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世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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再会 ― 家族という帰る場所

第51話です。宜しくお願い致します。



役所の担当者の言葉を聞いた瞬間、空気が止まった。


「……は?」


 自分でも間抜けな声だと思った。


 だが、それくらい現実感がなかった。


 陸斗と美咲の――両親?


 そんな都合のいい話があるのか?


 いや、この世界になってから“都合のいい話”なんて一度もなかっただろ。


 だからこそ、逆に引っかかる。


「……本当、なのか?」


 思わず聞き返すと、担当者は困ったように頷いた。


「ご本人達はそう名乗っています……」


「……」


 隣を見る。


 美咲は――


「ママ……パパ……?」


 呆然としたまま、小さく呟いていた。


 その目は、もう信じかけている。


 いや、信じたいんだろう。


 一方で陸斗は、真逆だった。


「……確認した方がいいですね」


 声は落ち着いている。


 だが、ほんの少しだけ硬い。


 分かる。


 こいつは、簡単に信じない。


 信じて裏切られるのが怖いんだ。


 この世界じゃ、それが普通だ。


「……行くぞ」


 俺は短く言った。


「阿川」


「おう、任せろ」


 阿川が前に出る。


「スキル、“配管工”」


 空間に、あの巨大な配管が現れる。


 もう見慣れた光景だが――今日は少し違った。


 美咲が、一歩前に出る。


 でも、その足が一瞬止まる。


「……美咲」


 俺が声をかける前に、陸斗が言った。


「行こう」


 短く、それだけ。


 でも十分だった。


 美咲は強く頷く。


「うん!」


 そして、三人で配管の中へ踏み込んだ。


 一瞬で、景色が変わる。


 役所の中。


 人の気配。


 少しざわついた空気。


 だが、その中でも――


 すぐに分かった。


「あそこだ」


 担当者が指さす先。


 そこに、二人の男女が立っていた。


 少しやつれた顔。


 だが、その目は――


「……」


 俺は、何も言わずにその様子を見た。


 母親が、最初に気づいた。


 ゆっくりと顔を上げて――


 そして、固まる。


「……え……?」 


 震えた声。


 信じられないものを見るような目。


 その視線の先には――


 陸斗と、美咲。


「……陸斗……?」


 次に、名前を呼ぶ。


 そして――


「美咲……?」


 その瞬間。


 美咲の体が、ビクッと震えた。


 そして次の瞬間。


「ママァァァ!!」


 叫ぶように声を上げて、走り出した。


 迷いなんて、一切なかった。 


涙をぼろぼろ流しながら、一直線に母親へ飛び込む。


「ママぁぁ……!」


「美咲……!」


 母親も、崩れるようにしゃがみ込んで抱きしめる。


 強く。


 本当に強く。


 壊れそうなくらいに。


「会いたかった……!」


「ごめんね……ごめんね……!」


 泣き声が、重なる。


 言葉になっていない部分の方が多い。


 それでも、全部伝わっているのが分かる。


 父親も、すぐに近づいてきた。


そして、そのまま二人を包み込むように抱きしめる。


「……無事でよかった」


 低く、抑えた声。


 でも、その中に詰まっているものは大きかった。


 しばらく、そのままの状態が続く。


 誰も口を挟まない。


 空気が、そこだけ別のものになっていた。


 ――家族。


 それだけで説明できる空気。


 そんな中で。


 陸斗は、少しだけ離れた場所に立っていた。


 手を握りしめて。


 何も言わずに、その光景を見ている。


 近づきたいはずだ。


 でも、足が動かない。


 そんな感じだった。


 その時。


「何してる」


 父親の声が、真っ直ぐに届いた。


 陸斗の体が、ビクッと反応する。


「陸斗」


 もう一度呼ぶ。


「お前もこっちに来い」


 その声は、強くはない。


 でも、迷いがなかった。


 陸斗は一瞬だけ俯く。


 そして――


「……うん」


 小さく答えた。


 ゆっくりと、一歩踏み出す。


 そして、そのまま父親の前まで来る。


 一瞬の間。


 何かを言おうとしたのかもしれない。


 でも――


 言葉になる前に。


 父親が、陸斗を抱きしめた。


 その瞬間。


「っ……!」


 陸斗の体が、強張る。


 だが、それも一瞬だった。


「……!」


 何かが、切れた。


 張り詰めていたものが。


 一気に。


「……っ……」


 声にならない声が漏れる。


 次の瞬間――


「……うっ……!」


 陸斗が、崩れた。


 そのまま父親の胸に顔を埋めて、泣き出す。


 堰を切ったように。


 抑えきれないように。


 ただ、泣く。


「……っ……!」


 言葉にならない。


 でも、それで十分だった。


 今まで、どれだけ無理をしていたか。


 どれだけ背負っていたか。


 全部、そこに出ていた。


 父親は、何も言わずに背中を叩く。


 そして、少しだけ間を置いて――


「よくやった」


 静かに言った。


「美咲を守ったんだろ」


 その言葉に、陸斗の肩が大きく揺れる。


「……偉かったな」


 その一言で。


 完全に崩れた。 


 声を上げて、泣き始める。


 子供みたいに。


 いや――


 最初から、子供だったんだ。


 ずっと。


 無理して、大人みたいに振る舞っていただけで。


 俺は、その光景を少し離れた場所から見ていた。


 何も言わずに。


 ただ、見ていた。


