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【Monster編開始】世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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191/207

お探しの本体はこちらかなぁ?

第191話です。宜しくお願い致します!


一方その頃、佐々木金次郎は霊体を漂わせながら、自らの本体がある場所へ向かっていた。

 富山光と藤島は、凛堂明日香を追わせた。

 合田は門脇誠司を地下へ落とした。

 城島と蛇島は犬飼守と柿原紅蓮を足止めしている。

 飯島寧々と飯島茶々は影山兄弟を相手にしている。

 すべて、事前に考えていた通りだった。

 相手の能力を知り、相性を考え、分断する。

 佐々木にとって、それは完璧な作戦のはずだった。

 それでも、油断はしない。

 佐々木は不気味な笑みを浮かべながら呟く。

「ククククッ……凛堂は妙に野生の勘が働くんだなぁ……」

 凛堂は粗暴で、単純で、力任せ。

 そう見える。

 だが、時折、理屈では説明できないような鋭さを見せることがある。

 危険な場所へ、なぜか辿り着く。

 隠していたものを、嗅ぎつける。

 そんな厄介な勘を持っている。

 だからこそ、佐々木は念のために動いていた。

「早く移動させておかないとなんだなぁ……」

 霊体は、ゆらゆらと街の中を進む。

 向かった先は、半壊したビルの中だった。

 そのビルの柱の隅に、佐々木は本体を隠していた。

 魂が抜けたように動かない自分の肉体。

 《幽体離脱》によって霊体で動いている間、本体は無防備になる。

 だからこそ、人目につかない場所に置いておく必要があった。


 ◇


 佐々木はビルの中へ入る。

 薄暗い室内。

 崩れた壁。

 散らばる瓦礫。

 佐々木は、柱の隅へ向かった。

 そこにあるはずだった。

 自分の本体が。

 だが。

 ない。

 柱の隅には、何もなかった。

 佐々木の笑みが消える。

 一瞬、理解が追いつかなかった。

 見間違いかと思い、周囲を見回す。

 瓦礫の裏。

 壁際。

 柱の反対側。

 だが、どこにもない。

 佐々木の顔が、焦りで歪む。

「何で、本体がないんだよぉ!!」

 叫び声が、ビルの中に響いた。

 その時だった。

 背後から、聞き覚えのある声がした。

「お探しの本体はこちらかなぁ?」

 佐々木は、勢いよく振り向いた。

 そこには、凛堂明日香が立っていた。

 口元にニヤニヤとした笑みを浮かべている。

 そして、その肩には、魂の抜けた佐々木の本体が担がれていた。

 佐々木の目が大きく見開かれる。

「凛堂っっ!!!」

 怒りの声が、喉から絞り出された。

 凛堂は肩に担いだ本体を軽く揺らす。

 まるで荷物でも持っているかのような雑な扱いだった。

 それを見た佐々木の表情が、さらに歪む。

「返せっ!!」

 佐々木は霊体のまま凛堂へ近づこうとする。

 しかし、凛堂は一歩も退かなかった。

 むしろ、笑みを深める。

「おっと、それ以上近づいたらお前の大事な大事な本体がどうなっても良いのかな……?」

 佐々木の動きが止まる。

 霊体である今の佐々木に、凛堂の攻撃は当たりにくい。

 だが、本体は違う。

 その本体を傷つけられれば、佐々木はただでは済まない。

「クッ……」

 佐々木は歯ぎしりするように呻いた。

 そして、怒りを抑えきれずに叫ぶ。

「クソがァァァ!!!」

 その声には、余裕がなかった。

 いつもの不気味な笑みも、相手を小馬鹿にするような態度も、そこにはない。

