↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【Monster編開始】世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
195/202

オタクにとっての天国

第195話です。宜しくお願い致します。

 


会議室の扉が開き、細身で眼鏡をかけた青年が入ってきた。

 門脇誠司の命の恩人。

 夏山京樹。

 彼は、会議室の中を見回した瞬間、目を大きく見開いた。

 そこには、黒瀬悠真がいた。

 そして、東京の主力メンバーが揃っていた。

 夏山にとって、その光景は現実ではなかった。

 憧れの人物達が、一堂に会している。

 その事実だけで、頭の処理能力が限界を超えた。

「ここは……天国ですか?!」

 そう呟いた直後、夏山は興奮のあまり、その場に倒れた。

 突然倒れた夏山に、会議室の全員が一瞬固まる。

 その中で、なぜかコン太だけが小さく反応した。

「あ……夏山だコン……」

 声は、周囲に聞こえないほど小さかった。

 コン太はすぐに口を閉じる。

 まるで、自分が反応したことを隠すように。

 悠真は、倒れた夏山へ歩み寄る。

「おーい、大丈夫か?」

 その声を聞いた瞬間、夏山の身体がぴくりと動いた。

「は……、神様の声?!」

 次の瞬間、夏山は勢いよく飛び起きた。

 さっきまで気絶していたとは思えない速さだった。

 悠真は思わず少し身を引く。

 柿原が、引き気味に呟いた。

「相変わらず、怖いな……」

 夏山はそんな周囲の反応に気づいていない。

 目の前に悠真がいる。

 それだけで、完全に意識が悠真へ向いていた。

 悠真は少し困ったように笑いながらも、夏山へ声をかける。

「君が門脇をたすけてくれたんだって?」

 夏山の背筋が、ぴんと伸びた。

 悠真は真っ直ぐに頭を下げる。

「本当にありがとう!」

 その言葉に、夏山の目が潤み始める。

 だが、悠真はまだ続けた。

「改めて、俺の名前は……」

 その瞬間、夏山が食い気味に答えた。

「黒瀬悠真都知事ですよね!」

「あぁ……」

 悠真は頷く。

 名前くらいは知っていて当然だろう。

 東京の都知事なのだから。

 そう思った。

 だが、夏山は止まらなかった。

「身長175センチ体重65キロ、誕生日は6月21日、A型の23歳です」

「……ん?」

 悠真の眉がぴくりと動く。

 夏山は嬉しそうに続ける。

「4人家族の長男として宮城で生まれて、大学は東京東大学に通います」

 会議室の空気が、少しずつ変わっていく。

 驚き。

 困惑。

 そして、若干の恐怖。

 しかし夏山は、その全てを気にせず早口で語り続けた。

「その後、世界崩壊後は《日常生活》というテリトリー登録した場所で無双する事が出来るチートスキルを武器に瀬川陸斗さん、瀬川美咲さん兄弟をモンスターから助け、黒川未来さんを家族として受け入れ、凄腕の医者である浮田亮さんを仲間に引き入れ、当時SPМの戦術隊隊長であった門脇誠司さんの助言もあり、避難民を助けるようになりその過程で阿川洋介さん、ルドルフ・ベニーニさんを助けて……」

