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【Monster編開始】世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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183/207

あっ……これ、死ぬやつだ……

第183話です。宜しくお願い致します!!


凛堂明日香は、目の前に浮かぶ男を睨みつけていた。

 佐々木金次郎。

 元SPМ特殊隊副隊長。

 第2の厄災の終結時に突如として行方不明になっていた男。

 その佐々木が今、東京を襲う側として凛堂達の前に現れていた。

 佐々木の身体は、地面からわずかに浮いている。

 肉体がそこにあるというより、霊体のように揺らめいていた。

 しかし、その不気味な笑みと、こちらを見下すような目つきは、凛堂の知る佐々木金次郎そのものだった。

 凛堂は拳を握りしめる。

「お前がどうして、東京を襲うんだ!」

 声には怒りが滲んでいた。

「何が目的だ!」

 佐々木は、口元を歪めた。

「ククククッ……それをお前が知る必要はないんだなぁ……」

 薄気味悪い笑い声。

 昔からそうだった。

 佐々木は、正面から何かを語る男ではない。

 相手を小馬鹿にするように笑い、肝心な部分を隠し、陰から糸を引こうとする。

 凛堂は、その態度が昔から気に食わなかった。

 佐々木は、東京の街を見回す。

 そして、苛立ちを隠しきれない声で言った。

「それよりも何で住民が居ないんですかぁ〜」

 その言葉で、凛堂は佐々木達の狙いを悟る。

 住民。

 こいつらは、住民を探していた。

 東京を壊すだけではない。

 住民を人質に取るつもりだったのだ。

 凛堂の目つきが鋭くなる。

「こっちもお前に教える義理は無いね……!」

 佐々木は肩を震わせるように笑った。

「ククククッ……住民が居たら人質取りながらスムーズに支配出来たんだなぁ……」

 その瞬間、凛堂の中で何かが切れかけた。

 人質。

 支配。

 最初から東京の住民を盾にするつもりだった。

 悠真が守ろうとしてきた人々を。

 昨日、自衛隊と警察が必死に避難させた住民達を。

 こいつは、最初から道具としてしか見ていない。

 凛堂は低く吐き捨てた。

「外道が……」

 拳に力が入る。

「昔からお前は陰湿な考えばかりしてて気に食わなかったんだよなっ!」

 凛堂は地面を蹴った。

 一気に距離を詰める。

 狙いは、佐々木の顔面。

 拳が空気を裂き、霊体の佐々木へ迫る。

 佐々木は、にたりと笑った。

「無駄なんだなぁ……」

 凛堂の拳は、佐々木の身体をすり抜けた。

 手応えはない。

 空気を殴ったような感覚だけが残る。

 佐々木の身体は霊体化している。

 今の佐々木に、物理攻撃は通じない。

 だが、凛堂の口元には笑みが浮かんでいた。

「知ってるよ……!」

 凛堂は、そのまま佐々木の霊体をすり抜けた。

 殴りかかった勢いを殺さず、さらに前へ走り抜ける。

 佐々木の目がわずかに見開かれた。

 凛堂は振り返らずに叫ぶ。

「今のお前に攻撃が喰らわない事なんて勿論知ってるぜっ!」

 凛堂は、佐々木の能力を知らないわけではない。

 佐々木金次郎のスキルは《幽体離脱》。

 霊体となって離れた場所を移動し、姿を現すことができる。

 しかし、万能ではない。

 本体と霊体をそこまで遠くへ離すことはできない。

 つまり、佐々木の本体は、この近くのどこかにある。

 凛堂の狙いは、最初から霊体を殴ることではなかった。

 佐々木の意識を逸らし、そのまま本体を探すことだった。

「この近くに居るであろう本体を探してやるぜっ!」

 凛堂は笑顔で片手を上げた。

「あばよ!」

 佐々木の顔が怒りで歪む。

「キィーー!!」

 霊体の身体を震わせ、叫ぶ。

「こっ、小癪なんだなぁ……!」

 そして、すぐさま後方へ向かって声を飛ばした。

「富山、藤島の2人であいつを追うんだなぁ……」

 佐々木の声には焦りが混じっていた。

「絶対に私の本体に近づけさせてはいけませんよぉ?」

 その言葉自体が、凛堂の読みが正しいことを証明していた。

 佐々木の本体は近くにある。

 それを守るために、追手を向かわせた。


 ◇


