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世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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141/161

バトルモード

第141話です。宜しくお願い致します。


「東北を守るのは俺達世紀末漢隊だ!」

 近藤の声が、白河市の空に響いた。

「やられた仲間の分もやってやるぜ!」

「ヒャッハーーー!!」

 世紀末漢隊の隊員達が、一斉に声を上げる。

 さっきまでの重苦しい空気は、完全に吹き飛んでいた。

 いや、状況が良くなった訳ではない。

 リトルツリーマンは今も森の中を進んでいる。

 吸収された隊員達の顔は、幹に浮かび上がったままだ。

 トレントクイーンを倒さなければ、リトルツリーマンは消えない。

 戦況は、まだ最悪に近い。

 それでも、近藤が戻ってきた。

 それだけで、世紀末漢隊の空気は変わった。

 部下達は兄貴を信じている。

 近藤が叫べば、彼らは動く。

 この男が東北を守ってきた理由が、改めて分かった気がした。

 近藤は赤く腫れた自分の頬を軽く撫で、それから隊員達を見渡した。

 その目には、もう迷いはない。

「まずはお前等、オトコプターのモードをバトルモードへ変えろ!」

「アイアイサー!」

 世紀末漢隊の隊員達が、即座に返事をした。

 次の瞬間、複数のオトコプターから、またあのテーマソングが流れ始める。

 ♪漢〜! ヒャッハー!

 ♪漢〜! ヒャッハー!

