13、体質 ③
フランシスから話を聞いて、そしてブリジットは思い出す。両親が得体の知れない物を見る様な目を一時期していたこと、それは私の体質が原因かもしれないことを。
「私にそんな体質が……」
「あくまで可能性の話だ。絶対とは言い切れない」
フランシスは黙々と話している。彼女にとっては思い出したくもない話かも知れない。そう考えていた。
この時期の彼女の両親は、少し彼女を恐れていた節がある。彼女が得体の知れない能力を持っているかも知れない、そのことに恐れていたそうだ。もし彼女がそのことに気づいていたら、いい思い出ではなかろう。
「いえ、納得いたしました。だからあの時両親が……」
そこまで言ってブリジットはハッと言葉を止めた。言う必要もない事まで言ってしまった、と思ったからである。正直その時の思い出はいいものではなかった。表面的には可愛がってもらっていた両親だが、心の奥底では少し怖がっているのが感覚的に分かってしまっていた。
それは彼女が大きくなっても変わらなかった。相変わらず心の奥底には恐怖が眠っている様に感じていた。
だから、彼女は両親の手を煩わせない様に、自身が独り立ちできる様にこの道を選んだとも言える。
言い過ぎてしまったことにフランシスからお咎めがあるかと思いきや、ブリジットが聞いた言葉は思いもよらない言葉だった。
「別にブリジットがどんな能力を持っていようとも、君は君だ。別に何かが変わるわけではない」
フランシスは少し硬直しているブリジットの手を取り、氷の公爵とは思えない笑顔で彼女に笑いかける。
「だから心配しなくていいんだよ」
その言葉にブリジットは救われた様に感じていた。だからその後に
「その能力が本当にあるのかどうか、確かめてみないか?」
と聞かれた時、彼女は目に覚悟を灯しながら頷いたのである。
彼女の体質の確認については、また改めて王宮に行って確かめる、と言うことになった。
「またその時には呼ぶから、よろしく頼む。あ、あとは……」
と言って、左手に嵌っていた腕輪を取り始める。
「新しく改良した追跡魔道具だ。ブリジット、君に持っていてほしい」
いつになく真剣な様子にうろたえたが、魔道具の試作品を試してほしいと言われれば、了承をした。
今回の追跡魔道具は、変わらず腕輪型だった。変わったことと言えば以前のものをさらに改良して、正確に居場所を捉えることができるらしい。
「何かあった時はこの緑のボタンを押す様に」
使い方を教わったブリジットは、腕輪をつけて頷いたのだった。
数日経ったころ、フランシスからの呼び出しで、王宮に向かっていた。
フランシスの出勤の時間に合わせて、支度を整えていたところをジーンに呼び出され、何故か侍女服ではなく、ドレスを着させられたのである。
彼女曰く
「本日はベルジェ伯爵の三女と言う立場になりますので、飾り立てますよ」
と言うことらしい。なのでフランシスの向かいには、ブリジットが座っている。側から見たらブリジットは公爵夫人に見えるだろう、と言うくらい気合いを入れて美しく着飾っている。
「……そのドレス、よく似合っている」
「ありがとうございます」
肘をついて窓の外を見ていたフランシスが、ぼそっと話しかける。独り言とも取れるくらい、小さな声で喋りかけられたので、一瞬聞き間違えかとブリジットが思ったくらいだ。
ブリジットは淡いミントグリーンのドレスを身にまとっていた。肘丈の袖の周りには薄いレースをあしらい、多重のフリルをつけているが、それ以外は至ってシンプルなAラインのドレスであるため、ブリジットの体型をより綺麗に見せていた。
その言葉を言った後、フランシスはブリジットの顔を見ることなく外を見続けていたが、それは綺麗になった彼女の顔を直接見る事ができず照れていたのだった。
一方ブリジットはフランシスの耳が赤いことに気づき、体調が悪いのでは、という頓珍漢な思考を巡らせていたのだが口を開く前に王宮に着いたため、尋ねる事ができなかったのだった。
カノヴァス公爵家では、女性がいないため久しぶりのブリジットの着付けには大いに女性たちが喜んだとか……
次は明日投稿予定です!