 自分の最大の弱点を握られている。

 その事実が、佐々木から余裕を奪っていた。


 ◇


 佐々木は深呼吸する。

 無理やり感情を押し込め、どうにか声を整えた。

「何で、凛堂がこんな所に居るんだなぁ……」

 佐々木は睨む。

「富山と藤島を向かわせた筈何だなぁ……」

 あの2人なら、凛堂を足止めできる。

 そう考えていた。

 富山の速度と感電。

 藤島の音波による妨害。

 2人がかりなら、凛堂相手でも時間は稼げるはずだった。

 だが、凛堂はここにいる。

 佐々木の本体を肩に担いで。

 凛堂は軽く肩をすくめた。

「あぁ、あいつら結構骨のある奴だったよ!」

 佐々木の目が細くなる。

「だったという事は倒してきたのか……」

 凛堂は否定しない。

 その沈黙が答えだった。

 佐々木の顔から、さらに血の気が引いていく。

「作戦は完璧だった筈なんだなぁ……」

 声が震える。

「お前等の能力は知り尽くしていた筈なんだなぁ……」

 佐々木は凛堂を睨みつけた。

「何故、お前だけは崩れなかったんだよぉ!!」

 その言葉に、凛堂は眉を上げた。

「だけ……?」

 そして、にやりと笑う。

「さっき、自衛隊の無線から連絡がかかってきて、お前自慢の仲間達は俺の自慢の仲間達によって壊滅させられたらしいぜっ!」

 佐々木の表情が固まった。

「……は?」

 何を言われたのか、すぐには理解できなかった。

「今なんて……?」

 凛堂はわざとらしく、もう一度言う。

「だからぁ……」

 肩に担いだ本体を見せつけながら、笑う。

「お前の仲間達は壊滅したってよ!」

 その言葉は、佐々木の中にあった何かを砕いた。

 富山と藤島だけではない。

 合田も。

 城島も蛇島も。

 飯島寧々も飯島茶々も。

 すべて敗れた。

 佐々木の頭の中で、作戦の盤面が崩れていく。

 完璧だったはずの配置。

 相性を考えた組み合わせ。

 勝てるはずの戦場。

 それが、すべて壊れていた。

 佐々木の目の焦点が合わなくなる。

 小さな声が漏れた。

「あり得ない、あり得ない、あり得ない、あり得ない」

 佐々木は首を横に振る。

「ここまで準備は完璧だったはず……なんだなぁ」

 声がかすれる。

「どうして、こうなった……」

 凛堂は、その姿を冷たく見ていた。

 佐々木の作戦は確かに厄介だった。

 元SPМの情報を使い、こちらの戦い方を読んでいた。

 門脇の弱点も、犬飼との連携も、影山兄弟の必勝パターンも、凛堂の危険性も理解していた。

 だが、それだけだった。

 過去の情報だけで、今の東京側を測った。

 戦いの中で成長すること。

 仲間同士で相性を入れ替えること。

 スキルを応用して不利を覆すこと。

 そして、佐々木の知らない新たな戦力が現れること。

 そのすべてを、佐々木は読めていなかった。

 凛堂は口を開く。

「お前は俺達を舐めすぎた事が敗因の原因だ……」

 佐々木が顔を上げる。

 凛堂は真っ直ぐに睨み返した。

「相性取ったら勝てると思って傲ったな……」

 佐々木は何も言えない。

 その通りだった。

 能力を知っている。

 相性を取った。

 だから勝てる。

 そう思っていた。

 だが、東京側は佐々木の知る頃のままではなかった。


 ◇


 凛堂は、担いでいる本体を軽く持ち直す。

「さぁ、本体の中に戻って貰おうか?」

 佐々木はしばらく黙った。

 霊体の顔から表情が抜け落ちる。

 そして、低く答える。

「分かったんだなぁ……」

 佐々木の霊体が、ゆっくりと本体へ近づいていく。

 観念した。

 そう見えた。

 だが、凛堂は完全には油断していなかった。

