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【Monster編開始】世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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194/202

適合者

第194話です。宜しくお願い致します。



「という事は人工的に超人族を生み出せるって事か?!」

 悠真の声が、会議室に響いた。

 銀武尊のスキル《施し》。

 ゲートから出てきたモンスターの能力そのものを、対象者に与える能力。

 もしそれが本当なら、あまりにも危険な力だった。

 1人の超人族が強いだけなら、まだ対処のしようはある。

 だが、人為的に能力者を増やせるとなれば話は変わる。

 組織そのものの戦力が、際限なく膨れ上がる可能性がある。

 会議室にいる者達も、その意味を理解したのだろう。

 誰もが息を呑んでいた。

 そんな中、こたつの中でぽやぽやした顔をしている佐々木金次郎が、気持ちよさそうに頷いた。

「その通りなんだなぁ」

 一同に、さらに驚きが広がる。

 悠真はすぐにルドルフへ視線を向けた。

 ルドルフは、真実の子供の様子を確認してから口を開く。

「真実の子供の目は青く光ったままなので、嘘は言ってません……」

 真実の子供は、佐々木の近くで腕を組みながらにやにやしている。

 青く光る目。

 それは、佐々木の言葉が真実であることを示していた。

 悠真は小さく息を吐く。

 信じたくない情報ほど、真実だと確認された時の重さは増す。

 だが、佐々木はそこで言葉を続けた。

「といっても、そんなに簡単なものではないんだなぁ」

 悠真は眉を寄せる。

「……というと?」

 佐々木は、こたつ布団に手を置きながら答えた。

「そのモンスターの能力に適合した人材が必要なんだなぁ」

「適合……」

 悠真はその言葉を繰り返す。

 誰でも好きな能力を与えられるわけではない。

 モンスターの能力と、それを受け入れられる人間。

 その相性が必要になるということだった。

 少しだけ、会議室の空気が変わる。

 無制限ではない。

 それは救いのようにも聞こえた。

 だが、同時に、適合する人間さえ見つければ能力を与えられるという事実に変わりはない。

 危険であることは、何も変わらなかった。


 ◇


 佐々木は続ける。

「関西では現在、A、B、C、Dランクの4ランクまでのモンスターが確認されているんだなぁ」

 会議室にいる者達が、静かに聞き入る。

「東北では、A+ランクモンスター、四国ではSランクモンスターまで確認されているという情報は掴んでいるんだなぁ」

 その言葉に、悠真の表情がわずかに険しくなった。

 A+ランクモンスター。

 それは、東北で戦ったトレントキングのことだろう。

 悠真達と世紀末漢隊が総力を挙げ、ようやく倒した相手。

 あの時は、多くの仲間が力を振り絞った。

 芹沢の《ラブレター》で隙を作り、門脇の《ガチャカプセル》で捕獲するという策がなければ、勝てたかどうかも分からない。

 そして、世紀末漢隊の中には犠牲も出た。

 それほどの相手がA+ランク。

 そのさらに上と思われるSランクモンスターが、四国で確認されている。

 悠真は考える。

 四国は壊滅しなかったのだろうか。

 それとも、Sランクモンスターを倒せるほどの実力者達がいるのだろうか。

 もし東京や関西に、そんな存在が現れたらどうなるのか。

 考えるだけで、背筋が冷たくなる。

 佐々木はぽやぽやした顔のまま、淡々と恐ろしい情報を続ける。

「今後、関西でもA+ランクモンスターやSランクモンスター、もしかしたらそれ以上のランクのモンスターが出るかもしれないんだなぁ……」

 誰かが息を呑んだ。

「でも、銀武様はAランクモンスターまでの能力しか与えられないんだなぁ……」

 佐々木は続ける。

「それに、Aランクモンスターに適合する人物もかなり限られてるんだなぁ」

 銀武の《施し》には限界がある。

 A+ランクやSランクの能力までは与えられない。

 さらに、Aランクの能力に適合する人間も少ない。

 だが、それでも悠真の警戒は緩まなかった。

 条件があるとはいえ、今回だけで100名もの能力者が東京へ攻めてきた。

 しかも、幹部格は凛堂達を分断して足止めできるほどの力を持っていた。

 銀武尊。

 その存在は、間違いなく厄介だった。


 ◇


 悠真が考え込んでいると、凛堂がふと思い出したように口を開いた。

「そう言えば、タイプBランクか何かスキルを言うときに叫んでたかもなぁ」