「ちょっとちょっと待って……」

 悠真は思わず手を前に出して止めた。

 夏山は、ぱっと嬉しそうに顔を上げる。

「はい、何でしょう?」

 その声は、まるで推し本人から質問を受けたファンのように弾んでいた。

 夏山は不安そうではなく、むしろ期待に満ちた顔で続ける。

「何か間違いがありました?」

 そして、はっとしたように口元へ手を当てた。

「あ、確かに体重の更新をしてませんでした!」

「いや、そこじゃ……」

 悠真が止めようとしたが、夏山はすでに喋り始めていた。

「先程、言った体重は都知事になる前の体重でしたっ!」

 夏山は真剣な顔で訂正する。

「今の体重は1キロ増えて66キロになりました!」

 悠真の顔が、少し赤くなる。

 自分の体重を人前で堂々と更新されるとは思っていなかった。

 しかも、なぜそこまで知っているのか分からない。

「もういいから……!!」

 悠真の声に、夏山はぴたりと口を閉じた。

 だが、表情はどこか幸せそうだった。


 ◇ 


 そんな中、陸斗が遠慮がちに口を開く。

「悠真さんって宮城出身だったんですか?」

 悠真は少しだけ気まずそうに頷いた。

「あっ……あぁ」

 陸斗は純粋な疑問をそのまま口にする。

「では、ご家族もそこに居るんじゃ……?」

 そして、少し考えてから続けた。

「仲良くなった、近藤さんだったら探してもらえるんじゃ……」

 その言葉に、悠真の表情が一瞬だけ曇った。

 ほんのわずかな変化だった。

 だが、近くにいた者達には分かる程度には、空気が変わった。

 悠真は、少し間を置いてから答える。

「家族とはあんまり上手くいってないんだよ……」

 その声は、普段より少しだけ低かった。

「それに、向こうも俺の事よりも弟や自分達の事で手一杯だろうから、良いんだっ……!」

 無理に明るく言ったようにも聞こえた。

 陸斗は、すぐに自分が踏み込みすぎたことに気づく。

「そうなんですか……」

 そして、申し訳なさそうに頭を下げた。

「変な事聞いて、すみません……」

 会議室に、少しだけ変な空気が流れる。

 夏山の異常な早口で盛り上がっていた空気が、悠真の家族という話題によって静かに沈んだ。

 悠真はそれを感じ取り、わざと話題を戻すように夏山を見る。

「……それより、夏山は何で俺の事をそんなに詳しいんだよ……」

 悠真は眉を寄せる。

「皆に教えてない情報や俺の体重まで……」

 その瞬間、コン太が息を呑んだ。

 誰にも聞こえないほど小さな反応。

 だが、確かに何かを知っているような反応だった。

 夏山は、悠真の言葉を聞いて固まった。

 そして、ゆっくりと自分の胸に手を当てる。

「俺の名前を初めて呼んでくれた……」

 また自分の世界へ入りかけている。

 悠真は少し不安そうに見つめる。

 だが、夏山ははっと我に返った。

 そして、満面の笑みで答える。

「それはオタクの底力です!」

 なぜか、その言葉と同時に夏山はコン太へウインクした。

 コン太はびくりと肩を揺らす。

 だが、何も言わなかった。

 悠真はそのやり取りに気づいたのか気づかなかったのか、夏山を見つめたまま微妙な表情を浮かべている。


 ◇


 その時、門脇が咳払いをした。

「こんな奴だが、実力は確かだ……」

 門脇の声で、会議室の空気が少しだけ引き締まる。

「夏山は悠真達の力になりたいと言っている……」

 悠真は門脇を見る。

 門脇は真剣な表情で続けた。

「次のMonsterへの戦いに付いていきたいそうだ」

「成る程なぁ……」

 悠真は夏山を見る。

 夏山は、ぱっと門脇へ向き直った。

「流石門脇さん! あの時の約束を守ってくれてありがとうございます!!」

 門脇は少しだけ気まずそうに頷く。

「あっ、あぁ……」

 あの時。

 地下防災施設で、門脇が合田に追い詰められていた時。

 夏山は門脇を救った。

 そして、その後、門脇に頼み事をした。

 その頼み事が、悠真達に会わせること。

 そして、力になれるよう取り次ぐことだった。

 夏山は悠真へ向き直る。

