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世界崩壊後、日常生活スキルで俺が最強拠点を作ってしまった件  作者: ナマケモノ


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135/153

空からやってくる世紀末

第135話です。宜しくお願い致します。


春日の研究所を用意した後、俺達は改めて宮城へ向かうことになった。

 移動手段は、未来が《動植物愛護》の《動植物図鑑》で召喚したレッドワイバーンだ。

 普通なら近づくだけでも恐怖を感じる見た目だが、俺達にとっては頼れる空の移動手段だった。

 ……いや、頼れるのは間違いない。

 間違いないのだが、見た目だけで言えば完全にモンスターである。

 そんなレッドワイバーンに乗り、俺達は東京を離れて東北方面へ進んでいった。

 今回の目的地は宮城県。

 世紀末漢隊。

 そして、そのボスである近藤剛。

 門脇から聞いた限りでは、かなり個性が強く、見た目も名前もふざけているように聞こえる。

 だが、東北地方を守っている存在だという。

 桜井が支配していたSPМとは違う。

 少なくとも門脇は、近藤剛のことを悪い奴ではなさそうだと言っていた。

 それなら、一度会って話をする価値はある。


 ◇


 ただし、宮城へ一直線に向かう訳ではなかった。

 俺達は途中、約100キロごとに降りて、テリトリー地点を作っていく必要がある。

 桜井との戦いで思い知らされた。

 テリトリーの範囲外では、俺の警備隊を自由に呼び出せない。

 今は数ヶ月の強化で召喚可能範囲も広がっているが、それでも全国を相手にするには足りない。

 だからこそ、誰もいない建物を見つけ、そこを《日常生活》のテリトリーとして登録する。

 そうすることで、いざという時に警備隊を呼べる範囲を広げられる。

 中継拠点だ。

 地味な作業ではある。

 だが、こういう地味な準備こそ後で効いてくる。

 俺達は何度か地上へ降り、周囲に人がいないことを確認してから建物をテリトリー化した。

 未来のカラスや犬に確認してもらうこともある。

 陸斗も警戒を怠らず、一葉、二葉、三葉も周囲を見てくれていた。

 春日の研究所を作ったばかりだが、全国調査は待ってくれない。

 俺達はそうして少しずつ、宮城へ向けて進んでいった。


 ◇


 レッドワイバーンの背に乗り、風を受けながら前方を見ていると、遠くから何かが飛んでくるのが見えた。

 最初は鳥かと思った。

 だが、違う。

 鳥にしては動きが機械的だった。

 飛行機にしては、かなり小さい。

 ヘリコプターのような箱型のフォルムにも見えるが、ヘリコプターのような大きなローターは見えない。

 見たことのない何か。

 それが複数体、こちらへ向かって飛んでくる。

「……あれは何だ?」

 俺は思わず呟いた。

 未来も目を細める。

「飛行機……じゃないよね?」

「ヘリでもなさそうですね……」

 陸斗も不思議そうに言う。

 距離が近づいてくるにつれ、それが乗り物であることが分かった。

 しかも、そこには人が乗っている。

 戦闘機用のゴーグルのようなものを付けた男達だ。

 服装は、どこか世紀末感がある。

 肩当てに革っぽい服、妙に主張の激しい装飾。

 なるほど、あれが世紀末漢隊かもしれない。

 そう思った直後、先頭の男がこちらへ向かって声を張り上げた。

「お前達は何者だ!」

 声が大きい。

 空の上なのに、妙によく通る声だった。

「東北地方は、俺達世紀末漢隊が守っている領域だ!」

 やはりそうだった。

 この謎の飛行物体に乗っている連中が、世紀末漢隊らしい。

「この地に足を踏み入れたきゃ近藤さんに挨拶してからにしやがれ!」

 男はゴーグル越しにこちらを睨むように言う。

「もれなく可愛いペット達も連れてな!」

「そうだ! そうだ!」

 周囲の男達も一斉に声を上げた。

 俺は一瞬、言葉に詰まった。

 可愛いペット達。

 それは、もしかしてレッドワイバーンのことだろうか。

 俺は自分達を乗せてくれているレッドワイバーンを見る。

 厳つくて大きな顎にゴツゴツとした赤い皮膚、獣のような鋭い目と巨大な翼。

