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 ジュリアス殿下はあまり社交に積極的ではない。だが、ここ最近は社交の場に顔を出すことがあったようだ。


 恐らくジェフリーを見せびらかすため――ではなく、侯爵家嫡男で婚約者のいないジェフリーに、令嬢のアプローチが分散するため多少は気が楽になったのだろう。有用な貴族、危険な貴族、無能な貴族を見分けるため、社交の場に顔を出すのは王族として本来必要なことだ。政務に携わっているなら猶更である。


 案の定、ジェフリーは令嬢たちに取り囲まれていた。仏頂面ところか不機嫌丸出しの顔である。しかし美少年補正がかかっているので、不機嫌であっても可愛く見える――令嬢から見ると麗しい、のか? とにかくジェフリーの周りには令嬢たちの黄色い声が飛び交っているのだ。ジェフリー自身は一言も口を利いていないのが滑稽ではある。


 氷の貴公子と呼ばれるのもまあ、わかる? いやわからん。令嬢に冷ややかな対応をするのは貴公子ではなかろう。たぶん、令嬢たちはジェフリーの反応を都合のいいように解釈しているのだ。まあそれはともかくとして、わたくしはジェフリーの元に歩みよる。


 わたくしの存在に気付いた令嬢たちはびくっと肩を跳ねさせ、ざざっとジェフリーの元まで道を開けた。


 いや……急ぎだから助かるんだけどさあ。


「姉上? 何かあったのですか?」


 息を切らせて自分の元にやってきたわたくしに、ジェフリーは目を丸くしている。


 わたくしは声を潜めてジェフリーに要件を告げる。


「ジェフリー、あまり時間がないわ。ジャスパーは来ているわよね」


「はい。来ていますが、何かあったのですか?」


「……時間がないから手短に言うわ。暗殺者が紛れ込んでいる可能性がある」


 わたくしの言葉にジェフリーの顔が一気に険しくなった。


「第一王子殿下の派閥は『詰み』の一歩手前よ。わたくしとジェフリー殿下の婚約が成立して、ヒューストン侯爵家が第二王子側に付けばもうジュリアス殿下の立太子は決まったも同じ。その前に「どうにか」する必要がある。その機会は「今」しかないわ」


 その説明だけで、聡い弟はすべてを理解したようだ。緊張した面持ちで頷く。


「状況は解りました。――ジャスパーに命じて周辺を探らせます。お二人の魔法には暗殺者も警戒しているでしょうし……恐らく、姉上とジュリアス殿下のファーストダンスを狙ってくるでしょうね。そのタイミングなら周囲はがら空きになるし、姉上もジュリアス殿下も無防備だ」


 舞踏会では王族とそのパートナーが踊る。配偶者か婚約者、あるいは婚約者候補だ。ジュリアス殿下は特定のパートナーがいなかったためこれまでファーストダンスを踊っていなかったが、今夜ばかりは違う。


 ちなみにセドリック陛下とエイプリル王妃殿下は仲が悪いので踊らないけれど、セオフィラス殿下とヴァネッサは踊るし、わたくしとジュリアス殿下も踊ることになるだろう。カチュア殿下はまだデビュタントしていない。


 踊っている間は両手が塞がるので完全に無防備だ。王族とあれど舞踏会の場に武器は持ち込まない。ダンスをしている最中に襲われたら魔法で対処するのも難しい。


「わたくしもそう思うわ。お願いできる?」


 わたくしの言葉に、ジェフリーは力強く頷いた。


「お任せください。姉上を害する者はすべて血祭りにあげて見せます」


「あ、いや。そこまでしなくてもいいのよ……?」


 ぶれないな、我が弟よ……。王家主催の舞踏会を凄惨な血の宴にしないでちょうだい。まあわたくしが逆の立場でも同じことをしていたでしょうけど。


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