終わりの先にいるモノ
第45話です。宜しくお願いします。
一体、倒した。
確かに、消えた。
だが――
「……」
俺は、まだその事実を受け入れきれていなかった。
目の前では、相変わらずスケルトンキングたちが暴れ回っている。
骨の巨体。
振り下ろされる大剣。
地面が抉れ、建物が揺れる。
戦場は、何も変わっていない。
なのに――たった一つだけ。
“消えた個体がある”という違和感だけが、異様に浮いていた。
「陸斗!」
「はい!」
陸斗が前に出る。
いつも通りの冷静な返事。
だが、その目は明らかに考えていた。
「さっきの……」
「……分かりません」
即答だった。
「ですが……」
一瞬だけ視線が落ちる。
「同じ個体に対して、何度も攻撃していたのは確かです」
「……何度も、か」
俺は低く呟く。
◇
その間にも、一体がこちらへ突っ込んできていた。
「来るぞ!!」
「準備」
陸斗の声。
光が収束する。
「光線」
十本の光が放たれる。
一直線。
迷いのない軌道。
だが今回は――分散しない。
一体へ集中。
ズガァァァァァン!!!
スケルトンキングの上半身が吹き飛ぶ。
骨が散る。
粉砕。
完全な破壊。
……だが。
やはり、骨は動き出す。
「……」
陸斗は無言のまま、それを見ていた。
焦りはない。
ただ、観察している。
その姿に、俺は少しだけ違和感を覚えた。
(こいつ……戦いながら考えてるな)
普通なら、もっと焦る。
もっと叫ぶ。
だが陸斗は違う。
“戦闘中に検証している”。
その間にも、骨が再構築される。
そして再び、王が立ち上がる。
「……もう一回いきます」
陸斗が静かに言った。
同じ個体に向かって。
◇
「どけェェェ!!」
横から凛堂が突っ込む。
拳。
爆音。
ドォン!!!
スケルトンキングの顔面が吹き飛ぶ。
そのまま連撃。
肋骨。
腕。
脚。
徹底的に叩き潰す。
「何回でも来いよ!!」
叫びながら、さらに殴る。
崩れる。
砕ける。
――だが。
骨が、また動き出す。
「チッ……!」
凛堂が苛立ちを露わにする。
再び拳を叩き込む。
ドォン!!!
また砕ける。
また戻る。
「しつけぇんだよ!!」
三回。
四回。
五回。
数なんて数えていない。
ただ、目の前の敵を“壊す”。
それだけだ。
そして――
「……あ?」
六回目。
拳がめり込み、骨が完全に砕け散る。
そのまま、凛堂は次の動きに移ろうとして――
止まった。
……動かない。
骨が、戻らない。
「……おい」
低い声。
さっきまで確実に復活していたそれが、今はただの残骸として転がっている。
「……消えたぞ……?」
◇
「門脇さん!!」
戦術隊の声。
門脇が一歩前に出る。
いつも通りの、やる気のなさそうな顔。
「……面倒だな」
だが、手は止まらない。
「“ガチャカプセル”」
空中にカプセルが出現。
スケルトンキングへ直撃。
圧縮。
封印。
中で暴れる骨の王。
「犬飼」
「はい!!」
犬飼が即座に反応する。
腕が変形。
獣の筋肉。
そのまま――全力で叩き込む。
ドガァァァン!!!
カプセルの中で粉砕。
そして、カプセル解除。
骨が散る。
……再生。
またカプセル。
また粉砕。
また再生。
これを繰り返す。
そして――
「……」
六回目。
粉砕後。
骨が、動かない。
「……やっぱりか」
門脇が、ぼそっと呟く。
その声は、妙に確信に満ちていた。
「……まさか」
門脇がゆっくりと口を開く。
周囲の視線が、一斉に集まる。
「単純な話じゃねぇのか?」
軽く肩を回しながら言う。
「コイツら――」
一体の消えた跡を見る。
「復活回数に上限がある」
その一言で、空気が変わった。
「……」
誰もすぐには理解できない。
だが、次の言葉で確信に変わる。
「俺が今倒したのは……ちょうど6回目だ」
「つまり――」
一瞬、間。
「復活は5回まで」
◇
全員が、その意味を理解する。
俺は、思わず息を吐いた。
「……成る程な」
苦笑いが漏れる。
今までの絶望が、少しだけ馬鹿らしくなるくらい単純な答え。
「ってことは――」
俺は前を見る。
まだ動いているスケルトンキングたち。
「シンプルだな」
小さく笑う。
「倒しまくればいいって事か」
「はは……なるほどなァ!!」
凛堂が、歯を見せて笑う。
さっきまでの苛立ちはもう消えていた。
代わりにあるのは――純粋な“闘志”。
「回数制ってわけか!!」
拳を握る。
「なら簡単だな!!」
一歩踏み出す。
「オレの得意分野だ!!」
その声に、周囲の空気が一気に変わった。
さっきまでの重苦しい空気が、嘘みたいに軽くなる。
理由は単純だ。
“終わり方が分かった”。
それだけで、人間はここまで変われる。
◇
「行くぞ!!」
俺も叫ぶ。
「同じ個体を集中して削れ!! 回数を稼げ!!」
全員の動きが、明確に変わった。
ただ壊すだけじゃない。
“狙って削る”戦いへと切り替わる。
「未来!!」
「任せて!!」
未来が前に出る。
その目は、さっきまでと違って迷いがない。
「“動植物図鑑”」
空間が歪む。
そして――
現れる。
巨大な影。
10メートル級の肉体。
「……マジかよ」
俺は思わず呟いた。
そこにいたのは――
「ジャイアントオーガ……!」
前回戦った、Bランクモンスター。
それが、未来の背後に立っていた。
「行って!!」
未来の一声。
ジャイアントオーガが、スケルトンキングへ突っ込む。
拳。
重量。
純粋な暴力。
ドォォォン!!!
