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【Monster編開始】世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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186/204

消された影

第186話です。宜しくお願い致します。



場面は、再び佐々木金次郎達がいた場所へ戻る。

 凛堂明日香は、佐々木の本体を探すために走り去った。

 その後を、富山光と藤島が追っていった。

 門脇誠司は合田によって地下へ落とされ、犬飼守と柿原紅蓮の前には城島と蛇島が立ちはだかっている。

 影山駿と影山潤の前には、飯島寧々と飯島茶々。

 戦場は、佐々木の思惑通りに分断されつつあった。

 佐々木は霊体のまま、残った幹部達を見回す。

「ククククッ……じゃあ後は頼んだんだなぁ」

 幹部達は、それぞれ静かに頷いた。

 佐々木は満足げに口元を歪めると、霊体をふわりと浮遊させ、その場を離れていく。

 すでに自分の役目は果たした。

 各戦場に、最も厄介な相手をぶつける。

 あとは、それぞれが東京側の主力を潰せばいい。

 佐々木は、ゆっくりと街の影へ向かって進みながら呟いた。

「凛堂……あいつは野生の勘だけは鋭いからなぁ……」

 凛堂は力任せに見えて、妙なところで勘が働く。

 理屈ではなく、本能で危険な場所へ辿り着くことがある。

 だからこそ、佐々木は油断しなかった。

「念の為、本体を移動しておくんだなぁ……ククククッ……」

 不気味な笑い声を残し、佐々木の霊体はその場から離れていった。


 ◇


 一方、影山兄弟は飯島姉妹と対峙していた。

 飯島寧々と飯島茶々。

 瓜二つの顔を持つ双子は、まるで緊張していない。

 影山潤は、そんな2人を睨みつける。

「先手必勝だ!」

 そして、兄である影山駿へ視線を向けた。

「俺たちから行くぞ……」

 影山潤は一歩前へ出て、スキルを唱える。

「スキル、《雨宿り》!」

 その瞬間、飯島寧々と飯島茶々の頭上に、それぞれ屋根が出現した。

 小さな屋根。

 一見すれば、雨から身を守るためのものに見える。

 しかし、その屋根の周囲には、すぐに雨が降り始めた。

 ただの雨ではない。

 地面に落ちた雨粒が、じゅう、と音を立てて煙を上げる。

 酸性雨だった。

 影山潤は、飯島姉妹へ告げる。

「その屋根から出た瞬間、お前等は強い酸の雨を浴びて、皮膚が溶けていくぞ」

 屋根の下にいれば安全。

 だが、そこから一歩でも外へ出れば酸性雨が降り注ぐ。

 つまり、移動を封じる拘束。

 影山潤の《雨宿り》は、相手を閉じ込めるためにも使えるスキルだった。

 そして、その隙を逃さず、影山駿も動く。

「スキル、《影法師》」

 影山駿の足元から、黒い影が盛り上がった。

 床に伸びていた影が、液体のように揺れる。

 そこから、ゆっくりと人型が立ち上がった。

 影山駿と同じ体格。

 同じ背丈。

 だが、顔はない。

 全身が真っ黒な、影そのものの存在だった。

 影の分身体は、音もなく床へ沈んだ。

 まるで水面の下へ潜るように、影の中へ消えていく。

 次の瞬間、飯島寧々の足元の影が揺らめいた。

 そこから、影の分身体が姿を現す。

 通常なら、ここで攻撃が決まる。

 屋根の外へ出られない相手に、影の中から奇襲をかける。

 影山兄弟の得意な連携だった。

 だが、飯島寧々は動じなかった。

 表情ひとつ変えず、静かに呟く。

「スキル、《タイプBランク》で《ジェルフィッシュ》」

 その瞬間、飯島寧々の皮膚が変化していった。

 肌の表面に、ゴツゴツとした色とりどりの輝きが生まれる。

 宝石のようにも見えた。

 魚の鱗のようにも見えた。

 鮮やかな色彩を帯びた皮膚が、寧々の身体を覆っていく。

 そして、寧々は一言だけ告げた。

「フラッシュ」

 次の瞬間、寧々の身体が強烈な光を放った。

 直視できないほどの白い光。

 その光が周囲を塗り潰す。

 寧々の足元にあった影が消えた。

 影山駿の影の分身体も、その光に飲まれ、一瞬でかき消される。

 影山駿は、あまりの眩しさに手で目を遮った。

「何だと……俺の影が……」

 影山潤も目を細めながら、驚愕の声を漏らす。

「そんな……兄さんと俺の必勝パターンが……」

 影山兄弟の戦い方は明確だった。

 弟である影山潤が《雨宿り》で相手の移動を封じる。

 屋根の外には酸性雨。

 相手は動けない。

 その隙に、兄である影山駿が《影法師》で影の分身体を送り込む。

 分身体で攻撃する。

 あるいは屋根の外へ突き飛ばし、酸性雨を浴びせる。

 それが、影山兄弟の必勝パターンだった。

 だが、佐々木はそれを知っていた。

 知っていたからこそ、影山駿の影を封じられる飯島寧々をぶつけた。

 寧々は、光を放ちながら静かに告げる。

「あなたの影はこれで使えない」

 影山駿は歯を食いしばる。

 相性が悪い。

 それも、単純な実力差ではない。

