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世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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36/170

創造 ― 小さな村の誕生

第36話です。宜しくお願いします。


 その日の朝――。


 俺は、少しだけいつもと違う気持ちで目を覚ました。

(……今日からだな)

 昨日手に入れたスキル。

 “村長”。

 正直、まだ実感はない。


 だが――


 あの内容が本当なら、この拠点は一気に変わる。

 いや、変えられる。

 俺はベッドから起き上がり、軽く伸びをしてからリビングへ向かった。

「おはよう」

 扉を開けると、すでに何人かが集まっていた。

「おはよう、悠真」

「おはよー」

「おはようございます」

 未来、陸斗、浮田、ルドルフ、チャン爺、一葉達。

 いつもの顔ぶれだ。

 軽く挨拶を交わしながら、俺はそのまま口を開いた。

「ちょっと、全員に話がある」

 その一言で、空気が少しだけ引き締まる。


 ◇


 数分後――。


 住民たちも含め、エントランスに人が集まっていた。

 ざっと見ても、かなりの人数だ。

 100人を超えたこの光景は、少し前では考えられなかった。

 ざわざわとした空気の中、俺は前に出る。

「昨日、新しいスキルが解放された」

 その言葉に、全員の視線が一斉に集まる。

「“職業選択”ってやつだ」

 軽く説明を始める。

 100人を超えたこと。

 その条件で解放されたこと。

 そして、選択肢があったこと。

「で、俺は“村長”を選んだ」


 その一言で――


「……村長?」

「え、村?」

 ざわつきが広がる。

 無理もない。

 俺だって最初は同じ反応だった。


「効果は――簡単に言うと」


 少しだけ間を置いてから、続ける。

「この周囲1キロを、全部俺たちのテリトリーにできる」

 その瞬間、空気が止まった。

「……は?」

 誰かの声が漏れる。

「いや、ちょっと待って」

 未来が一歩前に出る。

「それって……マンションの外も、全部ってこと?」

「あぁ」

 俺は頷く。

「内装変更も、外装変更も、商品生成も――全部使える」

 言いながら、自分でも改めてヤバさを実感する。

 そして、静寂。


 数秒の沈黙の後――


「……それ、もう街じゃん」

 未来がぽつりと呟いた。

 その一言で、空気が一気に揺れる。

「確かに……」

「いや、えぐくないか?」

「そんなことできるのか……?」

 驚きと、戸惑いと、期待。

 様々な感情が入り混じっている。 


 だが―― 


 俺はその全てを受け止めて、静かに言った。


「だから――作る」


 ◇


「ただ、その前に確認する」

 浮ついた空気を一度締める。

「この範囲に、俺たち以外の人間がいないか」

 もし誰かがいた場合、巻き込む可能性がある。

 それは避けなければならない。

 俺は目を閉じる。


「――テリトリー掌握」


 次の瞬間。

 視界が変わった。


 いや、正確には――


 “認識”が拡張された。

 頭の中に、地図のような感覚が広がる。

 このマンションを中心に、円形に広がる範囲。 


 その中にある全てが――把握できる。


(……すげぇな、これ)

 建物の位置。

 道路。


 そして――


 “人の気配”。

 それらが、点として浮かび上がる。


 だが――


(……いないな)

 確認できる人影は、全てこのマンション内の住民のみ。

 1平方キロには、他の生存者はいない。

 ゆっくりと目を開く。

「……問題ない」

 その一言で、全員の緊張が解けた。

「この範囲には、俺たちしかいない」


 つまり――


 遠慮はいらない。

「じゃあ、始める」

 俺は一歩前に出る。

 マンションの外へ。

 玄関を抜け、外の空気を吸い込む。

 久しぶりに見る、広い空。


 そして――


 荒れ果てた街並み。

 ひび割れた道路。

 崩れかけた建物。

 放置されたままの車。

 かつての生活の痕跡が、そのまま残っている。

(……ここを、変える)

 俺はゆっくりと手をかざした。

 意識を集中する。  


 スキルを――


 この“世界”に重ねる。


「――内装変更」


「――外装変更」 


 次の瞬間。

 空間が、静かに歪んだ。


 ◇


 最初に手を加えたのは――マンションのすぐ隣にあった、一軒の古びた家だった。


 外壁はひび割れ、窓ガラスは半分以上が割れている。

 庭は雑草に覆われ、もはや“住める場所”とは言えない状態だ。

(……まずは一つ)

 俺はゆっくりと手をかざす。

 そして、意識を集中させる。 


「――外装変更」


 その瞬間。

 ひび割れていた壁が、静かに“戻っていく”。

 まるで時間を巻き戻しているかのように。

 崩れかけていた外壁が整い、色が塗り直され、屋根が形を取り戻す。


 錆びついていたフェンスが、光沢を取り戻し――

 雑草に覆われていた庭は、一瞬で整地される。


「……っ」

 思わず息を呑む。

(すげぇな……)

 だが、まだ終わりじゃない。

 俺はそのまま続ける。


「――内装変更」


 次の瞬間。

 建物の内部構造が、頭の中に流れ込んでくる。

 間取り。

 家具配置。

 生活動線。

 全てが“設計図”のように見える。

(……なら)

