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世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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2/14

スキル検証

第2話です。少し長くなりましたがよろしくお願いします。

世界が終わった日だというのに、俺の部屋は静かだった。


 窓の外では、遠くで何かが燃えているのか、時折赤い光が揺れる。


悲鳴も聞こえる。


サイレンの音も混ざっているが、それすらもう途切れ途切れだ。


なのに、部屋の中だけは妙に落ち着いていた。


電気はついている。


水も出る。


温度も一定で、さっきまで外を走っていたせいでかいた汗も、少し休めばすぐに引いていく。


「……気味が悪いくらいだな」


俺はそう呟いて、テーブルの上に置かれたパンと水を見る。


先程得た《日常生活》というスキルによって現れたものだ。


夢や幻覚ではない。


実際に触れられるし、食べられるし、腹も満たされた。


なら、今やるべきことは一つだ。


理解すること。


この状況で、分からないものを放置するのが一番危険だ。


「ステータス」


口に出した瞬間、視界の前に半透明の画面が浮かぶ。




【ステータス】

名前:黒瀬 悠真

種族:超人族

Lv:1

スキルポイント:3

【メインスキル】

《日常生活 Lv1》

【サブスキル】

なし




何度見ても、ゲームじみていて現実味がない。


だが現実にモンスターが街を徘徊している時点で、“現実味があるかどうか”なんて指標はもう意味を持たない。


「日常生活」


 そう意識すると、表示が切り替わった。




《日常生活 Lv1》

・テリトリー修復 Lv1

・環境維持 Lv1

・商品生成 Lv1




さらに、それぞれの項目へ意識を向けると詳細が開く。


この辺りは親切なのか不親切なのか分からない。


名前は妙に抽象的なくせに、見ようと思えば詳細は出るらしい。


まずは《テリトリー修復》。




【テリトリー修復 Lv1】

・登録したテリトリーを自動修復する

・同時登録数:1

・修復時間:約60秒

・内装変更:不可

・外装変更:不可

・材質変更:不可

登録中テリトリー

・黒瀬悠真のアパート




「……なるほど」


“黒瀬悠真のアパート”って表示、ちょっと嫌だな。


いや、かなり嫌だ。


なんというか、勝手に個人名つきで物件登録されている感じが気持ち悪い。


だがまあ、今はそこを気にしても仕方がない。




 次は《環境維持》。

【環境維持 Lv1】

・温度調整

・有害物質の遮断

・インフラ維持

詳細項目

・室温最適化 Lv1

・菌・ウイルス遮断 Lv1

・電気維持 Lv1

・水道維持 Lv1

・ガス維持 Lv1




「……マジで生活特化だな」


 その次、《商品生成》。





【商品生成 Lv1】

・テリトリー内に存在する物品を複製可能

・生成速度:普通

・同時生成数:1

詳細項目

・物品複製 Lv1

・ネットショッピング Lv0

 ネットショッピング。




 物騒な世界観の中に混じるにはあまりにも場違いな単語に、一瞬だけ真顔になる。


「……いや、後で確認するか」


 今は順番だ。


 まずはテリトリー修復。


 名前からして一番“拠点”に直結している。


 俺は立ち上がると、部屋の中を見渡した。


ワンルームに毛が生えた程度の安アパート。


キッチンは狭いし、風呂も広くない。


壁も薄い。


家賃相応の、何の変哲もない一戸建て風アパートの一室だ。


 ただ、今の世界では、この何の変哲もない部屋が異常な価値を持っている。


「……問題は、本当に修復するかどうかだな」


 壊さない限り確認できない。


 当然の話だ。


 だが、自分の住んでいる部屋をわざと壊すという行為には、普通ならかなりの抵抗がある。


 普通なら。


「……まあ、戻るなら問題ないか」


 俺はキッチンへ行き、包丁を手に取った。

 壁の前に立つ。


 白いクロス張りの壁。ここに包丁を突き立てれば、少なくとも“損傷”としては十分だろう。


 一瞬だけ躊躇する。


 本当に戻らなかったら面倒だ。


 修理業者が来る社会かどうかも怪しい。


「……いや」


 逆だ。


 今だからこそ、試すべきだ。


 分からないまま本番を迎える方が危険だ。


 俺は包丁を振りかぶり、壁に突き立てた。


 ザクッ、と鈍い音がした。


「……おお」


 思ったよりしっかり刺さる。


 クロスが裂け、その下の板材も傷ついている。


見慣れた自分の部屋が壊れるのは、少し奇妙な感覚だった。


 すると、視界の端に新しい表示が出た。




【修復対象を確認】

黒瀬悠真のアパート

損傷箇所:壁面(小)

