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【Monster編開始】世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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185/204

都知事オタク

第185話です。宜しくお願い致します。

 

場面は、再び変わる。

 佐々木金次郎が率いてきた超人族は、およそ100名。

 その中でも佐々木の近くにいる幹部格の者達は、特に強い力を持つ者達だった。

 富山光。

 藤島。

 合田。

 城島。

 蛇島。

 飯島寧々。

 飯島茶々。

 そして、それ以外の超人族達は、東京の至る所に散らばっていた。

 彼らは建物を壊し、道路を砕き、火を放ち、煙を上げていた。

 目的は、東京の混乱。

 そして、住民の炙り出し。

 だが、その思惑は完全に外れていた。

 どれだけ建物を壊しても、悲鳴が聞こえない。

 どれだけ大きな音を立てても、人が逃げ惑う姿がない。

 住民がいない。

 それは、彼らにとって想定外だった。

「何で誰も居ないんだよ……」

 1人の超人族が、苛立ったように瓦礫を蹴る。

「誰も居ない中、攻撃するなんてつまらねぇよ……」

 別の超人族も、半壊した建物の壁を殴りながら不満を漏らした。

「あ~ストレス溜まるなぁ……」

 彼らは、住民を怯えさせるつもりだった。

 逃げる人々を追い詰めるつもりだった。

 人質を取って、東京を支配するための材料にするつもりだった。

 だが、東京の住民達はすでに避難している。

 前日に、自衛隊と警察が協力して、全員を避難シェルターへ誘導していた。

 その判断が、佐々木達の作戦を大きく狂わせていた。


 ◇


 一方、その避難シェルターの中では、住民達が不安げに身を寄せ合っていた。

 外で何かが起きている。

 それは、誰の耳にも明らかだった。

 爆発音。

 地面を揺らすような振動。

 遠くから響く轟音。

 シェルターの壁が、時折小さく震える。

 子供達は親にしがみつき、老人達は眉を寄せて天井を見上げていた。

 昨日、自衛隊や警察からは、一部の建物崩壊に備えた避難だと説明されていた。

 だが、今聞こえている音は、それだけではない。

 住民の1人が、不安げに呟く。

「外で、一体何が起きてるんだ……」

 別の住民が、扉の方を見る。

「自衛隊や警察はあくまで一部の建物崩壊の避難って言って、避難したけど……」

 さらに別の住民が、青ざめた顔で首を振った。

「明らかに、建物が崩壊しただけの音じゃない……」

「何かのモンスターが襲ってきてるのか……?」

 シェルターの中に、不安が広がっていく。

 誰も外の様子が分からない。

 だが、危険なことが起きているのは分かる。

 その時だった。

 1人の男が、勢いよく立ち上がった。

「俺が確かめてくるよっ!」

 声を上げたのは、見た目は高校生くらいの男だった。

 眼鏡をかけており、まだどこかあどけなさが残っている。

 周囲の住民達が驚いたように彼を見る。

「あんちゃん、大丈夫か……?」

 年配の住民が心配そうに声をかける。

「見たところ、まだ子供だろ……?」

 だが、男は胸を張った。

「大丈夫っ!」

 その声には、妙な自信があった。

 そして、急に目を輝かせる。

「陸斗さんだって、まだ15歳何だぜっ!」

 周囲の住民達が、きょとんとする。

 男はその反応に気づかず、さらに熱を込めて話し始めた。

「あの年であんなに活躍して、悠真さんの右腕をしてるんだぜっ!」

 男の声は止まらない。

「妹の美咲さんと並んで、最初の悠真さんの仲間……」

 両手を握りしめ、まるで英雄譚でも語るかのように続ける。

「それに、Aランクモンスターとの戦いやSPМとの戦いの時や東北に行った時も大活躍してたんですよ!!」

 男の目は、完全に輝いていた。

 外の異変を確かめると言っていたはずなのに、いつの間にか陸斗達の活躍を語る場になっている。

 住民達は、ぽかんとした顔でその話を聞いていた。

 熱量が凄すぎて、誰も止められない。

 男はしばらく話したあと、ようやく自分が脱線していたことに気づいた。

 小さく咳払いをする。

「と……とにかく、年は関係ない!」

 そして、改めて真剣な顔になる。

「それに、俺は超人族にこの間覚醒したから問題ない!」

 そう言うと、男は迷いなくシェルターの扉へ向かった。

 周囲の住民達が慌てる。

「あんちゃん……」

 だが、男は止まらなかった。

 勢いよく扉を開け、そのまま外へ飛び出していく。

 扉が閉まる。

 しばらくの間、シェルター内には沈黙が落ちた。

 やがて、誰かがぽつりと呟く。

「出ていっちまった……」

 別の住民が、首を傾げる。

「何かやけに都知事たちの事詳しかったな……」

 すると、近くにいた女性が呆れたように息を吐いた。

「あんた、知らないの?」

 住民達がその女性を見る。

「あの子はここら辺では有名な都知事オタクなのよ……」

 別の住民が、困惑したように聞き返す。

「都知事オタク……?」