 先ほどまでの浮かれた表情とは違い、その目は真っ直ぐだった。

「俺をどうか使って下さい!!」

 会議室に、夏山の声が響く。

「役に立つ自信はありますっ!!」

 悠真は腕を組み、夏山を見た。

「まぁ、門脇を助けたのもお前だし、幹部以外の超人族も倒したと聞いてる……」

 夏山の力は本物だ。

 雷を落とし、雪と氷で敵を封じ、強風で移動までしてみせた。

 ただの都知事オタクではない。

 戦力としては、十分すぎる。

 だが、だからこそ簡単には頷けなかった。

 次に向かう相手は、関西を支配する《Monster》。

 銀武尊という危険な超人族がいる。

 遊び半分で連れていける場所ではなかった。

 悠真は静かに問いかける。

「遊びじゃないんだぞ?」

 夏山は真剣に頷く。

 悠真は続けた。

「それはわかってるのか?」

「勿論ですっ!!」

 夏山は迷わなかった。

 そして、胸を張って言う。

「悠真さん達の為なら命をかけれます!!」

 その言葉に、悠真は少しだけ目を細めた。

 軽い言葉ではない。

 命をかける。

 そう簡単に口にしていい言葉ではない。

 だが、その場にいた真実の子供が、ぽつりと呟いた。

「信じられねぇが、全部本当の事言ってるよ……」

 佐々木の尋問のために呼ばれていた真実の子供は、夏山をじっと見ている。

 そして、心底引いたような顔で言った。

「気持ち悪すぎんだろ、お前!」

 夏山はその言葉よりも、真実の子供の存在そのものに反応した。

「キャー!!!」

 会議室に黄色い悲鳴が響く。

 夏山は目を輝かせ、ルドルフへ詰め寄るように視線を向けた。

「もしかして、ルドルフさんの新しい能力ですか?!!」

 ルドルフは少し引きながら頷く。

「はい……」

 夏山は真実の子供をじっと見つめる。

「真実の口とは違って喋るんですね!!」

 さらに、感動したように両手を握りしめる。

「それに、小さくて可愛い!!」

 真実の子供が即座に怒鳴った。

「オイ、可愛いって言うなよ!!」

 夏山はそれすら嬉しそうに受け止めている。

 悠真は額に手を当てた。

「こいつ本当にヤバい奴だなぁ……」

 そして、小さく呟く。

「大丈夫かなぁ……」

 門脇はそんな悠真へ、静かに言う。

「まぁ、でも東京の事を思っている気持ちは本当だろうし、実力も申し分ない……!」

 門脇の言葉は重い。

 簡単に人を褒める男ではない。

 その門脇が、夏山の実力を認めている。

 悠真は少し考えた後、息を吐いた。

「門脇がそこまで言うなら……」

 その横で、犬飼がぽつりと呟いた。

「俺ですら門脇さんに褒められた事ないのに……」

 明らかに拗ねていた。

 門脇はちらりと犬飼を見る。

 犬飼は目を逸らす。

 その様子に、柿原が小さく笑った。


 ◇


 悠真は気を取り直して、夏山へ向き直る。

「夏山、お前のスキルについて詳しく知りたいんだが……」

 《天気予報》。

 その能力は、今後の戦いで大きな戦力になる可能性がある。

 雷、雪、氷、強風。

 どこまで使えて、どんな制限があるのか。

 それを確認しようとした、その瞬間だった。

 会議室の扉が、壊れるのではないかという勢いで開いた。

 勢いよく吹き込んできた音に、全員が一斉に振り向く。

 そこに立っていたのは、東北を統べる世紀末漢隊のリーダー。

 近藤剛だった。

 近藤は、開口一番に叫ぶ。

「オイ、悠真!! 東京の街が焼け野原じゃねぇか!!」

 その声は会議室に大きく響いた。

「何があったんだ?!」

 近藤の表情には、驚きと心配が混じっている。

 友好都市となった東京が、目に見えて傷ついていたのだ。

 慌てて駆け込んでくるのも無理はなかった。

 悠真は、夏山を見て、佐々木を見て、それから近藤を見る。

 次から次へと、問題と人物が流れ込んでくる。

 悠真は、思わず呟いた。

「今日は次から次に凄いな……」



夏山の狂気的な回です……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。