 門脇も頷く。

「確かに、私も聞いた」

 富山や藤島達がスキルを使う時、確かにそう名乗っていた。

 その時は単なる呼び名かと思っていた。

 だが今なら分かる。

 あれは、与えられたモンスター能力のランクを示していたのだ。

 佐々木はこたつの中で頷いた。

「その通りなんだなぁ……」

 そして、今回の戦力について説明する。

「今回、俺が引き連れてきたのはほとんどがCランクモンスターと適合した人間で、幹部と名乗っていた凛堂達と戦った奴らはBランクモンスターの適合者なんだなぁ……」

 会議室の空気が、さらに重くなる。

 あれでBランク。

 富山の速度と感電。

 藤島の音波。

 合田の鋼の肉体。

 城島の爆発する風船。

 蛇島の柔軟な身体と溶解液。

 飯島姉妹の光と針。

 どれも簡単に倒せる相手ではなかった。

 それでもBランク。

 ならば、Aランクはどれほどの力を持っているのか。

 影山駿が静かに口を開いた。

「なかなか強い奴らだったが、Aランクモンスターの適合者も居るのか?」

 佐々木は、少しだけ間を置いて答えた。

「3人……Aランクモンスターの適合者が居たんだなぁ……」

 悠真はその言い方に反応した。

「……居た?」

 目を細める。

「過去形か……?」

 佐々木は、こたつの中でゆっくりと頷いた。

「そうなんだなぁ……」

 そして、銀武尊の目的について語り始める。

「銀武様はこの力を使って関西からこの日本を少しずつ支配しようと考えてたんだなぁ」

 その言葉に、悠真達の表情が引き締まる。

 関西だけではない。

 日本全体。

 銀武は、その規模で支配を広げようとしていた。


 ◇


「そして、俺は任務を命じられたんだなぁ」

 佐々木は続ける。

「当時、勢力を振るっていたSPМの存在なんだなぁ……」

 凛堂の表情が険しくなる。

 門脇も、静かに佐々木を見た。

「それで、俺はこの能力を生かしてSPМに間者として潜り込んで居たんだなぁ」

 凛堂が思わず声を荒げる。

「やっぱり、お前はその時からスパイだったのか?!」

 佐々木は否定しなかった。

 こたつの中で気持ちよさそうにしているせいで、その告白には妙な緊張感のなさがある。

 だが、内容は重い。

 佐々木は最初からMonster側の間者だった。

 SPМの中で情報を集め、銀武へ流していた。

 凛堂はさらに問い詰める。

「でも、どうやって桜井の支配下から逃れたんだよ!」

 桜井晴彦の支配は強力だった。

 元SPМの多くは、その影響を受けていた。

 それなのに佐々木は、Monsterの間者として動き続けていた。

 佐々木はゆっくり答える。

「事前に何かしらの能力で洗脳的な事をしているという情報はこちらでも掴んでいたんだなぁ」

 会議室が静まり返る。

「勿論、俺も埋め込まれそうになったんだなぁ」

 佐々木は自分の胸元を見るように視線を落とした。

「気付いた俺はワッペンを埋め込まれてスキルを使われる直前に気づかれないように霊体化してその場から逃げたんだなぁ」

 門脇が納得したように息を吐く。

「成る程な……」

 そして、佐々木を見据える。

「それで、お前だけ間者として活動してたって訳か……」

 佐々木は頷いた。

「その通りなんだなぁ……」

 さらに、あっさりと告げる。

「それで、情報を逐一Monsterに流してたんだなぁ」

 凛堂は苦々しげに舌打ちする。

 自分達の情報。

 能力。

 戦い方。

 それらがすべて、Monsterへ流れていた。

 だからこそ、今回の相性配置ができたのだ。

 佐々木は続ける。

「俺は東京担当だったんだなぁ」

 悠真はその言葉を聞き逃さなかった。

 東京担当。

 つまり、他の地域にも担当がいる可能性がある。

 だが、今は佐々木の話を聞く方が先だった。


 ◇


「だから、詳しくは知らないけど四国に乗り込んだ自慢のAランクモンスター適合者であった実力のあった三銃士が全員死んでしまったんだなぁ……」

 悠真は思わず声を上げた。

「全員死んだ?!」

 Aランク適合者。

 銀武が与えられる中で、現状最上位のランク。

 しかも、何万人に1人いるかどうかというほど貴重な存在。

 その3人が、四国で全員死亡した。

 悠真は、四国で確認されているSランクモンスターの情報を思い出す。

「ということはSランクモンスターも対処出来た可能性があるという事だよ……な」

 四国には、何かがある。

 Sランクモンスターに対抗できる存在。

 もしくは、Aランク適合者3人を返り討ちにできるほどの強者。

 佐々木は頷いた。

「四国には強いスキルをもつ奴が居るのは確かなんだなぁ……」

