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 煌びやかなシャンデリアに照らされた大広間は、その輝きに負けないくらい着飾った人々で賑わっている。


 その中には結ばれるべき相手と共にいる者もいれば、結ばれるべき相手を探しに来た者もいる。貴族家の次男以下や令嬢たちにとっては、誰と番うかというのは今後の人生を左右する重大な事項だ。


 わたくしは、どちらでもない。


 まだ定まらないもやもやとした思いを、確かめに来ただけの半端物。


 それでも——女嫌いのジュリアス殿下と、社交嫌いのわたくし——『バタールの魔女』を伴って舞踏会に現れたことは、絶大な影響をもたらした。


 誰もがわたくしを遠巻きにし、何事かを囁いている。直接声をかける度胸のある者はいないらしい。なんと、情けないこと。


 テーブルには美味しそうな料理がならんでいる。——が、コルセットで締め付けられたお腹にはあまり入りそうにもない。そもそも、こういう場で食事に手を付けるものではないのだけれどね。


 ジュリアス殿下は有力貴族への挨拶周りに追われていて、わたくしは壁の花になっていた。


 そんなわたくしに声をかける者が一人だけ——アカデミーの同級生であるヴァネッサ・ウィリアムズだ。


「ちょ、ちょっとどうなってるの!? ジュリアス殿下があなたと一緒に現れるなんて、わたくし聞いてませんわよ?」


「ちょっと、引っ張らないで。はしたないわよ、ヴァネッサ。エイプリル王妃殿下の嫌味が増えるわよ」


 ぐいぐいと腕を引かれて、わたくしはヴァネッサに落ち着くよう促す。


「その心配はないわ。例の一件でディオール公爵家は後がないもの。もう王妃殿下はわたくしに強く出られないのよ。我が家の機嫌を損ねたら、セオフィラス殿下の支持基盤は完全に崩れるから」


 ヴァネッサは平然とそう言い放った。


 それは確かにそうだろう。エイプリル王妃殿下がどうやって国外で作られたのあの魔道具を入手したのか——わたくしは詳細を聞いていないが、諜報を司る部署はもう掴んでいるのかもしれない。その上でエイプリル王妃殿下——というかディオール公爵一派が行動を起こすのを待っている——そんな予感はする。


「それで、どういうことなの!?」


「声が大きいわ。その——ジェフリーがディオール殿下のところに出仕していたのはあなたも知っているでしょう?」


「え、ええ。そうね。行儀見習いって名目だけど、実質秘書役みたいなものだとは聞いているわ」


「ジェフリーがわたくしのことを色々吹き込んでいたみたいなの。それでジュリアス殿下がわたくしに興味をお持ちになって——というのが始まりね」


「ああ、ジェフリーが……ジュリアス殿下の前であなたを称えているのが目に浮かぶようだわ」


「元々、お会いしてお話をしたいとは思っていたのだけど、思わずお会いする機会があってね。それで例の事件にわたくしも関わることになったのよ」


「カチュア殿下に魔法学と魔法制御を教えているのよね?」


「ええ。その時の一連の対応が、目に留まったみたいだわ」


「なるほどねえ」


 ヴァネッサは納得したように頷いて、


「それにしても、化けたものね」


「化けただなんて、失礼ね」


「まあわたくしは生まれ出でた瞬間から美しかったけれど、着飾るとここまで映えるとは思わなかったわ」


「興味もなかったからね。お金がかかるもの」


「あなたのおうち、金だけはあるじゃないの」


「否定はしないけれど、自慢げに言うことでもないわよ」


「はあ、それにしてもジュリアス殿下か。あなたとは波長が合うでしょうね」


「ええ、そうね。わたくしと同じ匂いを感じる方だわ」


「セオフィラス殿下なんて、自分の話しかなさらないもの。一応義務として一緒に社交の場に出はするけれど、一言でも口を開けば叱責されるのよ? うんざりだわ。あなたとジュリアス殿下がうまく行けば立場が逆転するってことも、わかっていらっしゃるんだか……」


「わかっていないのか……あるいは盤面をひっくり返すような一手があるのかも……」


 そこではたと気が付いた。


 強引に盤面をひっくり返す方法——ある、と言えばある。


 危険すぎる方法だ。失敗したらもう完全に後がなくなる。


 けれど、エイプリル王妃殿下ならやりかねない……。


「ちょっと急用ができたわ」


「え? ちょ、ちょっと……!?」


 わたくしはヴァネッサを置いて小走りにジェフリーのいるところへと向かった。


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