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世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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25/167

訪問者

第25話です。宜しくお願いいたします。


 ――コンコン。


 軽やかなノックの音で、目が覚めた。

「ご主人様、朝でございます」

 扉の向こうから聞こえてくる、落ち着いた声。

 ゆっくりと身体を起こす。

「……ん」

 まだ少し重たい頭を振りながら、ベッドから降りる。


 扉を開けると――


「おはようございます、ご主人様」

 一葉、二葉、三葉が、綺麗に並んで頭を下げた。

 赤、青、黄色のリボン。

 見分けはそれだけなのに、不思議と誰が誰か分かるようになってきている。

「おはよう」

 軽く返すと、三人は揃って一歩下がる。

「朝食の準備が整っております」

 その言葉に頷き、廊下を歩き出す。

 廊下は今日も、無駄がないほど綺麗だ。

 足音がやけに響く。

 この建物に来てから、もう何日経っただろうか。

 最初は違和感しかなかったこの空間も、今では“日常”になりつつある。


 ◇


 階段を降りると、リビングの扉が開いていた。

 中から、いい匂いが漂ってくる。

「おはようございます」

 チャン爺が、深く一礼する。

「朝食をご用意しております」

 テーブルに目を向ける。

「……おお」

 思わず声が漏れた。

 銀食器。

 綺麗に磨き上げられた皿の上に、料理が並んでいる。

 こんがりと焼かれたベーコン。

 色とりどりのサラダ。

 湯気の立つコーンスープ。


 そして――


 焼きたてのバケット。

 さらに、見慣れない器が置かれていた。

「それは“ウフ・アラ・コック”でございます」

 チャン爺が説明する。

「卵料理の一種でして」

 専用の器に入った半熟の卵。

 上部が割られ、中の黄身がとろりと揺れている。

「……へぇ」

 バケットを手に取り、軽くちぎる。

 それを、そっと卵へと差し込む。

 じゅわり、と。

 黄身が染み込む。

 そのまま口に運ぶ。

「……うまっ」

 思わず呟いた。

 濃厚な卵のコクと、バケットの香ばしさが合わさる。

 シンプルなのに、妙に満足感がある。

 気付けば、自然と笑っていた。

(……こういうのも、悪くないな)

 ふと、テーブルを見る。

 この銀食器も、ネットショッピングで何となく買ったものだ。


 正直、必要だったかと言われれば微妙だが――


(まぁ、雰囲気は大事だよな)

 自分に言い聞かせるように、心の中で呟く。

 こんな状況なのに。

 こんな生活をしている。


 それでも――


(……悪くない)

 むしろ。

 少しだけ、“幸せ”だと思えた。


 ◇


「今日は、オフにするか」

 食後、俺がそう言うと。

「やったー!」

 美咲がすぐに反応する。

「じゃあ好きなことしよう!」

 その一言で、各々が動き出した。

 未来は、本棚の前に立っていた。

 何冊か手に取り、静かにページをめくる。

 やがて一冊を選び、ソファに腰掛けた。

 そのまま、周囲の音が消えたかのように集中し始める。

 相変わらず、落ち着いている。

「じゃあ歌おー!!」

 美咲の元気な声が響く。

 メイド三人を引き連れ、カラオケルームへと消えていく。

 数分後。

 部屋の外まで聞こえるほどの音量で、歌声が流れ始めた。

「いぇーい! 最高ー!!」

 どうやら、盛り上がっているらしい。

 ……いや、ほぼ一人で盛り上がってる気がするが。

 浮田は、大浴場へ。

「こういう時間も必要だからな」

 そう言って、ゆっくりと湯に浸かっていた。

 湯気の中で、肩の力を抜く。

 戦いとは無縁の時間。

 その表情は、どこか穏やかだった。


 ◇


「お願いします!」

「こちらこそ宜しくお願いいたします」

 外では、陸斗とチャン爺が向かい合っていた。

 キャッチボール。

 ボールが空を切る音が響く。

 陸斗の動きは、慣れている。

 綺麗なフォーム。

 力強い投球。

「お上手ですね」

 少し離れた場所からチャン爺が声をかけると。

「はい! 部活で!」

 笑顔で答える。

「昔、父とよくやってたんです」

 その一言に、少しだけ間が空いた。

 だがすぐに、またボールが投げられる。

 その背中は、どこか楽しそうだった。


 そして、俺は――


 自室に戻っていた。


 ◇


「さてと……」

 ベッドに腰を下ろし、端末を手に取る。

 画面を操作する。


 そして――


「きた」

 思わず口元が緩む。

 アニメ。

 これだけは、昔から変わらない趣味だ。

 戦いだの、スキルだの。

 現実の方がよっぽど非現実的になってる今でも。

 やっぱり、これが好きだ。

 再生ボタンを押す。

 画面の中で、物語が動き出す。

 キャラが叫び。

 戦い。

 ぶつかり合う。

(……やっぱこういうのいいよな)

 ふっと、息を抜く。

 ほんの少しだけ、現実を忘れる時間。


 だが――


 その時間は、突然終わった。


 ◇


 ――ピピピピピピッ!!


