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【Monster編開始】世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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184/202

分断された戦場

第184話です。宜しくお願い致します。


凛堂明日香が佐々木金次郎の本体を探すため、その場から走り去った。

 それを追って、富山光と藤島も移動する。

 戦場の空気が、わずかに変わった。

 残されたのは、佐々木金次郎の霊体。

 そして、彼に従う者達。

 対する東京自衛隊側には、影山駿、影山潤、門脇誠司、犬飼守、柿原紅蓮がいた。

 影山潤は、遠ざかっていく凛堂達の気配を追うように視線を向ける。

「兄さん、俺達も追うか?」

 影山駿は、静かに首を横に振った。

「いや……もう間に合わないだろう……」

 富山の速度はかなりのものだった。

 加えて、藤島は空を飛んでいる。

 今から追っても、すぐに追いつけるとは思えない。

 何より、目の前にも敵がいる。

 ここを放置して凛堂を追えば、残った敵に東京を荒らされるだけだった。

 影山駿は、佐々木達へ視線を戻す。

「俺達はこいつらを先に倒すぞ……」


 ◇


 その言葉に、飯島茶々が小さく首を傾けた。

 髪につけたリボンが、わずかに揺れる。

「倒すとか言ってるよ、姉様」

 隣に立つ飯島寧々は、茶々と瓜二つの顔で影山兄弟を見た。

 その目に、感情はほとんど浮かんでいない。

 ただ、相手を値踏みするような冷たさがあった。

「弱い人程すぐに戯言を吐くものよ、妹」

 淡々とした声。

 だが、その言葉には明確な挑発が含まれていた。

 影山潤の眉がぴくりと動く。

 だが、影山駿は冷静だった。

 佐々木金次郎が不気味に笑う。

「ククククッ……事前通りお前等2人があいつらを相手にするんだなぁ……」

 飯島寧々と飯島茶々は、ほとんど同時に頷いた。

 その動きまで、まるで鏡合わせのようだった。

 影山駿は、佐々木の言葉を聞き逃さなかった。

「事前通り……か」

 影山駿の目が細くなる。

 佐々木は元SPМ特殊隊副隊長。

 凛堂、門脇、犬飼、影山兄弟。

 この場にいる者達の能力や戦い方を、ある程度知っている可能性が高い。

 そして佐々木は、決して正面から正々堂々とぶつかってくるタイプではない。

 相手の弱点を探り、嫌な場所を突いてくる。

 影山駿は、それを理解していた。

「佐々木は狡猾な人間だ」

 影山駿は、隣の弟へ低く告げる。

「俺達に勝てる策があるのだろう……」

 そして、飯島姉妹を見据えた。

「気をつけろよ、潤……」

 影山潤も真剣な表情で頷く。

「分かったよ、兄さん……」

 佐々木は、その様子を見て楽しそうに喉を鳴らした。

 まるで、駒が予定通りの位置へ進んでいくのを眺めているかのようだった。


 ◇


 続いて佐々木は、別の男へ視線を向ける。

「ククククッ……合田は門脇を相手にするんだな」

 合田と呼ばれた男が、一歩前へ出た。

 黒髪短髪。

 白のタンクトップ。

 身長は2メートル近くあり、肩幅も異様に広い。

 腕は丸太のように太く、胸板は分厚い。

 見るからにガタイがよく、まるでボディビルダーのような体形をしていた。

 合田は短く答える。

「あぁ、了解だ」

 その声には余計な感情がなかった。

 ただ命令を受け、実行する。

 それだけの声だった。

 合田は、門脇を見据える。

 そして、低くスキルを唱えた。

「スキル、《タイプBランク》で《アイアンゴーレム》!」

 次の瞬間、合田の身体がさらに膨れ上がった。

 筋肉が盛り上がり、体格が一回り大きくなる。

 同時に、皮膚の質感が変わっていった。

 人間の肌ではない。

 鋼を纏ったような、硬質で鈍い光を放つ質感。

 全身がまるで鉄の塊になったかのようだった。

 合田は、その巨大な拳を握る。

 そして、迷いなく地面へ振り下ろした。

 狙いは、門脇が立っている足元。

 拳が地面に突き立てられた瞬間、轟音が響いた。