修復開始まで 3

2

1

【修復中 0%】




「カウントダウン式なのかよ……」


 妙なところでシステムが細かい。


 表示を見つめていると、ゲージが少しずつ伸びていく。


 1%。3%。7%。


 見た目にはまだ何も変わらない。


だが20%を超えたあたりで、裂けたクロスの端がゆっくりと元に戻り始めた。


「……マジか」


 思わず声が漏れる。


 修復だ。


 比喩じゃない。


 誰かが作業しているわけでも、見えない手が動いているわけでもない。


ただ“壊れたはずのものが、時間経過で元に戻っていく”。


 50%を超える頃には傷はほとんど塞がり、100%になった頃には完全に元通りになっていた。


 俺は壁に顔を寄せる。


「……痕跡なし」


 指でなぞっても、どこを壊したか分からない。


 包丁で刺したはずの場所は綺麗に消えていた。


「……なるほどな」


 これは大きい。


 かなり大きい。


 少なくとも、テリトリー内での損壊は恐れなくていいということになる。


壁が壊されても、窓が割られても、時間さえ稼げれば元に戻る。


「いや、待てよ」


 俺はメガネを押し上げる。


 だったら、どこまで壊しても直る?


 壁一枚なら分かった。


次はもっと大きく試すべきだ。


 俺は部屋の中にある折りたたみ椅子を手に取り、今度は窓に向かって振り下ろした。


 ガシャアンッ、と激しい音が響く。


「っ……」


 思った以上にうるさい。


 さすがに少し焦ったが、外からすぐに何かが来る気配はない。


むしろ外の混乱の方が圧倒的に大きく、この程度の音は埋もれるらしい。


 割れた窓ガラスの向こうから、夜風が吹き込んでくる。


 ひやりとした感覚と同時に、また表示。




損傷箇所:窓ガラス(中)