 うん。

 乗せてもらっているし、未来が召喚したモンスターだから味方ではある。

 だが、全然可愛くはないよな。

 いや、未来にとっては可愛いのかもしれない。

 そこは深く突っ込まない方がいい気もする。

 少なくとも、初対面の相手がレッドワイバーンを見て「可愛いペット」と表現するのは、かなり独特だ。

 俺は気を取り直し、声を返した。

「すまなかった、俺達も近藤さんに挨拶したかったんだ」

 その言葉を聞いた世紀末漢隊の男は、急に表情を変えた。

「そうだったのか、俺達がいかにも安全にお前達を誘導してやる!」

 いかにも安全に。

 少し言い方が変だった。

 だが、敵意はなさそうだ。

「振り落とされないように精々頑張るんだな!」

 男はそう言って、自分達の飛行物体を旋回させた。

 そして、俺達の前方へ出る。

 どうやら、本当に案内してくれるらしい。

 口調は荒いがやっていることは親切だった。


 ◇


 俺達はレッドワイバーンでその後を追う。

 世紀末漢隊の男達が乗っている飛行物体は、思ったよりも安定していた。

 箱型の本体に、小さな翼のような部品がついている。

 下部には何か噴射口のようなものがあり、そこから風のようなものを出して浮いているようにも見えた。

 だが、詳しい仕組みは分からない。

 ただ、少なくとも俺が知っている飛行機やヘリコプターとは違う。

 一体、どうやって作ったのだろうか。

 春日なら興味津々で飛びつきそうだ。

 今ここに春日を連れてきていないのが少し惜しい気もしたが、連れてきていたら多分、調査どころではなくなっていたかもしれない。

 世紀末漢隊の男達は、俺達を誘導しながら飛んでいく。

 だが、その速度はかなり控えめだった。

 レッドワイバーンなら余裕でついていける。

 むしろ、こちらに合わせてかなり速度を落としているように見えた。

 しばらく飛んでいると、先頭の男が何度も振り返ってくる。

「ちゃんと付いてこれてるんだろうな?」

「あぁ、大丈夫だ!」

 俺が答えると、男はさらに声を張った。

「速度が速かったら遠慮せず、絶対言えコラ!」

 ……内容が優しい。

 ものすごく口調は荒い。

 だが、言っている内容は完全に気遣いだった。

 こいつら絶対に優しいじゃん。

 俺は内心でそう思った。

 しかも、よく考えればおかしな話だ。

 俺達は見ず知らずの相手だ。

 さらに、明らかに凶暴そうなレッドワイバーンに乗っている。

 普通ならもっと警戒してもいい。

 それなのに、この男達は俺達をそのまま近藤剛の元へ案内しようとしている。

 よほど純粋で素直なのか。

 それとも、何をされても倒せるだけの自信があるのか。

 もしくは、近藤剛という存在への信頼がそれほど厚いのか。

 世紀末漢隊。

 名前も見た目もふざけているように思えるが、ただの馬鹿な集団ではなさそうだった。


 ◇


 そんなことを考えながら空を進んでいると、前方に黒い雲のようなものが見えた。

 空の一角が黒く染まっている。

 天気が崩れる前兆にも見えた。

「何だ、通り雨か……?」

 俺が呟いた瞬間、世紀末漢隊の男達の空気が変わった。

 先頭の男がすぐに叫ぶ。

「おい、お前等! 身体を低くして低空飛行をしろ!」

 その声は、先ほどまでとは違う。

 荒いだけではなく、明確な警告だった。

「未来、低く飛ばしてくれ!」

「分かった!」

 未来がレッドワイバーンに指示を出す。

 レッドワイバーンは大きく翼を動かし、高度を下げていく。

 俺達は身体を低くし、振り落とされないように姿勢を整えた。

 そして、すぐにその意味を理解した。

 黒い雲ではなかった。

 もの凄い羽音が近づいてくる。

 羽音だけで空気が震えているようだった。

 目を凝らすと、その黒い塊の正体が見えた。

 大量のバッタだ。

 普通のバッタではない。

 目が赤い。

 顎が異様に発達している。

 1体1体は小さくても、数が尋常ではない。

 何千体もいるように見える。

 それが空を埋め尽くすように飛んでいた。

「まずいな……」

 俺は思わず呟いた。

 俺達は低空飛行に移ったことで、直接あの群れに突っ込むことは避けられた。

