↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【Monster編開始】世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
190/204

圧倒的な力

第190話です。宜しくお願い致します。

 


地下防災施設の薄暗い空間に、夏山京樹の浮かれた声が響いていた。

「やった! やった!」

 夏山は両手を上げ、その場で踊っている。

 門脇誠司は、その様子を少しだけ困ったように見ていた。

 命を救われたのは事実だ。

 合田に追い詰められ、あと一歩で鋼の拳を振り下ろされるところだった。

 夏山が現れなければ、門脇は本当に死んでいたかもしれない。

 だから、夏山の頼み事に対して、条件付きとはいえ約束した。

 それ自体に後悔はない。

 ただ、目の前で全力で喜びながら踊られると、さすがの門脇も反応に困った。

 門脇は小さく息を吐き、周囲を見渡す。

 合田はすでに《ガチャカプセル》の中に閉じ込めた。

 ひとまず、地下での危機は去った。

 だが、問題はまだ残っている。

 ここは巨大な地下防災施設。

 地上では今も戦闘が続いている可能性が高い。

 早く戻らなければならない。

 門脇は、踊っている夏山へ声をかけた。

「後はどうやって、上に戻るかだなぁ……」

 門脇は、暗く広い通路の先を見る。

「この地下を歩いて上に戻る場所を探すのは骨が折れそうだしな……」

 この施設は、世界崩壊前から東京の地下に作られていた巨大な防災施設だった。

 川の水位が上がった際、一時的に水をためるための場所。

 その規模は大きく、出入口を探して歩き回れば、かなりの時間がかかるだろう。

 今の門脇達に、そんな余裕はなかった。


 ◇


 すると、夏山がぴたりと踊るのを止めた。

 そして、勢いよく手を挙げる。

「それなら俺に任せて下さいっ!」

 その声には妙な自信があった。

 門脇は少しだけ眉を上げる。

「任せる……?」

 夏山は大きく頷いた。

 そして、門脇を連れて、最初に落ちてきた場所へ向かう。

 しばらく歩くと、上へと続く大きな穴が見えてきた。

 合田が地面を割り、門脇を落とした穴だった。

 天井からは、地上の光がわずかに差し込んでいる。

 夏山はその穴を見上げ、嬉しそうに言った。

「さっき、丁度いい上に行ける穴があると思ったんですよね〜!」

 門脇は、穴を見上げたまま冷静に返す。

「それは、敵に落とされた穴だけどな……」

 夏山はまったく気にしていない。

「でも、この大きな穴のお陰で上に上がれます!」

「……?」

 門脇が首を傾げた次の瞬間、夏山は胸を張った。

「スキル、《天気予報》!」

 夏山の声が、地下に響く。

 そして、空を見上げながら告げた。

「強風にご注意を……!」

 その言葉と同時に、周囲の空気が動いた。

 最初は小さな風だった。

 しかし、それはすぐに渦を巻き始める。

 地下防災施設の中に、あり得ないほど強い風が生まれた。

 門脇の服が激しく揺れる。

 砂埃が舞い上がる。

 足元から吹き上がる風が、門脇と夏山の身体を包み込んだ。

 門脇の身体が、ふわりと浮く。

「これは……凄いな……」

 思わず、門脇は呟いた。

 先ほどは雪と氷で合田を凍らせた。

 そして今度は強風。

 夏山の《天気予報》は、想像以上に応用力の高いスキルだった。

 門脇と夏山の身体は、風に乗って一気に上昇していく。

 暗い地下の空間が遠ざかる。

 地上の光が近づく。

 そして、あっという間に2人は穴の外へと浮かび上がった。


