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世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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束の間の日常

第47話です。宜しくお願い致します。


 さっきまでの地獄みたいな戦場が、嘘みたいに静かだった。


「……終わった、か」


 思わず、そんな言葉が口から漏れる。 


 だが、誰もすぐには返事をしなかった。


 全員が、同じことを考えていたんだと思う。


 本当に終わったのか、と。


 もう復活しないのか、と。


 ――ようやく。


「……あぁ」


 凛堂が、小さく息を吐いた。


「今回は、な」


 その言葉で、ようやく全員の肩の力が少し抜けた。


 俺は、ゆっくりと凛堂の方へ歩み寄る。


「……今回は一緒に戦ってくれて助かったよ」


 正直な気持ちだった。


 あいつらがいなかったら、どうなっていたか分からない。


「感謝するよ……」


 凛堂は、俺を見て――ニヤッと笑った。 


「俺達の使命でもあるからな」


 相変わらず、堂々とした言い方だ。


「こちらもお前達が居なかったら、厳しい戦いになっていただろうな!」


 少しだけ、嬉しそうにすら見えた。


「何かあったら、また頼ってもらってもいいぞ!」


 その言葉に、俺は小さく笑う。


「あぁ、そちらもな……」


 完全に敵、ってわけでもない。


 でも、仲間とも違う。 


 そんな不思議な距離感だった。


「お前等最高に熱かったな!」


 後ろから、柿原の大きな声が飛んできた。


 振り向くと、満面の笑みでこっちを見ている。


「またな!」


 まるで友達みたいな軽さで手を振る。


「……あぁ、またな」


 思わずそう返していた。


 凛堂が踵を返す。


「行くぞ」


 その一言で、強襲隊の空気が一瞬で切り替わる。


 整然とした動き。


 無駄のない足取り。


 まるで最初から決まっていたかのように、隊はその場を後にしていった。


 やっぱり、あいつらは軍隊だな。


 そう思いながら、その背中を見送る。


「……さて」


 今度は、門脇が軽く肩をすくめた。


「お前等も、どんどん色んな事が起こって災難だな……」


 苦笑い。


 本当に、心底そう思ってそうな顔だった。


「全くだ……」


 俺も同じように返す。


 笑うしかない。


「まぁ、私達も他人事ではないからな」


 門脇は、少しだけ真面目な顔になる。


「こちらはこちらで、また話し合いをしておくよ」


あいつなりに、ちゃんと状況を考えているんだろう。


「では、一旦達者でな……」


「あぁ、色々助かったよ」


 俺は軽く手を上げる。


「またな」


「お前等も意外と面白いやつ多いからなぁ〜」


 犬飼が、のんびりした声で言う。


「また会う時が楽しみだなぁ〜」


 あいつは、緊張感があるのかないのかよく分からない。


 でも――嫌な感じはしない。


「……あぁ」


 俺は少しだけ笑った。


 門脇が背を向ける。


 それに続いて、戦術隊も動き出す。


 強襲隊とは違って、少しラフな雰囲気。


 だが、それでもまとまりはしっかりしていた。


 やがて――


 全員の姿が見えなくなる。


 残ったのは、俺達だけだ。


 静寂。


 さっきまでの喧騒が、嘘みたいだった。


「……これから、大変そうですね」


 陸斗が、ぽつりと呟いた。


 いつも通り落ち着いた声。


 でも、その奥にある現実は重い。


「私が居るから大丈夫よ♡」


 即座に返したのは芹沢だ。


 自信満々。


 というか、無駄に余裕がある。


「……私も居るから大丈夫!」


 未来が、間髪入れずに言い返す。 


 そして――


 芹沢を睨む。 


 バチバチだな、おい。


「ふふ♡」


 芹沢は余裕の笑みで受け流す。


 ……火種になりそうだなこれ。


「本当か分からないのに、本当にやるのか……?」


 浮田が、少し低い声で言った。