 だが、完全に見つからなかった訳ではない。

 群れの一部がこちらへ向きを変えた。

 次の瞬間、大量のバッタが一斉に襲いかかってくる。

「陸斗、一葉、二葉、三葉頼む!」

 俺はすぐに指示を出した。

「はい! 任せてください!」

 陸斗が力強く答える。

「承知致しました」

 一葉が静かに頷く。

「はい、分かりました」

 二葉も落ち着いた声で返す。

「任せてですー!」

 三葉だけは、少し楽しそうだった。

 いや、頼もしいのだが、楽しそうなのは少し怖い。


 ◇


 まず動いたのは陸斗だった。

 陸斗はレッドワイバーンの背の上で姿勢を低くしながら、両手を構える。

「スキル《手遊び》で、光線!」

 陸斗の手元から光が走った。

 無数の光線が空を裂き、迫ってくるバッタを1体ずつ正確に貫いていく。

「更に分裂!」

 陸斗がそう言うと、放たれた光線が無数に枝分かれした。

 1本1本の威力は落ちているのだろう。

 しかし、相手は小型のバッタだ。

 十分に貫ける。

 分裂した光線が網のように広がり、次々とバッタを撃ち落としていく。

「そして、貫通!」

 さらに陸斗は続けた。

 バッタを貫いた光線が、そのまま後ろにいる別のバッタまで貫いていく。

 1体。

 2体。

 3体。

 一直線に並んだバッタが次々と撃ち抜かれていく。

 流石の使いこなしだった。

 もはやベテランのようにすら見える。

「陸斗、凄いな……」

「まだいけます!」

 陸斗は真剣な表情で、次々と光線を操っていた。

 次に動いたのは一葉だった。

 一葉はいつものように背筋を伸ばし、涼しい顔で前方を見る。

「スキル《爆弾魔》」

 名前が物騒すぎる。

 その瞬間、空中の四方八方に大量の爆薬が召喚された。

 初めてメイド達のスキルを見る。

 召喚された爆薬が、バッタの群れへ向かって飛んでいく。

 そして、次々と爆発した。

 やかましい程の爆音と爆風、そして飛び散る火花。

 広範囲に広がる破壊力で、バッタの群れがまとめて吹き飛んでいく。

 一葉は普段、おしとやかで真面目なメイドだ。

 言葉遣いも丁寧で、仕事も完璧。

 その一葉が、今は薄く笑みを浮かべていた。

「フフフッ……もっともっと爆ぜなさい!」

「一葉を怒らせるのはやめとこう……」

 俺は本気でそう思った。

 普段が丁寧な分、戦闘時のギャップが怖すぎる。

 続いて二葉が前に出る。

「スキル《鉄球召喚》」

 二葉の手元に、巨大な鎖付き鉄球が現れた。

 人間が持つにはあまりにも重そうな鉄球。

 だが、二葉はそれを当たり前のように握る。

 鎖を掴み、大きく回転させ始めた。

 空中で鉄球が唸りを上げる。

 そして、迫ってくるバッタの群れへ向かって振り抜かれた。

 潰れて砕けて吹き飛んでいく。

 バッタがまとめて叩き落とされていく。

「ハハハハッ♡ 害虫駆除の時間ね!」

「いや、だから皆怖いって……」

 二葉の笑い声が、妙に楽しそうなのが余計に怖かった。

 メイド三人は、普段は本当に優秀で頼れる。

 だが、戦闘になると一気に物騒になる。

 最後に三葉が両手を上げた。

「スキル《四肢ワープ》!」

 次の瞬間、三葉の四肢が消えた。

「うわっ……」

 俺の脳が理解を拒否した。

 三葉の腕と脚が消え、その次の瞬間、バッタの近くに突然現れる。

 腕だけが空中に現れ、バッタを殴り飛ばす。

 足だけが別の場所に現れ、バッタを蹴り飛ばす。

 また別の場所では、拳がバッタの群れをまとめて薙ぎ倒している。

 三葉本人は四肢が消えた状態なのに、平然としていた。

「楽しいですーー!!」

「いや、それ生きてる……?」

 俺は思わず呟いた。

「四肢ない状態なのが物理的に怖すぎる」

 三葉は楽しそうだが、見ている側としては軽くホラーだった。

 そんなこんなで、陸斗と一葉、二葉、三葉は迫ってくるバッタをどんどん倒していった。

 流石に皆頼りになるな、そう思った時だった。


 ◇


 世紀末漢隊の男達が、こちらへ向かって声をかけてきた。

「お前等、相当強いんだな!」

 先頭の男が笑っている。

「闘い方も大胆で俺達は大好きだ!」

「それはどうも!」