 地面に亀裂が走る。

 それは一瞬で広がり、門脇の足元を飲み込んだ。

「何だ……?!」

 門脇が反応した時には、すでに遅かった。

 地面が崩れる。

 門脇の身体が下へ落ちていく。

 合田もまた、自ら開けた穴へ向かって飛び込むように落下していった。


 ◇


 犬飼守が叫ぶ。

「門脇さん!」

 犬飼は即座に動いた。

 SPМ時代から門脇と組んできた犬飼には分かっている。

 門脇を1人にしてはいけない。

 特に、相手が門脇の能力を知っているのならなおさらだ。

 犬飼はスキルを唱える。

「スキル、《人体実験》!」

 犬飼の両足が変化する。

 細くしなやかなカンガルーの脚。

 爆発的な跳躍力を生むための足。

 さらに、両腕が太く膨れ上がった。

 ゴリラのような筋肉質な腕。

 その腕力で門脇を掴み、引き上げるつもりだった。

 犬飼は穴へ向かって跳ぼうとする。

 だが、その前に城島が動いた。

「犬飼はんの相手は俺達城島と蛇島はんだよ!」

 城島は笑顔のまま、手を広げる。

「スキル、《タイプBランク》で《ボンバークラウン》!」

 その瞬間、犬飼の周囲に複数の風船が現れた。

 赤、青、黄色。

 まるで子供の誕生日会にでも出てきそうな、ふざけた色合いの風船。

 しかし、それらが可愛らしく浮かんでいたのは一瞬だけだった。

 次の瞬間。

 風船が爆ぜた。

「バンっ、バンっ!」

 城島が楽しげに声を合わせる。

 爆発。

 さらに爆発。

 犬飼の周囲で、次々と風船が破裂し、爆風が広がる。

 犬飼の身体は、その爆風に吹き飛ばされた。

「ぐっ……!」

 犬飼は歯を食いしばる。

 カンガルーの脚で踏みとどまろうとしたが、連続する爆風に体勢を崩され、地面を転がった。

 その間に、門脇と合田の姿は穴の奥へ消えていく。

 犬飼はすぐに身体を起こそうとした。

 だが、城島の隣に立つ女性が、気だるげに口を開く。

「ちょっと……私の名前に『はん』とか付けないでくれる……?」

 蛇島と呼ばれたその女性は、全身を黒を基調とした服装でまとめていた。

 背中まで伸びる長い髪。

 冷たさと気だるさが混ざったような雰囲気。

 蛇島は、城島を横目で睨む。

「いつも言ってるでしょう?」

 城島は悪びれもせず、にこにこと笑った。

「だって蛇島はんは蛇島はんじゃない!」

 蛇島は深いため息を吐く。

「はぁ……だからこいつとは組みたくないのよぉ……」

 そのやり取りは、どこか緊張感に欠けていた。

 だが、城島の風船爆発は間違いなく危険だった。


 ◇


 犬飼は爆風で吹き飛ばされながらも、すぐに体勢を立て直す。

 そして、門脇が落ちた場所へ視線を向けた。

「そんな……」

 助けられなかった。

 門脇が、合田と共に地下へ落とされた。

 犬飼の表情に焦りが浮かぶ。

 佐々木は、その様子を見て満足げに笑った。

「ククククッ……門脇はある意味このメンツの中では1番やっかいなスキルを持っているんだなぁ……」

 佐々木の視線が、穴の方へ向く。

「だけど、一対一の戦闘には向かないんだなぁ……!」

 その言葉に、犬飼の拳が強く握られる。

 佐々木の言うことは、間違ってはいなかった。

 門脇誠司のスキル《ガチャカプセル》。

 それは、当たりさえすれば相手をカプセルの中へ閉じ込めることができる。

 格上であろうと、大型であろうと、条件を満たせば捕獲できる。

 一見すれば、極めて強力なスキル。

 だが、弱点も明確だった。

 カプセルが当たらなければ意味がない。

 初見殺しとしての性能は高い。

 しかし、スキルの内容を知っている相手なら、避けるだけで対策になる。

 特に、1対1で正面から戦う場合。

 門脇が投げるカプセルに警戒し続ければいい。

 それだけで、門脇の強みは大きく削がれる。

 SPМ時代、門脇は戦術隊隊長だった。

 そして犬飼は、その副隊長。

 2人はよくコンビを組んでいた。

 犬飼が前衛に出る。

 相手にダメージを与える。

 あるいは注意を引きつける。

 その隙に、門脇が《ガチャカプセル》を投げる。

 相手が犬飼に気を取られた瞬間を狙い、閉じ込める。

 それが、2人の必勝パターンだった。