骨の巨体が吹き飛ぶ。
「すご……!」
誰かが呟く。
さらに追撃。
押し倒す。
叩き潰す。
回数を一気に削る。
「これなら……!」
未来が叫ぶ。
「一気にいける!!」
◇
「ヒャッハァァァァ!! 祭りだァァァ!!」
アルが完全にテンションMAXで突っ込む。
ドドドドドドド!!!
弾幕。
骨が削れる。
砕ける。
そしてすぐに次弾。
「ソックス!! 回数稼ぐぞ!!」
「……了解です」
ソックスが冷静に対応する。
一発。
一発。
確実に関節を破壊。
無駄がない。
アルが削り、ソックスが仕留めに繋げる。
「いい流れだ!!」
俺は思わず叫ぶ。
戦況が明らかに変わっていた。
◇
「――ボウリング場!!」
色谷が再びスキル発動。
複数体固定。
「今度こそ終わりだァァァ!!」
ボールが転がる。
ドゴォォォォン!!!
まとめて粉砕。
そして――
「まだ終わんねぇ!!」
さらにもう一球。
ドォォン!!
三回。
四回。
五回。
「あと一回だ!!」
周囲から声が飛ぶ。
そして――
六回目。
ドガァァァン!!!
骨が砕け――
今度は、戻らない。
「よっしゃァァァ!!」
色谷がガッツポーズを決める。
「これだ!! これが正解だ!!」
「“ラブレター”♡」
芹沢がスキル発動。
紙飛行機が飛ぶ。
命中。
「私のこと、愛してちょうだい♡」
一体のスケルトンキングが止まる。
そのまま別個体へ攻撃。
ガンガン削っていく。
「ほらほら♡ もっと働いて♡」
その間に別のメンバーが追撃。
回数を稼ぐ。
そして――撃破。
「ふふ♡ 完璧♡」
芹沢が満足そうに笑う。
◇
「チャン爺!」
「お任せくださいませ」
姿が消える。
次の瞬間、連続斬撃。
シュンッ――
シュンッ――
シュンッ――
見えない速度で回数を稼ぐ。
無駄が一切ない。
そして最後は――
スッ……
納刀。
同時に、骨が崩れ落ちる。
そのまま、再生しない。
「処理完了にございます」
一葉、二葉、三葉も同様だった。
「対象を排除いたします」
「制圧行動に移行」
「近接処理開始」
感情のない声。
だが動きは完璧。
連携。
精密。
確実に回数を削る。
そして――撃破。
淡々と。
機械のように。
「……はは……」
気付けば、笑っていた。
さっきまでの絶望が、嘘みたいだった。
やる事はシンプル。
回数を数えて、削るだけ。
◇
「いける……!」
誰かが叫ぶ。
そして全員が、それに続く。
戦場が一気に変わる。
もう押されていない。
完全に――押している。
最後の一体。
スケルトンキング。
囲まれている。
「行くぞ!!」
俺が叫ぶ。
門脇がカプセルで拘束。
犬飼が削る。
陸斗が光線で貫く。
凛堂が拳を叩き込む。
未来のオーガが押さえつける。
全員の連携。
そして――
「これで終わりだァァァ!!」
ドォォォォン!!!
完全破壊。
……数秒。
誰も動かない。
そして。
骨が――動かない。
「……終わった……?」
誰かが呟く。
沈黙。
そして――
「……終わった」
俺が言った。
◇
――パチ、パチ、パチ。
拍手。
後ろから。
ゆっくりと。
場違いなほど、軽やかな音。
全員が振り向く。
そこに――いた。
空中に浮かぶ男。
スーツ姿。
顔には、道化師のメイク。
笑っている。
だが――
人間じゃない。
一目で分かる。
“異質”。
「いやぁ……素晴らしい」
男が、口を開く。
声はやけに軽い。
「実に実に……素晴らしい戦いだった」
ニヤリと笑う。
全員が、動けない。
さっきまでの戦いとは、次元が違う。
そんな“気配”があった。
男は、楽しそうに言った。