 俺はそれを、一つ一つ組み替えていく。

 床を張り替える。

 壁紙を選ぶ。

 家具を配置する。

 キッチンの位置。

 風呂の広さ。

 収納の数。

 細かい部分まで、全て自分で決めていく。

 ただ“綺麗にする”だけじゃない。

 “住みやすくする”。

 そのために、俺は一切妥協しなかった。


 結果―― 


 気づけば、時間は大きく過ぎていた。

 空が、赤く染まっている。

「……は?」

 思わず空を見上げる。

(もう夕方かよ……)

 それでも、手は止めなかった。


 ◇


 次の家へ。

 また次の家へ。

 同じように、だが一つ一つ違う形で。

 住む人が違えば、求める形も違う。 


 それを想像しながら――


 俺は作り続けた。

 気がつけば、夜が来ていた。

 そして、また朝が来る。


 その頃には――


 マンション周辺の住宅は、すべて“生まれ変わっていた”。

 どの家も、新築のように整っている。

 統一感のある街並み。

 だが、どこか“個性”もある。

「……全部……悠真さんがやったんですか……?」

 背後から、陸斗の声が聞こえた。

 振り返ると、未来やルドルフたちも立っている。

「……まぁな」


 軽く答えるが――


 正直、かなり疲れていた。

 それでも、まだ終わりじゃない。

「次は、施設だ」

 俺はそう言って、再び歩き出した。


 ◇


 スーパー。

 コンビニ。

 病院。

 公民館。

 飲食店。

 俺は一つ一つ、その全てに手を加えていく。

 外装を整え。

 内装を最適化し。

 動線を作り。

 設備を整える。

 特にスーパーは重要だった。

(……ここは、ちゃんと作らないとな)

 商品生成と組み合わせることで、ここは“供給の中心”になる。

 棚の配置。

 通路の広さ。

 レジの位置。

 全てを考えながら、作り上げていく。 


 だが――


 その分、負担も大きい。

「……っ」

 思わず膝に手をつく。

 視界が少し揺れる。

(……まだ、終わってねぇ)

 気合いで立ち上がり、作業を続ける。


 そして―― 


 2日後。

 ようやく、全ての施設の再構築が完了した。

「……お前、やりすぎだろ」

 浮田が呆れたように言う。

「いや、これは……」

 未来も言葉を失っている。


 ルドルフは静かに周囲を見渡し――


「……本当に、街ですね」

 そう呟いた。

 俺は、何も言えなかった。


 ただ――


 限界だった。

「……2日、休む」

 それだけ言って、その場を離れる。


 ◇


 ――1日目。


 俺は、ひたすら寝た。

 何も考えず、何もせず。

 ただ、体を休めることだけに集中する。

 どれだけ寝たのかも分からない。

 気づけば、夜になっていた。

 だが、それでも足りないくらいだった。


 ――2日目。


「……悠真」

 ルドルフに声をかけられる。

「少し、時間ありますか?」

「ん? まぁ、いいけど」


 案内されるままに部屋に入ると――


 テレビがついていた。

「これ、日本のアニメですよね?」

 ルドルフが少しだけ嬉しそうに言う。

「好きなんだよな」

「はい。かなり」

 そのまま、二人でソファに座る。


 そして――


 アニメを観る。

 笑って。

 驚いて。

 感想を言い合って。

「このシーン、良かったですね」

「あー分かる、ここ熱いよな」

 そんな、何気ない会話。


 だが――


(……こういうの、初めてかもな)

 誰かと一緒に、同じものを見て、同じように感じて。

 それを言葉にする。

 その時間が、やけに心地よかった。


 ◇


 そして――最終日。


 俺は再び外へ出る。

「仕上げだな」

 道路を整備する。

 ひび割れを直し、綺麗に舗装する。

 街路樹を配置し、緑を増やす。

 ベンチを置き、休憩スペースを作る。


 そして――


 マンションの前。


 その中心に――


「――これだな」


 大きな噴水を設置する。

 水が流れ出し、静かな音を立てる。

 それは、この街の“象徴”だった。

「外、出ていいぞ」


 俺がそう言うと――


 住民たちが、一斉に外へと出てきた。

「……うわ……」

「すげぇ……!」

「ここ、本当に同じ場所か……?」

 驚きの声。


 そして――


 笑顔。

 子供たちは走り回り、大人たちは楽しそうに話している。

 ずっとマンションの中で生活していた分、その解放感は大きかった。


 その光景を見て――


 俺は、ようやく肩の力を抜いた。


 ◇


 自室に戻り、窓の外を見る。


 そこには――


 自分が作り上げた“街”が広がっていた。

 灯りがつき、人が動き、音が生まれている。

「……すげぇな、お前」

 隣に浮田が立つ。

「最早22歳って嘘だろ」

 呆れたように笑う。

 俺は、少しだけ苦笑した。

「いや……見栄張って頑張ってるだけだよ」

 そして、続ける。

「でもさ」

 視線は、街のまま。


「家族も、守るものも増えて――」


「逆に、みんなに支えられてるって思うんだよな」

 浮田は少しだけ黙ってから、口を開いた。

「……1人で抱え込んでなくて安心したわ」

「あぁ……ありがとう」

 短く答える。

 窓の向こう。

 賑わう街。


 それを見ながら―― 


 俺は静かに思った。

(……できたな)

 これは、まだ小さい。


 だが確かに――


 “俺たちの街”だった。

街開拓は想像すると楽しいですよね。


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