 胸の奥が、じんわりと温かくなる。


「……」


 思わず、小さく息を吐く。


 安心した。


 心の底から。


 こいつらは、ちゃんと帰れる場所があったんだなって。


 それと同時に――


 少しだけ、思う。


 俺の家族とは、大違いだなって。


 こんな風に、全力で抱きしめて。


 全力で喜んで。


 全力で受け止めてくれる。


「……いいな」


 小さく呟いた。


 でも、嫌な気分じゃない。


 むしろ――


 良かったと思えた。


 あいつらが、ちゃんとこうやって笑えるなら。


 それでいい。


 俺は、静かにその場を離れた。


 今は――


 あいつらの時間だ。


あの日は、結局そのまま家に戻った。


 役所から出た後も、陸斗と美咲は両親とずっと一緒にいた。


 俺は何も言わなかった。


 言う必要もなかった。


 ただ、あいつらの表情を見れば分かる。


 あれだけで、十分だった。


 そして――翌日。


 朝、いつものようにリビングに向かうと、少しだけ空気が違った。


 柔らかいというか、穏やかというか。


 そんな感じだ。


 扉を開ける。


 すると――


「……あ」


 そこに、二人の姿があった。 


 昨日の、父親と母親。


 そして、陸斗と美咲も一緒にいる。


「おはよう」


 軽く声をかけると、陸斗が少し照れたように返してきた。


「……おはよう」


昨日のことがあったからか、どこか落ち着いている。


 無理に気を張っている感じがない。


 それだけで、十分変化だった。


 すると、父親と母親がこちらに向き直った。


 そして――


「黒瀬さん、ですよね」


 父親が、丁寧に頭を下げる。


 母親も同じように頭を下げた。


「本当に……ありがとうございました」


 深く。


 迷いなく。


それだけで、この人がどんな人間か分かる気がした。


「この子達から、全部聞きました」


「ここまで助けて頂いて……」


 言葉を詰まらせながらも、必死に伝えようとしてくる。


 母親の方も、目を潤ませていた。


「本当に、感謝しています……」


 その言葉に、俺は少しだけ苦笑した。


「いえいえ……」


 手を軽く振る。


「助けたのは俺だけじゃないです」


 視線を横に向ける。


 未来。


 浮田。


 ルドルフ。


 阿川。


 そして、ここにいる全員。


「みんなでやってきたことなんで」


 そして、少しだけ視線を陸斗と美咲に戻す。


「むしろ――」


「こっちの方が助けられてますよ」


 そう言うと、父親と母親は少し驚いたような顔をした。


 でも、すぐに優しく笑った。


「……いい仲間に恵まれているんですね」


「はい」


 即答だった。


 これは、間違いない。


「それより」


 俺は少し空気を変えるように言った。


「せっかくなんで、今日は一緒に夕食でもどうですか?」


 その一言で、美咲の顔がぱっと明るくなる。


「え!いいの!?」


「いいに決まってるだろ」


 軽く笑うと、美咲は嬉しそうに父親と母親の方を見た。


「ママ!パパ!ご飯一緒に食べよ!」


「……あぁ」


 父親も、少しだけ照れくさそうに頷く。


「ぜひ、お願いします」


 母親も柔らかく答えた。


 その日の夜。


 リビングは、いつも以上に賑やかだった。


「すごい……こんなに人が……」


 母親が少し驚いたように周囲を見る。


 未来や芹沢が普通に会話しているのを見て、少し安心したような顔もしていた。


「ここが、今の拠点です」


 軽く説明すると、父親が深く頷く。


「……よく、ここまで」


「まぁ、なんとかって感じです」


 正直なところだ。


「ねぇ見て!これすっごく美味しいの!」


 美咲がはしゃぎながら料理を持ってくる。


「ママも食べて!」


「ありがとう、美咲」


 母親が微笑みながら受け取る。


 その光景だけで、なんかもう十分だった。


「陸斗、ちゃんと食べてるか?」


 父親が少し真面目な顔で聞く。


「食べてるよ」


「本当か?」


「本当だって」


 少しだけ照れながら答える陸斗。


 昨日とはまた違う顔だった。


 年相応の、普通の少年の顔。


 それを見て、俺は少しだけ安心する。


「悠ちん、今日は私も手伝ったのよ♡」


 芹沢がいつもの調子で言ってくる。


「余計なことしてないだろうな……」


「ひどーい♡」


 未来がその横でため息をつく。


「はいはい、いつものやつね」


 そんなやり取りを見て、母親が小さく笑った。


「本当に……賑やかなんですね」


「まぁ、騒がしいのは否定しないです」


 俺も苦笑する。


 でも――


 悪くない。


 本当に。


 食卓には、笑い声が絶えなかった。


 父親と母親も、最初は少し緊張していたが、徐々に打ち解けていく。


 未来や浮田も自然に会話に入っていくし、チャン爺や一葉たちも静かにサポートしている。


 その光景を見ながら、俺は思った。


(……こういうのか)


 守りたかったもの。


 取り戻したかったもの。


 それは、こういう時間なんだろうなって。


 戦いじゃなくて。


 スキルでもなくて。


 ただ、みんなで飯を食って、笑ってる時間。


「……悪くないな」


 小さく呟く。


 誰にも聞こえないくらいの声で。


 でも――


 確かに、そう思った。


 この日。


 俺たちの拠点は、また少しだけ“家族”が増えた気がした。





少しだけ説明すると、陸斗と美咲と母親は世界崩壊の日にショッピングモールに出かけていて、ゲートが出現。

パニックになり、母親と逸れる事になります。

父親はその日、仕事に行っていたのでそのまま逸れてしまうという流れです。

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