 俺は返しながらも、少し嫌な予感がした。

 褒めている。

 だが、その後に何か続きそうな言い方だった。

 案の定、男は次の言葉を放つ。

「だが、Cランクモンスターのバイバイバッタに限ってはその倒し方は逆効果だ……」

「どういう事だ……?」

 俺は眉をひそめた。

 バイバイバッタ。

 ものすごく嫌な予感しかしない。

「バイバイってまさか……」

 俺がそう呟いた瞬間、倒されていたバッタ達の身体が蠢き始めた。

 爆発で吹き飛んだ破片。

 鉄球で潰された身体。

 光線で貫かれた個体。

 千切れた部位が、ぐにゃりと動く。

 そして、その破片や部位が新たなバッタへと再生していった。

 数が減るどころか、増えている。

「そんな……倒されて千切れた部位から増えていっている……」

 俺は思わず声を漏らした。

 完全に厄介なタイプのモンスターだ。

 倒せば倒すほど増える。

 普通の攻撃では逆効果。

 世紀末漢隊の男が頷く。

「完全に消滅させないと永遠に増えていく」

「結構やっかいだな……」

 俺は歯を食いしばった。

 陸斗達が悪い訳ではない。

 むしろ、よく対応してくれていた。

 だが、相手の特性を知らなければこうなる。

 全国調査では、こういう未知のモンスターと出会うことも増えるはずだ。

 やはり、現地の情報を持っている勢力と協力する意味は大きい。

 世紀末漢隊の男は、妙に自信満々に笑った。

「俺達に任せておけ!」


 ◇


 そう言った瞬間、男達のテンションが急に上がった。

「よっしゃァァァ!!」

「行くぞお前等ぁ゙ぁ゙ぁ゙あ!!」

「ヒャッハー!」

 空気が急に世紀末になった。

 いや、最初から世紀末だったが、さらに濃くなった。

 すると、どこからともなく音楽が流れ始めた。

 いや、本当にどこから流れているんだ。

 飛行物体にスピーカーでもついているのか。

 軽快というには少し暑苦しい曲調。

 男達の合いの手。

 そして、謎に耳に残る歌詞。

 ♪漢〜! ヒャッハー!

 ♪漢〜! ヒャッハー!

 ♪漢なら後ろは見るな前だけ常に見ろぉ〜

 ♪漢なら弱きを守り強くあれぇ〜

「何だ、この変な歌は……」

 俺は素直にそう呟いた。

 しかも曲調と合いの手と見た目のせいで、全部が濃い。

 とにかく濃い。

 すると、世紀末漢隊の乗っている飛行物体から、金属の筒のようなものがせり出してきた。

 複数の飛行物体が隊列を組む。

 金属の筒は、バイバイバッタの群れへ向けられた。

 筒の先端が赤く光り始める。

 熱を帯びているのが見て分かった。

 空気が揺らぐ。

 次の瞬間、世紀末漢隊の男達が一斉に叫んだ。

「ファイヤーー!!」

 金属の筒から、広範囲の炎が放たれた。

 炎は扇状に広がり、バイバイバッタの群れを丸ごと包み込んでいく。

 ただの火ではない。

 火力が凄まじい。

 バッタの身体も、千切れた部位も、増えようとしていた破片も、まとめて焼き尽くしていく。

 黒い雲のようだった群れが、炎に呑まれて消えていった。

 灰すらほとんど残らない。

 完全に消滅させる。

 その条件を、世紀末漢隊は分かっていた。

 そして、それを実行できる武器も持っていた。

 俺は炎に照らされた空を見ながら、思わず息を呑んだ。

 見た目はふざけている。

 口調も荒い。

 テーマソングまで流す。

 だが、強い。

 そして、モンスターの特性をよく知っている。

 世紀末漢隊は、本当に東北を守っているのかもしれない。

 10分後、バイバイバッタの群れが焼き尽くされ、空が少しずつ元の色を取り戻していく。

 世紀末漢隊の飛行物体は、何事もなかったかのように隊列を整えた。

 俺はその謎の乗り物を見つめる。

 低速飛行ができる。

 空中で安定している。

 しかも、広範囲火炎放射のような武装まで備えている。

 これは単なる移動手段ではない。

 戦闘用の飛行兵器だ。

 俺は思わず呟いた。

「一体、何なんだこの乗り物は……」



念のため補足ですが、バイバイバッタは

倍に倍に増えていくという意味があります。

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