 現実的な疑問。


 当然だ。


「……あぁ」


 俺は頷く。


「後悔はしたくないからな」


 それだけだ。


 シンプルに、それだけ。


 浮田は、少しだけ俺を見て――


 小さく息を吐いた。


「お前が決めたんなら、俺達はついていくだけだ……」


 その言葉に、他のみんなも頷く。


 陸斗も。


 未来も。


 色谷も。


 芹沢も。


 チャン爺も。


 全員が、何も言わずに。


「……ありがとう」


 思わず、口に出ていた。


「俺の無茶に、また巻き込んでしまって……」


 正直な気持ちだった。


 でも――


「坊ちゃま」


 チャン爺が、静かに一歩前に出る。


「坊ちゃまをサポートするのが、私達の仕事でございます」


 落ち着いた声。


 いつも通りの、揺るがない言葉。


「仰せのままに」


 一葉。


「仰せのままに」


 二葉。


「仰せのままに」


 三葉。


 無機質で、揃った声。


 そこに感情はない。


 だが――それが逆に、頼もしさを感じさせた。


「……すまない」


 俺は、小さく笑う。


「お前達を頼らせて貰うよ」


 誰も否定しなかった。


 それだけで、十分だった。


「……帰るか」


 俺がそう言うと、全員が頷いた。


 戦場を後にする。


 足取りは、少しだけ重い。


 でも――


 確実に前に進んでいた。


 拠点に戻ると、空気が一気に変わった。


「おかえり!」


 美咲の声。


 それだけで、なんか安心する。


「……ただいま」


 思わず、そう返していた。


 ルドルフと阿川も、すぐに集まってくる。


 俺は、さっきまでのことを簡単に説明した。


 ゲートのこと。


 モンスターのこと。


 そして――フトゥーロのこと。


「……そんなことが」 


 ルドルフが、静かに呟く。


「未来の話……か」


 阿川は腕を組んで考え込む。


「信じるかどうかは別として……準備は必要だな」


 やっぱり、同じ結論に辿り着く。


「あぁ」


 俺は頷く。


「でも――今日はもういい」


 全員を見る。


 疲労が、はっきりと見えていた。


「今日は休む」


 誰も反対しなかった。


 それだけ、消耗している。


 こうして―― 


 俺達は、それぞれの時間を過ごすことになった。


リビングのソファに腰を下ろした時、ようやく――全身の力が抜けた。


 戦いが終わった実感が、遅れてやってくる。


「……はぁ」


 小さく息を吐く。


 隣には、ルドルフ。


 いつもの無表情に近い顔だが、ほんの少しだけ疲れが見えた。


「今日は……中々の戦いでしたね」


「あぁ、マジでな」


 苦笑いが出る。


「……あれが、まだ序の口かもしれないってのがな」

 俺がそう言うと、ルドルフは一瞬だけ目を細めた。 


「だからこそ、準備が必要なのでしょう」


 淡々とした言葉。


 でも、重みがあった。


「……だな」


 俺はリモコンを手に取る。


「まぁ、今は考えるのやめる」


 電源を入れる。


 テレビ画面が光る。


「アニメでも観るか」


「……良いと思います」


 ルドルフが小さく頷く。


 こうして、いつも通りの時間が始まる。


 戦いなんて、なかったみたいに。


 一方その頃。


「ここでそれ切るの!?ちょっと待って!」


 未来の声がリビングの反対側から響く。


「最適解です」


 陸斗は冷静だ。


 ボードゲームの盤面を見ながら、一切迷いがない。


「いやいや、それはズルいでしょ!」


 未来が机に身を乗り出す。


「ルール内です」


 淡々と返す陸斗。


 完全に理詰めプレイだ。


「ねぇねぇ!これどうすればいいの!?」


 横から美咲がカードを持って騒いでいる。


 盤面はぐちゃぐちゃ。


 完全に初心者だ。


「えっと……美咲ちゃんはそれ出した方がいいかも」


 未来が少し優しくフォローする。


「これー?」


「はい、その方が良いかと」


 チャン爺も静かに助言する。


「わかったー!」


 美咲が勢いよくカードを出す。


 ――結果。


「……あっ」


