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【Monster編開始】世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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189/204

大雪警報にご注意を

第189話です。宜しくお願い致します。


犬飼守と柿原紅蓮は、急いで穴の方へ向かおうとしていた。

 城島と蛇島は倒した。

 だが、戦いはまだ終わっていない。

 門脇誠司が、合田と共に地下へ落とされている。

 門脇の《ガチャカプセル》は強力だ。

 当たりさえすれば、どんな相手でも閉じ込めることができる。

 しかし、それは当たればの話だった。

 相手がスキルの内容を知っている場合、正面からの一対一ではかなり厳しい。

 ましてや相手は、《アイアンゴーレム》で鋼の身体を持つ合田。

 犬飼は焦っていた。

 門脇を一刻も早く助けなければならない。

 柿原も同じだった。

 2人が穴へ向かおうとした、その時だった。

 ゴォッ!!

 穴の奥から、凄まじい突風が吹き上がった。

 犬飼と柿原は、咄嗟に身構える。

「何だ……?!」

 風が瓦礫と砂埃を巻き上げる。

 そして、その風に乗るようにして、2人の人影が地上へ浮かび上がってきた。

 1人は、門脇誠司。

 もう1人は、犬飼にも柿原にも見覚えのない男だった。

 門脇の姿を見た瞬間、犬飼は目を見開く。

「門脇さん!!」

 そして、安堵の混じった声で叫んだ。

「よくぞご無事でした!!」

 門脇は、風に乗って地上へ戻ってくると、ゆっくりと足をつけた。

 服は汚れ、ところどころに傷もある。

 だが、命に関わるような怪我はなさそうだった。

 門脇は小さく息を吐く。

「あぁ……」

 そして、自分の隣に立つ男へ視線を向けた。

「無事だったのはこいつのお陰だ……」


 ◇


 犬飼と柿原も、その男を見る。

 男は高校生くらいの見た目で、眼鏡をかけていた。

 だが、その表情はただの高校生のそれではなかった。

 両手を自らの胸の前で祈るように握りしめ、目をキラキラと輝かせている。

 まるで、長年憧れていた存在を目の前にしたかのようだった。

 そして、その目が犬飼と合う。

「あぁ……目が合いましたね!!」

 男は、感激したように声を震わせた。

 犬飼は反射的に目を逸らす。

 理由は分からない。

 だが本能が告げていた。

 こいつとは目を合わせてはいけない。

 目を合わせたら、何かが始まる。

 そんな種類の人間だと。

 しかし、男はすでに始まっていた。

「本物の犬飼さんだ!!」

 目を輝かせたまま、男は犬飼を見つめる。

 犬飼は少し引きながらも、問い返した。

「……俺の事知ってるのか?」

 男は、待ってましたと言わんばかりに胸を張る。

「それは勿論っ!!」

 そして、勢いよく語り始めた。

「犬飼さんと言えば、元SPМ戦術隊の副隊長で桜井の罠にハマりつつも身体中ボロボロになりながら我らが都知事である黒瀬悠真さんに助けを求めたじゃないですか?!」

 犬飼の顔が、微妙に引きつる。

 確かに事実だった。

 だが、本人の前でそこまで熱量高く語られると、どう反応していいか分からない。

 しかし男は止まらない。

「助けを求める事も意外と勇気がいるものです!」

 拳を握りしめ、真剣な顔で続ける。

「俺は貴方を尊敬しています!」

 犬飼は、思わず瞬きをした。

 助けを求めたこと。

 それは、犬飼にとっては情けない記憶でもあった。

 自分達だけではどうにもできず、黒瀬悠真に救いを求めた。

 だが、この男はそれを勇気だと言った。

 尊敬しているとまで言った。

 犬飼は、少しだけ表情を緩める。

「おっ、おぅ……!」

 そして、門脇へ顔を向けた。

「門脇さん、こいつなかなか見所がある奴っすね!」

 門脇は呆れたように息を吐く。

「単純だな……お前は……」

 柿原は、そんな2人のやり取りを見ながら眉をひそめた。

「それよりも、こいつは一体何者何だ?」

 その問いに、男ははっとしたように背筋を伸ばす。

