14、体質 ④
王宮に着く。ブリジットは初めて入る王宮に心を踊らせていた。
学園に入学したこともあり、彼女はデビュタントと言うものをした事が無かった。そして社交界のパーティーにも顔を出す事が無かったのだ。その役割はいつも姉達が行なっていた。
もちろん、心が躍っている事など外に出したつもりは無かっただろう。事実、彼女は顔に出す事は無かったが、それを見抜いた人がいたのである。
「王宮は初めてか?随分嬉しそうだが」
とエスコートしているフランシスに言われて、少し戸惑ってしまった。
ブリジットは困った顔をしてフランシスに謝罪をする。
「申し訳ございません、顔に出したつもりは無かったのですが……」
「ああ、いやすまん。礼節は全く問題はないから、安心してくれ。僅かに口角が上がっているように見えたから、気分が良いのだろうか、と思っただけだ」
彼の言葉にブリジットは驚いていた。彼女はあまり表情を動かす事がない。だから彼女の気分を読み取る事ができる人は少なかったからだ。
「私もブリジットと同じように表情に出さないからな。だからわかるのかもしれないが」
と言い切ったフランシスはブリジットに笑いかける。ここに人がいたら、氷の公爵が笑った……と二度見するか、その場で固まってしまうかのどちらかになるだろう。
そんなときに声をかけるものがいた。
「カノヴァス公爵、ブリジット。お待ちしておりました」
「……お父様」
目の前にはブリジットの父、セザールが右手を胸に当て挨拶をしている。フランシスもそれに答えるように右手を胸に当てて挨拶をする。
「ブリジット、よろしく頼む」
「はい、フランシス様」
ブリジットは父親と共に謁見の間に向かい、その後体質の確認が行われる。
その間にフランシスは王都の図書館に向かい、調べ物をする許可を陛下からもらっていた。
名残惜しくて後ろを振り向くと、丁度振り向いたのだろう。ブリジットと目が合った。片手を挙げると、彼女は少し嬉しそうに頭を下げて、前を向く。
そんな些細なやり取りも悪い気がしなかったのだろう。フランシスの足取りは少しだけ軽くなっていた。
「フランシス・カノヴァスだ」
図書館に着いたフランシスは手元の証明証、そして王家の許可証を携えて司書の元に来ていた。
「お待ちしておりました、
公爵様」
「今日は、内密にな」
「ええ、もちろん」
と言っても司書である彼、デーヴィドにフランシスが禁書庫で何をするかはもちろん知らせていない。他の者が入らないようにしてくれ、と言う意味である。
禁書庫は封印されており、誰それと入る事ができない。王家の許可証と司書であるデーヴィドの2つを使わないと開ける事ができないのだ。
「こちらでございます」
目の前には魔法陣が描かれている扉がある。デーヴィドはその前に立ち詠唱を行なっている。
詠唱が終わると鍵穴に光が集まり、ゴゴゴ、と言う音を鳴らして扉が開いた。
「2枚目の扉はそちらの許可証が必要になります。こちらの穴に許可証を入れてくださいませ」
フランシスが言われた通りに入れると、先ほどと同じように鈍い音をあげながら扉が開いた。
「いつ見ても、面白い仕組みだな」
「では、終わりましたらこのベルを鳴らしてくださいませ」
デーヴィドであっても禁書庫には入る事ができない。彼がすぐにその場を立ち去ると、1枚目ーデーヴィドが開けた扉が音を立てて閉まった。
フランシスはその事を気にもせず、お目当の本を探しに禁書庫を歩き回っていた。
「おお、見つけたか」
禁書庫の入り口から一番遠い区画に目当の本が見つかった。彼が見つけた本は、使用禁止道具全集である。
現在王家が使用を禁止する魔道具がいくつかこの世に存在する。その道具の主なものは、人の精神を操ったり支配したりする道具である。
他にも、魔道具として使用すると人に危害を与えるものなども使用禁止とされている。
彼はその全集に目を通し、頭に叩き込む。この全集に載っている物にブリジットが反応している可能性が高い。そして体質なのかどうかは今確認中だった。
頭に叩き込んだフランシスは本を戻し、入り口に向かった。ふと、入り口の近くにある本が少しだけ飛び出ていることに気づいたフランシスは、その本を戻そうとして、手に取った。
中身をパラパラと開いたフランシスの目に飛び込んできた言葉、それが〝魔道具全集〟と言う言葉だ。
「これは……確かブリジットが侯爵家で見た本のタイトルでは無かったか?」
彼女の言葉を思い出す。確か、古代語で魔道具全集と書かれていたと。
本を見ると、この魔道具全集と書かれた本は、本として利用するものではない。古代語時代に残された魔道具の一種、だそうだ。
古代語が使われていた時代、数百数千年前の話になるが、その頃の文献や魔道具はあまり残ってはいない。
が、全くと言うわけではない。使用禁止道具でなければ使って良いとのお達しも出ていた。
この魔道具全集も別に使用禁止にされているわけではなさそうだ、と思いながら効果を確認するフランシス。そして読み終わった後、彼の綺麗な眉がひそめられた。
「……まさか」
彼は手の本を開いたまま考えにふけっていた。そして何かを思いついたのだろう。本を返すと意気揚々に禁書庫から出て行ったのだった。
そろそろ話が急展開する予定……
まだ恋愛要素が少ない気がするのは気のせい
次話は明日投稿します!




