終わりの先にいるモノ
第45話です。宜しくお願いします。
―― 一体、倒した。
確かに、消えた。
だが――
「……」
俺は、まだその事実を受け入れきれていなかった。
目の前では、相変わらずスケルトンキングたちが暴れ回っている。
骨の巨体。
振り下ろされる大剣。
地面が抉れ、建物が揺れる。
戦場は、何も変わっていない。
なのに――たった一つだけ。
“消えた個体がある”という違和感だけが、異様に浮いていた。
「陸斗!」
「はい!」
陸斗が前に出る。
いつも通りの冷静な返事。
だが、その目は明らかに考えていた。
「さっきの……」
「……分かりません」
即答だった。
「ですが……」
一瞬だけ視線が落ちる。
「同じ個体に対して、何度も攻撃していたのは確かです」
「……何度も、か」
俺は低く呟く。
その間にも、一体がこちらへ突っ込んできていた。
「来るぞ!!」
「準備」
陸斗の声。
光が収束する。
「光線」
十本の光が放たれる。
一直線。
迷いのない軌道。
だが今回は――分散しない。
一体へ集中。
ズガァァァァァン!!!
スケルトンキングの上半身が吹き飛ぶ。
骨が散る。
粉砕。
完全な破壊。
……だが。
やはり、骨は動き出す。
「……」
陸斗は無言のまま、それを見ていた。
焦りはない。
ただ、観察している。
その姿に、俺は少しだけ違和感を覚えた。
(こいつ……戦いながら考えてるな)
普通なら、もっと焦る。
もっと叫ぶ。
だが陸斗は違う。
“戦闘中に検証している”。
その間にも、骨が再構築される。
そして再び、王が立ち上がる。
「……もう一回いきます」
陸斗が静かに言った。
同じ個体に向かって。
「どけェェェ!!」
横から凛堂が突っ込む。
拳。
爆音。
ドォン!!!
スケルトンキングの顔面が吹き飛ぶ。
そのまま連撃。
肋骨。
腕。
脚。
徹底的に叩き潰す。
「何回でも来いよ!!」
叫びながら、さらに殴る。
崩れる。
砕ける。
――だが。
骨が、また動き出す。
「チッ……!」
凛堂が苛立ちを露わにする。
再び拳を叩き込む。
ドォン!!!
また砕ける。
また戻る。
「しつけぇんだよ!!」
三回。
四回。
五回。
数なんて数えていない。
ただ、目の前の敵を“壊す”。
それだけだ。
そして――
「……あ?」
六回目。
拳がめり込み、骨が完全に砕け散る。
そのまま、凛堂は次の動きに移ろうとして――
止まった。
……動かない。
骨が、戻らない。
「……おい」
低い声。
さっきまで確実に復活していたそれが、今はただの残骸として転がっている。
「……消えたぞ……?」
「門脇さん!!」
戦術隊の声。
門脇が一歩前に出る。
いつも通りの、やる気のなさそうな顔。
「……面倒だな」
だが、手は止まらない。
「“ガチャカプセル”」
空中にカプセルが出現。
スケルトンキングへ直撃。
圧縮。
封印。
中で暴れる骨の王。
「犬飼」
「はい!!」
犬飼が即座に反応する。
腕が変形。
獣の筋肉。
そのまま――全力で叩き込む。
ドガァァァン!!!
カプセルの中で粉砕。
そして、カプセル解除。
骨が散る。
……再生。
またカプセル。
また粉砕。
また再生。
これを繰り返す。
そして――
「……」
六回目。
粉砕後。
骨が、動かない。
「……やっぱりか」
門脇が、ぼそっと呟く。
その声は、妙に確信に満ちていた。
「……まさか」
門脇がゆっくりと口を開く。
周囲の視線が、一斉に集まる。
「単純な話じゃねぇのか?」
軽く肩を回しながら言う。
「コイツら――」
一体の消えた跡を見る。
「復活回数に上限がある」
その一言で、空気が変わった。
「……」
誰もすぐには理解できない。
だが、次の言葉で確信に変わる。
「俺が今倒したのは……ちょうど6回目だ」
「つまり――」
一瞬、間。
「復活は5回まで」
全員が、その意味を理解する。
俺は、思わず息を吐いた。
「……成る程な」
苦笑いが漏れる。
今までの絶望が、少しだけ馬鹿らしくなるくらい単純な答え。
「ってことは――」
俺は前を見る。
まだ動いているスケルトンキングたち。
「シンプルだな」
小さく笑う。
「倒しまくればいいって事か」
「はは……なるほどなァ!!」
凛堂が、歯を見せて笑う。
さっきまでの苛立ちはもう消えていた。
代わりにあるのは――純粋な“闘志”。
「回数制ってわけか!!」
拳を握る。
「なら簡単だな!!」
一歩踏み出す。
「オレの得意分野だ!!」
その声に、周囲の空気が一気に変わった。
さっきまでの重苦しい空気が、嘘みたいに軽くなる。
理由は単純だ。
“終わり方が分かった”。
それだけで、人間はここまで変われる。
「行くぞ!!」
俺も叫ぶ。
「同じ個体を集中して削れ!!回数を稼げ!!」
全員の動きが、明確に変わった。
ただ壊すだけじゃない。
“狙って削る”戦いへと切り替わる。
「未来!!」
「任せて!!」
未来が前に出る。
その目は、さっきまでと違って迷いがない。
「“動植物図鑑”」
空間が歪む。
そして――
現れる。
巨大な影。
10メートル級の肉体。
「……マジかよ」
俺は思わず呟いた。
そこにいたのは――
「ジャイアントオーガ……!」
前回戦った、Bランクモンスター。
それが、未来の背後に立っていた。
「行って!!」
未来の一声。
ジャイアントオーガが、スケルトンキングへ突っ込む。
拳。
重量。
純粋な暴力。
ドォォォン!!!