 ♪漢なら後ろは見るな前だけ常に見ろぉ〜

 ♪漢なら弱きを守り強くあれぇ〜

 この状況でも流れるのか。

 俺は一瞬そう思ったが、今はもうツッコむ気にもなれない。

 むしろ、この曲が流れることで、世紀末漢隊の隊員達の気合いが目に見えて上がっている。

 彼らにとって、この曲はただのテーマソングではないのだろう。

 戦うための合図。

 自分達が何のために立ち向かうのかを思い出すための歌。

 そう考えると、少しだけ見方が変わる。

 いや、歌詞の濃さは相変わらずだが。


 ◇


 テーマソングと同時に、オトコプターの機体が変化し始めた。

 箱型の飛行物体の側面が開き、金属音を立てながら内部から装備がせり出してくる。

 右側からは、大きく鋭いドリル。

 先端が回転し、空気を震わせる。

 左側からは、分厚く頑丈そうな盾。

 その盾には、力強い文字で「漢」と刻まれていた。

 火炎放射器だけではない。

 近接戦闘用の装備まで備えているらしい。

「こんな事まで出来るのか……」

 俺は思わず呟いた。

 ただの飛行物体だと思っていたオトコプターが、一気に戦闘用の機体へ変わっていく。

 しかも、ドリルと盾。

 これ以上ないくらい分かりやすい装備だ。

「だが、ちょっとカッコいいな……」

 正直、少し胸が高鳴った。

 武骨で、分かりやすくて、無駄に熱い。

 近藤の趣味全開なのに、戦場で見ると妙に頼もしい。

 近藤は俺の反応を見て、にやりと笑う。

「勿論、《漢のロマン》で改造してあるぞ!」

「だろうな……」

 俺は頷くしかなかった。

 あのスキルは、本当に乗り物の可能性をどこまでも広げている。

 近藤はさらに胸を張った。

「そして、俺の機体は更に特殊だ!」

「更に特殊……?」

 嫌な予感と、少しの期待が同時に湧く。

 近藤は自分のオトコプターへ向かって叫んだ。

「よし、変身だ!」

 変身。

 今、確かに変身と言った。

 その瞬間、近藤専用のオトコプターから凄まじい金属音が響いた。

 機体のあらゆる方向から、様々な金属パーツがせり出してくる。

 側面の装甲が開く。

 下部から太いフレームが伸びる。

 翼のような部分が折り畳まれ、背中へ回っていく。

 コックピットの部分がせり上がり、まるで顔のような形になる。

 胴体が形成される。

 そこから腕が生え、さらに脚が伸びる。

 右手には大きな剣。

 左手には、隊員達のオトコプターよりもさらに巨大な盾。

 背中には、元々翼だった部分が装着されている。

 完全に、巨大ロボだった。

 しかも飛行できるタイプの巨大ロボだ。

「流石にこれはヤバいだろ……」

 俺は思わず声を漏らした。

「改造のレベル超えてるって……」

 乗り物から乗り物への改造。

 昨日、近藤はそう説明していた。

 だが、これはもう乗り物なのか。

 いや、コックピットがあり、人が乗って操作するなら、広い意味では乗り物なのかもしれない。

 だが、見た目は完全にロボットだ。

 しかも問題は、そこだけではなかった。

 頭部だ。

 ロボットの頭の部分には、モヒカンがついていた。

 ゴツゴツした濃い顔。

 太い眉。

 妙に主張の強い目元。

 どう見ても近藤剛の顔だった。

 自分の顔にする辺り、やはり主張が激しい。

 普通ならもう少し、無難なデザインにするのではないだろうか。

 いや、近藤に無難を求める方が間違っているのかもしれない。

「ガッハッハ!」

 近藤は満足げに笑った。

「やってみるもんだよなぁ!」

「やってみるもんだ、で済むのか……」

 俺は呆れながらも、目を離せなかった。

 頭の部分は置いておくとして、ロボット自体は普通にカッコいい。

 大きな剣。

 分厚い盾。

 背中の翼。

 空を飛べる巨大ロボ。

 そんなもの、男なら一度くらい憧れるだろう。

「頭の部分は置いといて、ロボットは男の憧れだよな……」

 俺は思わず、少しキラキラした目で言ってしまった。

 すると、近藤の目が輝いた。

「分かるか……!!」

「あぁ、分かる……!」

 何だろう。

 この瞬間だけは、俺と近藤の間に奇妙な友情のようなものが生まれた気がする。

 危険な戦場で何をしているのかと思わなくもないが、ロボットはロマンなのだから仕方ない。

 陸斗も、少し興奮したようにロボットを見上げていた。

「正直、ちょっと分かります……!」

 今井翔太も小さく頷く。

「あれは男なら一度は乗ってみたいですね……」

 やはり分かる人間には分かるのだ。

 だが、その横で芹沢が冷ややかな目をしていた。

「女子には全く分からないわね……」

 未来も腕を組んで、同じような目をしている。

「宮城県に来てから貴方と意見が合うことが多いわね……」

「それはそれで複雑なんだけど」

 芹沢と未来は、微妙な顔を見合わせていた。

 一葉、二葉、三葉のメイド3人は特に反応していない。

 ロボットに興奮する訳でもなく、呆れる訳でもなく、ただ冷静に戦力として見ているようだった。

 この温度差。

 かなり恥ずかしい。

 俺は少し咳払いした。


 ◇


 近藤も同じように気持ちを切り替えたのか、巨大ロボのコックピットから声を張る。

「じゃあ指示を出すぞぉ!」

 その一言で、空気が一気に戦場のものへ戻った。

 近藤はさっきまでとは違う。

 迷いは消え、目標を見据えている。

「まず、女王を仕留める為には、女王を守る兵隊を何とか女王から引き離したい!」

 リトルツリーマンの密集地帯。

 その中心に、トレントクイーンがいる。

 未来の索敵で見つけた場所だ。

 だが、トレントクイーンの周囲には大量のリトルツリーマンがいる。

 そのまま突っ込めば、ツルに貫かれるだけだ。

「よって、お前等全員で一斉にリトルツリーマンを相手にするんだ!」

 近藤の声が響く。

「基本は火炎放射攻めで、ドリルや盾でツルの攻撃を流す感じでいなしていくんだ!」

 なるほど。

 リトルツリーマンは不死身。

 燃やしても種から復活する。