 門脇のスキルは、誰かと組んでこそ真価を発揮する。

 逆に言えば、孤立させられると厳しい。

 犬飼には、それが痛いほど分かっていた。

「1人で戦うのは門脇さんのスキルとの相性が最悪だ……」

 犬飼は、城島と蛇島を睨みつける。

 それから、隣にいる柿原へ声をかけた。

「おい、柿原……早めに終わらせて早く門脇さんの加勢に行くぞ……」

 柿原紅蓮は、静かに前へ出た。

 その瞳には炎のような気迫が宿っている。

「言われなくてもやってやるさ!」

 犬飼と柿原は、城島と蛇島へ向き直った。

 急がなければならない。

 門脇がどこまで持つか分からない。

 佐々木の策に乗せられた形だとしても、今は目の前の敵を倒すしかなかった。


 ◇


 場面は、地下へ移る。

 東京の地下には、世界崩壊前から存在する巨大な防災施設があった。

 川の水位が上がった際、一時的に水をためるための施設。

 悠真達が作ったものではない。

 崩壊前の東京が、災害に備えて作っていた巨大な空間だった。

 門脇達が立っていた場所は、たまたまその防災施設の上だった。

 合田が地面を割ったことで、門脇と合田はその巨大な地下空間へ落下した。

 普通の人間なら、運が良くても全身骨折。

 悪ければ、命を落としていてもおかしくない高さだった。

 だが、合田は《アイアンゴーレム》によって全身に鋼のような防御を纏っている。

 落下の衝撃を受けても、ほとんど傷はない。

 巨大な身体が床に着地し、鈍い金属音のような音が響いた。

 一方、門脇もどうにか無事だった。

 世良の《美魔女》によるバフがかかっていたおかげで、身体能力も耐久力も引き上げられていた。

 それがなければ、無事では済まなかっただろう。

 門脇は、痛みに顔をしかめながら身体を起こした。

「いてててててっ……」

 肩を回し、背中を押さえる。

「世良のバフがなかったら死んでたな……」

 地下防災施設の内部は広かった。

 巨大な柱。

 暗く長い空間。

 地上の喧騒が遠く感じられるほど、隔絶された場所だった。

 合田は、ゆっくりと立ち上がる。

 鋼のような皮膚が、薄暗い光を受けて鈍く輝いた。

「世良にバフをかけられていたのか……」

 合田は、門脇を見下ろす。

「まぁ、お前は一対一の戦闘に弱いんだろ?」

 門脇は苦笑した。

「あぁ……」

 否定はしなかった。

 それが事実だからだ。

 門脇は、自分のスキルの強みも弱みも理解している。

 《ガチャカプセル》は強い。

 だが、当たらなければ意味がない。

 そして今、目の前にいる合田は門脇の情報を知っている。

 不用意に近づいてくるような相手ではないだろう。

 門脇は小さく息を吐いた。

「情報を全部知ってる元隊員の裏切りって最悪だな……」

 佐々木は、門脇のことを知っている。

 犬飼との連携も知っている。

 戦い方も、弱点も、対処法も。

 その上で、合田をぶつけてきた。

 高防御。

 怪力。

 正面戦闘に強い相手。

 しかも、地下という逃げ場の限られた場所。

 門脇は周囲を見渡す。

 広いが、地上ほど遮蔽物は多くない。

 隠れてカプセルを投げるには、条件があまり良くない。

「さて、どうしたものか……」

 門脇は、静かに呟いた。


 ◇


 その頃、地上でも戦いの構図は固まりつつあった。

 凛堂は、佐々木の本体を探すために走り、富山と藤島がそれを追った。

 門脇は、合田によって地下防災施設へ落とされ、1対1の戦いへ持ち込まれた。

 影山駿と影山潤の前には、飯島寧々と飯島茶々が立ちはだかる。

 犬飼守と柿原紅蓮の前には、城島と蛇島。

 戦場は、佐々木の策略によって綺麗に分断された。

 凛堂VS富山、藤島。

 門脇VS合田。

 影山兄弟VS飯島姉妹。

 犬飼、柿原VS城島、蛇島。

 それぞれが、佐々木によって選ばれた組み合わせ。

 元SPМの情報を知る裏切り者が作り上げた、嫌なほど的確な戦場だった。



やっぱり戦闘シーンは書いていて楽しいです。

ただ、皆さんが戦闘シーンが好きなのかは分かりませんが……。

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