 それでも、佐々木の方が一瞬だけ早かった。

 本体へ戻るように見せかけた佐々木の左手。

 その手が、背後から何かを抜いた。

 ナイフだった。

 次の瞬間、佐々木は凛堂の腹へナイフを突き立てた。

「うっ……」

 凛堂の口から苦い声が漏れる。

 佐々木の顔に、狂気じみた笑みが戻った。

「ククククッ!!」

 佐々木は、そのまま凛堂を何度も刺す。

 一本のナイフが、何度も、何度も振るわれる。

「死ねぇ! 死ねぇ゙!!」

 佐々木の声が壊れたように響く。

「誰が、舐めすぎてたって?」

 さらにナイフを振るう。

「誰が傲ってたって?」

 佐々木は顔を歪めて叫んだ。

「それは全部お前何だなぁ!!」

 凛堂の服が裂け、血が滲む。

 痛みはある。

 だが、凛堂は倒れなかった。

 世良の《美魔女》による強化。

 《日光浴》による身体能力の上昇。

 そして、凛堂自身の頑丈さ。

 その全てが、佐々木の不意打ちを致命傷には届かせなかった。

 凛堂は歯を食いしばる。

 そして、佐々木の本体を担いだまま、後ろへ大きく跳んだ。

 距離を取る。

 佐々木のナイフが空を切った。

 凛堂は腹を押さえながら、凄まじい形相で佐々木を睨む。

「てめぇがその気なら覚悟しとけよっ!!」

 佐々木は目を丸くした。

「あれだけ、刺したのにどうして……」

 その声には、理解できないという色が滲んでいた。

 だが、凛堂はもう聞く耳を持たなかった。

 凛堂は肩に担いでいた佐々木の本体を地面へ下ろす。

 そして、拳を握る。

 霊体を殴っても意味がない。

 だが、本体なら話は別だ。

 凛堂は無言で拳を振り下ろした。

 ドゴッ。

 鈍い音が響く。

 佐々木の霊体が悲鳴を上げる。

「やめろぉ!!」

 凛堂は止まらない。

 もう一発。

 さらに一発。

 佐々木の本体を容赦なく殴りつける。

 顔。

 腹。

 肩。

 腕。

 もちろん、殺すつもりはない。

 だが、二度とふざけた真似ができないように、徹底的に痛めつける。

「やめろぉ!! やめてくれぇ!!」

 佐々木の声がビルの中に響く。

 だが、凛堂の拳は止まらなかった。

 佐々木が観念したふりをして不意打ちした。

 その時点で、凛堂の中の何かに火がついていた。

 しばらくして、佐々木の霊体は本体へ戻った。

 戻るしかなかった。

 そして、戻った時にはすでに、佐々木の本体はまともに抵抗できる状態ではなかった。

 顔は腫れ、唇も腫れ、身体中が痛みに沈んでいる。

 凛堂は、そんな佐々木を鎖で縛り上げた。


 ◇


 ここで、凛堂が悠真達に話していた回想が終わる。

 現在。

 凛堂明日香は、黒瀬悠真達の前で佐々木金次郎を鎖で引きずっていた。

 佐々木は、傷だらけだった。

 顔は腫れ、片目はほとんど開いていない。

 唇も腫れており、まともに喋れる状態ではなかった。

 凛堂は肩をすくめる。

「という訳何だ……」

 そして、佐々木を見下ろした。

「ほら、お前も大将達に何か言う事あるだろ?」

 佐々木は、腫れた唇を震わせる。

 不気味に笑う余裕はもうない。

 相手を小馬鹿にするような声も出ない。

 ただ、痛みと屈辱に顔を歪めながら、どうにか言葉を絞り出した。

「すびません……でした……」



東京防衛編の過去回想が終わりましたが如何でしたか?

仲間になってから初のしっかりと活躍を描けた自衛隊と

今までスキルすらもまともに披露がなかった影山潤の活躍。

それに、個人的には出す機会を伺っていた変態都知事オタクの夏山京樹を出せたのが良かったです!

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