 金髪のツンツンヘアーに、派手な服を着た男が口角を上げる。

「了解だぜっ!」

 その隣で、ショートカットの女性が気だるそうに返事をした。

「はいはい、分かったわ」

 男の名は富山。

 藤島と呼ばれた女性は、相変わらずムスッとした顔でため息をついている。

 富山は両足を軽く開き、声を張った。

「スキル、《タイプBランク》で《ビリビリコボルト》!」

 その瞬間、富山の全身に電気が走った。

 バチバチと音を立てながら、金色の髪がさらに逆立つ。

 身体を包む電流が、眩しいほどに光り輝いた。

 富山は楽しそうに笑う。

「先に行ってるぜっ!」

 藤島は手をひらひらと振った。

「はい、はい……いってらー」

 次の瞬間、富山の姿が掻き消えた。

 電気が弾ける音だけが残り、もの凄い速度で凛堂の後を追っていく。

 藤島はその背中を見送りながら、面倒くさそうに肩を落とした。

「はぁ……面倒くさいけど私も行きますか……」

 そして、小さくスキルを唱える。

「スキル、《タイプBランク》で《サウンドドラゴンフライ》……」

 藤島の背中から、透明な羽が生えた。

 それはトンボの羽のように細く、薄く、光を受けて微かに輝いている。

 羽が高速で震える。

 ブゥンという音が生まれ、藤島の身体がふわりと浮かび上がった。

 藤島は気だるげな表情のまま、凛堂と富山の向かった方角へ飛んでいった。


 ◇


 一方、凛堂は東京の街を走っていた。

 崩れかけた建物の間を抜け、瓦礫を飛び越え、煙の上がる道路を駆ける。

 目は周囲を探っていた。

 佐々木の本体。

 それさえ見つければ、霊体は無視できる。

「あいつのスキル条件的に確か、本体と霊体をそんなに遠くは離せないはず……」

 凛堂は走りながら呟く。

「だから、どこかにあると思うんだけどなぁ……」

 佐々木は陰湿な男だ。

 自分の本体を簡単に見つかる場所に置くとは思えない。

 だが、離れられる距離に限界があるなら、範囲は絞れる。

 凛堂は周囲の瓦礫、半壊した建物、車両の陰、崩れた壁の裏を視線だけで確認していく。

 その時だった。

 背後から、空気が弾ける音がした。

 凛堂が振り返るより早く、強烈な衝撃が背中に叩き込まれる。

 富山の飛び蹴りだった。

 電気を纏った足が、凛堂の背中へ直撃する。

 凛堂の身体が前方へ吹き飛んだ。

 瓦礫に激突し、土煙が舞う。

 砕けたコンクリート片が周囲に跳ねた。

 しかし、凛堂はすぐに瓦礫の中から立ち上がった。

「いってぇなぁ、おい!」

 そう言いながら、肩や背中についた砂埃を払う。

 富山は空中から着地し、苦笑いを浮かべた。

「おいおい、結構な強さで飛び蹴りしたんだぜっ!」

 富山は凛堂を見て、少しだけ目を細める。

「ほとんど、無傷かよ……!」

 凛堂は首を鳴らす。

 痛みはある。

 だが、大したことはない。

 世良の《美魔女》による強化もある。

 そして何より、凛堂自身の肉体は並の超人族とは違う。


 ◇


 凛堂は富山を睨んだ。

「お前達はどこの連中で、何故東京を襲う……?」

 富山は胸を張る。

「俺の名前は富山光」

 そして、あっさりと言った。

「俺達は大坂から来て、銀武様に東京を支配するように命令されたのさ……」

 凛堂は眉を上げる。

「大坂からねぇ……」

 銀武。

 聞いたことのない名前だった。

「銀武って名前も聞いたことねぇな」

 凛堂は腕を組むようにして、富山を見る。

「というか、お前そんな大事な情報を敵の俺にぺちゃくちゃ喋っても良いのかよ?」

 富山の表情が固まった。

「あっ……いっけぇねぇ……」

 今さら気づいたように口を押さえる。

「これ、喋ったらダメな奴だったかも……」

 凛堂は呆れた目を向けた。

 だが富山は、すぐに笑顔へ戻る。

 そして両手を横に広げ、勢いよく言った。

「まぁ……ここで俺に伸されて関係なくなるからセェーフ!!」

 富山は両手で大きくセーフのジェスチャーをした。

 凛堂はしばらく無言で見ていた。

 そして、ぽつりと言う。

「……お前バカだろ?」

 富山が顔を赤くする。

「うるさいなぁっ!」

 凛堂は口元を吊り上げた。

「俺に言われたら終わりだぜぇ?」

 その言葉に、富山はますます悔しそうな顔をする。

 だが、凛堂は軽口を叩きながらも、富山を侮ってはいなかった。

 確かに、こいつはバカではある。

 だが、それなりにやる。

