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(23)

 ジュリアス殿下と腕を組み、ゆっくりと会場を進んでいく。


 令嬢たちの視線が痛い。ジュリアス殿下ご本人は昼行燈を気取っているつもりらしいけれど、その有能さは隠すことができない。王太子争いに敗れて臣籍降下することになったとしても、安定した領地運営をすることは間違いない有望株だ。加えて見目麗しく、王族でありながら偉ぶったところもない。


 そこをわたくしみたいな中の下の干物女がかっさらって行こうとするのだから、令嬢たちのルサンチマンも高まろうと言うもの。


 でもそんなこと気にしたって仕方ないわね。


 目指すは国王陛下の元。わたくしたちは腕を組んで悠々と進んで行く。


 ――さざなみのような囁きが、今は心地よい。


「しまったな」


 ジュリアス殿下が小さく呟く。


「何が、でございますか?」


「——君に俺の色の宝石を——アメシストでも贈っておけばよかった」


 その言葉にわたくしは小さく笑う。


「購入を検討したところ、弟に全力で止められましたわ」


「あいつめ。厄介な小姑になりそうだな」


「それは確かに、そうですわね」


 そんな軽口を囁き合いながら、わたくしは貴賓席に座る国王陛下の元に向かう。


 左右を挟むのは、老練な二人の近衛騎士。この場で国王以外に帯刀を許されている数少ない存在だ。会場の警備は彼らが担っている。国王の身辺警護ともなれば、近衛の中でもトップクラスの実力者だろう――そしてなかなかイケオジでもある。


 なんてことを考えていたらジュリアス殿下に脇腹を軽く引っ張られた。あらあら、やきもちかしら。殿方ってかわいらしいわね。


 国王陛下は「公」の厳めしい顔を作って、わたくしを見やる。


「――まさかジュリアスがブリジット嬢をエスコートするとは思わなんだ。どうやってこの女嫌いを射止めた?」


 国王陛下は、愉快そうな笑みを隠しきれていない。ジュリアス殿下は、隣でいかにも嫌そうな顔をしている。身内に色恋沙汰をいじられるのは、そりゃあ嫌でしょうね。


 わたくしは淑女の礼を取ると、このように答えた。


「それは、雪の妖精の悪戯にございますわ」


 わたくしの答えに、国王陛下が思わずといった調子で呵々と大笑する。


 普段公務で決して笑わない国王陛下の笑い声に、会場の人々が騒然となる。


「なるほど! 雪の妖精——あやつが結んだ縁か! なれば一生溶けることのない縁になりそうだな。あい分かった。我が息子の気概、どうか受け止めてやってくれ」


「いいえ陛下。まだわたくし、口説かれている最中ですの」


 わたくしがしれっとそう答えると、国王陛下はまた大笑いした。


「ブリジット嬢にかかるとそなたも形無しだなあ、ジュリアスよ」


「面白がらないでくださいよ、父上。俺はこの舞踏会に賭けているんですから」


 少しむくれた顔をするジュリアス殿下のことを、年上なのにかわいらしいと思ってしまうのは、長姉として生まれた性分なのかしらね。


 とは言え、こんな気安いやり取りができるあたり、親子仲は良いのだろう。国王陛下とセオフィラス殿下との関係はわからないが。


「すまんすまん。ではブリジット嬢。舞踏会を楽しんでいかれよ。ただし酒はほどほどにな」


 いつもの厳めしい表情を取り戻すと、国王陛下はわたくしの目を見てそう言った。


「はい。過分なご配慮を賜り、光栄にございます」


「では俺たちはこれで。父上こそ羽目を外さないでくださいよ」


 わたくしたちは再度一礼すると、国王陛下の元を辞去した。


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