 そして、小さく咳払いした。

「失礼しましたっ!」

 勢いよく頭を下げる。

「俺の名前は、夏山京樹って言います!」

 夏山京樹。

 それが、この眼鏡の男の名前だった。

 門脇は、犬飼と柿原へ向き直る。

「あれは、数十分前の事だ……」

 そう言って、地下で起きたことを話し始めた。


 ◇


 場面は、数十分前へ戻る。

 地下防災施設。

 世界崩壊前から存在していた、巨大な地下空間。

 門脇と合田は、その広い空間の中で対峙していた。

 合田の身体は、《アイアンゴーレム》によって鋼のような皮膚に覆われている。

 ただ立っているだけでも、重い圧力があった。

 門脇は距離を取りながら、すぐにスキルを唱える。

「スキル、《ガチャカプセル》」

 手の中にカプセルが現れる。

 門脇は後ろへ下がりながら、それを合田へ投げた。

 1つ。

 また1つ。

 さらにもう1つ。

 だが、合田は慌てなかった。

 鋼の拳を地面へつける。

「ウォール」

 その瞬間、合田の前の地面が盛り上がった。

 土とコンクリートが押し上げられ、壁となる。

 飛んでいったガチャカプセルは、その壁に弾かれた。

 カン、カン、と乾いた音が地下に響く。

 門脇はさらにカプセルを投げる。

 しかし、そのたびに地面の壁が邪魔をする。

 合田は笑った。

「ほらほらほらほら!」

 その声には、明らかな嘲りがあった。

「ガチャガチャ投げるしか脳がないのか……?」

 門脇は舌打ちしたい気持ちを抑えた。

 正面からでは当たらない。

 やはり、相手はこちらのスキルを知っている。

 ならば、隠れる場所を探し、隙を見て当てるしかない。

 門脇は周囲を見る。

 地下防災施設は広い。

 柱もある。

 壁もある。

 完全に隠れられる場所がないわけではない。

 門脇は、後ろへ下がりながら考える。

 クソッ、何とか隠れれる場所を探して隙を見てガチャカプセルを当てるしかないな……。

 だが、その考えすら合田には読まれていた。

「どうせ、隠れれる場所を探してるんだろう?」

 門脇の目が細くなる。

 合田は地面へ拳を叩きつけた。

「そうはさせねぇよ!」

 次の瞬間、地面が大きく隆起した。

 まるで巨大な板のように、コンクリートの塊が浮き上がる。

 それが門脇めがけて放たれた。

「うっ……!!」

 門脇は避けきれなかった。

 地面の塊が身体にぶつかり、門脇は勢いよく吹き飛ばされる。

 背中から地面に叩きつけられ、肺の中の空気が一気に抜けた。

 世良のバフがなければ、今の一撃だけで骨が折れていてもおかしくなかった。

 門脇は苦しげに身体を起こそうとする。

 しかし、合田はすでに近づいていた。

「逃げるしか出来ないなんて、みっともないなぁ……」

 鋼の身体が、門脇の前に立ちはだかる。

 合田は巨大な拳をゆっくりと振り上げた。

「俺がラクにしてやるよ……」

 門脇は歯を食いしばる。

 身体が思うように動かない。

 カプセルを投げようにも、この距離で防がれれば終わりだ。

 合田の拳が振り下ろされれば、ただでは済まない。

「クソっ……」

 門脇は自嘲気味に笑う。

「我ながらカッコ悪い最期だったな……」


 ◇


 その瞬間だった。

 合田の拳が、空中で止まった。

「何だ……?!」

 合田が驚いた声を上げる。

 足元が白く染まっていた。

 雪だった。

 地下であるはずのその場所に、雪が積もっていく。

 そして、次の瞬間には氷へと変わっていた。

 合田の足が凍りつく。

 合田は動こうとする。

 鋼の脚に力を込める。

 だが、びくともしない。

 自慢のパワーでも、氷を砕くことができなかった。

「一体、何故っ……?!」

 氷は止まらない。

 足元から膝へ。

 膝から腰へ。

 腰から胸へ。

 合田の鋼の身体を、雪と氷が飲み込んでいく。

「何故、俺がこんな目に……!!」

 その言葉を最後に、合田は頭まで完全に凍りついた。

 鋼の身体ごと、氷の中に閉じ込められる。

 門脇は呆然とした。

「何だ……?」

 何が起きたのか、すぐには理解できなかった。

「助かった……のか……?」