 ◇


 場面は現在へ戻る。

 門脇は、犬飼守と柿原紅蓮へ説明を終えた。

「そうやって今、お前達と対面しているという訳だ……」

 犬飼は、納得したように頷いた。

「成る程……!」

 そして、改めて夏山を見る。

 夏山は少し緊張したように背筋を伸ばしていた。

 尊敬する門脇。

 そして、先ほどから目の前にいる本物の犬飼。

 夏山にとっては、現実感のない状況だった。

 犬飼は、そんな夏山へ歩み寄る。

「お前、すげぇんだな……!」

 夏山の目が、ぱっと輝く。

 だが、犬飼はそこで終わらなかった。

 夏山の手を、真っ直ぐに握った。

「本当に、本当に門脇さんを助けてくれてありがとなっ!!」

 犬飼の声は、まっすぐだった。

 そこに照れや誤魔化しはない。

 門脇は、犬飼にとって長く共に戦ってきた大切な存在だった。

 SPМ時代、門脇が戦術隊隊長で、犬飼は副隊長。

 2人は何度も共に戦ってきた。

 その門脇を夏山が救った。

 だから、犬飼は心から礼を言った。

 夏山は、感激のあまり泣きそうな顔になる。

 眼鏡の奥の目が潤んでいた。

「……はいっ!!」

 声が少し震えている。

 尊敬する犬飼に、真っ直ぐ感謝された。

 それだけで、夏山にとっては胸がいっぱいだった。

 その横で、柿原が腕を組む。

「それにしても何で、お前はあの地下になんて居たんだ」

 当然の疑問だった。

 夏山は東京の住民のはずだ。

 それなのに、なぜ巨大な地下防災施設にいたのか。

 夏山は、少し気まずそうに目を逸らす。

「それは……俺も少しでも役に立ちたくて破壊行為をしていた羽アリ……じゃなくて、敵を倒して回っていたんです……」

 言いかけた言葉を慌てて訂正する。

 犬飼と柿原は一瞬だけ顔を見合わせた。

 羽アリ。

 この男は敵をそう呼んでいるらしい。

 夏山は恥ずかしそうに頬をかく。

「そうしたら、いつの間にか地下まで行っちゃってましたっ!」

 柿原は、しばらく無言で夏山を見た。

 そして、ゆっくりと言う。

「敵を倒し回るってお前本当にすげぇんだな……」

 そこは素直に認めるしかなかった。

 夏山は、幹部ではないとはいえ、佐々木側の超人族を倒して回っていた。

 雷を落とし、雪や氷を使い、強風で移動もできる。

 戦力としては、かなり頼もしい。

 だが、柿原はすぐに首を傾げた。

「それにしても迷って地下まで行くってそんな事あるか……?」

 普通はない。

 少なくとも、地上で敵を倒して回っていて、いつの間にか地下防災施設まで辿り着くなど、そうそう起こらない。

 夏山は、申し訳なさそうに笑った。

「俺、極度の方向音痴なんで……」

 柿原は即座に突っ込んだ。

「いや、方向音痴すぎるだろっ!」

 夏山は苦笑する。

「ははは……」

 強力なスキル。

 異常なほどの都知事達への知識。

 そして、極度の方向音痴。

 犬飼と柿原は、夏山という男の扱いに少し困りながらも、その実力だけは認めざるを得なかった。


 ◇


 一方、その頃。

 凛堂明日香は、富山光と藤島を相手に戦い続けていた。

 富山の全身には電気が纏われている。

 《ビリビリコボルト》による高速移動。

 地面を蹴るたびに、電気が弾ける。

 富山は凄まじい速度で凛堂の周囲を駆け回り、パンチや蹴りを叩き込んでいた。

 さらに、空中には藤島がいる。

 トンボのような羽を震わせながら、《サウンドドラゴンフライ》の音波を放ち続けていた。

 見えない音の波が、凛堂の身体にまとわりつく。

 動きを鈍らせる。

 そこへ富山の攻撃が入る。

 打撃を受ければ、富山の身体に纏った電気によって感電する。