 盤面が一気に崩れる。


「ちょっと美咲!?」


「え!?ダメだった!?」


 未来が頭を抱える。


 美咲はキョトン顔。


「……」


 一方で、一葉と二葉は無言で盤面を見ていた。


 そして――


 スッ、とカードを出す。


 無駄がない。


 感情もない。


 ただ、最適な手。


「……え?」


 未来が固まる。


「それ……強すぎない?」


 返事はない。


 ただ、淡々と次の行動に移る。


「……」


 陸斗が、ほんの少しだけ目を細める。


「……最適です」


 認めた。


 完全に“機械的に強い”やつだこれ。


「……なんか悔しい!」


 未来が机を叩く。


「でも楽しいね!」


 美咲が満面の笑みで言う。


 その一言で、空気が少し柔らいだ。


 チャン爺が小さく微笑む。


 ――平和な時間だった。


 しばらくして――


 未来は一人、部屋に戻っていた。


 ベッドに腰を下ろし、本を開く。


 ページをめくる音。


 静かな空間。


(……さっきの戦い)


 一瞬だけ、思い出す。


 スケルトンキング。


 何度も蘇る絶望。


 それでも――


(……負けなかった)


 小さく息を吐く。


 そして、ページをめくる。


(……もっと強くならないと)


 そう思いながらも――


 今は、少しだけ。


 静かな時間に身を委ねた。


「はぁぁぁぁ……」


 5階の大浴場。


 湯気が立ち込める中、浮田が大きく息を吐いた。


「生き返るな、これ……」


「だなぁ」


 阿川も肩まで湯に浸かりながら頷く。


「今日はマジでヤバかったみたいだな……」


「……あぁ」


 浮田は天井を見上げる。


「患者が出た時、ちょっとヒヤッとしたわ」


「でも助けたんだろう?」


「まぁな」


 軽く笑う。


「医者だからな」


 その一言に、少しだけ重みがあった。


 阿川はそれ以上何も言わなかった。


 ただ――


「……なんとかなるか」


 ぽつりと呟く。


「だな」


 浮田も同意する。


 深く考えすぎても仕方ない。


 今は――湯に浸かるだけだ。


 3階、スポーツジム。


 ダンッ――!!


 重い音が響く。


 色谷が、バーベルを持ち上げる。


 汗が滴る。


 呼吸が荒い。


 それでも、止まらない。


「……今日は疲れたから軽めにしておくか。」


 ボソッと呟く。


 もう一度、バーベルを握る。


 ダンッ!!


 音が、静かなフロアに響いた。


「はぁ〜♡最高〜♡」


 別の部屋では、芹沢がベッドに横たわっていた。


「三葉ちゃん、そこもうちょっと強めでお願い♡」


「了解しました」


 三葉は無表情で応じる。


 手の動きは正確。


 無駄がない。


「ん〜♡プロねぇ♡」


 完全にリラックスモードの芹沢。


「悠ちんもこれ受けたら絶対ハマるわねぇ♡」


 そんなことを言いながら、満足そうに目を閉じる。


 三葉は何も答えない。


 ただ、命令通りに施術を続けるだけだ。


 そこに感情はない。


 だが、その“完璧さ”が逆に心地よかった。


 それぞれが、それぞれの時間を過ごす。


 戦いを忘れるように。


 いや――


 ほんの少しだけ、遠ざけるように。


 テレビの光が、ぼんやりと部屋を照らす。


 笑い声。


 ページをめくる音。


 湯の音。


 鉄の音。


 静かな息遣い。


 全部が混ざって――


 この場所は、確かに“日常”だった。


(……今だけは)


 俺は、ソファに深く沈みながら思う。


(全部、忘れていい)


 戦いも。


 厄災も。


 未来の話も。


 全部。


 今だけは。


 だが――


 分かっている。


 これは、終わりじゃない。


 むしろ――始まりだ。


(……やるしかねぇか)


 目を閉じる。


 ほんの少しだけ、休む。


 次に動くために。


 ――嵐の前の、静かな夜だった。





日常回を描くとキャラクター増えたな……って思いますね。

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