 こちらの戦法を知った上で、潰しに来ている。

 影山潤は、それでも言い返した。

「だが、お前達もここから動けない筈だ……!」

 飯島姉妹の上には、まだ屋根がある。

 その周囲には酸性雨が降り続いている。

 影は封じられても、移動は封じている。

 そう思った。

 しかし、飯島茶々が小さく首を傾げる。

「姉様、やっぱりバカだね」

 飯島寧々も淡々と頷く。

「そうね、妹」

 そして、影山潤を見た。

「あんな風になっちゃダメよ」

 影山潤の眉が跳ねる。

「誰が、バカだよ!!」

 茶々は表情を変えずに言った。

「動けないのならここから攻撃すれば良いだけ」

 そして、スキルを唱える。

「スキル、《タイプBランク》で、《ニードルハリネズミ》」

 茶々の背中が膨らむ。

 そこから、無数の針が生えてきた。

 鋭く、硬く、細い針。

 茶々は影山兄弟へ背中を向ける。

「発射」

 次の瞬間、背中の針が一斉に飛び出した。

 空気を裂きながら、影山兄弟へ向かって迫る。

 屋根の下から動く必要はない。

 そこに立ったまま、遠距離攻撃をすればいい。

 影山潤は咄嗟に叫んだ。

「スキル、《雨宿り》で屋根召喚!」

 今度は、屋根が頭上ではなく正面に出現した。

 影山潤と影山駿の前に、盾のように屋根が現れる。

 飛んできた針が、その屋根へ次々と突き刺さった。

 ガン、ガン、と硬い音が響く。

 影山潤は冷や汗を流す。

「危ねぇ……」

 影山駿も小さく息を吐いた。

「潤、助かった……」

 茶々はわずかに首を傾げる。

「防がれてしまいました、姉様」

 寧々は落ち着いたまま答える。

「問題ないわ、有利なのはこっちなんだから」

 影山潤は、盾代わりにした屋根の裏で奥歯を噛みしめた。

「まさか、遠距離攻撃をしてくるなんて……」

 影山駿は、冷静に状況を見ていた。

「佐々木はやはり、相性を考えられた戦闘配置をしてきたということだな……」

 影を消す寧々。

 屋根の下からでも攻撃できる茶々。

 影山兄弟の連携は、見事に対策されていた。

 影山潤は険しい顔で呟く。

「このままだと、防戦一方になってしまう……」


 ◇


 一方、別の場所でも戦闘が始まっていた。

 犬飼守と柿原紅蓮。

 その前には、城島と蛇島が立っている。

 犬飼は一刻も早く、門脇の元へ向かいたかった。

 だからこそ、最初から全力で動く。

「スキル、《人体実験》!」

 犬飼の身体が変化する。

 腕はライオンのように太く、鋭い爪を備えたものへ。

 足はチーターの脚へ。

 高速で距離を詰め、強靭な腕で相手を切り裂くための形態だった。

 隣で、柿原もスキルを唱える。

「スキル、《聖火》!」

 右手に火縄銃。

 左手には火炎瓶。

 柿原はそれを構え、口元を吊り上げた。

「さぁ、始めるぜっ!」

 最初に動いたのは、犬飼だった。

 チーターの脚が地面を蹴る。

 一瞬で蛇島との距離を詰める。

 そして、ライオンの腕で爪を振るった。

 狙いは蛇島の皮膚を抉ること。

 しかし、蛇島は慌てなかった。

「スキル、《タイプBランク》で《ポイズンスネーク》」

 蛇島の身体が、ぐにゃりと揺れた。

 犬飼の爪が迫る。

 だが、蛇島は身体を捻らせた。

 普通ならあり得ない方向へ、上半身が曲がる。

 犬飼の爪は、蛇島の身体を掠めることすらなく空を切った。

「なっ……!」

 犬飼は続けて爪を振るう。

 右から。

 左から。

 下から。

 しかし蛇島は、それを全て避けた。

 関節がないかのように。

 骨の制限がないかのように。

 しなやかに身体を曲げ、滑るように攻撃をかわしていく。

 蛇島は薄く笑った。

「フフフッ……」

 犬飼の爪が、また空を切る。

「自慢の攻撃が当たらないのが不思議かしら……?」

 犬飼は歯を食いしばる。

 蛇島は、ゆっくりと口を開いた。

「次は私の番ね」

 次の瞬間、蛇島の口から紫色の液体が吐き出された。

 ピュッ、ピュッと鋭く飛ぶ液体。

 犬飼は咄嗟に身体を動かして避ける。

 紫の液体が地面に落ちた。

 じゅう、と音を立てて地面が溶ける。

「溶解液か……」

 犬飼は距離を取りながら、蛇島を睨んだ。

 柔らかな身体で攻撃を避ける。

 近づけば、溶解液を浴びる危険がある。

 厄介だった。

 何より、犬飼には焦りがある。

 門脇は今、地下で合田と1対1になっている。

 門脇のスキルは、1人で戦うには向いていない。

 早く助けに行かなければならない。

 しかし、その道を蛇島が塞いでいる。

 犬飼の焦りを見透かしたように、蛇島がにやりと笑った。

「あらあら、早く終わらせてご主人の元に行きたかったんじゃないの……?」

 そして、わざと甘く、挑発するように続ける。

「子犬ちゃん……!」

 犬飼の目が鋭くなる。

「舐めやがって……」



影山潤初のスキル使用になります。

決して筆者は貴方の事を忘れていませんでした……。

ごめんね、遅くなって……。

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