 速度低下。

 感電。

 連続打撃。

 普通の相手なら、とっくに倒れていてもおかしくない。

 だが、凛堂は倒れなかった。

 むしろ、楽しそうだった。

 富山の拳を受け、蹴りを受け、電気で身体を痺れさせられながらも、凛堂の口元には笑みが浮かんでいる。

 富山は息を切らしながら、苦々しく呟いた。

「こんなに、打撃を与えているのに何であいつは楽しそう何だよ……」

 藤島も、空中から凛堂を見下ろしながら顔をしかめる。

「何か遊ばれてる見たい……」

 攻撃は当たっている。

 音波も効いている。

 感電もしている。

 それなのに、凛堂を追い詰めている感覚がない。

 むしろ、自分達の攻撃を受けながら、凛堂がどこか戦いを味わっているように見える。

 凛堂は、富山の蹴りを受け止めるように腕で流しながら、ふと呟いた。

「俺はやっぱダメだな……」

 富山と藤島が警戒する。

 凛堂は肩を回した。

「久しぶりだからってついつい楽しんじまった……」

 凛堂の頭に、佐々木の顔が浮かぶ。

 本体を探さなければならない。

 佐々木は霊体を使って動いている。

 本体を見つけなければ、いつまでも逃げられる。

 それなのに、自分は目の前の戦いを楽しみすぎていた。

 凛堂は小さく笑う。

「早く、佐々木の本体探しに行かないとだもんな……」

 空気が変わった。




 富山はそれを肌で感じた。

 先ほど、凛堂が《日光浴》を5%解放した時。

 自分の顔面へ拳が迫り、本気で死を覚悟した。

 あの感覚が、まだ身体に残っている。

 凛堂が一歩踏み出す。

「じゃあ、行くぜっ!」

 その瞬間、富山は思わず後ろへ跳んでいた。

 理屈ではない。

 身体が勝手に動いた。

 凛堂は、それを見て口元を吊り上げる。

「何だ……怖がってんのか?」

 富山は歯を食いしばる。

「ちげぇよ……」

 強がるように言った。

 だが、手には汗が滲んでいる。

 真正面から挑めば、危険だ。

 ならば、距離を取って攻撃するしかない。

 富山は自らの手を地面に当てた。

 全身に纏っていた電気が、地面へ流れ込む。

 バチバチと音を立てながら、電流が地面を伝って凛堂へ向かって走る。

「遠距離攻撃ならどうだっ!」

 富山の声が響く。

「俺の最大電力だァァァ!!」

 ありったけの電気が、凛堂へ流し込まれた。

 地面から電流が跳ね上がり、凛堂の身体を包む。

 凛堂の表情が、わずかに歪んだ。

 さすがに痛みはある。

 身体の奥まで電気が走り、筋肉が強制的に震える。

 富山はその表情を見て、一瞬だけ勝機を感じた。

 だが、凛堂は倒れなかった。

 電流を受けながらも踏みとどまる。

 そして、首を右へ左へ捻った。

 さらに肩を回し、息を吐く。

「流石にこれはよく効いたぜっ!」

 凛堂は笑っていた。

 富山の顔から血の気が引く。

「なっ……」

 自分のありったけだった。

 これ以上はないという最大電力。

 それを受けて、凛堂はまだ立っている。

「俺のありったけが……」

 富山が呆気に取られた、その瞬間。

 凛堂が静かに呟いた。

「10%解放……」

 凛堂の身体から、圧が膨れ上がる。

 5%の時よりもさらに濃い。

 空気が重くなる。

 富山は反射的に身構えた。

 凛堂の姿が消える。

 次に見えた時には、もう富山の目の前だった。

「っ……!」

 富山は思わず後ろへ下がる。

 だが、凛堂の狙いは富山ではなかった。

 凛堂は地面を強く蹴った。

 その身体が、空へ跳ぶ。

 信じられないほどの跳躍力だった。

 瓦礫の上から、一気に空中の藤島へ迫る。