 だから、倒し切ることを目的にしてはいけない。

 火炎放射で一時的に動きを止める。

 その間に位置をずらす。

 ツルの攻撃は、ドリルや盾で受け流す。

 無理に倒すのではなく、トレントクイーンから引き剥がす。

 それが世紀末漢隊の役割だ。

「トレントクイーンは俺が仕留める!」

 近藤が宣言する。

 巨大ロボの右手に握られた剣が、ぎらりと光った。

「俺のアシストを頼む!」

「アイアイサー!!!」

 世紀末漢隊の隊員達が、一斉に声を上げた。

 先ほどまでの動揺はない。

 彼らは近藤を信じている。

 近藤もまた、彼らを信じている。

 それが分かる声だった。

「お前達を信じてるぞ!!」

 近藤の言葉に、篠原が強く頷く。

「兄貴……!」

 青いモヒカンの料理人は、今は完全に戦士の顔をしていた。

「必ずやり遂げますぜ!!」

 その声に、他の隊員達も続く。

「任せてくだせぇ!」

「兄貴の道は俺達が開きますぜ!」

「やられた仲間の分も、まとめて燃やしてやる!」

 叫び声が空を震わせる。

 近藤はそれを聞き、静かに頷いた。

 それから、俺達の方を見る。

「東京メンバーの能力が俺はよく知らないから、とにかく俺達のアシストを頼む!」

「あぁ」

「細かい指示は悠真がしてくれたらいい」

「了解だ!」

 東北の全体指揮は近藤。

 東京組の細かい動きは俺。

 それが一番自然だ。

 俺達は世紀末漢隊の戦場に入り込ませてもらっている立場だ。

 だが、俺達の能力を一番把握しているのは俺だ。

 近藤はそこをきちんと分けた。

 さっきまで自責で固まっていた男とは思えないほど、的確な判断だ。

 やはり、近藤は戻ってきた。


 ◇


 俺は東京メンバーへ振り返る。

「よし、俺達もやるぞ!」

 未来が頷く。

 陸斗も真剣な表情で俺を見る。

 門脇は静かに息を整え、芹沢は少し緊張しながらも目を逸らさない。

 今井翔太と阿川も準備はできている。

 一葉、二葉、三葉も、すぐに動けるよう待機していた。

 そして、ここで俺が出せる戦力はまだある。

 俺は地面へ向けてスキルを唱えた。

「《日常生活》スキル、派遣、警備!」

 空間が揺らいだ。

 まず現れたのは、見慣れた3人だった。

 地面の上に降り立つようにして、アル、ソックス、セイコが姿を現す。

「呼ばれて飛び出て満を持しての登場、アルであります!!」

 アルがいつもの調子で胸を張る。

 戦場の緊張感を全く無視した登場だ。

「自分で満を持じしてとか言うな……」

 ソックスが即座にツッコむ。

 このやり取りを見ると、こんな状況でも少しだけ気が緩む。

 いや、気を緩めている場合ではないのだが。

 セイコは拳を握り、口元を吊り上げた。

「暴れたくてウズウズしてましたの!」

「頼もしいよ」

 俺は短く言った。

 この3人は派遣スキルで呼び出せる、俺の大切な戦力だ。

 アルの機動力。

 ソックスの冷静さ。

 セイコの巨大化。

 どれも、この戦場では役に立つはずだ。

 さらに、警備スキルも発動する。

 俺達は宮城へ向かう途中、約100キロごとに中継地点として誰もいない建物をテリトリー登録してきた。

 白河市付近も、その範囲に入る。

 つまり、ここは俺の《日常生活》のテリトリー内だ。

 だから警備隊を召喚できる。

 地面に光が広がる。

 そして、次々と警備隊が姿を現した。

 合計45人。

 以前は30人までしか召喚できなかった。

 だが、この数ヶ月のスキルレベルアップにより、警備隊の召喚人数は45人まで増えている。

 それだけでも大きい。

 しかも今の警備隊は、以前のような無個性な存在ではない。

 自我機能が解放され、見た目や性格にも変化が出ている。

 その中から、1人の男が前へ進み出た。

「再び我が君に出会えました事、私は興奮が収まりません!!!」

 片手を前に振り、お辞儀をする。

 まるで貴族のような挨拶だった。

 彼は警備隊の格好をしている。

 だが、普通の警備隊員とは明らかに違う。

 メガネをかけている。

 胸にはハンカチーフ。

 ネクタイに手袋。

 どこか執事のような雰囲気。

 警備隊としては、かなり異様な格好だ。

 そして、彼は警備隊のリーダーでもある。

 以前、警備スキルがレベルアップした時、会話機能しかなかった警備隊に自我機能が解放された。

 その時から、警備隊の見た目や個性が大きく変わった。

 中でも、この執事のような男は特に濃い。

 俺はその時、彼に名前をつけた。

 警備隊をもじって、ガドラー。

 我ながら安直な名前だと思った。

 だが、本人はとんでもなく喜んでいた。

「あぁ、何て素晴らしい名前なんでしょう……!!」

 その時のガドラーは、両手を胸に当て、心の底から感動しているようだった。

「この素晴らしい名前に恥じぬように、我が君に全力でお仕えさせて頂きます!」

 正直、少し引いた。

 いや、かなり引いた。

 だが、忠誠心が高いことは間違いない。

 そして今も、ガドラーは目を輝かせて俺を見ている。

「我が君、ご命令を」

 俺は思わず内心で呟く。

 何故、警備隊はみんなこんなに個性的なんだ。

 アル達もそうだが、俺のスキルから生まれる存在は、どうしてここまで濃いのだろう。

 チャン爺も、一葉達も、ガドラーも。

 もう少し普通でもいい気がする。

 だが、今はその濃さすら頼もしい。

 俺は目の前の戦場を見た。

 燃えても蘇るリトルツリーマン。

 その奥に守られているトレントクイーン。

 吸収された世紀末漢隊の隊員達。

 近藤が命じ、世紀末漢隊が動き出そうとしている。

 東京組も、もう準備はできた。

 アル、ソックス、セイコ。

 警備隊45人。

 そしてガドラー。

 俺は息を吸う。

 ここからは反撃だ。

「みんな、暴れてこい!」



アルじゃないですけど、満を持じしてガドラーというキャラが登場しましたね。

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