 無機質な警報音が、建物全体に響き渡る。

「……っ!」

 反射的に立ち上がる。

「またか……!」

 さっきのとは違う。


 今度は――


 はっきりとした“接近”の気配。

 俺はすぐに部屋を飛び出した。

 リビングに駆け込むと、すでに全員が集まっていた。

「今の音……」

 未来が静かに言う。

「ああ、外だな」

 俺は頷く。

 すぐに窓の方へ歩く。

 カーテンを少しだけ開け、外を見る。

「……来てるな」

 門の前。


 そこには――


 十人ほどの集団が立っていた。

 全員、同じような装備。

 黒を基調としたマント。

 胸元には、十字を思わせるエンブレム。

 まるで軍隊のように、整然と並んでいる。

 無駄な動きが一切ない。

 ただ立っているだけなのに、圧がある。

「すいませーん!!」

 その中の一人が、大きな声で呼びかけてきた。

「ちょっといいですかー!!」

 やけに軽い声。

 だが、それが逆に不気味だった。

(……普通の連中じゃないな)

 空気で分かる。

 戦ってきた奴らの雰囲気だ。


 ◇ 


「未来」

「うん」

 未来は小さく頷き、手をかざす。


「――“動植物図鑑”」


 空間が揺らぎ、一匹の犬が現れる。

 地面に降り立ち、低く唸る。

 警戒している。

「共有」

 未来の視線が、犬と繋がる。

「行ってくる」

 犬は静かに門へと向かった。

 足音を殺しながら、ゆっくりと近づく。


 そして――


 門の前で止まる。

「……誰だ」

 低い声で問いかける。

「お?」

 声を上げたのは、さっきの軽い男だった。

「なんだこの犬……」

 少ししゃがみ込む。

 じっと見つめる。


 そして――


「……あー」

 ニヤッと笑った。

「もしかして、俺と同じ系統か?」

 次の瞬間。

 男の身体が歪む。

 骨が軋み、形が崩れる。 


 肉が変形し、毛が生え――


 一瞬で、“犬”へと変わった。

「ほらな」

 同じ目線で、こちらを見てくる。

「やっぱそうだろ?」

 軽い口調。

 だが、その動きには無駄がない。

(……こいつ)

 未来越しに、その違和感が伝わってくる。

(さっきの……)

 走っていた“馬”。

 あれと、同じ気配。

「犬飼」

 低く、落ち着いた声が響く。

「遊ぶな」

「はい、すいません……」

 犬飼は軽く返し、元の人間の姿へ戻った。

 その隣から、一人の男が前に出る。

 年齢は三十代半ばほど。

 落ち着いた佇まい。


 だが――


 空気が変わる。

 先程までの軽さが、一気に消えた。

「すまない」

 男は静かに言う。

「こちらから声をかけておいて、名乗っていなかったな」

 一歩、前へ出る。

 視線が真っ直ぐこちらを捉える。


「私は――」


 わずかに間を置いて。

「国の超人族部隊、SPМ」

「戦術隊隊長、門脇誠司だ」

 その名前が、空気を引き締めた。

 門脇は、そのまま続ける。

「単刀直入に言う」

 一切の無駄がない言葉。

 余計な前置きもない。


「君達を――」


 わずかに、間。

 全員の意識が、その言葉に集中する。

「SPМにスカウトしに来た」

 静かに。

 だが、はっきりと。

 その言葉は告げられた。

 リビングの空気が、一瞬止まる。

「……は?」

 誰かが、小さく声を漏らした。

 スカウト。


 つまり――


(……仲間に、なれってことか?)

 門の向こうでは、十人の隊員が微動だにせず立っている。

 その中心にいる門脇は、こちらをじっと見ていた。

 試すように。

 値踏みするように。


 そして――


 “答え”を待っている。

最近何か登場人物増えていってますね。


読んで頂きありがとうございます!!


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