 藤島の目が見開かれる。

「そんな……」

 羽を震わせ、逃げようとする。

「こんな所までジャンプ出来るなんて……」

 空中にいることで、安全だと思っていた。

 距離を取り、音波で支援し続ければいい。

 だが、10%解放した凛堂には、その高さすら届く。

 凛堂は藤島の目前まで迫り、拳を握る。

「お前の音波、地味にウザかったんだよなぁ……!」

 その拳が、藤島の腹へ叩き込まれた。

「がっ……!」

 藤島の身体がくの字に折れる。

 そのまま地面へ向かって落下した。

 凄まじい勢いで叩きつけられ、土煙が上がる。

 藤島は地面に倒れ、動かなくなった。

 気を失っていた。

 富山が叫ぶ。

「藤島っ!!」

 凛堂は地面へ着地する。

 そして、富山へ視線を向けた。

「お前がビビって後ろ跳んだからじゃねぇのか?」

 その言葉に、富山は奥歯を噛みしめる。

 悔しさが込み上げる。

 確かに、自分は下がった。

 凛堂の圧に怯み、藤島への道を空けた。

 結果として、藤島は倒された。

 富山は、拳を震わせながら凛堂を睨む。

 凛堂は挑発するように笑った。

「ほら、悔しかったら正々堂々とかかってこいよっ!」




 富山は一瞬、言葉を失った。

 逃げるか。

 距離を取るか。

 もう一度、遠距離攻撃を狙うか。

 選択肢はあった。

 だが、富山は地面を蹴った。

 全身の電気を再び強く纏う。

 バチバチと激しい音が鳴る。

 恐怖はある。

 だが、藤島を倒され、挑発され、ここで逃げることはできなかった。

「うおおおおっ!!」

 富山は真正面から凛堂へ突っ込んだ。

 ありったけの速度。

 ありったけの電気。

 ありったけの力。

 その全てを込めて、正面から挑む。

 凛堂は、その姿を見て小さく笑った。

 悪くない。

 そう思った。

 富山の拳が迫る。

 凛堂は半歩ずれる。

 蹴りが来る。

 腕で受け流す。

 電気が弾ける。

 だが、凛堂は止まらない。

 そして、一瞬で富山の懐へ入った。

「終わりだ」

 低く告げる。

 次の瞬間、凛堂の拳が富山の腹へめり込んだ。

 富山の身体がくの字に折れる。

 電気が乱れ、消えていく。

 富山は膝をつき、そのまま地面へ倒れた。

 意識を失っている。

 凛堂VS富山、藤島。

 その戦いは、凛堂の勝利で終わった。

 凛堂は大きく息を吐く。

「はぁ……」

 そして、倒れた富山と藤島を見る。

「なかなか骨のある奴だったな……!」

 それは本心だった。

 富山の速度と感電。

 藤島の音波による妨害。

 2人の連携は、普通の相手なら十分に脅威だった。

 実際、凛堂も完全に無傷ではない。

 身体には痺れが残り、音波の影響で重さも感じている。

 凛堂は肩を回しながら続けた。

「それにしても俺のスキルと世良のスキル合わせてないとどうなっていたか分からなかったからなぁ……!」

 世良の《美魔女》による身体能力の底上げ。

 そして、自分の《日光浴》。

 その両方があったからこそ、ここまで押し切れた。

 凛堂は倒れた富山へ視線を落とす。

「久々に面白い勝負が出来たぜっ!」

 口元を上げる。

「ありがとなっ!」

 だが、富山も藤島も気絶している。

 返事はない。

 凛堂は少し間を置いたあと、ぽつりと呟いた。

「あ……てか聞いてないか……」

 凛堂は苦笑し、再び佐々木の本体を探すために視線を巡らせる。

 こうして、凛堂VS富山、藤島の戦いは、凛堂が勝利を飾った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。