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世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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26/167

選択

第26話です。宜しくお願いいたします。


門の前。

 静かな緊張が流れていた。

 未来が操作する犬が、一歩前に出る。


 そして――


「断る」

 短く、はっきりと言った。

 その瞬間。

「はぁ!?」

「おいおいおい!」

「ふざけてんのか!?」

 後ろに控えていた隊員たちが一斉に騒ぎ出した。

「俺達が直々に来てやってるんだぞ!?」

「最強の部隊だぞ!? 光栄に思えよ!!」

 怒号が飛び交う。


 だが――


「やめろ」

 低く、よく通る声が響いた。

 門脇隊長だった。

 一言で、空気が止まる。

 騒いでいた隊員たちも、口を閉じる。

「……すいませんでした」

 門脇隊長は犬へと視線を戻す。

「少し、話をさせてもらえないか」

 落ち着いた声だった。

 威圧ではない。

 あくまで“対話”の姿勢。

(……話は通じそうだな)

 リビングでその様子を見ながら、俺は小さく息を吐く。

 感情で動くタイプじゃない。


 少なくとも―― 


 あの男は。

「未来」

「うん」

「条件を伝えてくれ」

 未来が頷く。

 犬が、再び口を開く。


「なら――条件がある」


 門の向こうの視線が集まる。

「門脇。あんた一人だけ、こっちに入れ」

 一瞬の沈黙。


 そして――


「なっ……!?」

「隊長一人だと!?」

 また外野がざわつく。

「危険すぎます!」

「罠かもしれません!」

 声が飛ぶ。

 だが。

「……分かった」

 門脇は即答した。

 周囲が一斉に彼を見る。

「私一人で行こう」

「隊長!?」

「問題ない」

 短く言い切る。

 その言葉に、誰もそれ以上は口を挟めなかった。


 ◇


 門が開く。

 ゆっくりと、門脇が足を踏み入れる。 


 その瞬間――


 周囲の空気が変わった。

 植物。

 地面。

 空間そのもの。

 目には見えないが、確実に“何か”が張り巡らされている。

(……罠か)

 門脇は内心で理解する。

 だが、表情には出さない。

 そのまま進む。

 建物の前に立つ。

 そして、扉が開いた。


 そこに立っていたのは―― 


「いらっしゃいませ」

 深く頭を下げる、一人の執事。

「どうぞ、こちらへ」

 自然な動作で、案内する。

(……執事、か)

 わずかに目を細める。

 だが、何も言わず、その後に続いた。


 ◇


 中に入った瞬間。

「……」

 門脇の足が、一瞬だけ止まる。

 広い。

 明らかに、外観以上の広さ。

 空間の広がりが、異常だ。


 さらに――


 豪華な内装。

 磨き上げられた床。

 整えられた調度品。

 崩壊した世界とは、まるで別物。

(……なんだ、ここは)

 心の中で呟く。

 だが、顔には出さない。

 そのまま歩き続ける。

 案内されたのは、応接間だった。

「少々お待ちください」

 チャン爺が一礼し、静かに去っていく。


 入れ違いで――


「失礼致します」

 一葉が紅茶を運んでくる。

 無駄のない動き。

 静かな所作。

 そして、そのまま一礼して退出した。

 数分。

 静寂が流れる。


 ――コン。


 扉がノックされる。

「失礼する」

 声と共に、扉が開いた。


 入ってきたのは――


 黒瀬悠真。

 ゆっくりと歩き、向かいの席に座る。

「……待たせたな」

 一言、そう言って。

 門脇を真っ直ぐ見る。

「警戒した態度、悪かった」

 軽く頭を下げる。

「俺の名前は黒瀬悠真」

「この建物の家主だ」

 静かに、名乗る。

 そして、続ける。


「それで――」


 一呼吸置く。

「話ってのは、スカウトのことだろ」

 そのまま、視線を逸らさずに言った。

「門でも言ったが俺は入るつもりはない」

 はっきりと。

 迷いなく。

「それと」

 少しだけ首を傾ける。


「そもそも――SPМって何だ?」


「……何?」

 門脇が、わずかに目を細める。

「SPМを知らないのか?」

「あぁ、全く聞いた事もない」

 俺は肩をすくめて答えた。

 その反応に、門脇は小さく息を吐く。

「……なるほど」

 そして、静かに口を開いた。

「では、説明しよう」

 紅茶に手を伸ばし、一口だけ口に含む。

 その動作一つも、無駄がない。

「SPМは、国が設立した組織だ」

「ゲートの出現により、自衛隊だけでは対処が不可能になった」


「だから――」


「超人族のみで構成された、対モンスター専門部隊を作った」

 淡々とした説明。

 だが、その内容は重い。

「超人族だけで……?」

 思わず口に出る。

「そんなに、いるのか」

「思っている以上にはな」

 門脇は短く答える。 


 ◇


 俺は少しだけ考えた後、口を開いた。

「……それで」

「なんで、俺が超人族だと思った?」

 あえて“俺”とだけ言う。

 この場にいるのは、自分一人。

 そう思わせるために。 


 だが――


「君“達”が、だ」

 門脇は、はっきりとそう言った。

「……」

 内心で苦笑する。

(バレてるか)