 会議室に、重い沈黙が落ちる。

 東北、山梨、東京。

 そして今度は、大坂と四国。

 世界はまだ、悠真達の知らない脅威と強者で溢れている。

 佐々木は話を続けた。

「そして、銀武様は焦ったんだなぁ……」

 こたつの中で気持ちよさそうにしながらも、その内容は銀武の追い詰められた状況を示していた。

「実力者であるAランク適合者の三銃士を一気に失ったから当然なんだなぁ……」

 佐々木は、ゆっくりと言葉を重ねる。

「銀武様曰くAランク適合者は何万人に1人居るか居ないか……らしいんだなぁ」

 それほど希少な戦力を3人も失った。

 銀武が焦るのも当然だった。

 そして、その焦りが東京襲撃へ繋がった。

「そんな時、東京に潜入していたこちらの間者の1人である宝塚から連絡があったんだなぁ……」

 その名前に、何人かが反応する。

 宝塚。

 佐々木達と共に名前が出ていた人物。

 東京に潜入していたMonster側の間者だった。

 佐々木は続ける。

「東京の主力メンバー全員が出払い、居るのは、自衛隊と警察組織だけと……」

 悠真の表情が険しくなる。

 山梨へ向かったこと。

 東京を任せたこと。

 その隙を、Monsterは突こうとしていた。

「銀武様はとにかく四国の前に先ず東京を支配し、その中からまたAランク適合者を見つけようと考えたんだなぁ」

 佐々木はぽやぽやした顔のまま、淡々と告げる。

「そして、急な作戦ではあったけど、SPМの能力に詳しい俺を筆頭に部隊で乗り込んでいったという流れなんだなぁ……」

 東京襲撃の理由が、ようやく繋がった。

 単なる侵略ではない。

 銀武にとって東京は、新たな戦力を探すための場所でもあった。

 人口が多く、超人族も多く、悠真という中心がある都市。

 そこを支配できれば、Aランク適合者を見つけられる可能性がある。

 だが、その作戦は失敗した。


 ◇


 悠真は静かに考えを整理する。

 四国でAランク適合者3人を失った。

 東京でBランク適合者の幹部達と、Cランク適合者を中心とした部隊を失った。

 佐々木も捕縛済み。

 宝塚という間者も、もはや警戒対象として浮き上がった。

 今のMonsterは、相当な痛手を負っているはずだった。

 悠真は口を開く。

「成る程な……」

 そして、周囲を見回した。

「という事は今、関西はかなり勢力を失っている事になるよな……」

 未来が頷く。

「確かにね……」

 その声は冷静だった。

「攻めるならチャンスね……」

 会議室の空気が変わる。

 これまで東京は、攻められる側だった。

 守る側だった。

 だが、このまま受け身でいれば、また銀武が何かを仕掛けてくるかもしれない。

 人を選別し、モンスターの力を与え、支配を広げる。

 そんな組織を放置することはできない。

 悠真は表情を引き締めた。

「こんな事をしたMonsterや銀武という奴はやっぱり許せない……」

 東京を襲った。

 住民を人質に取ろうとした。

 戦力補充のために、人々を利用しようとした。

 それだけで十分だった。

「次は俺達から先手をうとう……!」

 一同は頷いた。

 凛堂も、門脇も、犬飼も、柿原も、影山兄弟も。

 誰も異論はなかった。

 Monsterを放置すれば、必ずまた被害が出る。

 東京を守るためにも、こちらから動く必要がある。


 ◇


 その時、門脇が少し言いづらそうに口を開いた。

「こんな時にあれだが悠真に会ってもらいたい人が居るんだ……」

 悠真は首を傾げる。

「俺に?」

 門脇は頷き、会議室の扉へ視線を向けた。

「入ってきてくれ……!」

 扉が開く。

 そこから入ってきたのは、細身の男性だった。

 年齢は高校生くらいに見える。

 黒髪に眼鏡。

 少し緊張した様子で、しかし目だけは妙に輝いていた。

 夏山京樹だった。

 門脇は悠真へ向き直る。

「紹介しよう……」

 そして、少しだけ柔らかい表情で告げる。

「凛堂からの話にも出たとは思うが、俺の命の恩人である夏山だ……」

 夏山は、会議室の中を見回した。

 そこには、黒瀬悠真がいた。

 更には東京の主力メンバーが全員居た。

 夏山にとっては、憧れと尊敬の対象が一堂に会している場所だった。

 頭の中で、処理が追いつかなくなる。

 目の前に本物の悠真がいる。

 本物の東京の中心人物達がいる。

 そして、自分がそこへ紹介されている。

 夏山の口が、震えるように開いた。

「ここは……天国ですか?!」

 次の瞬間。

 夏山は興奮のあまり、その場に倒れてしまった。



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