 シェルターの中に、何とも言えない空気が流れた。


 ◇


 一方、男は外へ出ていた。

 シェルターの扉を閉め、周囲を確認する。

 その瞬間、男は言葉を失った。

 そこに広がっていたのは、避難前に見た東京とはまるで違う景色だった。

 昨日の時点でも、一部の建物は崩れていた。

 だが、それでも街並みの多くは保たれていた。

 悠真が整え、住民達が少しずつ復興させてきた東京。

 人々が生活を取り戻し始めていた街。

 しかし今、その景色は大きく変わっていた。

 多くの建物が崩れている。

 煙が上がっている。

 火が出ている場所もある。

 道路には瓦礫が散らばり、焦げた匂いが風に乗って流れていた。

 男は、呆然と立ち尽くす。

「何で、こんな事に……」

 視線を巡らせる。

 すると、いるはずのない人影が見えた。

 全員が避難しているはずの東京に、複数の人影がある。

 その者達は、建物を破壊していた。

 道路を壊していた。

 笑いながら、東京を攻撃していた。

 男の拳が、ゆっくりと握られる。

 爪が掌に食い込む。

 唇を噛みしめる。

 やがて、口の端からわずかに血が滲んだ。

「悠真さん達が避難民を受け入れ、時間をかけて復興させた東京をよくも……」

 その声は低かった。

 先ほど、陸斗達の話をしていた時の熱っぽい声とは違う。

 怒りが、静かに煮えたぎっている声だった。

「万死に値する」

 男は、ゆっくりと息を吸った。

 そして、スキルを唱える。

「スキル、《天気予報》!」

 眼鏡の奥の瞳が、鋭く細まる。

 男は、遠くにいる超人族達を見据えた。

 距離は500メートル以上離れている。

 それでも、男の視線は正確にその場所を捉えていた。

「雷にご注意を……」

 その言葉と同時に、破壊行為をしていた超人族達の真上に黒い雲が現れた。

 それは、周囲の青空とは明らかに異質な雲だった。

 小さな範囲だけを覆うように、真っ黒な雲が渦を巻く。

 超人族達が空を見上げる。

「あれ、雨でも降るのか……?」

 誰かが呟いた。

 だが、雨は降らなかった。

 次の瞬間。

 黒い雲が強烈に発光した。

 轟音。

 白い閃光。

 空から落ちた雷が、破壊行為をしていた超人族達を一瞬で飲み込んだ。

 悲鳴を上げる間もなかった。

 落雷を受けた超人族達は黒焦げになり、その場に倒れる。

 煙が細く上がる。

 男はその光景を見て、ゆっくりと息を吐いた。

「はぁ……」

 昂った気持ちを落ち着かせるように。

 怒りで乱れた呼吸を整えるように。

 まだ若い男にとって、人に向けてスキルを使うことは決して軽いものではなかった。

 だが、迷いはなかった。

 東京を壊す者達を、放っておくことなどできない。


 ◇


 その時だった。

 男が外へ飛び出したところを見ていた1人の超人族がいた。

 その超人族は、男が出てきたシェルターの扉へ近づいていた。

 にやりと笑う。

「ここに住民が居たのか……」

 男が出てきたことで、そこが避難シェルターだと気づいたのだ。

 超人族は扉に手を伸ばす。

「これで、俺も佐々木さんに褒めて貰えるかなぁ……」

 口元が歪む。

「フフフッ」

 この扉の向こうには、多くの住民がいる。

 人質にできる。

 佐々木の役に立てる。

 そう思いながら、超人族は扉を開けようとした。

 その時。

 肩を、軽く叩かれた。

 トントン。

「何だよ……」

 超人族は不機嫌そうに振り向く。

 そこには、先ほど外へ出た眼鏡の男が立っていた。

 男は、不気味な笑みを浮かべている。

「何をしているのかな……?」

 超人族の表情が固まる。

「……え?」

 次の瞬間、シェルターの外で轟音が響いた。

 眩い光が走る。

 超人族の身体が、雷に打たれたように硬直した。

 そして、黒焦げになった身体が力なく崩れ落ちる。

 シェルターの扉が開いた。

 中にいた住民達が、一斉にそちらを見る。

 男は、黒焦げになった超人族を扉の中へ落とした。

 ドサリ。

 住民達の目の前に、黒焦げの身体が転がる。

「ヒィー!!」

 悲鳴が上がった。

 子供達が泣き出し、大人達も顔を引きつらせる。

 しかし男は、にこやかな笑顔を浮かべていた。

「外は羽アリが沢山居るので、皆さんは絶対出ないでくださいね!」

 その笑顔は、あまりにも爽やかだった。

 だが、言っていることと、足元に転がる黒焦げの敵のせいで、逆に不気味さが増していた。

 住民達は、誰も言葉を返せない。

 男はさらに笑顔のまま続けた。

「俺が、外の羽アリを駆除してきます」

 そして、シェルターの扉を閉めた。

 扉が閉まる。

 住民達のざわめきが、背後で遠ざかる。

 その瞬間、男の顔から笑顔が消えた。

 代わりに浮かんだのは、怒りだった。

 悠真達が守ってきた東京。

 陸斗達が命を懸けて守ってきた人々。

 住民達がようやく取り戻し始めた日常。

 それを壊そうとする者達を、男は許せなかった。

 男は拳を握りしめる。

 そして、煙の上がる街へ向かって走り出した。

 外にいる羽アリを駆除するために。



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