 その時、前方から明るい声が聞こえた。

「うわ~! 本物の門脇さんだ!!」

 門脇は声の方を見る。

 そこには、眼鏡をかけた若い男が立っていた。

 胸の前で両手を握りしめ、目を輝かせている。

 明らかに、この状況に似つかわしくない反応だった。

「……?」

 門脇は少し警戒しながら尋ねる。

「君は誰だ……?」

 男は元気よく答えた。

「俺は夏山京樹って言います!」

 門脇は凍りついた合田を見てから、夏山へ視線を戻す。

「これは、君がやったのか?」

 夏山は迷いなく頷いた。

「はい! 門脇さんに仇なしていた不届き者だったので!」

 あまりにも当然のように言う。

 門脇は一瞬、返答に困った。

 だが、夏山はそんな門脇の反応など気にせず、さらに目を輝かせる。

「それより、早くガチャカプセルでとどめを刺して下さい!」

「あっ、あぁ……」

 門脇はこの異様な状況を整理しきれていなかった。

 しかし、夏山の言う通りだった。

 今はまず、合田を無力化するべきだ。

 門脇は《ガチャカプセル》を手に取る。

 そして、凍りついた合田へ投げた。

 動けない合田に、避ける術はない。

 カプセルが合田に当たる。

 次の瞬間、合田の巨大な身体はカプセルの中へ吸い込まれた。

 カプセルが地面へ落ちる。

 カラン、と音を立てて転がった。

 夏山は、その光景を見て両手を握りしめた。

「うわぁ!!」

 心の底から感動しているような声だった。

「生のガチャカプセル!!」

 そして、なぜか勢いよく頭を下げる。

「ごっちゃんですっ!!」

 門脇は、ほんの少しだけ引いた。

 命を救われた。

 それは間違いない。

 だが、この男の熱量は明らかに普通ではない。


 ◇


 門脇は気を取り直して尋ねる。

「君は何故、俺の事をそんなに詳しく知っているんだ?」

 夏山は、待ってましたと言わんばかりに胸を張った。

「それはもう、あの黒瀬悠真さんに人を助ける大切さを進言して導いた方ですよ!!」

 門脇は瞬きをする。

「知らない人なんて居ませんよ!!」

 夏山はさらに熱を込める。

「今の黒瀬悠真さんが都知事になっているのも原点は貴方と言っても過言ではありません!!」

 門脇は言葉に詰まった。

 自分がそこまで大きな存在だと思ったことはない。

 確かに悠真と話したことはある。

 人を助けることについて、伝えたこともある。

 だが、それをここまで壮大に語られると、反応に困る。

「あぁ……そうか……」

 門脇は曖昧に頷いた。

 そして、少しだけ表情を引き締める。

「まぁ、それはさておき本当に助かったよ……!」

 夏山を見る目に、真剣な感謝が宿る。

「君が来なければ、私はあそこで死んでいただろう……」

 それは大げさではなかった。

 合田の拳が振り下ろされていれば、門脇は無事では済まなかった。

「君は命の恩人だ!」

 夏山の顔が、ぱあっと明るくなる。

「門脇さんに、そう言って貰えて本当に光栄です!!」

 その喜び方は、まるで憧れの英雄に認められた少年のようだった。

 門脇は少し困ったように笑う。

 だが、助けられた以上、何か返したいと思った。

「君に何か恩を返したいのだが、何かあるかな……?」

 夏山は、その言葉を聞いた瞬間、ぴたりと固まった。

 そして、恐る恐ると言った様子で口を開く。

「門脇さんにそんな事を頼むのは畏れ多いというのは分かってはいるんですが、では1つ……」

 夏山は、門脇へ1つの頼み事をした。

 門脇はその内容を聞き、少し考える。

 できるかどうかは、条件にもよる。

 自分だけで決められることではない部分もある。

 それでも、命を救われた恩は大きかった。

 門脇は静かに頷く。

「分かった……!」

 そして、約束するように言った。

「条件があるかもだが、約束するよ」

 その瞬間、夏山の表情が弾けた。

「やっほぉー!!!」

 夏山はその場で飛び跳ねる。

 そして、両手を上げながら踊り始めた。

「やった! やった!」

 地下防災施設の薄暗い空間に、夏山の浮かれた声だけが妙に明るく響いていた。


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