 凛堂はまだ《日光浴》を発動していない。

 とはいえ、世良の《美魔女》で身体能力は大幅に上がっている。

 その凛堂に追いつき、背後から蹴りを入れた。

 速い。

 かなり速い。

 さらに、背中に残る違和感。

 凛堂は、飛び蹴りを受けた背中を少し擦った。

 わずかに痺れている。

 それを見た富山が、嬉しそうに指を差した。

「あっ!」

 にやりと笑う。

「背中痺れてるだろぉ!」

 富山の身体を包む電気が、さらに強く弾ける。

「俺は全身に電気を纏っているからな……!」

 凛堂は目を細める。

 なるほど。

 ただ速いだけではない。

 触れた相手を感電させる。

 攻撃を当てれば、その分だけ相手の動きを鈍らせられる。

 厄介な能力だった。

 富山は軽く跳ねるようにステップを踏む。

「じゃあ、お喋りはこのくらいにしてそろそろ行くぜぇ!」


 ◇


 次の瞬間、富山が地面を蹴った。

 電気が爆ぜる。

 富山の身体が、一直線に凛堂へ飛び込む。

 凛堂の視界から、富山の姿が消えた。

 右から拳。

 左から蹴り。

 背後から肘。

 正面から膝。

 富山は四方八方から凛堂へ高速殴打を浴びせた。

 拳が当たるたびに、電流が走る。

 蹴りが当たるたびに、皮膚が痺れる。

 富山は凛堂の周囲を高速で移動しながら、休むことなく攻撃を叩き込み続けた。

 凛堂は、その攻撃をすべて受けていた。

 富山は笑う。

「どうだっ!」

 さらに拳を叩き込む。

「俺のスピードについてこれないだろぉ!」

 富山のスキル《タイプBランク》で《ビリビリコボルト》。

 それは、身体に電気を纏い、その電気を運動エネルギーに変えることで高速移動を可能にする能力だった。

 さらに、身体中に電気を纏っているため、触れた相手を感電させる。

 速度。

 連撃。

 感電。

 その全てを組み合わせた戦い方は、単純だが強力だった。

 富山は攻撃を当て続けながら、内心で違和感を覚えていた。

 これだけ当てている。

 これだけ感電させている。

 普通なら、もう動きが鈍っているはずだ。

 身体が痺れ、膝をついてもおかしくない。

 それなのに。

 手応えがない。

 凛堂は倒れない。

 苦しそうな顔もしていない。

 むしろ、攻撃を受けながら、どこか様子を見ているようにさえ見えた。

 その時、凛堂が呟いた。

「以前の俺とならお前ともいい勝負出来たかもなぁ……」

 富山の動きが一瞬だけ鈍る。

「は?」

 凛堂は静かに続けた。

「スキル、《日光浴》で5%解放……」

 その瞬間、凛堂の空気が変わった。

 身体の奥から熱が広がる。

 筋肉がさらに膨れ上がるわけではない。

 だが、そこに宿る圧が変わる。

 凛堂の視線が、富山の動きを捉えた。

 富山が右へ回り込む。

 凛堂はそれより早く、身体を半歩ずらす。

 富山が拳を放つ。

 凛堂はその拳を紙一重で避ける。

 そして、凛堂の拳が動いた。

 富山の視界で、凛堂の拳が迫ってくる。

 速い。

 いや、速すぎる。

 不思議なことに、富山にはその拳がスローモーションのように見えた。

 見えているのに、身体が動かない。

 逃げなければならない。

 避けなければならない。

 それなのに、凛堂の拳はもう目の前だった。

「何だ……」

 富山の顔から余裕が消える。

 凛堂の拳が、富山の顔面へ一直線に迫る。

「あっ……これ、死ぬやつだ……」

 富山がそう直感した瞬間だった。

 空気が震えた。

 見えない波が、凛堂へ叩きつけられる。

 耳の奥を揺さぶるような音波。

 身体の動きが、わずかに鈍る。

 凛堂の拳の速度が落ちた。

「……?」

 凛堂が眉をひそめる。

 その一瞬を、富山は逃さなかった。

 全力で後ろへ跳ぶ。

 凛堂の拳が、富山の鼻先を掠める。

 風圧だけで頬が切れ、富山の顔から冷や汗が流れた。

 富山は大きく距離を取り、荒く息を吐く。

「死ぬかと思った……」

 本気の声だった。

 そして、空中へ視線を向ける。

「助かったぜ、藤島……!」

 そこには、トンボのような羽を生やした藤島が浮かんでいた。

 藤島は面倒くさそうな顔のまま、富山を見下ろしている。

「凛堂は強いから佐々木さんが1人では戦うなって言ってたでしょ?」



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