骨の巨体が吹き飛ぶ。
「すご……!」
誰かが呟く。
さらに追撃。
押し倒す。
叩き潰す。
回数を一気に削る。
「これなら……!」
未来が叫ぶ。
「一気にいける!!」
「ヒャッハァァァァ!!祭りだァァァ!!」
アルが完全にテンションMAXで突っ込む。
ドドドドドドド!!!
弾幕。
骨が削れる。
砕ける。
そしてすぐに次弾。
「ソックス!!回数稼ぐぞ!!」
「……了解です」
ソックスが冷静に対応する。
一発。
一発。
確実に関節を破壊。
無駄がない。
アルが削り、ソックスが仕留めに繋げる。
「いい流れだ!!」
俺は思わず叫ぶ。
戦況が明らかに変わっていた。
「――ボウリング場!!」
色谷が再びスキル発動。
複数体固定。
「今度こそ終わりだァァァ!!」
ボールが転がる。
ドゴォォォォン!!!
まとめて粉砕。
そして――
「まだ終わんねぇ!!」
さらにもう一球。
ドォォン!!
三回。
四回。
五回。
「あと一回だ!!」
周囲から声が飛ぶ。
そして――
六回目。
ドガァァァン!!!
骨が砕け――
今度は、戻らない。
「よっしゃァァァ!!」
色谷がガッツポーズを決める。
「これだ!!これが正解だ!!」
「“ラブレター”♡」
芹沢がスキル発動。
紙飛行機が飛ぶ。
命中。
「私のこと、愛してちょうだい♡」
一体のスケルトンキングが止まる。
そのまま別個体へ攻撃。
ガンガン削っていく。
「ほらほら♡もっと働いて♡」
その間に別のメンバーが追撃。
回数を稼ぐ。
そして――撃破。
「ふふ♡完璧♡」
芹沢が満足そうに笑う。
「チャン爺!」
「お任せくださいませ」
姿が消える。
次の瞬間、連続斬撃。
シュンッ――
シュンッ――
シュンッ――
見えない速度で回数を稼ぐ。
無駄が一切ない。
そして最後は――
スッ……
納刀。
同時に、骨が崩れ落ちる。
そのまま、再生しない。
「処理完了にございます」
一葉、二葉、三葉も同様だった。
「対象を排除いたします」
「制圧行動に移行」
「近接処理開始」
感情のない声。
だが動きは完璧。
連携。
精密。
確実に回数を削る。
そして――撃破。
淡々と。
機械のように。
「……はは……」
気付けば、笑っていた。
さっきまでの絶望が、嘘みたいだった。
やる事はシンプル。
回数を数えて、削るだけ。
「いける……!」
誰かが叫ぶ。
そして全員が、それに続く。
戦場が一気に変わる。
もう押されていない。
完全に――押している。
最後の一体。
スケルトンキング。
囲まれている。
「行くぞ!!」
俺が叫ぶ。
門脇がカプセルで拘束。
犬飼が削る。
陸斗が光線で貫く。
凛堂が拳を叩き込む。
未来のオーガが押さえつける。
全員の連携。
そして――
「これで終わりだァァァ!!」
ドォォォォン!!!
完全破壊。
……数秒。
誰も動かない。
そして。
骨が――動かない。
「……終わった……?」
誰かが呟く。
沈黙。
そして――
「……終わった」
俺が言った。
――パチ、パチ、パチ。
拍手。
後ろから。
ゆっくりと。
場違いなほど、軽やかな音。
全員が振り向く。
そこに――いた。
空中に浮かぶ男。
スーツ姿。
顔には、道化師のメイク。
笑っている。
だが――
人間じゃない。
一目で分かる。
“異質”。
「いやぁ……素晴らしい」
男が、口を開く。
声はやけに軽い。
「実に実に……素晴らしい戦いだった」
ニヤリと笑う。
全員が、動けない。
さっきまでの戦いとは、次元が違う。
そんな“気配”があった。
男は、楽しそうに言った。