「シャドウウルフの死体を辿ってきた」

「数、倒し方、位置」

「どう考えても一人の仕事じゃない」

 的確だ。

 否定のしようがない。

(まぁ、そりゃそうか)

 あれだけ派手にやれば、気付かれるのも当然だ。

「それに」

 門脇が続ける。

「こちらも、見られていたようだな」

 その視線が、ゆっくりと壁へ向く。

 小型の監視カメラ。

「……」

 リビングの空気が、一瞬凍る。

(……気付いてる)

 未来たちが息を呑む。

 だが門脇は、特に気にした様子もなく言った。

「お互い様だろう」

 軽く笑う。

 俺も、口を開いた。

「あのアニマル小僧だろ」

「犬だけじゃなく、この前は馬にもなってたな」

 一瞬。

 門脇の目が細くなる。


 そして――


「はははっ」

 小さく笑った。

「なるほど」

「やはり、気付いていたか」

 視線が戻る。

 まっすぐに、こちらを見る。

「お互い、何でもお見通しだな」

 そして、空気が変わる。

 門脇の表情が、わずかに引き締まる。


 ◇


「……さて、本題だ」

 一拍。

「君達は“力”を持ってしまった」

「それは、偶然ではない」

「選ばれたとも言える」

 静かな声。

 だが、重みがある。


「ならば――」 


「国に尽くす義務があるとは思わないか?」

 その言葉に、空気が張り詰める。

「今、日本は崩壊しかけている」

「物資も、食料も、居住区も足りない」

「ゲートは増え続け、モンスターは止まらない」

「救える命が、山ほどある」

 真っ直ぐな言葉だった。

「君達の力で」

「助けられる人間がいる」

 その視線が、こちらを射抜く。


「それでも――」


「ここに引きこもるのか?」

 少しだけ、考える。

 ほんの一瞬。


 だが――


 答えは、もう決まっていた。

「……悪いな」

 俺は、静かに言った。

「答えは変わらない」

 視線を逸らさずに続ける。

「そっちの組織に入るつもりはない」

 一呼吸。

「国の犬になる気もない」

 はっきりと。

 だが、強く言い切る。


「俺達は――」


 ほんの少しだけ、言葉を選ぶ。

「ここにいる“家族”を守りたい」

 その一言に。

 監視カメラの向こうで、空気が揺れた。

「この家族がいる日常生活を、当たり前にしたい」

 そして。

「もちろん」

「元の日本を取り戻したい気持ちもある」


「だから――」


「俺達は、俺達なりに動く」

 それが、俺の答えだ。

「……そうか」

 門脇は、短く呟いた。

 少しだけ目を閉じる。

 そして、ゆっくりと立ち上がる。

「分かった」

「これ以上は、無理にとは言わない」

 その声には、納得があった。

「日本を思う気持ちは、同じだからな」

 そう言って、軽く頷く。

「今日は、帰らせてもらう」

 それだけ言って、背を向けた。


 ◇


 建物を出て、門の外。

「隊長〜!」

 犬飼がすぐに駆け寄る。

「いいんですか? あんなあっさり!」

「せっかく俺が調査してきたのに〜!」

 少し不満そうに言う。

 門脇は、歩きながら答えた。

「あぁ、仕方ない」

「……最近のSPМは、少し歪んでいる」

 その言葉に、犬飼は少しだけ表情を変える。

「力に溺れてる奴も多い」

「本来の目的を見失っている連中もな」

 視線を前に向けたまま、続ける。

「だが、あいつは違った」

「……あぁいう奴が、本来の形なんだろうな」

 小さく呟いた。


 ◇


 一方、その頃。

「……すまない」

 俺は、みんなに向き直る。

「俺一人で決めたことだけど」

「ついてきてくれるか?」

 静かに問いかける。

 少しの沈黙。


 そして――


「もちろんです!」

 真っ先に、陸斗が答えた。

「僕達の幸せ、みんなにも分けてあげましょう!」

 真っ直ぐな目。

「美咲もがんばるー!!」

 元気な声が響く。

 未来も、ふっと笑う。

「悠真は私達の家族だもん」

「家族が決めたことに文句なんてないよ」

 浮田は肩をすくめながら言う。

「元々、医者だからな」

「人を助けるのは当然だ」

 チャン爺は、深く頭を下げる。

「坊ちゃまの日常生活、全力でお支え致します」

「ご主人様の命令に従います」

 メイド三人も、揃って頭を下げた。

 その光景を見て。

 思わず、少しだけ笑う。

「……ありがとな」

 ふぅ、と息を吐く。

「さぁ」

「これから忙しくなりそうだな」


 そう言って――


 数秒、間が空く。

「……あ」

 思い出したように顔を上げる。

「今日はオフだったな」

 一瞬の沈黙。


 そして――


「解散ー!」

 手を叩く。

「俺はアニメの続き観るから!」

 そう言って、そのまま部屋へと戻っていく。

「えー!?」

「ずるーい!」

 後ろから声が飛ぶ。

 だが、もう止まらない。

 さっきの続きが気になって仕方ない。

 扉を閉める。

 再び、日常へ。


 だが――


 その日常は、確実に動き始めていた。

門脇隊長のスキル実は面白いスキルなので、

ここで無理やり出そうかとも考えたのですが、

また、次回に取っておきますね。


読んで頂きありがとうございます!!


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