【修復中 0%】




 そして今度は、修復中にもかかわらず、部屋の中の温度はほとんど変わらなかった。


「……これが、環境維持か」


 外気が入り込んでいるはずなのに、寒くならない。


 窓から顔だけ少し出してみる。


外の空気は、鉄臭い。


煙の匂いも混じっている。


遠くでまだ何かが燃えているらしい。


だが顔を戻した途端、その不快な匂いが薄れる。


遮断している。


 有害物質とかいう曖昧な表記だったが、少なくとも外の煙や臭気を中に通していないのは確かだ。


「……便利とかそういうレベルじゃないな」


 60秒後、窓は完全に元通りになった。


 鍵もかかる。開閉もできる。欠片ひとつ残っていない。


 ここまでくると、さすがに笑えてくる。


「本当に“家そのもの”がスキルで守られてるのか」


 俺は次に環境維持の詳細を試した。


 エアコンのリモコンをいじる必要はなかった。


ステータス画面の室温最適化を開くと、現在室温と推奨室温が表示されたからだ。




室温:24℃

推奨:24℃

状態:快適




 分かりやすい。


 いや、分かりやすすぎて逆に怖い。


 試しにベランダ側の窓を少し開け、しばらく待つ。


それでも室温表示はほぼ変わらなかった。


外気の影響を受けそうになると、自動で最適値へ戻しているらしい。


 次に蛇口をひねる。


 普通に水が出る。


 ガスコンロもついた。


 電気も問題ない。


「……インフラが死んでも、ここは生きるってことか」


 それはつまり、他の人間にとってもこの場所の価値が跳ね上がるということだ。


 水が出る家。


 火が使える家。


 モンスターに壊されても戻る家。


 しかも、食料まで出せる。


「……そりゃ奪いに来るな」


 自分で口にして、妙に納得した。


 この部屋は、すでに“ただの部屋”ではない。


 外の世界から見れば、資源庫であり、避難所であり、要塞の種だ。


 だからこそ、次は《商品生成》を確認する。


 俺は部屋の中を見回した。


冷蔵庫の中には元々入っていた卵、マヨネーズ、飲みかけの麦茶。棚にはカップ麺。洗面所にはティッシュ、歯ブラシ、洗剤。ベッド、机、椅子、スタンドライト。


「……あらゆる物をコピー、か」


 試しに、冷蔵庫にあった卵を一つ手に取り、机の上に置く。


「商品生成。卵」


 すると、数秒の間をおいて、その隣にもう一つ卵が現れた。


「……遅くはないな」


 次にティッシュ箱。


 これも複製できた。


 さらにカップ麺。


 これもいける。


 ただし、ベッドのような大きな物は時間が少しかかるらしい。


表示には“生成時間:長”と出たので、途中でやめた。


「サイズか、構造の複雑さか……」


 どちらにせよ、制限はある。


 だが日用品や食料が安定して複製できるなら、十分すぎる。


 ここでふと、《ネットショッピング Lv0》が気になった。


 開く。




【ネットショッピング Lv0】

・未解放

・解放条件:商品生成へのスキルポイント割り振り




「……やっぱりそういうやつか」


 そしてここで、ようやくスキルポイントの使い道を本格的に考える段階に入る。


 初期ポイントは3。


 闇雲に振るのは悪手だ。


 レベルが上がるごとに必要ポイントも増えるなら、序盤の配分はかなり重要になる。 


「優先順位……」


 俺は椅子に座り、指を組んだ。


 テリトリー修復を上げれば、防御性能が増す。


登録数が増えれば、将来的に複数拠点も作れる。


修復時間短縮も地味にでかい。


 環境維持は生存力の根幹だ。


病気や有害物質への耐性は、長期的にはかなり強い。


だが現時点では、Lv1でも十分な性能を持っているように見える。


 商品生成は、生活と拡張の起点だ。


ネットショッピングが解放されれば、“この部屋にない物”を持ち込めるようになる。


そうなれば、その後は複製可能になる。


「……最初に一番伸びるのは、商品生成か」


 例えば、武器。

 例えば、保存食。

 例えば、工具。


 一日一回だとしても、外に出ずに物資の種類を増やせるのは強い。


「よし」


 俺は決めた。


「スキルポイントを割り振る」


 表示が開く。




【スキルポイント割り振り】

《テリトリー修復》

現在:Lv1

次Lv必要ポイント:1

《環境維持》

現在:Lv1

次Lv必要ポイント:1

《商品生成》

現在:Lv1

次Lv必要ポイント:1

保有ポイント:3




「商品生成に1」


 ポン、と軽い音がした気がした。




《商品生成 Lv2》

・生成速度:上昇

・ネットショッピング Lv1 解放

保有ポイント:2




「……来たな」


 さっそく詳細を開く。




【ネットショッピング Lv1】

・1日1回、テリトリー内に存在しない商品を1つ取得可能

・代価不要

・取得商品はテリトリー内へ空間転送される

・一度取得した商品は《商品生成》の複製対象に追加される




「強いな……」


 思っていた以上だ。


 一日一つという制限はあるが、逆に言えば毎日確実に新しい物資カテゴリを増やせるということだ。


 次に考えるのはテリトリー修復か。


 この家が落ちたら、全部終わる。


「テリトリー修復に1」




《テリトリー修復 Lv2》

・同時登録数:1

・修復時間:約45秒

・内装変更:一部解放

・外装変更:不可

・材質変更:不可

保有ポイント:1




「45秒……悪くない」


 内装変更が“一部解放”されたのも気になるが、今は後回しでいい。


 最後の1ポイント。


 悩む。


 環境維持に振って基盤を固めるか、商品生成をさらに伸ばすか。


 だが少し考えて、俺は環境維持を選んだ。


「環境維持に1」




《環境維持 Lv2》

・温度調整:強化

・有害物質の遮断:強化

・インフラ維持:強化

・生活者補正:未解放まであと1Lv

保有ポイント:0




「生活者補正……?」


 新しく出た単語に眉をひそめる。


 

説明を見る限り、テリトリー内で生活する者の健康状態や身体能力に補正がかかるらしい。


まだ未解放だが、十分魅力的だ。


「……なるほどな」


 このスキル、見た目以上に奥が深い。


 “日常生活”なんてふざけた名前をしているくせに、やっていることは生活圏の支配だ。


 安全な住居。


 維持されるインフラ。


 無限に近い物資。


 成長による強化。


「……笑えるな」


 外の奴らが必死に怪物と戦っている中、俺の強さは家の中にある。


 だが、今の世界ではそれが何よりも強い。


 空腹も、渇きも、寒さも、病気も、防げる。


 人間は案外、そういうもので簡単に死ぬ。


 戦闘力以前の問題として。


 だからこそ、このスキルは異常だ。


 俺は立ち上がり、修復された窓から外を見た。


 道路の真ん中に、昼間見たのと同じような異形の怪物がいた。


犬に似ているが、脚が異様に長い。


頭部は割れていて、その隙間で何かが蠢いている。


 少し先には、放置された車が何台もぶつかり合って止まっていた。


コンビニのガラスは割れている。


人影はない。


いや、正確には“見える場所にはいない”。


 隠れているのか、もう逃げたのか、死んだのか。


「……地獄だな」


 ぽつりと出た声は、思ったより乾いていた。


 怖くないわけじゃない。


 むしろ、怖い。


 この部屋の外に出れば、俺も簡単に死ぬかもしれない。


 だが同時に、頭のどこかが妙に冷えていた。


 この環境でどれだけ生き残れるか。


 どこまで拠点を育てられるか。


 何を持ち込み、何を増やし、どう広げるか。


 そういう計算が、自然と回り始めている。


「……まずは」


 俺はメガネを押し上げる。


「この家を完成させる」


 戦う力は、今はない。


 けれど、生きる力ならある。


 なら、徹底的に生き残るための環境を作るだけだ。


 外がどれだけ壊れようと関係ない。


 ここは、俺のテリトリーだ。


 誰にも壊させない。


 誰にも奪わせない。


 世界が崩壊したのなら、その中で一番まともな“日常”を、俺が作る。


 まずは、この一室からだ。



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