

■支持率:73%


「……支持率?」

 思わず口に出る。

 数字が、静かに表示されている。

 73%。

 高いのか低いのか一瞬では判断できない。

「坊ちゃま」

 チャン爺が静かに声をかけてきた。

「見えておられるのですね」

「あぁ……」

 俺は頷く。

「これ、なんだと思う」

 そう聞くと、チャン爺は少しだけ目を細めた。


「恐らく――」


 一拍置く。

「この街に住まう者たちの“信頼”でございます」

「……信頼、か」

 もう一度、数字を見る。

 73%。


 つまり――


(全員が、信じてるわけじゃない)

 当たり前だ。

 見ず知らずのやつに、命預けろって言ってるようなもんだからな。


 でも――


(思ったより、低いな)

 正直な感想だった。

 もっと高いと思っていたわけじゃない。


 でも、さっきの光景を見た後だと――納得できてしまう。


「この数値は、変動する可能性が高いかと」

 チャン爺が続ける。


「状況、判断、統治――それら全てによって左右されるものと思われます」


「つまり……」

「坊ちゃまの“やり方”次第、でございます」

 シンプルな答えだった。

 だが、それだけに重い。

「……面倒なもん出てきたな」

 思わず苦笑する。

 レベル上げて強くなる、だけじゃない。

 人の心。

 それを相手にしなきゃいけない。

「ですが」

 チャン爺は、静かに続ける。

「これこそが、“市長”という立場に相応しい試練かと」

「……だろうな」

 否定はしない。

 むしろ、納得している。


 ◇


 その時だった。

 浮田が少しだけ真面目な顔で言う。

「なぁ」

「ん?」

「これさ……」

 周囲を見渡す。

「このまま増え続けたら、どうなると思う?」

 短い問いだった。 


 だが――答えは、簡単に出た。


「……崩れるな」

 即答だった。

「だよな」

 浮田も頷く。

「今はまだ、抑えられてる」

「でも、どっかで限界来るぞ」

「分かってる」


 だからこそ――


(ここで止めるか)

(それとも進むか)

 選ばなきゃいけない。

 ふと、頭をよぎる。


 あの道化師――フトゥーロの言葉。


『内部崩壊』

(……これか)

 違う場所で起きるって話だった。


 でも――


(条件は同じだ)

 人が増えれば、歪みが生まれる。

 それは、どこでも変わらない。

「……悠真様」

 チャン爺が、少しだけ声のトーンを落とす。


「もし、この支持率が大きく低下した場合――」


「どうなると思う?」

 俺が先に聞く。

 チャン爺は迷わず答えた。

「テリトリーの維持、あるいはスキルそのものに影響が出る可能性がございます」

「……マジかよ」

 それは、想像以上にまずい。


 つまり――


(ただの数字じゃないってことか)

 もう一度、街を見る。

 人がいる。

 笑ってるやつもいれば、疲れてるやつもいる。

 不満を抱えてるやつもいる。


 それでも――


 ここにいる。

 ここを選んでいる。


 ◇


「……全員は無理だな」

 ぽつりと呟く。

 誰にも聞こえないくらいの声で。  


 でも――


 はっきりと、自覚した。

「全員を満足させるなんて、できるわけねぇ」


 それでも――


「……守るしかねぇか」

 やることは変わらない。

 むしろ、はっきりした。

「方針、決める」

 俺は振り返って言う。

 浮田とチャン爺が、こちらを見る。

「無理に全員を抱え込まない」

「だが、切り捨ても簡単にはしない」

 バランスだ。

 それしかない。

「ルールは守らせる」

「その代わり、納得できる環境を作る」

 そう言いながら、俺は小さく息を吐いた。

「……やること増えたな」

「ですね」

 チャン爺が、静かに頷く。


 ◇


 その時だった。

 遠くで、小さなざわめきが起きた。

 誰かが言う。

「……聞いたか?」

「なんだよ」 


「SPМの方で――」


 一瞬、耳を疑う。

「何だか騒がしいらしいぞ……」

「……は?」

 思わず反応する。

 だが、声の主たちは気づいていない。

「まぁ、最近ゲートも増えてきたって聞くしな……」

「だよな、怖い怖い……」

 その会話は、すぐに別の話題に流れた。

(何だろう……)

(少し、嫌な予感がするな……)

 悠真は空を見上げた。


 さっきまでと同じ空のはずなのに――


 少しだけ、重く感じた。

「……俺は」

 小さく呟く。

「どこまで守れるんだろうな」

 答えは、まだ出ない。


 だが――


 止まるわけにはいかなかった。

読んで頂きありがとうございます!!

この作品が『面白い!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになりますので、良かったら宜しくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
半径500キロだったり、500キロ平方メートルだったりしてよくわかりません。 最初期、村長になった時表記が半径1キロであったなら、その頃の表現は正しく感じますが、途中平方キロメートルの表記が正しい、に…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